※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、いわゆる特定電子メール法について知っていますか。 迷惑メールの送信を規制する法律で、「受信者の同意を得ずにメールマガジンの配信をした」などのケースが起こった場合、送信した事業者や個人に罰金や懲役が課せられる可能性もあり、「知らなかった」では済まされない事態も起こりかねません。この記事では、特定電子メール法とはどのような法律なのか、違反しないためのポイントや罰則について解説します。
目次
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)とは?
・特定電子メール法成立の背景 - 法改正による罰則の強化
・1. 受信者の同意がなければ、基本的にメールの送信はNG
・2. 罰則の強化
・3.海外との連携を強化 - 対象となる「特定電子メール」とは?
- 特定電子メール法に違反するケース
・メール受信者の同意を取っていない
・メール受信の同意記録を取っていない
・メールの配信を停止する機能を設置していない
・送信者などの表示義務を満たしていない - 違反した場合の罰則は?
・送信者情報を偽って送信した場合
・同意の記録義務に違反した場合
・その他の違反 - 特定電子メール法に違反しないためには?
・メールの受信の同意を得る
・メールの受信拒否が簡単にできるようにする
・表示義務を果たす - 送信者の表示義務について
- 特定商取引法でも電子メール広告の送信は制限されている
- これからネットショップを作るなら、Squareで!
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)とは?
特定電子メール法は迷惑メールの送信を規制する法律で、2002年に施行されました。迷惑メールの被害を減らし、良好なインターネット環境を保つことを目的としています。短時間のうちに無差別かつ大量に、広告や宣伝を目的とする迷惑メールやチェーンメールを送る業者や個人に対して罰則を課すことができるようになりました。
特定電子メール法成立の背景
1999年頃、日本では携帯電話でもインターネットに接続できるようになり、広告・宣伝の内容を含む、いわゆる迷惑メールが携帯電話利用者に送りつけられてくるようになりました。2002年には、携帯電話を含むインターネットの人口普及率が5割を超えます。迷惑メールは昼夜を問わずに届けられるだけなく、携帯電話でのメールのダウンロードにはパケット料金がかかっていました。また、パソコンでも、2002年当時はISDNやADSLという既存の電話回線を利用してインターネットに接続することが一般的だったため、電子メールのダウンロードには時間がかかっていました。メールを受け取る側に大きな負担がかかるため、迷惑メールは、大きな社会問題の一つとなり、特定電子メール法が成立することとなったのです。
参考:
・平成14年「通信利用動向調査 通信利用動向調査」の結果(2005年3月7日、総務省)
・サービス概況等(2002年度)(NTT西日本)
法改正による罰則の強化
2008年には特定電子メール法が改正され、罰則が強化されました。主な改正点は、以下の三つです。
1. 受信者の同意がなければ、基本的にメールの送信はNG
改正前は、「メールの受信をしたくない」という意思を示した受信者に、電子メールの送信を禁止する方式を採用していましたが、改正後は受信者が「広告宣伝の内容を含むメールを受信してもよい」とメールの受信に同意した場合にのみ、電子メールを送ることができる「オプトイン方式」が導入されました。オプトインについて詳しくは後述します。
受信者が一度同意しても、後で受信拒否の連絡があった場合は、以後のメール送信はできません。また、広告宣伝メールを送信する際に送信者の氏名や名称、受信拒否の連絡先となる電子メールアドレスもしくはURLを表示することが義務化され、オプトインを証明する記録の保存に関する規定が設けられました。
2. 罰則の強化
送信者情報を偽った電子メールが送信された場合、NTTやKDDI、ソフトバンクをはじめとする電気通信事業者が電子メール通信のサービス提供を拒否できることが規定されました。また、違反者を特定するために契約者に関する情報提供をプロバイダーなどに求めることができるようになったほか、不適正な送信委託者に対し必要な措置を命ずることをできることになりました。さらに、法人に対する罰金額を100万円以下から3,000万円以下に引き上げるなど、罰則が強化されました。
3.海外との連携を強化
海外から送られてくる迷惑メールの増加を踏まえ、迷惑メール対策を行う海外の担当部局に対して情報提供ができることになりました。また、 海外から日本国内に送られてくる電子メールが特定電子メール法の対象であることも明確化しました。
こうした法改正の取り組みの効果もあってか、総務省の「電気通信事業者10社の全受信メール数と迷惑メール数の割合」の調査結果で、2009年1月に72%だった迷惑メールの割合が、2022年9月には35%まで減少しています。
参考:
・特定電子メール法の改正等について(2008年12月、総務省総合通信基盤局)
・電気通信事業者10社の全受信メール数と迷惑メール数の割合(2022年9月、総務省)
・特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の
一部を改正する法律の概要(総務省)
対象となる「特定電子メール」とは?
特定電子メールの対象となる電子メールには、以下のようなものが挙げられます。
- 営利目的の企業や団体、個人が、自分もしくは委託を受けて広告宣伝のために送る電子メール
- 特定のサービスや商品などに関する広告、ウェブサイトに誘導することが目的の電子メール
- SNSへの招待や懸賞当選の通知、友人からのメールなどを装って営業目的のウェブサイトへ誘導しようとする電子メール
以下の場合は、特定電子メール法の対象とはなりません。
- 取引先との事務連絡
- 料金請求や商品発送のお知らせなど、取引関係にまつわる内容で、広告や宣伝の内容を含まず、ウェブサイトへの誘導がない電子メール
- 時候の挨拶のみで、広告や宣伝の内容を含まず、ウェブサイトへの誘導がない電子メール
- 送信者が政治団体、宗教団体、NPO法人、労働組合などの非営利団体である電子メール
- フリーメールアドレスで広告や宣伝がついている電子メール
- 公開されているメールアドレスに電子メールを送る場合
参考:特定電子メールの送信等に関するガイドライン(2011年8月、総務省総合通信基盤局消費者行政課、消費者庁取引対策課)
特定電子メール法に違反するケース
特定電子メール法に違反するのは、どのような場合なのでしょうか。
メール受信者の同意を取っていない
メール受信者の同意をとることを「オプトイン」といいます。オプトインとは、英語のopt inのことで、「参加する」や「加入する」という意味合いを持ちます。つまり、特定電子メール法では、受信する人が広告宣伝の内容を含むメールを受け取ることを認識して同意している場合にのみ、特定電子メールを送ることができます。しかしながら、メールアドレスの登録時に、特定電子メールを送信することの記載があっても、文字が小さかったり、目立たない色で記載されていたりする場合は、「受信者が認識できるように表示されているとはいえない」と判断されてしまうので注意が必要です。
メール受信の同意記録を取っていない
特定電子メール法では、受信者がメールの受信を承諾したというオプトインの記録を保存する必要があります。保存するのは、以下のものです。
- 同意を取得した時期や方法などの状況を示す記録
- 書面で同意を取得した際には、書面に記載した定形事項
- メールで同意を取得した際には、メールに含まれる定型文
- ウェブサイトから同意を取得した際には、同意取得に使用したウェブサイトの画面
受信者が、受信拒否の意思を示して配信を停止した場合、配信停止から1カ月間、記録を保存することが義務付けられています。特定電子メール法に基づく措置命令を受けた場合は、1年間の保存期間が必要です。
メールの配信を停止する機能を設置していない
メールマガジンなどの受信者が、一度同意した場合でも、その後の受信を望まないケースも考えられます。そのため、特定電子メールに関しては、受信者が望まなくなったときに、簡単に配信停止できることが必要となります。
送信者などの表示義務を満たしていない
メールを受信した人が、そのメールが事前に同意した事業者もしくは個人からの特定電子メールであるかどうかを容易に判断できるように、送信者の氏名や名称を表示しなければなりません。また、受信者が確実にメール配信の停止を求めることができるように、配信停止を受け付けるメールアドレスもしくはURLの表示が必要になります。
違反した場合の罰則は?
特定電子メール法に違反した場合は、以下のような罰則を受けることもあり得ます。
送信者情報を偽って送信した場合
送信者の情報に嘘の情報があった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。法人の場合では、偽って送信をした者が刑事罰に問われるほか、法人に対して3,000万円以下の罰金が科されます。
同意の記録義務に違反した場合
オプトインの記録を保存していない場合、総務大臣および内閣総理大臣による命令が下されます。命令に従わない場合は、100万円以下の罰金、法人の場合は行為者が刑事罰に問われ、法人に対しても100万円以下の罰金が科されます。
その他の違反
以下のような違反があった場合、総務大臣および内閣総理大臣による命令が下されます。命令に従わない場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人の場合は行為者が刑事罰に問われ、法人に対して3,000万円以下の罰金が科されます。
- 架空のメールアドレス宛に送信した場合
- 受信を拒否した人に送信した場合
- 表示義務に違反した場合
- 同意のない人に送信した場合
特定電子メール法に違反しないためには?
特定電子メール法に違反しないために、メールマガジンなどの配信を考えている事業者や個人事業主は、以下のことに注意しましょう。
メールの受信の同意を得る
広告や宣伝の内容を含むメールを送信する場合は、オプトインの取得が義務付けられています。同意を確認するための文章は、誰でもすぐにわかる場所に記載しましょう。文字の大きさや色にも配慮する必要があります。メールの送信者や送信を委託している場合には委託業者についての情報も正確に記載します。
メールの受信拒否が簡単にできるようにする
メールの受信者が、配信を停止したいとの申し出があった場合はすぐに配信をやめましょう。また、メールマガジンの文中やウェブサイトに「メルマガの配信停止の手続きをするためのメールアドレスやURL」を配置するなど、配信停止の手段を用意することも必要です。
表示義務を果たす
詳しくは後述しますが、特定電子メール法では、送信の責任者の氏名、名称を表示しなくてはなりません。また、受信者が確実に特定電子メールの受信拒否を行えるよう、受信拒否の通知を受けるためのメールアドレスもしくはURLの表示をしなければならないとしています。この表示義務を確実に守るようにしましょう。
送信者の表示義務について
オプトインで、受信者から同意を得て広告宣伝メールを送信する場合でも、送信者は以下の表示が義務づけられています。
1.メール本文に、送信者の氏名もしくは名称
2.メール本文に、受信拒否を受け付けるためのメールアドレスもしくはURL
3.受信拒否ができることの旨
4.送信者の住所
5.苦情や問合せなどを受け付けることができる電話番号、電子メールアドレスもしくはURL
参考:特定電子メールの送信等に関するガイドライン(2011年8月、総務省総合通信基盤局消費者行政課、消費者庁取引対策課)
特定商取引法でも電子メール広告の送信は制限されている
特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為などを防ぎ、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。2008年の改正で、特定商取引法でも受信者の承諾がない電子メールを送ることが原則として禁止されました。ネットショップを運営している人の中には「以前購入してくれたお客様に新商品の案内をしよう」と、考える人もいるかもしれません。しかしながら、お客様がネットショップからのメール受信を承諾していない場合は、違法行為となるので注意しましょう。また、特定商取引法においても、お客様からの承諾を得たことの記録をとり、3年間保存する必要があります。
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執筆は2023年4月10日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash