治療後も使える!?アフターケア制度とは

労災保険の制度のひとつに「アフターケア制度」があります。仕事中に負ってしまったケガや病気が治った後も、再発や後遺障害に伴う新たな病気の発症を防ぐため、一定の要件に当てはまる場合には必要に応じて診察や検査などが無料で受けられる制度です。

身体的な不安の軽減だけでなく、精神的な悩みの解消にも役立てられ、労災にあった従業員の社会復帰をサポートする大切な仕組みです。

今回は、アフターケア制度がどのようなものかを紹介します。

目次



アフターケア制度の概要

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アフターケア制度とは、仕事によってケガや病気をした人が、そのケガや病気の治療が終わった後も、再発や後遺障害に伴う新たな病気の発症を防いで円滑な社会生活を営むために、労災医療として診察や保健指導、検査といったアフターケアを受けることができる制度です。

労災保険の一制度であるため、アフターケアを受診できる施設は労災保険指定医療機関に限られており、対象となるケガや病気、ならびに対象者の両方について、定められた条件を満たす必要があります。

参考:「アフターケア制度」のご案内(厚生労働省)

対象となるケガや病気

アフターケア制度の対象となるケガや病気としては、以下の20種類が指定されています。

  • せき髄損傷
  • 頭頸部外傷症候群等(頭頸部外傷症候群、頸肩腕障害、腰痛)
  • 尿路系障害
  • 慢性肝炎
  • 白内障等の眼疾患
  • 振動障害
  • 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折
  • 人工関節・人工骨頭置換
  • 慢性化膿性骨髄炎
  • 虚血性心疾患等
  • 尿路系腫瘍
  • 脳の器質性障害
  • 外傷による末梢神経損傷
  • 熱傷
  • サリン中毒
  • 精神障害
  • 循環器障害
  • 呼吸機能障害
  • 消化器障害
  • 炭鉱災害による一酸化炭素中毒

アフターケア制度の対象者

アフターケア制度の対象者は、対象となるケガや病気ごとに障害等級などを基準としています。ただし、医師が必要だと認めた場合は、障害等級の条件を満たしていなくても対象となる場合があります。

たとえば「せき髄損傷に関わるアフターケア」の場合、『アフターケア制度』のご案内(厚生労働省)によると、対象者は以下のように規定されています。

・ 業務災害又は通勤災害によるせき髄損傷者であって、労災保険法による障害等級第3級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
・ 障害等級第4級以下の障害(補償)給付を受けている方であっても、医学的に特に必要と認められる方

また、アフターケアの措置範囲についても、対象となるケガや病気ごとに内容や頻度などが細かく規定されています。

アフターケア制度を受ける際の手続き

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従業員がアフターケア制度を受けることになった場合、どのような手続きを取る必要があるのでしょうか。

申請と健康管理手帳の交付

アフターケア制度を受けるためには、まず、所属事業場を管轄する都道府県の労働局に申請を行い、審査を受ける必要があります。申請は治療が終わった翌日から可能ですが、いつでも申請できるいくつかの傷病を除き、対象となるケガや病気ごとに、治った日の翌日から起算して2年間または3年間の申請期限が設けられているので注意が必要です。

審査が通ると「健康管理手帳」が交付され、労災保険指定医療機関において診察、保健指導、処置、検査など、定めた範囲内で無料のアフターケアを受けることが可能になります。審査が通らずに健康管理手帳が交付されなかった場合は、改めて厚生労働大臣に対して審査請求をすることができます。

受診

受診の際には、その都度、労災保険指定医療機関の窓口で健康管理手帳を提示し、受診結果を記入してもらう必要があります。健康管理手帳の提示がない場合は、受診することができません。

健康管理手帳の期限

健康管理手帳には、有効期限が設けられています。新規の場合は、対象となるケガや病気ごとに2年間または3年間となっており、一部の傷病を除いて更新することも可能です。

更新を希望する場合には、有効期限の1ヶ月前までに手続きを行う必要があります。手続きの際には医師の診断書の提出を求められるものもあるので、あらかじめ確認しておくと安心です。

更新手続きを行うと、新規で申請したときと同様に労働局による審査があります。審査の結果、新しい手帳が不交付となった場合には、厚生労働大臣に対して審査請求をすることできます。

更新後の手帳の有効期限は、ケガや病気ごとにそれぞ異なるので注意してください。

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通院費

アフターケアに要する経済的負担を軽減するために、通院費の支給を受けられる場合があります。下記の要件のいずれかに当てはまる場合が適用の対象となります。

1. 自宅または勤務先から、鉄道、バス、自家用車などを利用して片道2キロメートル以上、4キロメートル以内にある病院のうち、アフターケアを受けることができる病院へ通院するとき

2. 片道2キロメートル未満であっても、ケガや病気の状態から鉄道、バス、自家用車などを利用しなければ通院することができないとき

3. 自宅または勤務先から、おおよそ4キロメートル以内にアフターケアを受けることができる病院がないため、4キロメートルを超える最寄りのアフターケアを受けることができる病院へ通院するとき

通院費の支給を受ける場合には、アフターケア通院費支給申請書と併せて領収書などの通院費の額を証明する書類の提出も求められるので、忘れずに入手しておく必要があります。

医師が労災によるケガや病気が治癒したと判断するケースには、これ以上治療を続けても良くなる見込みがないという状態、いわゆる症状固定になった場合も含まれます。なかには重い障害が残り、心身共に大きなストレスを背負ってしまう場合もあるかもしれません。アフターケア制度を利用することによって、後遺障害とともに精神的な負担を軽減する効果も期待できるので、もし従業員が条件にあてはまるような労災を負ってしまった場合には、利用することを勧めてみてはいかがでしょうか。

また、仕事によって負ってしまったケガや病気の残存障害が一定の障害等級に当てはまるようであれば、労災保険における障害補償年金の支給が受けられる場合もあります。アフターケア制度の利用と合わせて検討してもよいでしょう。

参考:障害(補償)給付の請求手続(厚生労働省)

仕事によるケガや病気が治癒した後でも、労災保険によるサポートが用意されているということを社内に周知し、従業員が安心して働ける環境づくりを進めてみてはいかがでしょうか。

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執筆は2018年7月5日時点の情報を参照しています。
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