複数の事業者が協力して事業を行う際、報酬を分け合う方法の一つにレベニューシェアがあります。近年、さまざまな場で採用されていますが、発注者側と受注者側がお互いにその仕組みを正しく理解していないと、トラブルにつながる可能性もあるので注意が必要です。
本記事では、レベニューシェアについての基礎知識をはじめ、メリットやデメリット、契約時のポイントなどを解説。さらに、レベニューシェアが活用されている代表的な業種についても紹介します。
📝この記事のポイント
- レベニューシェアとは「収益分配型」の契約方式である
- 主に広告・IT・店舗運営・コンテンツ制作などの業種で採用されている
- 発注者・受注者の双方にメリット、デメリットがある
- 契約時には分配基準や責任の所在、解約条件などの明確化が重要
- Squareは売上データの可視化や分析、契約書作成まで一貫して対応可能
目次
- レベニューシェアとは
・レベニューシェアの定義
・プロフィットシェアとの違い
・レベニューシェアの仕組み - レベニューシェアが活用される主な業種
- レベニューシェアのメリット
・発注者側のメリット
・受注者側のメリット - レベニューシェアのデメリット
・発注者側のデメリット
・受注者側のデメリット - レベニューシェア契約を結ぶときのポイント
- レベニューシェア導入に役立つツール
・売上データの可視化ツール
・契約・支払い管理サービス - まとめ
レベニューシェアとは
ウェブサイト制作やシステム開発など、IT関係のビジネスで採用されることの多いレベニューシェア。言葉自体は聞いたことがあっても、実際にレベニューシェアによる事業を経験していない人にとっては、具体的なイメージがつかみにくいかもしれません。
レベニューシェアとはどういうものか、似たような報酬分配方法と何が違うのかなど、基本的な仕組みを紹介しましょう。

レベニューシェアの定義
レベニューシェアとは、一般的に「収益分配モデルの契約」と捉えられています。直訳すると「レベニュー」(revenue:収益)を「シェア」(sharing:分け合う)という意味であり、発注者と受注者の間で事業の収益を事前に定めた配分率で分配する、成果報酬型の契約方式です。
通常はあらかじめ「単価」を定めてから取引を行うのに対し、レベニューシェアでは得られた収益の「分配比率」を定めてから取引を開始する点が大きな特徴といえます。
プロフィットシェアとの違い
レベニューシェアと似た報酬分配方法に、プロフィットシェアというものがあります。直訳すると「プロフィット」(profit:利益)を「シェア」(sharing:分け合う)という意味であり、収益から経費を差し引いた「利益」を分配対象とする点がレベニューシェアとの違いです。
「収益」と「利益」は言葉が似ているため意味を混同しがちですが、「収益」を「売り上げ」という言葉に置き換えて考えると理解しやすいかもしれません。レベニューシェアの場合は利益の多寡にかかわらず、売上額に応じて受注者に報酬が支払われます。一方で、プロフィットシェアの場合は売り上げがあったとしても利益が出ない限り、報酬が発生することはありません。
レベニューシェアの仕組み
レベニューシェアの仕組みについて、ECサイト制作を例に具体的にイメージしてみましょう。
発注者は、商品を売るために自社のECサイトを作成しようと考えます。受注者は、レベニューシェアで受託し、無料もしくは安価でECサイトを制作します。また、その後の保守作業も請け負います。ECサイトで売り上げが出た場合、発注者はその収益の一部を定めておいた分配率に応じて受注者に支払います。これが、一般的なレベニューシェアの流れです。
レベニューシェアが活用される主な業種
レベニューシェアとの親和性が高い代表的な業種、業界として、以下のようなものが知られています。
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広告業界
アフィリエイト、ウェブ広告、SaaS、プラットフォームビジネスなどで採用。広告主にとっては実績に応じて広告費の支払いが発生するため、費用対効果を測りやすいのが特色。 -
IT業界
ウェブサイト制作、システム開発、サービス開発など、発展型の事業と好相性。 -
店舗運営/共同出店モデル
飲食業など、経営者と不動産オーナーが共同で店舗を運営する場合、フランチャイズ方式と比べて独自のアイデアやコンセプトを比較的自由に表現可能。 -
