※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
フリーランスや個人事業主は、がんばって結果を出せばそれだけ収入も増えて手応えを感じる働き方が魅力的な一方で、収入が急に増えたり減ったりと、変動が大きく、毎年の所得が一定しないことが悩みだという人も多いのではないでしょうか。
所得に対する税金は、前年の所得に対して支払います。このため、一時的に収入が増えた年の翌年、収入が下がったところへ大きな税金負担がのしかかってきてしまう可能性があります。
このような、年ごとに収入の変動が大きい場合の負担を減らせる制度として「平均課税制度」があります。ここでは、所得の平均課税の種類や利用できる条件、算出方法、手続きの方法について解説します。
📝この記事のポイント
- 平均課税制度は、変動所得や臨時所得の大きな変動による税負担を平準化するための仕組み
- 適用対象は変動所得・臨時所得に限られ、通常の事業所得や給与所得は対象外
- 適用条件は過去2年の変動所得との比較や、臨時所得が総所得の20%以上かどうかで判定する
- 確定申告時に自分で申告する必要があり、売上管理にはSquareを活用すると区分整理・申告作業が効率化できる
目次
- 平均課税制度とは
・平均課税の対象となる所得
・平均課税の対象・対象外の比較
・平均課税は過去にさかのぼることが可能 - 平均課税の条件を解説
- 平均課税の計算方法
・必要経費の計算 - 平均課税の手続き方法
- Squareを活用して売上管理をスムーズに
- よくある質問
・平均課税制度はだれでも使えますか?
・フリーランスでも使えるケースはありますか? - まとめ
平均課税制度とは
所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が増えるほど適用される税率も高くなります。詳しい税率は国税庁の発表に委ねられますが、ポイントは一時的に大きな収入が発生すると、その年だけ高い税率が適用されてしまう点です。
ある年突然収入が増えた個人事業主やフリーランスの場合、翌年の収入で税金を支払うことが困難になる可能性があります。特にクリエイティブな仕事でいつ何がヒットするかわからないような職業や、気象状況の変動に大きく左右される漁業、数年単位で契約を結んで更新時にまとまった金額の支払いが出る職業など、急激な変化が起きたときに税額が極端にならないよう調整するために設けられているのが「平均課税制度」です。
平均課税制度は、対象となる特定の所得について、過去数年の平均を使って税率を平準化し、急激な収入変化の影響を和らげる仕組みです。
平均課税の対象となる所得
平均課税制度は、すべてのフリーランス・個人事業主の所得に適用できるわけではなく、「変動所得」と「臨時所得」に限られています。通常の事業所得(売上−経費)が対象になるわけではない点に注意が必要です。
変動所得
変動所得は、毎年の収入に大きな変動があると予測される事業所得や雑所得です1。
代表的な例:
- 印税や原稿料、作曲料
- 著作権の使用料
- 漁獲やのりの採集
- はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠・真珠貝の養殖
水産生物の場合は捕獲してそのまま販売したり簡単な加工で販売したりするものを指します。同じ水産でも、わかめの採取やますなどの養殖は含まないなど、一般的な範囲より対象範囲が限定されているので注意が必要です。

臨時所得
臨時所得は野球選手の年俸契約や不動産の更新料など、3年以上のまとまった期間分を一時的に所得したものが挙げられます1。
代表的な例:
- 不動産、借地権、耕作権、船舶・航空機、採石権、鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権などの一時的に受け取る権利金や頭金(3年以上の契約で使用料の2年分以上の所得)
- 公共事業の施行などに伴う事業の休業・転業・廃業による補償金(3年以上の期間分)
- 鉱害その他の災害による補償金(3年以上の期間分)
- 職業野球の選手などの専属契約(3年以上の契約で報酬の2年分以上の所得)
平均課税の対象・対象外の比較
| 区分 | 内容 | 該当の例 | 平均課税の対象 |
|---|---|---|---|
| 変動所得 | 年ごとの変動が大きい所得 | 原稿料、著作権料、漁獲 | ● 対象 |
| 臨時所得 | 数年に一度まとまって発生する所得 | 特許使用料、長期契約の更新報酬 | ● 対象 |
| 事業所得 | 事業の通常の収入(売上−経費) | フリーランスの売上全般 | ✖ 対象外 |
| 給与所得 | 会社勤めの給与 | 給与収入 | ✖ 対象外 |
平均課税は過去にさかのぼることが可能
平均課税は、確定申告時に選択して適用する制度ですが、申告後であっても「更正の請求」によって過去5年分までさかのぼって適用を求めることが可能です。
通常、税金の計算方法によっては「一度申告したら変更できない」ケースもあります。しかし平均課税は負担調整のための制度であることから、後から判明した収入の変動に応じて見直しが認められています。
「その年に変動所得や臨時所得が多かったのに、平均課税を使わず高い税率で計算してしまっていた」という場合は、過去の申告内容を再チェックし、対象年がないか確認する価値があります。
平均課税の条件を解説
平均課税は、「変動所得」「臨時所得」のどちらか、または両方がある場合に利用できますが、誰でも適用できるわけではありません。適用の可否は、本年の変動所得・臨時所得と、過去2年間の変動所得の金額を組み合わせて判定します。
ポイントとなるのは次の2点です。
- 過去2年の変動所得との比較
- 臨時所得が総所得の20%以上かどうか
以下のいずれかを満たす場合、平均課税を利用できます1。
1.過去2年間に変動所得がない場合
本年に変動所得が発生していれば、平均課税を選択できます。
2.過去2年に変動所得がある場合(A+Bの両方を満たす)
A. 過去2年分の変動所得の合計額の1/2が、本年の変動所得に満たない(=本年は収入が大きく増えた年である)
B. 本年の変動所得+臨時所得の合計額が、総所得金額の20%以上ある
3.過去2年の変動所得が本年より大きい場合(Cのみを満たす)
C. 本年の臨時所得が、総所得金額の20%以上ある(=臨時的に大きな収入が発生した年)
平均課税の計算方法
平均課税計算は、おおまかにいうと、変動所得・臨時所得の20%の金額に累進課税の税率を掛けた後、5倍して1年分の税額とする方法が目安になります。
たとえば、平均課税の対象となる金額が500万円の場合
| 区分 | 計算例 |
|---|---|
| 平均課税を使わない場合 | 500万円 × 税率20% − 控除額= 約57.25万円 |
| 平均課税を使う場合(概算) | 〔500万円 × 20% × 税率5%〕×5= 約25万円 |
税負担の差:約32万円の軽減
平均課税の対象となる金額が1000万円の場合
| 区分 | 計算例 |
|---|---|
| 平均課税を使わない場合 | 1000万円 × 税率33% − 控除額= 約176.4万円 |
| 平均課税を使う場合(概算) | 〔1000万円 × 20% × 税率10%〕×5= 約51.25万円 |
税負担の差:約125万円の軽減
このように、平均課税を利用した場合と利用しなかった場合では、税額が異なってきます。一時的な所得が大きくなればなるほど差が開いてきますので、上記の計算方法でざっくりと計算してみて対象となっているものがないか、チェックするとよいでしょう。
概算は理解しやすいように簡略化したものですが、実際の税額は下記の方式で計算します。
(A)課税総所得金額 - 平均課税対象金額 × 4/5=調整所得金額
(B)調整所得金額に税率を適用して求めた税額 = 調整所得金額に対する税額
(C)課税総所得金額 - 調整所得金額 = 特別所得金額
(D)特別所得金額 × 調整所得金額に対する税額/調整所得金額 = 特別所得金額に対する税額
(E)調整所得金額に対する税額(B)+ 特別所得金額に対する税額(D)=その年の課税総所得金額に対する所得税額
計算手順が複雑なため、正確な税額を求めたい場合は税理士への相談をおすすめします。
必要経費の計算
平均課税は、事業所得や不動産所得、雑所得の一部を対象として計算しますが、必要経費などを差し引きする際には、変動所得・臨時所得とそれ以外の所得について、対象となる部分ごとに分けて計算します。個別に計算できない必要経費については、経費の種類にあわせ、按分します。このため、対象となる種類の所得については、あらかじめ区別して整理しておくとよいでしょう。
平均課税の手続き方法
平均課税制度は、確定申告時に自分から申告する形で適用されます。「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」に記載し、税務署へ提出します。計算書は、国税庁のウェブサイトから入手できます。手引きも公開されていますので参考にしながら記入してみると良いでしょう。
なお、青色申告特別控除は、変動所得・臨時所得の金額と、それ以外の所得の金額との比率で按分することになります。
Squareを活用して売上管理をスムーズに
平均課税を正しく適用するためには、変動所得・臨時所得とそれ以外の収入をきちんと区別し、毎日の取引や売上データを整理しておくことが欠かせません。決済サービスのSquareを使えば、売り上げの記録と分析が自動化されるため、平均課税の判断材料となる「年間の売上推移」や「収入の変動幅」をいつでも確認できます。
Squareでできること
- Square 請求書:クレジットカード決済機能付きのクラウド請求書、入金状況も自動で管理
- Square データ:日次・月次・年次の売上推移を自動で可視化。会計ソフトとも連携し、確定申告作業を効率化

収入の変動が大きい働き方ほど、データの一元管理が平均課税の判断や資金繰りに大きな力になります。日々の売上管理を自動化して、確定申告時の手間を減らしたい人は、Squareの活用を検討してみるとよいでしょう。
請求書の作成から送信まで簡単スピード対応
Square 請求書は決済機能付きのクラウド請求書サービスです。無料ではじめられ、自動送信や定期送信など便利な機能も盛りだくさん。フリーランス、個人事業主、業務請負やサービス請負業の請求業務を簡単に効率化できます。
よくある質問
平均課税制度はだれでも使えますか?
いいえ。対象となる「変動所得」「臨時所得」がある人に限られます。一般的な事業所得・給与所得だけでは利用できません。
フリーランスでも使えるケースはありますか?
文筆、作曲、デザイン、写真などの著作物に関係する収入は、変動所得として対象になる場合があります。
まとめ
平均課税は、賢く活用すれば所得税の負担を軽減させることができ、毎年の事業を円滑に進めていくための強い味方になってくれます。ただ、うまく活用するためには、それぞれの所得や経費を丁寧に管理しておくことが重要です。また、事業者一人ひとり事情が異なるため、税務相談の窓口で聞いてみたり、税理士などの専門家を上手に活用したりすることをおすすめします。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2020年3月19日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。

