お客様の行動を基本データとするアソシエーション分析は、お客様が本当に求めるモノやサービスについての答えやヒントを探る理想的な方法といえます。実店舗でもECサイトでも、アソシエーション分析を取り入れることで、商品の売れ行きや併売品といった情報をマーケティング戦略に効果的に反映することができます。アソシエーション分析とは何か、スモールビジネスにおける実践方法やアソシエーション分析が役立つ状況などを解説します。
アソシエーション分析は「データの関連性」に注目する
アソシエーション分析は、アソシエーションという言葉が「合同、関連、共同、提携」などを示す通り、複数のデータ間の関わりの強さ・弱さを導き出すデータ分析手法の一種です。ただ一つのデータの多い・少ないではなく、あくまでデータ同士の関連性に注目し、その相関関係をマーケティングに戦略に反映させることで販売の強化、認知度のアップなどに役立てることができます。
マーケティングにおけるアソシエーション分析の例の一つとして、バスケット分析があります。バスケット分析は、買い物客がレジに持っていった買い物かごを一単位として分析することで、併売商品(同時に売れた商品)の傾向を知るというものです。バスケット分析により併売傾向の強い商品を近くに陳列する、同時にセールを行うなどのマーケティング活動を実施し、クロスセル(併売)やアップセル(より高額な商品の購入)による売り上げや客単価の向上を目指します。
このようにアソシエーション分析では、「商品Aと商品Bを一緒に買う人が多い」「Cの状況下では商品DとカテゴリーEの商品が同時に売れる」といった相関関係を見出すことができます。アソシエーション分析で見出される相関関係は、アソシエーション・ルールと呼ばれます。店舗やサイトごと、あるいは業種や業態により異なるアソシエーション・ルールの発見はマーケティング効率の向上に欠かせないものです。
どんな時にアソシエーション分析を導入すべきか?
マーケティングデータの代表的な分析手法ともいえるアソシエーション分析は、小売店や飲食店など実店舗のビジネスの他、オンラインのビジネスでも活用され、事業規模の大小に関係なく導入できます。以下のようなシチュエーションに当てはまる場合、アソシエーション分析の導入によって状況を改善できる可能性があります。
・陳列棚の配置変更で売り上げの改善を図りたい
・セール品のラインアップを売り上げに効果的な組み合わせにしたい
・カタログ、メニュー、ウェブサイトを効果的なレイアウトにしたい
・お勧めメニューの併売を促進し売り上げを伸ばしたい
・検索キーワードの組み合わせを調べ、ウェブサイトの訪問者数を増やしたい
・ECサイトでクロスセルを増やしたい
さらに、アソシエーション分析の対象となるデータは商品やサービスそのものだけでなく、天候や季節、競合店の状況(セール、販促、出店、休業など)、トレンドといった外的要素も含まれます。
たとえば雨が降っている時に、コンビニエンスストアやドラッグストアで傘の販売が伸びるのはよく知られています。そこで、「傘」という商品の売れ行きと「雨の日」という条件が重なる場合にどんな併売品があるか、といったことをアソシエーション分析で見出せば、週間予報や長期予報をチェックして併売品の仕入れを強化する、雨の日には併売品の陳列を変えるといったマーケティング施策が考えられます。
アソシエーション分析の評価指標とは
アソシエーション分析を導入するに際し、注意点として、アソシエーション・ルールの設定に影響するデータの相関関係の強さを確認する必要があります。
これは、もしスーパーマーケットでペットボトル入り飲料とパンが同時に売れていたからといって、かならずしもこの二つのカテゴリーの商品が特別な相関関係にあるとは言い切れない、ということです。スーパーマーケットではペットボトル入り飲料もパンもポピュラーな商品であり、購買層が広く、日常的に消費されています。このように誰でもいつでも購入する可能性のある商品がアソシエーション分析の結果に組み込まれてしまうと、適切な法則性を見出すことが難しくなります。
本当に相関の強い商品の組み合わせを知るために役立つのが「評価指標」という考え方です。評価指標は、アソシエーション分析のために抽出されたデータのうち、評価の対象とすべきデータを選ぶための基準となり、支持度、確信度、リフト値という三つの主たる指標があります。
アソシエーション分析の評価指標1:「支持度」
「全体の顧客の中で、商品Aと商品Bを同時に買った」というデータが出現する確率を、支持度といいます。全顧客の全ての購買行動を対象に支持度を導き出し、支持度が高いほど、つまりAとBを同時購入する人が多いほど、その商品の組み合わせは効果的なマーケティング施策の対象となる可能性があります。
支持度=AとBの併売顧客数 ÷ 全顧客数
アソシエーション分析の評価指標2:「信頼度(確信度)」
支持度だけではわからないのが、Aの購入者全体にとってBがどれほど魅力ある商品か、ということです。そこで、「商品Aを購入した全ての人の中で、AとBを両方買った人の割合」を示す信頼度(確信度)を計算することで、AとBという二つの商品の相関関係の強さが明らかになります。Aの購入者100人のうち90人がBも同時購入していれば、Aの購入者にとってBは魅力的な商品ということがわかり、この信頼度が高いほど、二つの商品が一緒に売れるという確信が強まります。
信頼度(確信度)=AとBの併売顧客数 ÷ Aの購入者数
アソシエーション分析の評価指標3:「リフト値」
リフト値とは、AとBの併売顧客数とB購入者数の割合です。リフト値を出すことで、Bが偶然人気の高い商品だったのか、それともAとBのセット購入の人気が高かったのかがわかります。リフト値が低い場合は、Bそのものの人気があり、たまたまAと一緒に売れていたという可能性が高いため、両商品の組み合わせがマーケティング効果を生むとは考えにくくなります。
リフト値=信頼度(確信度)÷ B単体の購入者の割合(全顧客数のうちのB購入者の割合)
このように評価指標をしっかり検討することで、誤ったアソシエーション・ルールを導き出すことなくアソシエーション分析の結果を的確にビジネスに生かすことが可能になります。
アソシエーション分析をスモールビジネスに導入する方法
アソシエーション分析をビジネスに導入する場合、まずはPOSなどから収集したデータをExcelなどに入力し、手動で分析するという方法が考えられます。たとえば簡単な方法として、以下のようなデータ形式を用意し入力していくことで、分析可能なデータベースが出来上がります。
ただし、商品項目数や購買件数が多い場合にはデータそのものが重くなってしまうという難点があり、マーケティング担当者がExcelに向き合って地道に行うアソシエーション分析は対象となるデータ数が少ない場合に有効といえるでしょう。
この他、マーケティングをより効率化するためのアソシエーション分析ツールを有料で活用することもできます。ツールの活用には、以下のようなメリットがあります。
・ECサイト向けなど業態特化型のツールがある
・専門的な知識がなくても利用できる
・オンラインプラットフォームのツールならデータの重さに悩まされない
・専門家による分析レポートやアドバイスがもらえるものもある
最近はスモールビジネスや個人事業者向けの手頃なアソシエーション分析ツールも登場しており、マーケティング担当者の貴重な時間をExcelのデータ処理に当てるよりはるかに高いコスト効率で導入が可能です。
良い商品やサービスをお客様に広く知ってもらい、使ってもらうために、アソシエーション分析を効果的に活用してみてはいかがでしょうか。
執筆は2019年8月26日時点の情報を参照しています。
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