ブロックチェーンの技術に世界中から注目が集まっています。導入を検討している企業も増えており、今後フィンテックや不動産、貿易などさまざまな分野に活用されるといわれています。
今回はブロックチェーンが小規模事業者にもたらす可能性について説明します。
仮想通貨の基盤となっているブロックチェーン技術
サトシナカモトという人物による仮想通貨に関する論文をきっかけに生まれた、ブロックチェーン。分散型台帳技術とも呼ばれています。イメージするなら、データが入ったブロックがチェーンのようにつながっているような構造になっており、一つひとつのブロックがどんどんつながっていき、台帳になります。
分散型台帳はユーザー全員に共有され、データはオープンになっているので改ざんが行われればすぐに発覚するようになっています。透明性があるのでマネーロンダリングには不向きといえます。不特定多数で取引履歴となるデータを共有し管理することを、非中央集権型システムといいます。
スマートコントラクトとは
スマートコントラクトを直訳すると「賢い契約」という意味があります。ブロックチェーンを支える技術のひとつです。
ブロックチェーン上に、契約内容の条件や成果、報酬内容などを書き込んでおくことで、仲介者を挟むことなく契約が自動的に行われます。仲介期間や業務的な手間がかからないことで、大幅なコスト削減が期待されています。
特に金融機関では契約内容によっては複雑なプロセスが必要とされるためスマートコントラクトを活用することで時間や人件費などを削減することが可能です。企業に導入することはもちろん、不動産関係の登記や行政機関でも利用することが可能です。
参考:三菱地所、ネット賃貸借契約へ提携(2018年8月21日、日本経済新聞)
「ブロックチェーンを導入している例」
国家単位で導入
バルト三国でもあるエストニアは美しい景観が人気の観光地ですが、IT先進国でもあります。住民票、納税や登記、医療記録や株式会社での議決権行使など、あらゆる分野でブロックチェーンが導入されています。
ブロックチェーンを導入することで役所に足を運んだり、長い待ち時間などのわずわらじい手間が解消され、作業効率が良くなることで経済の活性化にもつながっています。
参考:公共サービスが99%デジタル化。“未来国家エストニア”視察リポート(FNN PRIME)
食の安全にブロックチェーンを導入
2016年10月にアメリカ大手のスーパーでは、IT企業や大学などと提携し、中国から米国に輸送される豚肉をブロックチェーンに記録するテストをスタートしました。データは改ざんされることもなく、永久的に保管されるので、食品に問題が起こった際もどこで問題が出たのかを迅速に検証することが可能です。
日本でもブロックチェーン技術を使った国産ジビエの流通管理の試験運用が始まっています。
参考:
ウォルマート、食品管理に「ブロックチェーン」を導入(2016年11月30日、WIRED)
ブロックチェーン技術mijinをジビエ食肉トレーサビリティに採用、試験運用を開始
(2017年10月3日、TechCrunch Japan)
ブロックチェーンの認知度
イギリス調査会社、ジュニパーリサーチが2017年9月に企業の創業者や役員、管理職、エンジニア職など約400人弱を対象にブロックチェーンの認知度調査を行ないました。
調査では、「ブロックチェーンの活用を検討しているか、すでに計画を進めている」企業は調査対象の全体の39%、社員2万人以上の大企業では56%に上る結果となりました。ただ、導入を検討している企業のうち「顧客やパートナーから嫌がられたり、拒否されたりする可能性を心配している」は42%となりました。ブロックチェーン技術を認識し、自社に活用したいと思う企業が多い一方で、難しさを感じている企業も多いことが調査結果から推測されます。
スマホやタブレットでカード決済を受け付ける
Squareでカード決済ブロックチェーンが企業にもたらす可能性とは
ブロックチェーンの導入は、企業に多くの面でメリットがあると考えられます。
・データをブロックチェーン上に移すことで高いセキュリティが保たれる
・会社のサーバーが何かのトラブルに遭っても、データはブロックチェーン上で保管されている
・サーバーや外部機器のように機材のスペースを取らない。
・紙などの書類もブロックチェーン上に移せば、書類保管のためのスペースが不要になる
・契約内容をブロックチェーン上に書き込めば、紙での書類が不要になり、また改ざんもされないので仲介を必要とする契約にスマートコントラクトを利用すれば、事務的な業務のコストダウンにもなる
・事務作業の時間が短縮されれば、商品開発や企画に時間をあてられる
ブロックチェーンはさまざまな分野に活用できる画期的な技術です。前述のジビエ食肉のトレーサビリティへの採用など、これまで困難だと思われていた課題を解決する方法になると期待されています。導入には大きな変革やコスト、時間もかかるかもしれませんが、それだけ価値のあるものかもしれません。
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執筆は2018年11月1日時点の情報を参照しています。
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