カフェ、レストラン、居酒屋など、飲食店の店名はお店の数だけあります。自分のお店を持つからには、得意分野やユニークなアイデアを存分に発揮して、他店には無いサービスを提供する名店にしたいと思うのは当然のことですが、店名もまた、他店と差別化を図り、多くのお客様に認知してもらうための個性の一つだといえます。
多くの経営者は、開業に至るまでに、事業計画書の作成、資金調達、各種手続きなど、避けては通れない茨の道を経験しなければなりません。また、いざ営業が始まっても、毎日の売上分析や従業員の管理などの作業に追われているという経営者も少なくないはずです。
しかし、どんな事業においても忘れてはいけないのは、起業を決意したときに抱いた「自分のお店に対する熱い思い」です。経営の醍醐味は、コンセプトやこだわりを事業に反映させ、提供するサービスを喜んでくれるお客様を増やすことで利益を上げ、事業を拡大していくことです。
今回は、経営者の夢やこだわりが詰まった飲食店を世間に認知してもらうための、最も基本的で重要な要素の一つである店名について、代表的なネーミング方法を紹介します。
目次
- 店名=お店のシンボル的存在
- 造語でクリエイティブに
- お客様の食欲を狙う
- 奇をてらってインパクト勝負
- 商標登録を忘れずに
- 店名が決まったらするべきこと
・看板をつくる
・ショップカードをつくる
・ホームページを開設する
・SNSを開設する
店名=お店のシンボル的存在
店長や経営者など、お店にゆかりのある人物の名前を店名にする方法です。
たとえば、「竹田屋」という店名からは、関係者の誰かしらが竹田という姓を持つのだろうと想像をするのではないでしょうか。創業者の代から受け継がれている姓なのかもしれません。人名は比較的覚えやすく、お客様もお店に対して親近感を持ちやすいのではないでしょうか。
次の世代に暖簾分けをして支店が増えた場合も、同じ店名を名乗っていれば、各店舗の関係性が分かり、「あのお店の二代目というなら行ってみよう」と思ってもらえるかもしれません。ただし、ありふれた姓だと、飲食店の種類に関わらず、同じ店名を持つ他店と混同されてしまう可能性もあります。
他にも、名物料理人や有名シェフなどの名前に「(誰々)の」という意味である「’(アポストロフィ)」を付けて「Anthony’s Pizza(アンソニーのピザ屋さん)」とすることもできます。外国では「Tony’s(トニーの(お店))」や「Aunt Sami’s place(サミおばさんのお店)」といった表記をすることが多いようです。
日本では、「よっちゃん」や「ひろちゃん」などの愛称を使うことでお客様が親しみを込めて呼ベるような店名もよく使われています。お店の魅力に一役買っているシンボル的存在や経営者の名前を店名に盛り込んで、多くの人に呼んでもらいましょう。
造語でクリエイティブに
辞書には載っていないような言葉を創造して魅力的な店名を考え出してみましょう。
たとえば、ハンバーグとサラダをお店の売りにしていたら、「ハンバラダ」と名付けてみるのはどうでしょうか。一見、意味をなさない言葉に聞こえても、音の響きやカタカナの連なりにインパクトを感じるお客様がいるかもしれません。勘の良い人であれば、ハンバーグとサラダを提供している飲食店と察しがつくでしょう。
このような店名を考える時には、まずはお店の特徴やコンセプトから連想できるキーワードをできるだけ多く列挙します。料理の種類だったり、人気メニューの名前だったり、お店の立地(分かりやすい地名や、東京タワーなどの名所)だったり、できるだけ多くの単語を並べることが好ましいです。経営者一人の主観に偏ることがないよう、従業員や知人などの第三者の意見を取り入れてみるのも斬新なアイデアが生まれるきっかけになるかもしれません。キーワードが十分に出たと思ったら、順序や組み合わせ方を工夫して、唯一無二の店名を創り出します。
いくつか候補を考え出したら、声に出して読んでみましょう。口コミなどお客様の間で話題になることや、ゆくゆくはテレビなどのメディアで取り上げられることを想定して、誰にでも言いやすく、聞き取りやすく、かつ印象に残るインパクトある店名が理想的です。あまりにもデタラメな言葉を造ってしまうと、店名から美味しい料理を連想することができず来店意欲を低下させてしまうかもしれないので注意が必要です。
お客様の食欲を狙う
焼き鳥が食べたいと思って街を歩いているところ、たまたま目に入った飲食店の看板に「焼き鳥 まんぷく」と書いてあったらどうでしょうか。焼き鳥屋であることが一目で分かるので、迷うことなく入店を決めるお客様もいるかもしれません。「まんぷく」という言葉も空っぽの胃袋に魅力的な言葉です。
逆に、何を食べようか迷っている時でも、「焼肉」や「ラーメン」など、店名を見るだけでどんな料理かが分かれば、食欲が刺激されて、食べたいものを探しているお客様にとっては効果的なアピールとなります。
具体的な料理が想像できなくても、たとえば「竹田食堂」や「居酒屋 竹田」の二つでは、飲食店のタイプが大きく異なることが想像できます。前者はお昼時の定食をメインとした飲食店で、後者は夜にお酒を飲むことができる飲食店をイメージさせます。
他にも、「Bistro(ビストロ)」(フランス語圏で使われる、気軽に入れる料理店という意味)や「Patisserie(パティスリー)」(ケーキや焼き菓子を提供するお店)などの外国語は、近年、日本でも取り入れられることが多く、お客様にも認識されてきているようです。
料理とは直結しなくても、言葉のイメージから料理の種類を連想させることもあります。たとえば、ニューヨークの街中に「SAMURAI」という飲食店があったら、ほとんどの人がお寿司や天ぷらなどの日本食を連想するのではないでしょうか。もちろん、店名の他にも外観やロゴなどの要素もお客様が抱くイメージに影響することを忘れてはいけません。
奇をてらってインパクト勝負
店名からは何を提供している飲食店なのか想像がつかないような奇をてらったネーミングでお客様の注意を引くこともアピールの一手段といえます。
たとえば、「悲しくなったら絶対に立ち寄って。」という名前のバーがあったとします。店名に聞こえない上に、とても具体的な文脈です。このようにインパクトが強いと、店名が面白いというだけで来客するお客様もいるかもしれません。
奇をてらった店名は、強い話題性があります。しかし、いくら店名だけでお客様の注目を集めることができたとしても、実際に来店してみると、サービスの内容や品質は他のバーと何も変わりなかったとしたらどうでしょう。
変わった名前で集客を狙う場合、提供するサービス内容が店名に負けてしまってはいけません。来店時に店名の謎が解けるようなヒントをお客様に提供するなどして、店全体でユニークさをアピールしましょう。
商標登録を忘れずに
長期間に渡って多くのお客様に利用してもらえる繁盛店に成長することを見越して、後悔のない店名を考えましょう。名前決めの段階でできるだけ多くの人たちの意見を聞くのも重要です。
ついに店名が決定したら、商標登録することを忘れないようにしましょう。お店が有名になるにつれ、さまざまなメディアで取り上げられるようになったとき、店名が商標登録されていると万が一のトラブル防止につながります。
商標登録を怠ると、店名がすでに他店によって登録されていることに気づかずに使用してしまうおそれがある他、ある程度知名度を上げたところで他店に盗用・登録されてしまうこともあります。最悪の場合、商標法違反で店名の変更をせざるを得なくなるかもしれません。何年も経った後に突然店名を変えてしまうと、以前までの繁盛ぶりをすぐに取り戻すことは難しいものです。
まずは、使用したい店名が既に登録されているかどうかを特許情報プラットホームで調べることをおすすめします。
店名が決まったらするべきこと
店名を決めることは開業には欠かせませんが、いざ決まるとほかにもいろんな作業が待ち構えていることにハッと気がつくでしょう。まず、店名を載せなければいけない場所を想像してみましょう。看板やショップカード、ホームページやSNS……ここではそれぞれの作成方法を簡単に説明します。
看板をつくる
予算や見た目へのこだわりにより、看板の製作方法はさまざまです。アットホームさを出そうと自作する人もいれば、製作から取り付けまで看板製作会社にまるっと頼んでしまう人もいます。最近ではデザインデータを送付すれば、データをもとに看板に印刷してくれるサービスもあるようです。
ショップカードをつくる
ショップカードも看板と同じように外部に委託できますが、最近では自分で作る人もいるようです。近年では無料かつ簡単に使えるデザインソフトも登場しています。たとえばオーストラリア発のCanvaは、簡単にスタイリッシュなショップカードが作れるオンラインツールです。
作成したショップカードを印刷するプリンターが自宅にない場合はキンコーズ(kinko’s)などのプリントサービスを利用すれば、低コストで簡単に立派なショップカードが作れてしまいます。
ホームページを開設する
数えきれないほどのお店が存在するなかで「ここに行ってみたい」と思ってもらうには、ストーリーを伝えていくことは大切なことでしょう。どういう思いでお店をはじめたのか、どのようなこだわりを持ち、どのようなものを提供していくのかなどの情報を詰め込めるのがホームページです。ゆくゆくはオンラインショップのような形で商品の販売もはじめられるかもしれません。
Squareでは無料でウェブサイトを作成できる機能があります。はじめ方は簡単で、無料アカウントを作成するだけ。ネットショップ機能もついているので、商品をオンライン販売したいと思ったときにすぐにはじめることができます。
ホームページの作成費用の相場は、20万円ほどだそうです。予算を抑えたい場合には自作することを検討してみてもいいかもしれません。更新したいときにいつでも自分で編集ができるので、操作方法に慣れてしまえば修正のたびに出費に悩むことなく、使い勝手がいいと感じるかもしれません。
SNSを開設する
たくさんの人に店舗に訪れてもらうには、まずたくさんの人にお店の存在を知ってもらう必要があります。多くの人に情報を届けるうえで効果的なツールといえば、SNSです。
画像が勝負どころのInstagram、限られた文字数の中伝えたいことをまとめるTwitter、文字数制限なしで投稿ができるFacebookのアカウントは持っておきたいところです。そのほかにも、友達登録をしてもらうことで新商品や特典などを定期的に配信できるLINEや、動画で伝えるYouTubeなど、どのような内容を配信したいかを考えたうえで開設するSNSを選んでいくといいでしょう。
「Social Media Lab」の記事ではInstagramやTwitterなどのユーザー数を年齢別で見ることができます。一定の年齢層をターゲットにしている場合はこのような情報も参考にしてみるといいかもしれません。
今回紹介した飲食店のネーミング方法は、数ある内のごく一部にすぎません。お店の個性を表す最も分かりやすい要素であり、看板やチラシ、口コミなど全ての媒体に表記される重要な項目でもあります。店名を通して伝えたいお店のコンセプトは何なのか、どんなキーワードがお店を表すのかなどをよく考えて長く付き合えるお店の名前を考えましょう。
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執筆は2017年4月27日時点の情報を参照しています。2023年2月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash