公開日:2022/11/30
フリーランスや個人事業主が所得税を納付する仕組みは、1年間の所得が確定してから税額を計算して納付する「確定申告」がよく知られています。しかし、税額が一定を超えると「予定納税」が必要となり、6月中旬に通知が送られてきます。「税金を納めたばかりなのに、また?」と思うかもしれませんが、これは決して負担が重くなる制度ではありません。通知を受け取ったときに慌てないよう、予定納税の仕組みや納付方法について知っておきましょう。
個人の予定納税とは?
予定納税とは、税金を分割して前払いする仕組みのことです。個人事業主の場合、所得税および復興特別所得税の額を3等分し、2回分を予定納税として納め、残りを確定申告時に納めます(2013年分の所得から、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するため、その年の所得税額の2.1 %が復興特別所得税として課されています)。
前年度の所得などをもとに計算した予定納税基準額が15万円以上の場合、予定納税の対象です。対象者には税務署長から通知が送られてくるので、自分で計算したり、申告したりする必要はありません。
【参考サイト】No.2040 予定納税|国税庁
予定納税を行う理由
所得税は、毎年1月1日から12月31日までに生じた事業所得や不動産所得をもとに計算されます。しかし、所得が増えると所得税の額も大きくなるため、確定申告時に全額を支払うのは大変です。また、月によって収入の変動が激しく、1・2月の収入が少ない事業者の場合、3月の確定申告で所得税を全額納付することは大変です。予定納税を行うことで、一括納付による経済的負担を軽減できます。国にとっても、早期徴収できるため税収を平準化でき、税金が未回収となるリスクを減らせます。
予定納税基準額の計算方法
基本的には、前年度に申告した納税額が予定納税基準額です。ただし、前年度に退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得などがあった場合は、その額を除外して計算します。つまり、一時的な所得を除いた継続的に得られる所得が対象です。臨時収入によって前年度の納税額が多くても、心配する必要はありません。また、災害減免法の規定の適用を受けている場合は、その適用がなかったものとして計算されます。
予定納税額の通知
予定納税額は、所轄の税務署から6月中旬に届く「令和○年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」に記載されています。納付時期は7月と11月の2回です。
- 第1期分 7月1日〜7月31日
- 第2期分 11月1日〜11月30日
上記期間に、予定納税基準額を3分の1ずつ納付します。なお、期限までに納税を行わない場合は延滞税が課されます。特に期限を2カ月以上過ぎると延滞税の税率が高くなり、負担が大きくなります。必ず期限内に納付しましょう。期限内の納付が難しい場合は、後述する「予定納税額の減額申請」を行うと良いでしょう。
予定納税の納付方法
予定納税には、次の4つの納付方法があります。
直接納付
直接納付は、金融機関や所轄の税務署の窓口で、現金に納付書を添えて納付します。納税額が30万円以下の場合はコンビニエンスストアでも納付できます。手数料はかかりませんが、クレジットカードや電子マネーなどは利用できません。
振替納税
振替納税は、指定した預貯金口座から引き落として納付する方法です。事前に税務署や金融機関へ依頼書を提出しなければなりません。変更しない限り、一度指定すると自動的に次回以降も同じ口座から振替納税が行われるため、納付忘れを防ぎます。ただし、残高不足により引き落としできなかった場合は延滞税が課されるので注意しましょう。
電子納付
電子納付は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して、預貯金口座からの引落しやインターネットバンキングにより電子納付する方法です。手数料はかかりませんが、金融機関によってはインターネットバンキングの利用に手数料がかかる場合があります。
クレジットカード納付
クレジットカード納付は、国税庁長官が指定した納付受託者(トヨタファイナンス株式会社)へ、国税の納付の立替払いを委託する方法です。納付税額に応じて、クレジットカードの決済手数料がかかります。また、2022年12月1日からは30万円以下であればスマートフォンアプリによって納付することもできます。こちらは手数料不要です。
【参考サイト】
[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)|国税庁
スマホアプリ納付の手続
予定納税額の減額条件と申請方法
予定納税額の通知を受けた後でも、申告すれば税額を軽減できる場合があります。廃業や休業をした場合、所得が前年度より大幅に減ると予想される場合、災害や盗難にあった場合などが対象です。
減額を受けるには、所轄の税務署に「予定納税額の減免申請書」を提出し、期限内に承認されなければなりません。6月30日の時点で、その年の所得税が予定納税額より低くなると予想される場合は、7月15日までに申請しましょう。第1期分の納付後、第2期分のみ減額したい場合は、11月15日までに申請が必要です。減額申請には審査があり、必ず受理されるとは限りません。
なお、予定納税で税金を納めすぎた場合は、確定申告後に差額が還付されます。その際は、還付加算金として利息を受け取ることができます。資金繰りに余裕があるなら、減免申請を行わずに納付しておくのも一つの方法です。
【参考サイト】[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
予定納税の会計処理と確定申告
所得税は必要経費には当たらないため、その前払いである予定納税も経費に計上できません。事業用の資金から納付した場合は「事業主貸」勘定として処理しましょう。同様に、確定申告を行って還付金を受け取った場合も、収益や売り上げとして計上する必要はありません。還付金は「事業主借」勘定で仕訳します。事業用でない預金口座などから予定納税額を支払ったときは、仕訳する必要はありません。
なお、予定納税を行った場合は、確定申告の際に予定納税額を記載します。「確定申告書B(第一表)」の「㊿予定納税額(第1期分・第2期分)」の欄に、納めた予定納税の第1期分と第2期分の合計額を記入します。すでに税金を納めているという申告になりますので、忘れずに記入しましょう。
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予定納税に関するよくある質問
予定納税とは何ですか?
所得税や復興特別所得税の一部を、前もって支払う制度のことです。前年度の納税額をもとに計算した「予定納税基準額」が15万円以上の場合は、予定納税を行います。対象者には6月中旬に通知書が送られてくるので、自己申告は不要です。実際の納税額が予定納税基準額より低かった場合は、確定申告の際に還付されます。
予定納税を行う理由は何ですか?
確定申告時に全額を納付する場合と比較して、納税者の負担が偏ることを避けられます。納付時期や納付額を分割できるため、負担が一時期に集中することがなく、資金繰りがスムーズになります。国は、税収を平準化できる、未回収のリスクを減らせる利点があります。
予定納税はいつ行いますか?
その年の6月15日までに、所轄の税務署から予定納付額を記載した通知書が送られてきます。第1期分は7月1日〜7月31日、第2期分は11月1日〜11月30日が納付期間です。期限内に納付しないと延滞税が課されるので、必ず納付期限を守るようにしましょう。納付が難しい場合は減免を申請できます。
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