【商いの​コト】お客様の​体験が​“意図せぬ”マーケティングを​生む。​アフリカの​布に​魅せられた​お針子の​話

成功も​失敗も、​すべては​学びに​つながる。​ビジネスオーナーが​日々の​体験から​語る​生の​声を​お届けする​「商いの​コト」。

つなぐ加盟店 vol. 24 梅田洋品店 梅田昌恵さん

色鮮やかな​洋服達に​囲まれ、​一人の​女性が​満面の笑みで​カメラに​目を​向けている。

梅田洋品店を​営む、​梅田昌恵さん。​
​「自分の​お店を​開きたい」と​いう​幼少期からの​夢を​実現し、​アフリカで​布を​買いつけ、​南青山の​アトリエで​オリジナルの​ファッションアイテムを​仕立てている。

身に​つける​人の​心を​掴み、​ファンを​着実に​増やす同店は、​意外な​ことに​特別な​マーケティング戦略を​立てていないのだと​いう。

では、​ファンを​増やす秘訣は​一体​どこに​あるのか。​その謎を​解く​ために、​同店の​歩みを​辿っていこう。

「アフリカワイイ」アイテムが​浅草橋に

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東京・浅草橋で​5日間開催されていた​ポップアップショップ。

全国各地で​定期開催される​同イベントには、​アフリカの​テキスタイルに​魅せられた​梅田洋品店の​ファンが​訪れると​いう。

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テキスタイルの​絶妙な​組み合わせが、​身に​つける​人を​笑顔に​する​「アフリカワイイ」アイテムを​生み出す。

梅田さんは​毎年​アフリカに​自ら足を​運び、​自身の​目で​見て​気に​入った​布だけを​買い付ける。​これまで​買い付けに​訪れた​国は、​10ヵ国以上にのぼる​そうだ。

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▲人気商品の​「パッチワークスカート」。

伸縮性が​少ない​綿100%の​生地の​ため、​動きづらくならないよう、​ギャザーを​入れるなどの​工夫を​している。​また、​一人​ひとりに​合った​服を​提供する​ために、​セミオーダー制も​取り入れるなど、​お客様に​寄り​添った​商品を​提供する。

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服にとどまらず、​バッグや​その他の​小物類も​数々手がける。​
そんな​梅田さんが​自分の​店を​開きたいと​思ったきっかけは、​幼少期に​ある。

アフリカの​伝統的な​一枚布​「カンガ」に​魅せられて

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梅田さんが​幼少期に​影響を​受けたのは、​母親の​存在。

趣味で​洋裁を​しており、​梅田さんは​母親が​仕立てる​服を​普段から​着ていたのだそう。​
梅田さんは​当時を​振り​返り、​こう​語る。

「母が​自分の​ために​服を​作って​着せてくれるのが​嬉しかったんですよ。​周りからも​『おしゃれだね』って​褒められていました。​『素敵な​洋服を​作って、​自分の​お店を​開くんだ!』と、​幼いながらに​勝手に​決めていたんです​(笑)。」

梅田さんは​高校卒業後、​会社勤めを​しながら夜間に​洋裁学校に​通い、​夢へと​一歩近づく​「婦人子供服製造技能士」の​資格を​手に​入れた。

資格を​活かして​仕事が​したい。​
そう​思っていた​矢先、​転機が​訪れた。​アフリカで​「洋裁と​経理が​できる​人」を​募集する​ボランティアを​見つけたのだ。​経理の​経験も​あった​梅田さんは、​迷う​ことなく​応募。​見事に​合格した。​派遣先の​ジンバブエでの​経験が、​子供時代の​思いを​より​リアルな​ものに​したと、​梅田さんは​語る。

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▲カンガで​作られた​一番​人気商品の​バルーンスカート。​スワヒリ語で​書かれた​メッセージを​活かした​デザインだ。

「『カンガ』と​いう、​現地の​女性が​巻く​伝統的な​布に​衝撃を​受けたんです。​生き​生きと​した​色づかいと​いい、​模様と​いい、​スワヒリ語で​書かれた​格言などの​メッセージと​いい、​『なんて​面白い布なんだろう!』って。​こんな​布、​日本中の​どこを​探しても​ありませんよね。​カンガを​使って​服を​作りたい、​作るんだと​その​時強く​思いました。​」

2年間の​ボランティアを​経て​帰国した​梅田さんは、​早速カンガの​デザインを​活かしたバルーンスカートを​作り、​オンラインショップを​オープンした。​2004年の​ことだった。

「自分が​身に​つけたい​ものを​作る」スタイルで​突き​進んだ​13年

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梅田さんの​商いの​スタイルは、​オンラインショップの​オープン当初から​一貫して​「自分が​身に​つけたい​ものを​作る!」だ。

「布も​自分が​かわいいと​思った​ものを​選ぶし、​アイテムも​自分が​身に​つけたい​ものを​作っているから、​本当に​好きな​ことを​楽しんで​やってる​感じです。​アイデアは​次から​次へと​沸いてくるんですけど、​何せひとりで​やっているので、​製作が​追い​付かないんですよ。​やりたい​ことは​もっと​たくさん​あるのに……​(笑)。」

も​どかしそうに​語る​梅田さんだが、​その表情は​非常に​生き生きと​している。​
​「自分の​好きなように」と​いう​スタイルで​始まった​梅田洋品店は、​着実に​人々の​心を​掴んでいった。

「インターネットの​普及に​合わせて、​自分でも​ネット販売を​やってみようと​思っては​じめてみました。​当時の​お客さんとは、​今でも​仲良くさせていただ​いています。​」

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▲西アフリカの​特徴的な布。​「〇〇柄」と​いう​名前が​付いた​ものが​何種類も​ある。​写真は​「スプレー柄」と​呼ばれる布。

イベントにも​精力的に​出店し、​交流を​広げていった。​
お客様から​「実際に​商品を​見てみたい」と​いう​声を​多く​もらうようになり、​2006年、​ついに​西荻窪に​実店舗を​オープン。

「やっと​夢が​叶いました。​お客さんの​ほとんどは​女性ですが、​家族を​連れてきてくれる​方も​多いです。​この​仕事を​して​初めて​気づいた​ことなのですが、​男性って、​奥さんが​派手な​格好を​するのを​嫌う​人が​比較的多い​みたいなんですよ。​けどうちに​来る​人は、​奥さんの​様子を​楽しそうに​見ている​旦那さんばかりなので、​とっても​嬉しいです。​」

梅田洋品店は​順調に​評判を​上げ、​遠方から​店に​訪れる​ファンも​増えていった。​「遠くから​来る​人に​とっても​アクセスが​いい​場所に​店を​移そう」。​そう​考えた​梅田さんは、​2012年に​店舗を​南青山に​移転。

オープンから​現在に​至るまでの​約13年間、​お客様の​数は​増え続けている。​
まさに​順風満帆の​歩みと​いえるだろう。

お客様の​積み重なった​“深い​体​験”が、​新たな​ファンを​呼び込む

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これだけ​順調に​ファンを​増やしているのだから、​さぞ綿密な​戦略を​立てているに​違いない。​そう​思う​方も​多いだろう。​しかし、​実際には​マーケティング戦略は​立てていないと​いう。

「販売目標は​ありますけど、​そこまで​高い​目標を​掲げているわけではないし……。​なんで​ここまで​来れたんでしょうね、​運が​いいから?​(笑)」

決して​謙遜しているわけではなく、​心から​そう​感じている​様子だ。​しかし、​一呼吸し、​数秒の​沈黙が​流れた​後、​梅田さんは​こう続けた。

「お客さん​みんなが​言ってくれるんですけど、​私が​作った​服を​着ていると、​人から​褒められる​みたいなんです。​『とっても​素敵な​服を​着てるね。​』って。​『梅田洋品店って​いう​お店で​買ったの。​アフリカの​布を​使っていて、​オーナーさんが​買い付けから​縫製まで​やってるんだよ。​』と​返すと、​『面白いね!​私も​行ってみようかな。​』って​言われるんですって。​すごく​嬉しいんですよね。​」

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何気なく​放たれた​一言。​
ここに、​梅田洋品店が​上手く​経営を​成り​立たせている​理由が​垣間​見えた。​
​その理由とは、​アイテムを​購入するまでに​積み重なった​“深い​体験”だ。

アイテムに​惹かれて​来店する​人は、​梅田さんとの​コミュニケーションを​通じて、​そのアイテムが​アフリカの​布から​作られている​ことや、​布に​スワヒリ語で​格言が​書かれている​こと、​布の​買い付けから​縫製まですべて​梅田さんが​直接関わっている​ことなどの​エピソードを​知り、​より​一層興味を​持つようになる。

その場で​アイテムを​購入しなくても、​帰った​後に​Webサイトや​SNSを​チェックし、​再び来店しようと​思うかもしれない。​こうした​一つ​ひとつの​体験の​積み重ねに​よって、​アイテムへの​思い​入れが​高まり、​身に​つけた​ときには、​自分が​体験した​濃いストーリーを​つい​誰かに​語りたくなってしまうのだ。

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梅田さんの​気さくな​人間性も、​店を​訪れる​人の​体験を​深める​大きな​要因だろう。​北は​北海道から​南は​沖縄まで、​遠方​遥々店に​訪れる​人も​いる​ことからも、​その​ことが​伺える。

また、​店内では​もちろん、​インターネットで​定期的に​発信するなど、​あらゆる​場所で​“顔を​出す”ことは、​お客様との​心の​距離を​縮めて​体験を​生むための​重要な​一歩に​なるだろう。

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こうして、​アイテムを​身に​つけた​お客様が、​これまで​体験してきた​アイテムに​まつわる​ストーリーを​誰かに​自然に​話し、​そのストーリーに​共感した​人が​店を​訪れると​いう​“意図せぬマーケティング”効果を​生み出しているのだ。

おば​あちゃんに​なっても、​この店を​続けたい

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現在、​梅田さんは​店を​完全予約制に​する​ことを​計画中だと​いう。

「この​お店を​長く​続けたいんです。​今まで​お客さんと​一緒に​大きくなってきたから、​これからも​ずっと。​おば​あちゃんに​なっても、​お客さんと笑​顔で​お話できたら​いいなあ。​そのためには、​元気で​いなきゃいけないですからね。​時間を​しっかり​確保して、​1つ​1つ​丁寧に​作っていきたいです。​」

最後に、​仕事を​していてどの​瞬間が​1番楽しいかと​聞くと、​こんな​答えが​返ってきた。

「ずっっっと​楽しい。​あのね、​私、​いつも​歌いながら、​踊りながら、​くるくる​回りながら仕事を​してるんです​(笑)。」

数字や​規模の​拡大を​追い​求めて​仕事に​打ち込む姿は、​もちろん素晴らしい。​
しかし、​それだけが​正解ではない。

ーー仕事を​している​ときは​ずっと​楽しい。​
ーーおば​あちゃんに​なっても​店を​続けたい。

梅田さんが​生きる​そんな​素敵な​人生は、​仕事に​疲弊した​大人に​新たな​選択肢を​教えてくれていのるかもしれない。

梅田洋品店
107-0062
東京都港区南青山6-1-6 パレス青山603B号室
03-6419-7668
営業日は​こちらを​ご確認ください。

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(つなぐ編集部)

写真:小堀将生