飲食店の人材確保で知っておきたいこと

経営資源の3要素といわれる、ヒト、モノ、カネ。モノとカネは自力で用意できますが、「ヒト」は相手の都合とマッチしないと得られないため、一方的に準備することができない点に難しさがあるといえるでしょう。

ただでさえ、頭を悩ませることが多い人材確保の問題。今回は、近年人手不足が課題となっている業種のひとつである飲食業の従業員採用に注目し、採用のヒントを紹介します。

飲食店における人材確保の課題

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帝国データバンクが2018年7月に行った人手不足に関する調査によると、調査対象企業のうち33%が非社員が不足と答えており、業種では飲食店が8割を超えていました。

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2018年7月)(帝国データバンク)

また、日本商工会議所が2018年6月に行なった同様の調査でも、宿泊・飲食業の約8割が人手不足を実感しているという結果が出ています。

参考:「人手不足等への対応に関する調査」集計結果(日本商工会議所)

多くの飲食店が人手不足で困っている中、人材採用は他店との競合が避けられません。採用時にどのような点に注意するとよいのか、いくつかポイントを紹介します。

募集媒体をターゲットに合わせる

効率的な採用活動を考えると、正社員・パートタイマー・アルバイトなど雇用形態に関係なく、募集告知の媒体をターゲットに合わせることが肝心です。媒体ごとの大まかな特色は次のようになっています。

情報誌
駅やスーパーなどに置かれており、ある程度地域を絞りながら、学生や主婦を中心として比較的幅広い年齢層に訴求できます。

折り込み広告
新聞をとっていることが前提で、パートタイムの仕事を探している主婦層などをターゲットとする際に活用できます。

ハローワーク
無料で利用でき、20歳代以上の幅広い年代に訴求できます。

自店舗での張り紙などによる掲示
自店の利用者がターゲットになります。通いやすい近隣に住み、お店に対して親近感を持っていることから、採用した後の定着率が高いと考えられます。

従業員からの紹介
職場の雰囲気や仕事内容を把握している人が紹介するので、見込みのある人材が集まりやすく、定着率も高くなると考えられます。

大学や専門学校などへの依頼
特定の学校に絞り込んだ募集ができます。栄養や接客に関するコースのある学校に求人を出せば、飲食業と比較的相性の良い学生からの応募が望めます。

インターネットの求人サイト
地域的な制限がなく、幅広い年代層に訴求ができます。掲載する期間や内容によっては、手間とコストがかかります。

ソーシャルメディア
店舗のソーシャルメディアアカウントに採用情報を掲載します。フォロワーが採用情報を拡散してくれるので、コストがかからず、また店舗に親近感を持っている人からの応募があると考えられます。

人材紹介業者
理想的な人材が確保しやすい半面、採用手数料がかかります。

仕事内容や条件を具体的に提示する

応募者が採用後のことをイメージしやすいように、仕事の内容や労働条件をできる限り具体的に示すことも大切です。応募者の心的障壁をできるだけ低くするように心がけましょう。

パートタイマーやアルバイトの採用の場合、少ない日数、短い時間でも可能であれば、掛け持ちで働く人にとっても魅力となります。

また、ターゲット層の生活パターンにシフトタイムを合わせ、応募者のライフスタイルのどの時間帯に仕事が組み込めるかを提示するのも効果的です。モーニングの仕込みは学校に行く前の学生、日中のランチタイムは子どもから手の離れた主婦、ディナータイムは学生や副業を希望する社会人など、具体例を示すことで採用後の生活が想像しやすくなり、応募への後押しとなるでしょう。

給与についても採用時の時給だけでなく、昇給のルールや継続して働いた場合のインセンティブが決まっているであれば、可能な限り示しておきましょう。将来的に時給アップが望めることが分かれば、応募する人が増えることも考えられます。

働き手の将来を支援

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将来飲食業での独立開業を目指す人たちに対して、支援する姿勢を見せることが効果的な場合もあります。

「独立開業支援制度あり」という文言を載せることによって、モチベーションの高い人材が集まることが期待できます。将来の夢に向けて努力する人たちとっては、業務プロセスのノウハウなど給与以上の対価も得られるため、簡単にやめてしまうことも少ないでしょう。

また、定年退職後でも働く意欲を持ち、飲食店の開業を目指す人たちもいます。定年後の開業へのステップとして利用してもらうのも一手です。支援の内容についても、できる限り具体的に示しておき、後々トラブルが生じないよう気をつけましょう。

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外国人を雇う

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厚生労働省が2018年1月26日に発表した、2017年10月末の外国人雇用についての届出状況によると、日本で働いている外国人は約128万人にのぼり、届出が義務化されて以来、過去最高を更新しています。外国人はいまや日本経済を支える存在になっています。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)(厚生労働省)

産業別の就業状況を比較してみると、2008年では飲食店・宿泊業が10.4%であったのに対し、2017年では、宿泊業・飲食サービス業が14.3%となっており、飲食分野における外国人労働者の増加が確認できます。

参考:外国人雇用状況の届出状況について(報道発表)(厚生労働省)

日本経済新聞の「外国人依存度、業種・都道府県ランキング」によれば、宿泊・飲食業における依存度が一番高いのは東京で、27人中1人が外国人という結果が出ています。東京だけでなく、愛知、大阪、兵庫、神奈川など人口の多い大都市で多くの外国人が飲食業で働いていることが分かります。

参考:外国人依存度、業種・都道府県ランキング(日本経済新聞)

実際に外国人を雇う際、事前に労働条件をきちんと提示することや、働きやすい環境を整えることは日本人の雇用と同じです。ただし、在留資格ごとに就業できる分野や週の労働時間が決められているので、しっかりと確認するようにしましょう。自信がない場合は、社会保険労務士などの専門家に相談するとよいでしょう。また、ハローワークでは外国人雇用管理アドバイザーによる無料相談を受け付けているので、必要に応じて利用するのも良いかもしれません。

参考:外国人の雇用(厚生労働省)

好環境でポジティブなスパイラルを

飲食店が有利に人材採用を進めるための根本的な方策となるのは、他店と比較して魅力があるお店にすることです。

従業員一人ひとりが活躍し、働くことを楽しんでいる雰囲気は、店舗を訪れるお客様にも伝わります。

顧客の満足度の高いメニューやサービスを心がける努力はもちろん、働き手にとっても気持ちのよい職場づくりを進め、店舗全体の魅力を高めましょう。

ファンの多い繁盛店になれば、時給を上げるなど従業員が喜ぶ施策の実行も現実的になってきます。魅力的な店舗で働けるうえに時給が上がるとなれば、採用時の応募者も増え、人材の質も向上するという、より良い方向へスパイラルが描けるでしょう。

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執筆は2018年10月31日時点の情報を参照しています。
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