【賢者の声】インバウンド(訪日外国人)の増加にともなうカード決済の必要性

「賢者の声」はビジネス業界の著名人や、現場第一線で活躍する有識者の方々からの意見を集めた言論媒体です。この投稿では訪日外国人事情に精通する青木優さまに寄稿を頂きました。

著者プロフィール
株式会社 MATCHA 代表取締役社長。内閣府クールジャパン・地域プロデューサー。学生時代に世界一周の旅をし、2012年ドーハ国際ブックフェアーのプロデュース業務に従事する。デジタルエージェンシーaugment5 inc.に勤めた後、独立。2014年2月より訪日外国人向け WEB メディア「MATCHA」の運営を開始。「MATCHA」は現在10言語、世界200ヶ国以上からアクセスがあり、様々な企業や県、自治体と連携し海外への情報発信を行なっている。

訪日市場の現状

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訪日外国人の数は年々増え続けており、オリンピックが開催される2020年まで伸び続けるといわれています。2013年に1000万人突破した訪日外国人は、今や3000万人を超える勢いです。それでは2020年以降の訪日市場はどうなるでしょうか。

政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」として長期的なプランを発表しています。それによると、2030年には1年で6000万人の訪日観光客を受け入れることを目標としています。この数は、2015年の訪日観光客の3倍なので、実現すれば日本は世界的で有数の観光立国となるでしょう。

日本のクレジットカード、電子決済事情について

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訪日外国人が日本で困ることの中に「クレジットカードが使えない」「電子決済ができない」というものがあります。それでは、訪日外国人がよく利用するシーンの決済事情はどうなっているのでしょうか。

日本クレジットカード協会が平成26年(2014年)に行った調査では、コンビニ・マクドナルド・タクシー・鉄道・ATMという5つのシーンにおいてカード決済の可否を調べています。その結果、マクドナルド以外のすべての業態でカードが利用できるとのことでした。

これは、これらの業態を営んでいるのが大手企業であるということが関係していると思われます。この調査で唯一カード利用が不可能であったマクドナルドは、2018年から世界標準の決済システムであるNFC決済を導入しました。

これにより、あらゆる国からの顧客に対応できるだけでなく、スマートウォッチを使った決済など新しい決済デバイスの導入もスムーズに行えるようになります。

それ以外にも、訪日観光客が多く訪れる百貨店は比較的古くからクレジットカードに加え、中国観光客が多く利用する銀聯カードや「Alipay(アリペイ)」「WeChatPay」などのモバイル決済サービスが導入されています。

また、ドン・キホーテでは既存の電子決済サービスに対応しつつ、オリジナル電子マネー「majica」を発行し、チャージ時のポイント付与などのサービスによってリピーターの獲得を目指しています。

まだまだクレジットカードが使えない国日本

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このように、クレジットカードカードの利用や電子決済が可能となりつつあります。しかし、まだまだクレジットカードが使えない国、日本という側面もあります。訪日外国人が多く利用するにもかかわらず、これらが利用できないサービスにはどんなものがあるでしょうか。

タクシー
日本交通など一部の大手タクシー会社ではクレジットカードでの支払いを導入していますが、多くの場合タクシー料金の支払いではクレジットカードが使えない状況です(国土交通省の調査では、カード決済可能な割合は51%とのことです)。タクシーは後払いのため、現金を支払う段階になってトラブルが起きることが懸念されます。

個人経営の飲食店
大手飲食店チェーンはほとんどがクレジットカード決済に対応していますが、個人経営の飲食店はまだまだカード決済に対応していないところが多いです。また、「カード決済可能」という表示があっても、ランチタイム時にはカードが使えないという営業形態のところも多く、事前に確認が必要です。

観光地の土産店
日本の観光地にある土産屋のほとんどは個人商店なので、個人経営の飲食店と同じようにクレジットカードが利用できないことが多いです。しかし、政府が2020年までに日本の主要観光地では全面的にクレジットカードの利用を可能にするという施策を推し進めようとしていますので、これが個人経営の飲食店や土産屋にどの程度影響を与えるのか、注目すべき点であるといえます。

日本でクレジットカードの普及が遅れている理由

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日本でクレジットカードの普及が遅れている理由として、クレジットカード導入の初期コスト・ランニングコスト・クレジットカード手数料が高いことが指摘されています。

確かに、この3つの料金の支払いは個人商店には難しいものです。今後、国や地方自治体、また日本クレジットカード協会などがどのような支援策を打ち出すのかが注目されます。

逆を言えば、普及を阻害しているこれらの問題が解決すれば、現金を使わずに楽しめる国日本になる可能性が十分あります。(*1)

*1:Squareなら導入費が無料でクレジットカード決済をはじめることができます。

他国の現状——中国の事情

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先日、私は中国の上海、深センに行ってきました。
上海の空港から市内に出る電車のときに使った現金以外は、クレジットカードとWeChatのモバイル決済サービスで完結しました。よく言われている話ですが、実際に体験してみると違いますね。

それでは、日本以外の国の電子決済事情はどうなっているのでしょうか。
訪日客も多く、また世界的にもキャッシュレスの進んでいる国である中国の事例を見てみましょう。

中国では銀聯カードの普及が電子決済を促進し、2015年には電子決済比率が60%まで高まりました。そして、2010年代に入りAlipayやWeChatPayなどのモバイル決済サービスが急速に台頭しています。

2017年時点でアリペイは中国の4億人が、WeChatPayは8.3億人が利用しているので、この2つが中国での二大電子決済サービスであるといえます。

中国で電子決済が普及した理由

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話が少し中国によってしまいますが、中国の電子決済について少し深掘ります。
なぜ中国ではこれほどまでに急速にキャッシュレス社会へと変貌したのでしょうか。いくつか理由が考えられますが、ここでは2つの興味深い理由を紹介します。

1つ目は、中国政府の施策です。中国政府は銀行間の決済システムを統一し、銀聯カードの導入を後押ししました。また、銀聯カードはキャッシュカードと一体となったデビットカードなので、その点でも広く普及した要因といえるでしょう。

2つ目は信用情報収集と信用スコアの付与です。実は、電子決済サービスの会社は、顧客の支払い履歴、踏み倒しの有無、罰金の支払い履歴などの情報を収集しているのです。モバイル決済のアリペイの運営会社・アリババではこれらに加えて資産の保有情報、交友関係などを集計して点数化し、信用スコア「芝麻信用(芝麻は「ゴマ」の意。アリペイを運営するアリババグループの名前にかけている)として個人に点数を付与しています。

この点数が高いとレンタカーのデポジットが不要になるなどの特典が得られるそうです。中国ではあらゆるサービスにデポジットが必要なので、これが不要になるのは大きなメリットといえます。

日本におけるカード決済の未来

それでは、日本におけるカード決済の未来はどうなるのでしょうか。2018年に入り、様々なメディアで日本がカード決済・電子決済後進国であるとの指摘がされるようになりました。また、先に経済産業省もQRコードを使った決済の規格統一を目指すという報道がありました。

日本の観光立国に道に、カード決済普及は必須です。おそらく近い将来、日本は今よりさらにカード決済やモバイル決済が普及するでしょう。それにより、日本に住む人も訪日観光客にとっても、より観光や買い物をしやすい社会になるはずです。

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