【商いのコト】正解のない問いを追求するプロフェッショナル ー 犬と猫の皮膚科

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 31 犬と猫の皮膚科 村山信雄さん

どの道においても、“プロフェッショナル”と呼ばれる人は存在する。

野球界で活躍するイチローは、野球ファンにとどまらず、多くの人に影響を与えている。一体何が人の心を揺さぶるのか。それは、仕事に対するプロフェッショナルな姿勢だ。「毎日コツコツ努力する」「準備を誰よりも徹底する」など、どんな仕事にも共通する姿勢を体現する人から、学ぶものは多い。

今回は、動物医療の現場におけるプロフェッショナルを紹介する。「犬と猫の皮膚科」の代表・村山信雄さんだ。村山さんは、現在日本に6人しか存在しない「アジア獣医皮膚科専門医」の資格取得者。

業界の先端を行く獣医皮膚科のプロフェッショナルは、仕事に対してどのような姿勢で臨んでいるのだろうか。

前編では、村山さんが獣医を志したきっかけと、日頃診療をするときに心がけているポイントについて伺った。

後編はこちら

愛犬との日常が突如失われた少年時代

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村山さんが獣医を目指すことになったきっかけは、少年時代の経験に遡る。

当時村山さんは自宅で犬を飼っていた。厳格な村山家には、犬を飼う条件として「毎日自分達で犬の散歩をする」という決まりがあった。朝は村山さん、夕方は弟と、散歩は分担して行った。365日、毎朝5時に起きて1日の始まりを共に迎える。いつも一緒だった。

そんな日々が、突如終わりを告げる。村山さんが中学校1年生の時、5歳という短命で愛犬はこの世を去ったのだ。病気だった。

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「毎日一緒にいるのが当たり前だった僕にとって、ショックな出来事でした。『病気の犬を救えるようになりたい。』そう思って獣医を目指すことにしたんです。でもまあ、獣医を目指す人はだいたいみんな同じ理由だと思いますよ。」

淡々と語る村山さん。感情を抑えつつも、一言一言を噛みしめながら当時を振り返る姿が印象的だった。村山さんは獣医になりたいという思いを胸に、帯広畜産大学へ進学。卒業後、晴れて獣医となり、馬や牛、鳥、犬、猫とさまざまな動物の診療を経験した。

多岐にわたる診療に携わる中で村山さんが魅力を感じたのは、皮膚科だった。皮膚科は、“治る or 治らない“の二者択一ではなく、“どのように病気と付き合っていくか”という、正解のない問いを追究する分野。村山さんは2010年8月に、アジア獣医皮膚科専門医協会が皮膚科のスペシャリストと認めた証である、「アジア獣医皮膚科専門医」を取得した。(日本でこの認定を受けた獣医は、未だに6人しかいない。)清澄白河に、現在のクリニックを開院したのは、2016年3月のことである。

人から話を引き出すためには沈黙を恐れない

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▲Webサイトも建物の内装も同じデザイン事務所に頼み、統一感が出るようにしたのだそう

「犬と猫の皮膚科」は完全紹介制の専門病院。
かかりつけの動物病院から紹介された犬や猫が、診療を受けにやって来る。初診は1時間、再診は30分と時間が決められているのも特徴だ。

「総合病院と違って、うちはアットホーム。今は医師が僕だけなので、診療中は院内が1組の飼い主さんと犬猫のためだけの空間になっているんです。」

村山さんが診療をするときに1番心がけているのは、飼い主の話をとにかくしっかりと聞くことだという。

「飼い主さんに質問をすると、たまに沈黙が流れることがあります。最初は辛いんですけど、自分から沈黙を破ってしまっては絶対にダメ。飼い主さんが何を言いたいのか、分からないままになってしまうから。話してくれるまで、じっと待つんです。」

この心がけは、村山さんがこれまでのキャリアの中で培った経験によって導き出されたものだ。

「飼い主さんが何を思っているかって、本人の口から聞くまでは分からないものだと僕は思うんです。良かれと思ってしたことが、飼い主さんの求めるものと全然違ったみたいなこともしょっちゅうありますから。いかに飼い主さんから多くのことを引き出せるか、がカギなのではないでしょうか。」

村山さんは、飼い主が話しやすい空気感を作るために、話すスピードや言葉遣いを時と場合によって使い分けるという。ただ丁寧に話すだけでなく、時折フランクな言葉で飼い主の懐に入り込む。単なる医療技術だけでなく、飼い主との適切なコミュニケーションも医療現場において重要なスキルなのだ。

後編はこちら

犬と猫の皮膚科
135-0023
東京都江東区平野2丁目11-14 TANDEM平野ビル1F

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(つなぐ編集部)
写真:小堀将生

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