経営者として知っておきたい、不正競争防止法とは

他社の意匠を模倣したり、顧客情報などを盗んだりするなど、不正な手段で競合との競争に勝とうとする行為は不正競争防止法によって禁止されています。

今回は、経営者として知っておくべき不正競争防止法のポイントを紹介します。

不正競争防止法とは

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不正競争防止法の目的は、その第1条で次のように書かれています。

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

自由競争をベースに経済を健全に発展させていくためには、公正な競争を促進し、不正な競争を防ぐための国際的な約束を守る必要があります。不正競争防止法は、そのために保護する対象をはっきりとさせ、不正となる行為の要件を定め、違反した場合の措置などを定めたものです。

参考:不正競争防止法の概要(テキスト2018 ver.2)(経済産業省)

不正競争防止法の沿革

不正競争防止法は、1934年に工業所有権の保護に関するパリ条約(ヘーグ改正条約)の批准に際して、条約上の義務を満たすために制定されました。その後、主に同条約や商標登録に関するマドリッド協定の改正に対応するために何度かの改正を行なったのち、社会の変化に応じてさまざまな改正を重ねてきました。

最近の大きな改正の例としては、2015年における「営業秘密侵害行為に対する抑止力の向上」と「営業秘密侵害罪の処罰範囲の整備」が挙げられます。海外のサーバーに保存されている機密情報を海外で不正に取得した場合、改正前は処罰の対象になるかどうか不明でしたが、改正により処罰の範囲が拡大されました。情報の取得・使用・開示の未遂も処罰の対象になるなど、情報化社会に合わせてさまざまな点が改正されています。

参考:平成27年不正競争防止法の改正概要 (営業秘密の保護強化)

不正競争となる例

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不正競争防止法は、文字どおり不正な手段による競争を防止するための法律です。では、どのような行為が不正な手段に該当するのでしょうか。経済産業省による「不正競争防止法の概要(テキスト2018 ver.2)」で類型化されている形式で紹介します。

不正競争の9類型

1, 周知表示混同惹起行為
「他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為」を指します。

他者が登録している商標の表示や特徴的な店舗の看板の模倣などが例として挙げられます。

2, 著名表示冒用行為
「他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為」を指します。

認知度の高い商品やブランド名を利用し、顧客吸引力の不当な利用(ただ乗り、フリーライド)やブランドイメージの希釈化(ダイリューション)、ブランドイメージの汚染(ポリューション)などを行なう行為です。有名ファッションブランドや企業の名前、ロゴマークの利用が例として挙げられます。

3, 形態模倣商品の提供行為
「他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為」を指します。

先行で販売されている特徴的な形態の他者の商品を模倣した商品の販売などが例として挙げられます。

4, 営業秘密の侵害
「窃取等の不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為等」を指します。

ここでいう「営業秘密」とは、「秘密として管理されていること(秘密管理性)」「有用な営業上または技術上の情報であること(有用性)」「公然と知られていないこと(非公知性)」の3点が要件となります。顧客名簿、対応マニュアルといった営業情報や、製造方法、設計図といった技術情報などの不正取得や不正開示が例として挙げられます。

5, 技術的制限手段無効化装置等提供行為
「技術的制限手段により視聴等が制限されているコンテンツ等の視聴等を可能にする一定の装置、プログラム、指令符号や役務を提供する行為」のことを指します。

違法コピーソフトの起動を可能にするプログラムの提供や、認証が必要なソフトに対して認証を回避するプログラムの販売などが例として挙げられます。

6, ドメイン名の不正取得等の行為
「図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメイン名を使用する行為」を指します。

他者の社名や商品名と同一、または類似するドメインを取得して不当に高額な値段で転売したり、そのドメインを使って相手に損害を加えるウェブサイトを開設したりする行為が例として挙げられます。

7, 誤認惹起行為
「商品、役務又はその広告等に、その原産地、品質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為」のことを指します。

商品に関係のない地域名を冠した食品の販売や、品質を誤認させる表記をした商品やサービスの提供などが例として挙げられます。

8, 信用毀損行為
「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を指します。

競合他社の商品やサービスが法に抵触しているなど、虚偽の事実を流布する行為などが例として挙げられます。

9, 代理人等の商標冒用行為
「パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為」を指します。

輸入代理店などが、本国にある企業からの承諾を得ずに勝手にその商標を使って営業活動を行なうことや、契約が失効しているにもかかわらず代理店としての営業行為を行なっている場合などが例として挙げられます。

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不正競争行為に対する救済措置

不正競争防止法では、不正競争行為に対して、民事手続きによる救済として次のような措置を可能としています。

差止請求
営業上の利益を侵害する者に対してその行為を停止したり、侵害する恐れのある者に対してその予防を請求したりすることができます。同時に、侵害をもたらしたものの廃棄や、侵害をもたらす行為に使った設備の除却なども請求することが可能です。

損害賠償請求
営業上の利益を侵害する者に対して損害賠償を請求できます。損害額についての立証は困難なため、不正競争防止法の第5条において算定規定が設けられています。

不当利益返還請求
不正競争行為によって営業上の利益が侵害された場合には、侵害した者に対して不当利益の返還請求を行なうことができます。

信用回復措置請求
不正競争行為によって営業上の信用が害された場合には、侵害した者に対して謝罪広告を出稿させたり、取引関係者へ謝罪文を送付させたりするなどの信用回復に必要な措置を請求することができます。

参考:不正競争防止法違反被害への救済(経済産業省)

知的財産法との関係

不正競争防止法は、民法、刑法、刑事訴訟法、独占禁止法など、さまざまな法律と関わる内容を含んでいます。なかでも意識しておくべきは、特許法、実用新案法、意匠法、著作権法などのいわゆる知的財産法と適用範囲が被る場合です。

ある企業が商標を登録し、その商標を使って営業を始めたところ、別の企業が既に使用、周知されている商標に類似していたとして、不正競争防止法によって商標使用の差し止めを受けたという事例が過去にあります。商標や意匠を登録していたとしても、それが不正な手段で競争に利用されていると判断されれば、権利侵害となる場合もあるので注意が必要です。

不正競争防止法に関わる不安が発生した場合は、弁護士などの専門家に相談するのが解決への近道です。

また経済産業省では、さまざまな資料のほか、専門のウェブサイトや相談窓口を用意しています。

参考:不正競争防止法(経済産業省)

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執筆は2019年5月6日時点の情報を参照しています。
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