相殺処理のメリットとデメリット
相殺処理を行うメリットは、支払額が減ることでキャッシュフローの安定につながる点です。手元の資金を動かす必要がなく、金銭の移動の手間が軽減されます。 買掛金の支払いを行ったのと同じ効果が発生しますので、現金が手元から動くことはありません。 さらに、請求管理業務において発生する手数料や印紙代などの各コストを削減することも可能です。
相殺処理のデメリットは、売り手と買い手の双方が領収書や請求書を発行し合うため、双方の事務負担が増えることや、債権もしくは債務のある取引先を毎月確認する必要があるので、その手間が増えることなどが挙げられます。継続して取引が行われる場合は、領収書を発行する手間と時間が毎月発生します。 さらに、相殺を行う取引先が複数ある場合には、帳簿からそれぞれの売掛金と買掛金を確認するなど、煩雑な業務が発生します。
請求書と領収書の相殺方法
請求書の相殺処理をする場合は、請求書に元の請求金額、相殺金額、相殺後の支払金額を明確に内訳がわかるように記載します。例えば、「請求金額15万円、-10万円(相殺金額)、支払金額5万円」などと記載します。「-」のかわりに「△」や「▲」を使うことも可能です。
また、双方の帳票に、相殺処理を行った取引の詳細がしっかりわかるように記録を残すことも重要です。書類は2枚綴りに分けて、請求書の請求金額には相殺前の金額を記載し、別紙に相殺金額と実際の支払金額を記入するといった方法もあります。事前に取引先に連絡し、どちらの方法で請求書を作成するべきかを確認すれば安心です。
相殺領収書は、相殺処理を行ったことを証明する書類のことを指します。発行する義務はありませんが、発行しておけば、双方が相殺に合意済みであることの証明として残ります。また、相殺金額や双方の債権を確認し、二重請求などのトラブルを防ぐためにも役立ちます。取引ごとに請求書とは別に領収書も発行しておくと、いつ相殺処理を行ったのかなどを後日確認する際に便利です。
事業主貸と事業主借の相殺方法
事業主貸と事業主借の大まかな意味合いは、次の通りです。
* 事業主貸:事業用のお金を事業主個人に貸すこと
* 事業主借:事業用のお金を事業主個人から借りること
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事業主貸、事業主借は返済する必要のない「自分同士の借金」なので、継続して金額が増加しても、双方の借金は相殺することができます。相殺方法は、青色申告決算書の4ページ目の貸借対照表に、事業主貸と事業主借の金額を記載する欄があるので、それぞれ集計した金額を記帳しましょう。 その年の決算を終え、次の年に帳簿づけをスタートする際には、事業主借と事業主貸が0になっている必要があります。そのため、確定申告時には事業主借と事業主貸を相殺したのち、残高の差額を「元入金」に振り替える作業を行います。
売掛金と買掛金の相殺方法
売掛金と買掛金の仕訳から説明します。同じに企業に対して商品を1,000,000円で売り上げ、商品を800,000円で購入した際の仕訳は以下のようになります。
(借方)売掛金 1,000,000円 (貸方)売上 1,000,000円
(借方)仕入れ 800,000円 (貸方)買掛金 800,000円
この仕訳を相殺すると、以下のようになります。
(借方)買掛金 800,000円 (貸方)売掛金 800,000円
この例では相殺が可能となるのは対当額800,000円までです。したがって、売掛金の200,000円は保持されます。その後、入金日に売掛金200,000円の入金確認が済めば相殺処理完了です。本来であれば1,000,000円を回収しなければならず、さらに800,000円の買掛金の支払いをする必要がありました。しかし、その都度会計処理が必要だったはずの作業を、相殺によって簡略化することができます。
【関連サイト】
国税庁|相殺による領収書
国税庁|No.7126 相殺した場合の領収書