ビジネスを成長させていくうえで大切なのが、キャッシュフローの安定です。その方法の一つとして「リカーリングモデル」を最近耳にするようになった、というビジネスオーナーも少なくないのではないでしょうか。今までは「一つの商品を作って、一度に売る」という売り切りモデルが一般的でしたが、一つの商品、またはサービスを基に継続的に利益を生み出すビジネスモデルがリカーリングです。
この記事ではリカーリングモデルの仕組みを紐解きながら、メリットやスモールビジネスへの導入方法までカバーします。
リカーリングモデルの定義とは
次世代の収益モデルとして話題を呼んでいることから新たなビジネスモデルに聞こえるものの、実はすでにさまざまなビジネスが導入しているリカーリング。このビジネスモデルには以下二つの条件が含まれます。
- 一回切りの「売り切りモデル」とは違い、継続的に利益を生み出していける
- 利用した量や時間で請求額が決まる
上記を踏まえたうえで、サブスクリプションとの違いを見ていきましょう。
リカーリングモデルとサブスクリプションの違いとは
最近では動画配信サービスのNetflixや、音楽配信サービスのSpotifyなどを筆頭とするサブスクリプションサービスが定着してきたことから、リカーリングよりもサブスクリプションのほうが親しみがあるかもしれません。
具体例も合わせて下記の表で二つを比較してみましょう。
表のように、前述の条件は満たしていても、ビジネスによってリカーリングモデルの取り入れ方が少しずつ異なります。種類は大きく分けて三つあります。
1. 従量制のサービス
たとえば使用した時間に応じて課金されるカーシェアリングやシェアサイクルです。
車の購入となると、高額で検討に時間がかかったり、自転車でも駐輪スペースが空いておらず、すぐに購入に踏み切れなかったり、ということが考えられます。そこでそれぞれの移動手段をお手頃な価格で使えるのが、従量制のシェアサービスです。
このように消費者向けのサービスもあれば、フリーランスのライターに記事の執筆や動画の作成を依頼できるLancersなど、企業向けのサービスもリカーリングモデルに含まれます。
2. 月謝制のサービス
基本的に「1レッスンの金額×レッスン回数」「1回の利用×利用回数」で月額費用を計算するサービスもリカーリングモデルを使用しているといえるでしょう。ジムの都度利用やピアノのレッスン、洗濯代行サービスなどが、この一例です。
3. 商品とは別売りされている、自社でしか手に入らない消耗品
商品を使い続けていくうえで必要となる消耗品を別売りするのも、リカーリングを取り入れる方法の一つです。プリンターの専用トナーはわかりやすい例でしょう。どのプリンターも基本的に自社のインクにしか対応しておらず、なくなれば買い換えざるを得ないという点でリカーリングモデルに当てはまります。継続的に得る利益を最大化するためには、自社でしか手に入らない付属品を提供するのもポイントです。
消耗品だけでなく、付属品も当てはまります。iPhoneのイヤフォンのように壊れた際に買い替えが必要となるものの、他のメーカーやブランドからでも同様の機能を持つ付属品が購入できると、リカーリングモデルを通して得られる売り上げが減少してしまうでしょう。
リカーリングモデルを自社に取り入れるメリットとは
このようにさまざまな切り口からリカーリングをビジネスに取り入れることができますが、そもそもリカーリングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
1. 顧客を取り込みやすくなる
たとえば前述のジムの例で、通い放題の少し高額なプランに合わせて、初期費用ゼロかつ一回切りで支払える「都度利用」のプランも設けるとしましょう。たとえ都度利用の単価設定が通い放題より高かったとしても、入会時の初期費用が発生しない分ユーザーとしてはより気軽に利用できることが考えられます。このように初期投資のハードルを下げることで、より幅広い客層の利用が期待できます。
2. お客様のニーズに合わせた料金形態を用意しつつ、収益の安定化が図れる
売り切りモデルの場合、一回限りの商品の売り上げが収入を左右するため、ものによっては低価格の設定が難しいかもしれません。一方でリカーリングモデルを取り入れた場合、高値の選択肢をキープしつつも、お手頃な料金形態を用意し、「高額には踏みとどまってしまうけれど、試しに商品を購入してみたい」「一度サービスを利用してみたい」という見込み客が狙いやすくなります。そのうえ販売数のみに目を向ける売り切りモデルとは異なり、ユーザー数を基に利益が見込めるので、ユーザーを多く獲得できれば、その分収入のチャンスを拡大できます。
また、月謝制のサービスや月1回の定期便などをビジネスに組み込むと、よりこまめな収入が見込め、キャッシュフローの安定化が望めるところもリカーリングモデルの強みでしょう。
スモールビジネスにリカーリングモデルを取り入れる具体的な施策
自社にリカーリングモデルを組み込む方法はパッと浮かばないかもしれませんが、スモールビジネスでも今日から実践できることがあるかもしれません。
たとえばコーヒーショップを運営している場合、定期便を始めるのも一つの手です。「旬のコーヒーを届ける」などの切り口で定期便利用者を獲得すれば、店頭販売とは別でコーヒー豆の販売ができます。
定期便を検討しやすくするための施策として、あまりコーヒーを飲まない人からたっぷり飲む人まで、飲む量ごとにプランを用意しておくのもいいでしょう。
毎月指定日までに希望を出せば、プランの変更やキャンセルがいつでも無料でできるシステムを整えておくと、お客様にもより気軽に試してもらえるかもしれません。加えて、「定期便利用者であれば、店舗での注文が毎回20%オフ」といった特典を用意しておくと、来店に結びつけることもできます。
「旬のコーヒーを知る機会ができる」「店頭で割引が効く」など定期便に踏み込んでもらうためには、消費者のニーズに寄り添う仕掛けを用意しておくのが大切でしょう。
コーヒーに限らず、小売店であれば店頭の商品を用いて、工夫を凝らせた定期便の用意ができるかもしれません。
このような定期便、または月謝制のサービスを提供する際には、Squareの自動継続課金機能やSquare 請求書の定期送信機能が便利です。
自動継続課金では、お客様がカード情報の保存に同意すれば、毎月指定の日にちに、登録済みのクレジットカードに自動課金ができます。用途に合わせて週に一回、半年に一回など、頻度を変えての請求も可能です。自動課金をキャンセルしたい場合はSquare データ上の数秒の操作で停止できるので、急な変更にもすぐ対応できます。
カード情報の保存を希望しないお客様には、指定の日にちに請求書を顧客のメール宛に送信し、そこからお客様自身にクレジットカード情報を入力してもらうことも可能です。
決済手数料は請求方法によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
このような定期請求機能を活用しつつ、安定したキャッシュフローや客層の拡大を狙ううえでも、リカーリングモデルを用いたビジネス戦略を検討してみてはいかがでしょうか。
執筆は2019年10月18日時点の情報を参照しています。
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