コンテンツ制作
ストリーミングプラットフォーム、レコードレーベル、出版社などが、ストリーミング回数やダウンロード数などに基づいて、クリエイターと収益を共有。
レベニューシェアのメリット
レベニューシェアを採用した場合、メリットとしてどういったことが見込めるでしょうか。発注者側、受注者側、それぞれの立場からみていきましょう。

発注者側のメリット
まず、レベニューシェアを採用した場合の発注者側のメリットとして、主に以下のようなことが挙げられます。
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初期費用が抑えられる
これまで新事業や新サービスを立ち上げる際には、発注者がある程度まとまった初期費用を負担することが一般的でした。レベニューシェアを採用した場合、発注者側がすべてを負担するのではなく、収益に応じて後から受注者に分配する成果報酬に開発コストを含めることができるため、初期費用を抑えて新たな取り組みを始めることが可能です。 -
リスクを分散できる
初期費用の一部、もしくは全部を受注者の負担としてスタートできるため、新事業が想定どおりに進まなかった場合に金銭的な負担を発注者が一方的に受けるリスクが低減します。 -
継続的なパートナーシップを築きやすい
発注者と受注者の双方が初期費用やリスクを負担して進めるモデルであることから、事業の成功に向けた協力関係を構築する意識が相互に高められる点も大きなメリットです。収益の分配比率をはじめ、費用負担比率、役割分担、共有資産の有無、意思決定プロセスなど、細かな点までを協議して契約を結ぶため、信頼感が育まれ、継続的なパートナーシップを築いていくことができます。
受注者側のメリット
レベニューシェアを採用した場合の受注者側のメリットは、主に以下のようなことが挙げられます。
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モチベーションを保ちやすい
納入物の良し悪しが将来的に得られる収益に直接つながるため、より良いものを作ろうというモチベーションが維持しやすくなります。 -
長期的な収入を得られる
事業が成功すれば、継続的に収入が得られる仕組みです。 -
追加業務のチャンスがある
レベニューシェアは、発注者にとって初期投資を抑えられることから依頼する際の障壁が低く、受注者は高い成約率が期待できます。さらに、点検やメンテナンス、システムのアップデートなど、納入物に付帯して将来的に発生する追加業務を受託しやすい点もメリットの一つです。
レベニューシェアのデメリット
レベニューシェアにはメリットだけではなく、デメリットも存在します。こちらも発注者、受注者それぞれの立場からみていきましょう。
発注者側のデメリット
レベニューシェアを採用した場合の発注者側のデメリットとして、主に以下の2点が挙げられます。
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収益が増えるとコストも増える
収益分配型モデルであるため、収益の増加に比例して受注者側へ支払う金銭コストも増加します。 -
意思決定に時間がかかる
事業の運営に際して、発注者側の一方的な意思決定ができない事象が発生する可能性もあります。その場合は受注者と協議して決めなければならないため、合意を得るのに時間を要することになるでしょう。
受注者側のデメリット
続いて、レベニューシェアを採用した場合の受注者側のデメリットですが、主に以下の2点が挙げられます。
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初期費用の回収に時間がかかる
受注者が一部、または全部を負担した初期費用は、将来得られる報酬のなかから回収することになりますが、収益額によって左右されるため、全額回収できるまでの見通しが立てづらく、時間もかかってしまいます。 -
事業失敗のリスクがある
予測どおりの成果が出なかった場合は、初期費用の大部分が受注者の持ち出しになってしまうため、買い切り型の契約よりも利益が少なくなる可能性があります。場合によっては、開発費用を回収できないこともあるので注意が必要です。
レベニューシェア契約を結ぶときのポイント
いざレベニューシェアによる契約を結ぶとなった場合、どのような点に注意すべきでしょうか。意識しておくべきポイントを三つ紹介します。

▶分配基準を明確にする
レベニューシェアの勘所ともいえるのが分配基準です。取り決める際、発注者、受注者それぞれがどういった役割を担当するか、どちらがどの点で責任を負うかなども明らかにして契約書を作成します。
具体的に考えられる契約の項目としては、以下のようなものが挙げられます。
- 分配の割合
- 分配の対象
- 分配金支払いの対象期間
- 消費税を含むか、含まないか
- 著作権の取り扱い
- システムの運用者、保守管理者
- ユーザーからの問い合わせ窓口
- セキュリティー事故発生時の対応
- 想定外の事案発生時の対応
特に分配の割合を決める際は、試算表などを使って収益シミュレーションを実施し、双方にとってプラスとなる数値にできるよう熟慮しましょう。
▶会計報告やレポートのルールを取り決める
分配のベースとなる収益についての認識を共有することも重要なポイントです。透明性の高さが担保できる手段を用いながら、会計報告やレポートのルールを策定してください。
▶解約条件・期間・成果目標を設定する
スタート時に取り決めた契約をそのまま無期限で運用するのはレベニューシェアの持ち味を生かし切っているとはいえず、発注者、受注者、双方にとって得策ではありません。
事業を進める前に契約期間だけでなく、契約内容の見直しを図るタイミングを定期的に設けておくことが重要です。また、どういった場合には解約とするか、その条件などもあらかじめ決めておくと、安心して事業が進められるでしょう。
レベニューシェア導入に役立つツール
レベニューシェアの導入にあたっては、インターネットを使ったツールを用いるケースが一般的です。
売上データの可視化ツール
売上データの可視化ツールを利用すれば、収益分配のベースとなる売り上げを受注者、発注者の双方が共有できます。たとえば、小売店や飲食店などの店舗ビジネスにおけるレベニューシェアの場合、Squareを導入すれば、Square データのレポート機能で簡単に売上情報の共有が可能。細かな数値データもSquare上でチェックできます。

契約・支払い管理サービス
契約書の作成や締結はSquare 契約書を使用するのが簡単です。Square データから直接契約書を作成して送信できます。契約書の作成には、用意してあるテンプレートに事業固有の情報や条項を追加するだけ。
受取先にはSquare 契約書からのメールが届き、メールを開くと電子署名を求めるメッセージが表示されます。シンプルな手順で電子署名ができる仕組みです。
Square導入のご相談は営業チームに
Squareサービスの導入を検討中のお客さまに、営業チームが導入から利用開始までサポートします。イベントでの利用や、複数店舗での一括導入など、お気軽にご相談ください。
まとめ
近年注目を集めているレベニューシェアは、発注者と受注者の間で事業の「収益」(売り上げ)を事前に定めた配分率で分配する成果報酬型の契約方式です。似たような報酬分配方法であるプロフィットシェアは、収益から経費を差し引いた「利益」を分配するものであり、対象となるベースが異なります。
レベニューシェアを採用した場合、発注者側には「初期費用が抑えられる」「リスクを分散できる」「継続的なパートナーシップを築きやすい」といったメリットが、受注者側には「モチベーションを保ちやすい」「長期的な収入を得られる」「追加業務のチャンスがある」といったメリットが見込めます。その一方でデメリットもあり、発注者側には「収益が増えるとコストも増える」「意思決定に時間がかかる」という心配が、受注者側には「初期費用の回収に時間がかかる」「事業失敗のリスクがある」という懸念が生じます。
レベニューシェア契約を締結する際には「分配基準を明確にする」「会計報告やレポートのルールを取り決める」「解約条件・期間・成果目標を設定する」ことが重要なポイントです。また、レベニューシェアの導入にあたっては、Squareをはじめとする売上データの可視化ツールや契約・支払い管理サービスを利用するのが便利でしょう。
新たな事業やサービスの導入でレベニューシェアを採用する際には、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2019年8月20日時点の情報を参照しています。2025年8月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

