法人が青色申告をするメリット・デメリット

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

個人事業主のイメージが強い「青色申告」は法人も利用できます。青色申告を行うことで、欠損金の繰越控除や繰戻し還付、設備投資の優遇など、法人経営に直結するさまざまな特典を受けられます。一方で、適用には事前の承認申請や帳簿の適正な作成など、いくつかの要件があります。

この記事では、法人が青色申告を行うメリットや手続き方法、注意点をわかりやすく解説します。

📝この記事のポイント

  • 法人も青色申告を利用でき、欠損金控除などの税務上の大きなメリットが得られる
  • 青色申告には事前の承認申請が必要で、期限までに税務署へ提出しなければならない
  • 設備投資や少額資産の即時償却など、青色申告を前提とした優遇制度が活用できる
  • Squareを利用すれば、会計ソフト連携や売上管理が効率化し、青色申告に必要な帳簿づくりもスムーズになる
目次


法人でも青色申告できる?

結論からいえば、法人でも青色申告は可能です。

青色申告は、法人税の申告制度の1つで、帳簿を適切に記帳し、一定の要件を満たした法人が利用できる制度です。個人事業主のイメージが強いですが、法人でも同じように青色申告を選択できます。法人税の分野では青色申告の利用率は非常に高く1、一般的な申告方法といえます。

節税につながるメリットが多いことから、多くの法人が青色申告を採用しています。ただし、青色申告を利用するには事前に税務署の承認を受ける必要があります。承認手続きは、所定の申請書を税務署に提出するだけで、手数料もかかりません。

青色申告の手続き方法

法人が青色申告するには、あらかじめ税務署から青色申告の承認を受ける必要があります。手続きの一般的な流れは次のとおりです2

(1)「青色申告の承認申請書」に必要事項を記入する
(2)所轄税務署へ持参、郵送、またはe-Taxで提出する

特に注意したいのが、申請書の提出期限です。既存の法人が翌事業年度から青色申告を利用したい場合は、「青色申告を適用したい事業年度が始まる日の前日まで」に申請書を提出する必要があります。

たとえば、事業年度開始日が4月1日の法人なら、3月31日が提出期限です。この期限を過ぎると、その事業年度は青色申告を利用できず、適用は次の事業年度からとなります。

一方、新設法人の場合は、「設立日から3カ月を経過した日の前日」または「最初の事業年度終了日の前日」のうち早い日までに申請すれば、その事業年度から青色申告を利用できます。

青色申告をしなかった場合は「白色申告」になる

青色申告の承認を受けていない法人、または申請期限に間に合わなかった法人は、自動的に「白色申告」を行うことになります。法人の場合、白色申告は特別な手続きが不要で、通常の法人税申告として扱われます。

白色申告は、青色申告のような欠損金の繰越控除や繰戻し還付などの有利な制度が利用できません。法人にとっては青色申告のほうが一般的であり、節税上も有利です。

jp-blog-blue-return-for-business-1

法人が青色申告するメリットとは

法人が青色申告を行うことで得られる主なメリットには、次のようなものがあります。

これらの制度は、帳簿を適切に作成して申告を行う法人に対して認められる優遇措置であり、税負担の軽減や資金繰りの改善につながります。以下でそれぞれのメリットを詳しく解説します。

欠損金(赤字)の繰越控除ができる

欠損金の繰越控除とは、ある事業年度に生じた赤字(欠損金)を、翌年度以降の黒字と相殺できる制度です。青色申告を行っている法人だけが利用できます3

たとえば、前年度に200万円の赤字があり、当年度に100万円の黒字が出た場合、赤字と黒字を相殺し、当年度の所得を0円として申告できます。残りの100万円分の赤字は、翌年度以降の黒字と引き続き相殺できます。

現在、欠損金の繰越可能期間は、

  • 2018年4月1日以後に開始する事業年度:10年間
  • それ以前に開始した事業年度:9年間
    となっています。

また、控除できる金額には上限があります。

  • 資本金1億円以下の中小法人:原則として欠損金を黒字の全額と相殺可能(控除限度なし)
  • 資本金1億円超の大企業:黒字の50%を上限に相殺可能(残り50%には課税される)

欠損金繰越控除は、法人の税負担を大きく軽減する強力な制度であり、青色申告を行う大きなメリットの1つです。

欠損金の繰戻しによる法人税還付を受けられる

欠損金の繰戻し還付とは、赤字が出た事業年度について、前年度に納めた法人税の一部を還付してもらえる制度です4。資金繰りの改善につながるため、中小企業にとって大きなメリットとなります。

この制度を利用できるのは、以下の要件を満たす法人です。

  • 資本金1億円以下の法人

また、繰戻し還付を受けるには、「赤字が生じた年度の確定申告を期限内に提出していること」などいくつかの条件があります。

還付金額は次の式で計算されます。

還付金額=前年度の法人税額 ×(当年度の欠損金額 ÷ 前年度の所得金額)

たとえば、当年度が赤字で、前年度には黒字で法人税を納めていた場合、その赤字額に応じて前年度に納税した法人税の一部が返還される仕組みです。

jp-blog-blue-return-for-business-3

推計による更正・決定が原則として行われない

推計課税とは、帳簿が備え付けられていない、または内容が不十分で所得金額が正しく計算できない場合に、税務署長が推計によって税額を計算し、更正・決定できる制度です(法人税法131条)5

青色申告を行っている法人は、適正な帳簿を作成・保存していることが前提となるため、税務署が推計によって税額を決めることは原則としてできません。これは青色申告者に与えられる大きな保護措置です。

中小企業は少額減価償却資産を全額損金にできる

中小企業などが、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、その全額を取得年度の費用(損金)として計上できる特例があります6。青色申告を行っている法人だけが利用できます。

対象となる法人は、租税特別措置法に定める「中小企業者等」に該当する法人(主に資本金1億円以下の法人)7であり、適用には以下の条件があります。

  • 1点あたり30万円未満の減価償却資産であること
  • 取得価額の合計が年間300万円まで
  • 事業の用に供する資産であること
  • 明細書を申告書に添付すること
  • 青色申告であること

この特例は長年延長されており、現在も適用が継続されている制度です(租税特別措置法28の2))8。少額の設備投資を即時に費用化できるため、中小企業のキャッシュフローにとって大きなメリットがあります。

中小企業経営強化税制

中小企業が一定の設備投資を行った場合、取得価額の全額を特別償却したり、税額控除を受けたりできる制度が「中小企業経営強化税制」です9

青色申告を行っている中小企業者等が、指定された設備を取得し、事業の用に供した場合に利用できます。

適用される優遇措置は次のいずれかです。

  • 特別償却:取得価額の即時償却(100%)
  • 税額控除:取得価額の一定割合を法人税額から控除

対象となる設備は、機械装置、測定機器、建物附属設備、ソフトウェアなど、生産性向上に資する設備が中心です。設備投資の負担を軽減できるため、事業拡大や効率化を図りたい中小企業にとって大きなメリットとなります。

jp-blog-blue-return-for-business-2

法人が青色申告するデメリットとは

法人が青色申告を行ううえで大きなデメリットは多くありません。ただし、青色申告にはいくつか注意点があります。

  • 帳簿が適正に作成されていない場合、青色申告の承認が取り消される可能性がある
  • 期限内申告が求められる(期限後申告では多くの青色特典が使えない)
  • 特典を利用するには必要な明細書や書類の添付が必要

これらに気を付ける必要はありますが、実務では会計ソフトや税理士のサポートを使う企業も多く、過度に心配する必要はありません。

税務上のメリットが多いため、法人が青色申告を選択するのが一般的です。特に欠損金の繰越控除や設備投資の優遇制度など、法人経営に直結する効果が得られる点は大きな魅力といえるでしょう。

法人には役立つ機能が盛りだくさんのSquare

店舗を全国に増やしたい、ゆくゆくは海外にも出店したいなど、会社を運営していくなかで成長を望むのは当然のことでしょう。ただし大きなチャレンジには大きな出費が伴うものです。青色申告をするなど地道な節税に取り組むのもそうですが、事業運営に欠かせない各種ツールもできるだけ低コストなものを選べると、余計な出費も増えず節約に取り組めます。

Squareでは低価格でキャッシュレス決済を導入できるのはもちろん、ほかにもさまざまな機能を低コスト、あるいは無料で使うことができます。特に店舗数を拡大したいという事業主にはうれしい機能が多くあるので、さっそく見ていきましょう。

● Square POSレジ
アプリをタブレットやスマートフォンにダウンロードするだけで使えるPOSレジアプリです(※)。商品の登録数に制限はなく、1つのアカウントに300店舗まで無料で登録することができます。

jp-blog-wat06

● Square オンラインビジネス
Squareのネットショップ作成機能です。POSレジと同じように商品の登録数に制限はありません。また、複数のネットショップを無料で作成できるので、一般消費者向けネットショップと卸売り向けネットショップを分けたい場合にも1つのアカウントから売上情報をすべて管理することができます(※)。料金プランごとの機能についてはこちらをご確認ください。

※:業種が異なる場合は、業種ごとにアカウントを作成する必要があります。

jp-blog-sob

ネットショップを無料で開始するならSquare

Square オンラインビジネスはモバイル対応のオンラインストアを無料で構築できるサービスです。実店舗と在庫を自動で連動させたり、店頭受取やデリバリーに対応していたりと、便利な機能が豊富。無料でECをはじめたい小売店や飲食店に向いています。

● Square シフト
Squareのシフト管理機能です。出退勤の記録やシフトの作成・共有などが行えます。各従業員の売上実績を確認するには有料プランがおすすめです。

● Square 請求書
Squareの管理画面からオンラインで請求書を作成・送信できる機能です。何件でも無料で作成・送信できます。「freee」や「マネーフォワード クラウド会計」などの会計ソフトとも連携ができるので、同期しておけば請求額の支払いが完了次第、自動で会計ソフトに売り上げとして反映されます。

よくある質問

法人でも青色申告はできますか?

はい、できます。青色申告は個人事業主だけでなく、法人税の申告においても利用可能です。多くの法人が青色申告を採用しており、一般的な申告方法といえます。

青色申告を始めるには何をすればいいですか?

税務署に「青色申告の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。

青色申告のメリットにはどんなものがありますか?

欠損金の繰越控除、欠損金の繰戻し還付、推計課税の原則禁止、30万円未満資産の即時償却、設備投資の税額控除など、法人経営に大きなメリットがあります。

青色申告に必要な帳簿づくりを効率化する方法はありますか?

Squareを利用すると、売上データを自動で記録でき、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトと連携することで記帳作業が大幅に省力化できます。複式簿記の帳簿作成もスムーズになります。

まとめ

節税をするうえで、法人でも行いたい青色申告。この記事では青色申告に必要な手続きやメリットなどを説明してきました。なお法人を営む際にはコストの削減も大切ですが、日々の業務に押しつぶされてしまわないためにはできるところから作業負担も減らしていきたいところです。コストを削減しながら作業量を削減していくには事業に役立つツールに無料、あるいは低コストのものを選ぶのがおすすめです。無料アカウントを作成し、まずは上記でも紹介したSquareの使い心地を試してみてはいかがでしょうか。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2020年2月11日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。