【一歩ずつ、前へ】今までの枠を飛び越えて、クラフトビールのおもしろさを伝えていくには。ピガール

Square 加盟店が今どのようにビジネスと向き合い、どのように前に進もうとしているのか。【一歩ずつ、前へ】は、加盟店の今の声をお届けするシリーズです。

今回お話を伺ったのは、わずか5坪の店内でヨーロッパ各国のクラフトビールを80種類近く提供するビアバー兼ボトルショップ「ピガール」。山田英博さん・千恵さんが夫妻で営むピガールがあるのは、東京メトロ田園都市線「三軒茶屋駅」北口から歩いて1分の場所。普段ではなかなか目にしないヨーロッパ各地のクラフトビールに出会える場所として、10年に渡り地元民はもちろんのこと、クラフトビール好きから愛好されてきました。

2020年4月には自転車でビールを届ける「おうちでピガール」を新たに始め、2020年7月には配送地域を全国に拡大。ここでは「配送」という新たな販売方法について詳しくお話を聞きながら、変わりゆく日常のなかで二人が考える今後の課題についても伺いました。

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ーー まずはピガールについて、簡単に教えていただけますか。

英博さん(以下ヒデさん)「2010年から、三軒茶屋でヨーロッパのクラフトビールを提供するお店をやっています。タップでは常時6種類ほどのビールを取り揃えていて、ボトルでは大体70種類から80種類ほど買って帰ることもできます。

来てくださるお客様は基本的に7割くらいが地元の方で、残りの3割は遠方の方だったり外国人旅行者の方だったりします」

ーー 4月1日からはボトルショップのテイクアウトのみに切り替えられて、5月19日からビアバーの営業も再開されていますが、緊急事態宣言が発令されてからの状況と、今の状況を教えていただけますか。

ヒデさん「発令されたときはかなり人が少なくなっていたかと思うんですけど、テイクアウトとしてお客様が結構買いに来てくれたりして、4月、5月は乗り切りました。逆に最近のほうがお客様が減っているように感じます。6月には10周年を迎えまして、オリジナルでビールとサイダーを作ったので、それを販売したりしていましたね。あとはソーシャルメディアを通してダイレクトメッセージをいただいたこともあり、デリバリーをはじめることになりました」

千恵さん(以下チエさん)「テイクアウトで買えるので、(お客様が)来てくれているという感じですね。今は店内で滞在する人は多くありません。飲食としてのお客様がまだ戻ってきていないので、それがまだまだ伸び悩んでいるところです」

ーー 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためには、どのような対策をとられていますか。

ヒデさん「カウンターの上からビニールシートを取り付けて、あとはマスク着用、ソーシャルディスタンスという形でやっています」

チエさん「あとは消毒ですね。それと外で飲んでもらったりとか。でも結構最近だと『外でいいです』というお客様も多いですね」

ーー デリバリーをする際には、現金を茶封筒に入れるようお客様にお願いしているようですが。

ヒデさん「そのほうが安心していただけるのかな、と思いまして」

チエさん「(店頭でピックアップを希望する場合も)滞在時間が一瞬で済みますしね。商品を渡して、封筒をもらって、終わりなので。そういう点でもいいのかなと思い、呼びかけていました」

ーー このような状況のなか、お客様とのやりとりで心に残るものなどがあれば教えていただけますか。

チエさん「現金を入れていただいていた封筒のなかに、『配達ご苦労さまです』『ありがとうございました』などとお客様が手書きで書いてくださっていたことですかね。すごく心が温まる交流でした」

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▲オーナーのヒデさん(左)とチエさん(右)

デリバリーから全国配送へ。実店舗以外での販売方法を模索

ーー 自転車で選りすぐりのビールを配達する「おうちでピガール」についても、お伺いできますか。

ヒデさん「自転車でのデリバリーは、4月の二週目くらいからはじめましたね。基本的には、お店から半径二キロ圏内にいる方々に自転車でのデリバリーをしていました。これはインスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)から連絡をいただくようになり、『おまかせパック3,500円』という形でデリバリーを開始したのがはじまりですね。

その際に、一文だけお客様の好きなビールについて伺って、それに合わせておすすめのものを4から6本ほどまとめて配達していました。普段あまり飲まなさそうなものも提案したりしていましたね。毎回デリバリーの袋のなかには、味わいだったり、作り手の個性だったりがわかる、手書きの説明書きを入れていました」

ーー 手書きの説明書は、毎回注文が入った際に書いているんですか。

ヒデさん「そうですね。基本的には注文いただいてからセットを作って、それから手書きの説明書きを作るようにしています」

ーー デジタルな時代に、手書きでもらうメッセージはうれしいですね。ビールについて知ってもらう手段としても素敵だと感じます。リピートの方も多いと感じられますか。

ヒデさん「結構多かったですね。週1回くらいの頻度でリピートされる方もいます」

ーー 7月からは全国配送も開始されましたよね。

ヒデさん「そうですね。一般小売免許は持っていましたが、ネット販売の免許はまだ持っていなくて、緊急事態宣言が出たときにもろもろ調べて免許を取得しました。無事取得できて、全国配送ができるようになったのが7月ですね。実は今、全国から注文いただけるECサイトも準備中(※)でして。8月末からスタートしようかなと考えています」

※取材後、ピガールのECサイトがオープンしました。こちらからぜひお立ち寄りください。

チエさん「実店舗の営業は、もちろんすぐには戻らないと思います。今後のことを考えて実店舗以外の販売方法を強化していくためにも、デリバリーや全国配送などオンラインでの販売は、これからやっていこうと思うことですね」

ーー デリバリーや全国配送から、実店舗にはない新たな発見などがあれば教えていただけますか。

チエさん「デリバリーしたお客様が、お店に飲みに来てくれたりはしますね。それと全国配送の場合は『東京に行けるようになったらお店に寄りたいです』と言ってくださる人もいて、お客様との新たな触れ合い方のように感じました」

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課題は今まで届けられなかった人に、どう届けるか

ーー 今年で10周年を迎えるピガールさまが、今後もピガールとして存在し続けるうえで、大切にしていきたいことを教えてください。

チエさん「お店に来ていただく場合にも、デリバリーやオンラインで購入いただく場合にも、なるべく一人ひとりの好みに合わせたり、こちらから新しい提案をしたりなど、そういうコミュニケーションはずっと大事にしていきたいなと思います」

ヒデさん「一人ひとりのお客様にビールのことが伝わるよう接していくこともそうなんですけど、お店のことがもっと詳しく伝わるようにビジネスをしていきたいなとは思いますね」

チエさん「それとオンラインって今までやったことがなかったんですけど、『今まで届かなかった人に、うちのお店のことを届けられるかもしれない』というのは、コロナになって大変でしたが、新たなチャレンジの一つかなと思っています。今までは店舗重視の考え方だったので、たぶんこうならなければオンラインにはシフトしていなかったと思います。店舗重視なのは、今も変わらないんですけど。ただ今後は届かなかった人にも届けられるようにチャレンジしていきたいなとは思います」

ーー ECサイトで販売を予定している商品についても、少しだけお聞かせいただけますか。

チエさん「オンラインショップでは、クラフトビールやサイダー、シードルの販売と、あとはマーチャンダイズの販売も考えています。それとお店ではビールとチーズを一緒に出しているので、おうちでも同じように楽しんでもらえるようにオンラインショップでもチーズやサラミなどの食料品を販売していく予定です。ピガールで提案しているような楽しみ方をうちに来られない遠くの人にも届けることが、今の課題ですね。本当はお店に来てもらうことが一番ですけど、まだしばらくは難しいですよね」

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