キャンセル料は請求できる?予約キャンセル時の対応と法的根拠まとめ

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

人手不足対策や効率化のために、多くの店舗がオンライン予約を導入しています。しかし、予約が気軽にできるようになったことによって​、予約の​直前キャンセルや​無断キャンセルに​悩まされる​事業者も​増えているかもしれません。​

それでは、どうすれば厄介な予約キャンセルに正しく対応できるのでしょうか。店舗を守るためにはキャンセル料を設定することがまず考えられますが、キャンセル料は​消費者契約法などに​基づく​運用が​求められます。​不当な​キャンセル料を​設定した​場合には​無効に​なってしまう​可能性も​ある​ため、​しっかりと​内容を​把握した上で、対策を​講じる必要があります。この記事では、キャンセル料の相場や法律上の考え方から、業種別の設定例まで、予約キャンセルへの対策を解説します。

📝この記事のポイント

  • 予約キャンセルが店舗に深刻な損害を与える
  • キャンセル料は消費者契約法に基づいて設定する
  • 業種によってキャンセル料の考え方は異なる
  • 無断キャンセル対策には明確なキャンセルポリシーと事前対応が重要
  • Squareの予約管理システムなら事前決済とキャンセル料回収が可能
目次


予約キャンセル対応がビジネスに与える影響とは?

予約キャンセルによって店舗が被る被害には、以下のものが考えられます。

  • 売上機会の喪失
  • 他の予約希望客の機会損失
  • スタッフの空き時間ができることによる非効率
  • スタッフのモチベーション低下や、その影響による顧客対応品質の悪化

飲食店を例に挙げてみましょう。飲食店は事前に予約を受け付けたあと、シフトを調整してスタッフの人数を確保します。席をあらかじめセッティングし、メニューに必要な食材を事前に調達して仕込み、提供する順番などを計画します。これらはすべて万全の体制でお客さまを迎え、最高のサービスを提供するためのものです。

予約がキャンセルになった場合、これらの準備はどうなるでしょうか。本来売れるはずだったメニューが売れなくなることで売上機会を失い、食材を無駄にする可能性さえ出てきます。その日時に予約を希望していたお客さまが他にもいた場合、そのお客さまの来店機会も損失し、もしかすると別のお店へ行ってしまい、もう二度と戻ってこないかもしれません。

スタンバイしていたスタッフは仕事量が減って待機時間が発生するかもしれず、それでも事業者は同じ時給を払わなければなりません。せっかく準備していたメニューを提供できないと知り、モチベーションが下がってしまうスタッフも出てくることでしょう。調理や仕込みに使用した水道光熱費も無駄になってしまいます。

直前キャンセルや無断キャンセルは、店舗側にこれだけ多くのデメリットを生み出してしまうのです。

jp-bog-reservation-cancellations-t3

キャンセル料の法的根拠

キャンセル料とは、​予約を​していた​商品や​サービスなどを​キャンセル​(取消)​した​ときに​かかる​料金の​ことで、​取消料とも​呼ばれます。​商品や​サービスを​提供する​事業者が​それぞれ独自に​キャンセル期間を​定めており、​該当​期間中に​お客さまが​キャンセルした​場合には​キャンセル料が​かかります。​ただ、​キャンセル料に​関しては​事業者が​自由に​設定できるわけでは​ありません。​その理由を​次項以降で説明していきます。

予約キャンセルの​考え方と​消費者契約法

消費者との​契約に​関して​定められた​「消費者契約法」を​軸に、​予約キャンセルの​基本的な​考え方と​キャンセル料を​設定するに​あたっての​基本ルールを​整理して​おきましょう。

予約キャンセルは、​事業者​(お店)と​消費者​(​お客さま)が​交わした​契約​(消費者契約)を​解除する​行為です。

事業者と​消費者が​契約する​場合、​商品や​サービス内容、​関連知識などの​情報量に​圧倒的な​差が​あり、​そのままだと​消費者が​不利益になる​契約を​結んでしまう​おそれが​あります。​消費者契約法は、​このような​状況から​消費者を​保護する​ために​制定された​法律です。​制定が​2000年と​比較的新しく、​その後も​社会の​状況に​合わせて​消費者を​守る​ため改正を​重ねてきました。

消費者契約法の​基本ルール

消費者契約法は、​契約の​「取消」と​「無効」の​二つを​基本に​消費者を​保護します。​取消は、​不当な​勧誘に​よって​結ばれた​契約を​後から​取り消す​ことができると​する​ものです。​無効は、​消費者が​一方的に​不利益を​被る​場合に​契約条項を​無効に​できると​する​ものです。

キャンセル料は、​消費者契約法第9条に​考え方の​基本が​定められています。​第1項には、​契約の​解除に​伴う​損害賠償や​違約金に​ついて、​事業者に​生じる​平均的な​損害の​額を​超える​金額を​請求した​場合、​超えた​部分に​ついて​無効と​なる​ことが​示されています。​また、​第2項には、​損害賠償金を​支払う​期日を​超えて​支払われない​遅延損害金に​ついて、​年利14.6%を​超える​部分に​ついては​無効と​定められています。

つまり、​キャンセル料は​事業主が​自由に​設定できるわけではなく、​平均的な​損害額の​範囲や​金利に​抑えられています。

消費者を​守るさまざまな​法律

消費者を​保護する​法律には、​消費者契約法の​他、​特に​契約トラブルを​招きやすい​商取引を​対象と​した​「特定商取引法」、​クレジットカードや​ローンを​利用した​商品購入の​被害を​防ぐ​「割賦販売法」、​虚偽広告や​過大な​景品提供を​規制する​「景品表示法」が​あります。

これらの​法律は​相互に​関連しながら、​消費者と​事業者が​公平な​取引環境のもとで​合理的に​選択できるよう、​契約の​ルールを​形作っています。

業種別キャンセル料の相場と設定方法

jp-blog-reservation-cancellations1

お客さま都合で​キャンセルが発生した際の​損害賠償や​違約金に​ついて、​業種ごとに​具体的な​考え方を​見ていきましょう。

飲食店・宿泊施設などの​予約キャンセルの​場合

飲食店や​宿泊施設などの​予約に​ついては、​利用日の​かなり​前の​キャンセルで​あれば、​新たに​別の​お客さまに​よる​予約を​受け付ける​ことが​可能ですが、​直前になると​新規予約の​受け付けは​難しく、​用意した​食材や​人員が​無駄になる​可能性が​生じます。​埋め合わせできない​損益を​考慮し、​キャンセルの​時期に​応じた​キャンセル料を​設定するのが​よいでしょう。

たとえば、​経済産業省が​発表した​No show​(飲食店に​おける​無断キャンセル)​対策レポートでは、​キャンセルに​伴う​損害賠償の​考え方が​示されています。​事前キャンセルでは​逸失利益​(キャンセルが​なければ​得られたであろう​利益)を​補填できる​可能性が​ありますが、​無断キャンセル​(ノーショウ)では​逸失利益の​補填は​難しい​ため、​事前キャンセルと​無断キャンセルでは​異なる​キャンセル料を​設定している​ケースが​多いようです。

物販の​予約キャンセルの​場合

商品の​購入予約に​関する​キャンセルは、​別の​購入者に​販売すれば​損害が​生じない​場合が​多く、​キャンセル料を​定めても​無効と​される​ケースが​みられます。​オーダーメイドの​商品や​名入れを​行った​ものなど、​キャンセルされた​場合に​他の​お客さまへ​転売が​困難な​商品に対して、​キャンセル料条項を​入れると​よいでしょう。

特定継続的役務提供型サービスの​解約の​場合

エステティック、​美容医療、​語学教室、​家庭教師、​学習塾、​結婚​相手紹介サービス、​パソコン教室の​七つの​サービスに​ついては、​特定商取引法の​対象と​なっています。​店舗、​郵送、​オンラインの​いずれも​含みます。​それぞれの​業態別に、​サービスの​開始前の​解約や​、サービス開始後の​中途解約の​際の​キャンセル料の​上限が​決められています。​該当する​業種の​場合は​特定商取引法の​基準で​設定しましょう。

オンラインサービスの​解約の​場合

jp-blog-reservation-cancellations2

オンラインの​学習塾のように、​特定商取引法上の​サービスに​該当する​場合は、​先述の​役務提供型の​解約の​基準で​キャンセル料を​設定します。

特定商取引法では、​サービス開始後の​中途解約の​場合、​たとえば​学習塾で​あれば​「2万円または​1カ月分の​役務の​対価に​相当する​額の​いずれか​低い額」と​いう​目安が​あります。​特定商取引法の​対象にならない​月払い制の​サービスに​ついても​これを​参考に、​1カ月の​月額料金を​目安に​した上で、​解約に​伴って​生じた​損益を​加味して​キャンセル料を​定めると​よいでしょう。

無断キャンセルが発生した場合の対処法

お客さま都合の​キャンセルの​中で​最も​厄介なのが、​前述の​「無断キャンセル」です。​たとえ直前でも、​事前に​連絡が​あれば​次の​お客さまを​探す手配が​できますが、​何の​連絡もない​場合は​予約時間が​過ぎても​席を​確保したまま​待っている​ため、​長時間の​機会損失が​生じてしまいます。ここでは飲食店における無断キャンセルを例に見ていきましょう。

コース予約の​場合の​無断キャンセルに​対する​考え方

コース予約など、​予約時に​提供する​内容が​決まっていた​場合は、​キャンセルで​発生した​損害を​再販する​ことが​著しく​困難である​ことから、​全額の​キャンセル料を​請求する​キャンセル料条項を​定める​ことができるでしょう。​ただし、​その​場合でも​転用可能な​食材や​人件費は​除くなど、​消費者契約法など​関連法に​則り算出する​必要が​あります。

席の​み予約の​場合の​無断キャンセルに​対する​考え方

席の​み予約の​場合であっても、​予約時に​内容が​確定していると​考えられる​場合は​コース予約と​同様に​扱う​ことができます。​内容が​確定していなかった​場合、​キャンセルと​無関係に​発生する​固定費、​転用できる​食材や​人件費に​ついては​損害賠償の​対象からは​除外と​なります。​席の​み予約だと、​実際に​どの​くらいの​売り上げに​なったかを​算定するのが​難しい​ため、​平均客単価の​何割かを​按分して​損害賠償額と​する​考え方が​一般的です。

キャンセル料​(損害賠償)​請求の​ための​必要事項

無断キャンセルの​場合、​転用できず​待ち続けている​損失分が​大きいため、​席の​み予約でも、​補填不可能な​金額が​高めになる​ことが​想定されます。​また、​季節や​繁忙期・閑散期でも​算定方法は​異なります。​店舗の​運営状況に​応じた​適切な​キャンセル料の​算定が​できるようにして​おきましょう。

また、​店舗の​キャンセルポリシーを​明確に​打ち出し、​予約時には​キャンセル料が​発生する​可能性と、​キャンセルの​タイミングや​キャンセル料の​目安を​、必ず具体的に​伝えましょう。

無断キャンセル防止の​ための​対策例

無断キャンセルを​防止する​ため、​次のような​予防策を​講じ、​お客さまも​お店も​納得できる​円滑な​商取引で​サービス向上を​目指しましょう。

  • 予約時に​連絡先を​確実に​把握し、​再確認の​連絡を​入れる
  • キャンセル時に​連絡しやすい​体制や​仕組みを​構築する
  • キャンセルポリシーや​キャンセル料を​わかりやすく​提示する
  • 事前決済や​預り金などの​仕組みを​導入する
  • 予約管理システムの​連絡機能を​使って​キャンセルポリシーの​確認や​リマインド、​キャンセル受付などの​対応を​一元的に​行う

予約・キャンセル管理の効率化とシステム導入のメリット

手作業での予約管理やキャンセル管理は労力がかかるものですが、予約に特化したシステムに頼れば効率化を図ることができます。

導入のメリット

多くのシステムには、お客さまの予約が近づいたことを知らせる自動リマインド機能があります。これによりスタッフの連絡漏れを防止できるうえに、無断キャンセルや「予約した日をすっかり忘れていた」というお客さまのうっかりミスも未然に防ぐことが可能です。また、予約日時だけにとどまらず、お客さまの情報や履歴も管理できるため、柔軟な個別対応が実現します。

事前決済クレジットカード登録を受け付けられるシステムもあり、それらの機能を生かせば無断キャンセルの抑止力となるでしょう。残念ながらキャンセルとなってしまった場合でも、オンライン上で24時間いつでもキャンセルを受け付けられるため、お客さまにとっても忙しいスタッフにとっても便利です。

無料で導入できる!Squareの予約管理システム

上記のメリットをすべて満たし、さらに無料で​導入できるのがSquareの​予約管理システムです。Square 予約には​リマインドの​自動送信機能があるのはもちろん、​事前決済に​対応した​予約専用サイトが​作成できたり、​キャンセル料金の​回収が​できたり​(有料機能)​と、​無断キャンセルの​防止だけでなく、​トラブル回避の​手段と​しても​役立ちます。

jp-blog-reservation-cancellations-appt

予約管理はSquareで

メニューや​スタッフの​登録から、前払いの​受付、リマインダーの送信、​予約サイトの​作成まで無料。アプリでも、お使いのブラウザでも、場所を問わず、どこでも予約の状況を確認、調整できます。

まとめ

どのような業態の店舗にとっても、お客さまのキャンセルによって被るダメージは大きいため、影響を最小限に抑えられるよう対策しておきたいものです。これには、法に則った適切な額のキャンセル料金を設定することや、わかりやすいキャンセルポリシーを用意しておくこと、予約システムを有効活用した無断キャンセルを減らす取り組みなどが考えられます。厄介なキャンセルを減らせるように、またキャンセルがあってもお店を守れるように、あらかじめ準備をしておきましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2022年2月15日時点の情報を参照しています。2025年8月5日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash