今こそ​取り組みたい、​宿泊施設バリアフリー対応の​ポイント

超高齢化が​すす​む​日本では、​人口の​3割以上を​高齢者や​障害の​ある​人が​占めると​いわれています。​それだけではなく、​2020年東京大会など​訪日外国人旅行客の​増加が​予想される​ことから、​すべての​人が​安全に​安心して​旅が​できる​環境整備が、​より​求められるようになりました。​そのために、​宿泊施設でも​考えて​おきたいのが​バリアフリー対応です。

参考:2020年オリンピック・パラリンピックを​見据えた​ユニバーサルツーリズムへの​対応~観光関係​者向け​「高齢の​方・障害の​ある​方などを​お迎えする​ための​接遇マニュアル」を​作成しました​~(観光庁)

今回は、​宿泊施設の​バリアフリー対応に​ついて、​ポイントや​取り組みの​アイデアを​紹介します。

誰でも​安心できる​環境づくりが​バリアフリー

バリアフリー」とは、​障害の​ある​人や​高齢者が​生活する​上で、​障壁​(バリア)となる​ものを​除去する​(フリー)​ことを​いいます。​もともとは​建築用語で、​段差など、​物理的な​障壁を​取り除いた​空間づくりを​指していました。​現在では、​より​幅広く、​社会や​制度、​心理的な​障壁を​除去すると​いう​意味でも​用いられます。

ここでの​「障害の​ある​人」とは、​体が​不自由な​人だけを​指していません。​たとえば、​訪日外国人旅行客は​「日本で​過ごす上で​言語に​不便を​感じる​人」と​考えられます。​乳幼児連れの​人も​また​「自分の​意思通りに​自由に​動けない人」と​いえるでしょう。​置かれた​状況など、​広い​視点で​「障害」を​捉える​ことが​重要です。

似た​言葉に​「ユニバーサルデザイン​(UD)」が​あります。​バリアフリーとの​違いは、​あらかじめ、​あらゆる​立場の​人が​利用しやすいよう​考えられているか、と​いう​点に​あります。​バリアフリーは​「障壁が​ある」ことが​前提に​なっていますが、​ユニバーサルデザインは​「障壁を​作らない」​ことを​目的と​しています。

参考:バリアフリーと​ユニバーサルデザインの​定義(国土交通省)

宿泊施設の​バリアフリー

Alt text

2016年に​障害者差別解消法が​施行され、​旅行業界でも​障害の​ある​人や​高齢者の​受け入れ体制の​整備が​すすめられるようになりました。​あらゆる​人が​安心して​旅を​楽しめるような​取り組みである​「ユニバーサルツーリズム」の​普及および​促進が​行われています。

参考:ユニバーサルツーリズムに​ついて​(観光庁)

高齢者や​障害の​ある​お客様

2016年に​発表された、​国土交通省の​「車いす、​足腰が​不安な​シニア層の​国内宿泊旅行拡大に​関する​調査研究 」に​よると、​1人​あたりの​年間平均国内宿泊旅行回数は、​60代で​増加する​ものの、​70代になると​減少する​ことが​わかっています。​その理由と​して、​70代では​「健康上の​理由」を​あげる​人が​3割にの​ぼります。​また、​高齢者が​旅行を​するのは​心身に​とって​よいと​感じていながら、​設備や​サービスが​不足していると​感じて​旅行を​ためらっている​ことも​報告されました。

参考:車いす、​足腰が​不安な​シニア層の​国内宿泊旅行拡大に​関する​調査研究(国土交通省)

また、​「国内旅行に​関する​障害者の​意識調査 」では、​障害者の​8割が​1年に​1回以上​旅行している​ことが​分かっています。

参考:国内旅行に​関する​障害者の​意識調査(ミライロ!​サーチ)

年齢や​障害の​有無、​言語の​違いなど​関係なく​多くの​人が​旅を​楽しみたいと​思っている​一方で、​宿泊施設の​バリアフリー対応は​遅れていると​考えられます。

2006年に​施行された​バリアフリー新法では、​客室数50以上の​ホテルには、​車椅子の​お客様も​宿泊できる​客室を​1部屋以上​設置する​ことが​義務付けられました。​しかし、​客室数が​少ない​宿泊施設では、​整備が​進んで​おらず、​受け入れに​積極的な​宿泊施設も​多いとは​いえない​状況です。

参考:ホテル・旅館の​バリアフリー化の​現状等に​関する​アンケート調査結果​(国土交通省)

宿泊施設が​バリアフリーに​対応する​ことは、​顧客満足度の​向上だけでなく、​これまで​「旅行したいが、​行けなかった」と​いう​層を​お客様と​して​取り込むことにもつながります。​他の​宿泊施設との​差別化にもなり、​リピーター客の​獲得や​口コミに​よる​誘客も​期待できます。​近年では、​「バリアフリー対応の​有無」を​検索項目として​設定できる​宿泊施設検索サイトも​めずらしく​ありません。​都道府県が​発行している​観光ガイドブックでも、​宿泊施設の​バリアフリー対応状況は​重要な​情報と​して​掲載されているようです。

オリジナルデザインの​ギフトカードを​導入
自店限定カードを作る

インバウンド対策

2018年3月から​5月まで、​観光庁は​宿泊施設に​おける​バリアフリー化の​ための​改修などを​支援する​「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金​(宿泊施設バリアフリー化促進事業)」の​募集を​行いました 。​これは、​高齢者や​障害の​ある​人に​加え、​訪日外国人旅行客が​災害時などに​宿泊施設を​避難所と​して​利用する​ことを​想定した​もので、​客室だけでなく、​共用部分の​バリアフリー化の​ための​改修を​支援する​ものです。​手すりや​スロープの​整備だけでなく、​出入口や​廊下の​拡幅、​視覚障害者誘導ブロックや​音声に​よる​案内表示の​設置などを​対象と​しています。

参考:​「宿泊施設バリアフリー化促進事業」の​公募を​開始〔平成29年度補正予算事業〕(観光庁)

自己資金での​対応が​難しい​場合も、​このような​制度を​活用する​ことで、​バリアフリー対応を​進める​ことができます。

すぐに​始められる、​バリアフリー対応の​アイデア

Alt text

宿泊施設で​できる​バリアフリー対応は、​大掛かりな​工事が​必要な​ものだけでは​ありません。​ちょっと​した​心遣いや、​できる​ことから​順次取り​組むだけでも、​お客様に​とっては​利用しやすい​宿泊施設に​なります。

たとえば、​小さい​文字が​見えに​くい高齢者や、​日本語が​わからない​外国人向けには、​イラストや​ロゴマークを​用いた​館内表示を​すると、​わかりやすいでしょう。​また、​チェックイン時に、​フロントではなく、​ロビーの​ソファーで​対応したり、​拡大鏡を​用意したりするのも​おもてなしです。

また、​段差が​ある​場所や​廊下などは​手すりを​設置するのも​よいでしょう。​ただし、​客室の​あちこちに​手すりを​設置すると、​狭さを​感じ、​逆に​使い勝手が​悪く​感じる​人も​いるかもしれません。​必要な​ときに​設置できる​着脱式の​手すりの​用意を​検討する​ことも​オススメします。

段差の​多い​浴場は、​段差が​ある​ことを​大きく​表示するだけでも​お客様の​安心感に​つながります。​浴室の​シャワーヘッドを​低い​位置に​変えるだけなら​コストを​抑えて​対応できるかもしれません。​必要に​応じて​使って​もらえるよう、​シャワーチェアなどを​用意するのも​喜ばれます。​常時設置して​おかなくても、​貸し出し品と​して、​予約時などに​案内する​ことで​お客様は​必要時に​選べます。

和室しかない​宿泊施設では、​簡易ベッドを​用意する​ことで、​一時的に​バリアフリー対応の​客室と​して​利用して​もらえます。​高齢者の​中には​布団だと​起き上がるのが​大変、と​いう​人も​いるので、​その​時々で​対応できるようにして​おきましょう。

他にも、​聴覚障害が​ある​お客様の​ために、​絵や​文章を​指すだけで​意志が​伝えられる​コミュニケーションボードを​用意している、と​いう​宿泊施設も​あります。​この​ツールは、​海外からの​お客様との​コミュニケーションにも​活用できます。​ホームページから​ダウンロードできるようにしている​ところも​あるので、​利用してみましょう。

参考:コミュニケーションボード・カード(社会福祉法人 横浜市社会福祉協議会障害者支援センター)

バリアフリー対応には、​設備と​しての​対応だけでなく、​「どのように​お客様を​お迎えするか」と​いう​「心の​バリアフリー対応」も​重要です。​観光庁では、​宿泊施設向けに​接遇マニュアルも​作成しています。​大規模な​改装が​できない​場合も、​スタッフ一人​ひとりの​心がけや​配慮で​対応できる​場面も​少なく​ありません。​マニュアルでは、​対応シーンに​合わせた​接遇の​ポイントを​紹介しています。​まずは、​参考に​して​スタッフ教育を​行ってみては​いかがでしょうか。

参考:⾼齢の​⽅・障害の​ある​⽅などを​お迎えする​ための​ 接遇マニュアル(観光庁)

関連記事

顧客目線で​考える!​宿泊施設の​オムニチャネル 戦略とは
宿泊施設で​キャッシュレス決済を​導入する​こと

執筆は​2018年7月17日​時点の​情報を​参照しています。​
当ウェブサイトから​リンクした​外部の​ウェブサイトの​内容に​ついては、​Squareは​責任を​負いません。​
Photography provided by, Unsplash