ビジネス用語集

経常利益とは?営業利益や純利益との違い、計算方法

公開日:2023/06/27

経常利益は、企業の本来事業の中でどの程度の利益が出ているかを示すもので、経営状態を把握するための重要な指標です。

本記事では、経常利益について、特徴と営業利益や純利益など他の利益との違い、計算方法を解説するとともに、経常利益から得られる経常利益率の目安や経営状況の分析への活用ポイントを紹介します。

経常利益とは?営業利益や純利益との違い

はじめに、経常利益にはどのような特徴があるのか、簡単に整理し、その他の利益とどこが異なるのかをみていきましょう。

経常利益の特徴

経常利益とは、企業活動を総合的にみたときの収益力を表した指標です。企業活動には収入と支出があり、収入から支出を差し引いたものが利益となります。利益のうち、経常利益は、繰り返し行っている(経常的な)企業活動、すなわち一時的な収入や支出を除いた、本業だけでなく副次的な活動もすべて含んだ収入と支出を計上するのが特徴です。例外的な収支を除いた通常時の企業活動を、本業以外の利益も入れた総合的な収益力をみることにより、企業としての経営状況を把握することができるのです。

経常利益と営業利益、純利益との違い

経常利益は数ある「利益」のひとつです。利益は、「収益-費用」すなわち収入から支出を引くのが算出の基本で、利益の種類によって収益の範囲と費用の範囲が異なり、算出結果から得られる意味合いが変わります。

例えば、「営業利益」は、経常利益で算入する本業以外の利益が範囲から外れます。企業が本来の業務としている商品の販売やサービスの提供で得た売上から、原価や販売費を差し引いたものを指し、本業だけの利益を算出します。つまり、営業利益をみることによって、企業が本業でどの程度稼いでいるのかを把握することができるのです。

また、「純利益」は、経常利益で除外していた一時的な臨時の利益を算入します。その期間の企業活動で得た収入とかかった支出をすべて合わせ、差し引きした利益なのです。つまり、純利益をみると、その期間の中で企業が最終的にどの程度稼ぐことができたのかを把握することができるといえます。

経営状況を把握するための利益には、その他にもいくつか種類があり、算出方法が異なります。詳細については後述の「経常利益と混同しやすい用語」の中で解説します。

【参考サイト】厚生労働省 経営指標の読み方

経常利益の計算方法

では、経常利益は具体的にどのようにして算出すればよいのでしょうか。「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第95条には、以下のように示されています。

営業利益金額又は営業損失金額に、営業外収益の金額を加減し、次に営業外費用の金額を加減した額を、経常利益金額又は経常損失金額として表示しなければならない。
(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第3章 損益計算書 第4節 営業外収益及び営業外費用(経常損益金額の表示))

引用:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)

一般的にいうと、経常利益は、以下の式で求められるというわけです。

経常利益-営業利益+営業外収益-営業外費用

ここでいう営業利益は、売上総利益から販管費を引いたものを、また売上総利益は、売上高から売上原価を引いたものを指します。

つまり経常利益は、次の式に数値を当てはめていくと求めることができるのです。

経常利益=売上高-売上原価-販管費+営業外収益-営業外費用

それぞれの項目を簡単に説明しておきましょう。

  • 売上高:企業の主たる活動(商品の販売やサービスの提供)により得た収入
  • 売上原価:商品の仕入れや材料など売上に対応する支出
  • 販管費:販売費及び一般管理費(人件費や光熱費、減価償却費、家賃、租税公課など)
  • 営業外収益:本来の営業活動以外の収入(受取利息、受取配当金、雑収入など)
  • 営業外費用:本来の営業活動以外に要した支出(支払利息、雑支出など)

【参照サイト】中小企業庁:「中小企業の会計 31問31答」問5

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経常利益から分かること

経常利益は、一定の期間内に企業が行った通常の活動で得た収入と活動に要した支出について、本来の営業だけでなく資産運用もすべて合わせて収支を差し引き、算出します。

また純利益と異なり経常利益には一時的な収支が入らないため、経常利益を分析することによって、その期間内に本業や資産運用といった企業活動全体でどの程度の収益を上げているのか、企業の経営力がわかるのです。

そのほかにも、経常利益と営業利益を比較すれば、企業活動の中で本来の事業とすべき営業活動と資産運用等の営業外活動との利益のバランスをみることができます。

また、自社と同じ業種や、同程度の規模の企業と比較することにより、自社の利益のバランスが市場の相場にどの程度沿っているかを把握することも可能です。経常利益は、経営状態をチェックする指標ともなるのです。

経常利益と混同しやすい用語

企業活動で得られる「利益」にはさまざまな種類があります。ここからは、企業が知っておくべき利益の種類と特徴、算出方法を整理しておきましょう。

利益は、本業の売上を主軸にみて差し引く支出の少ない方から順に、売上総利益、営業利益、経常利益、純利益となります。そのほか、経常利益から派生した事業利益があります。

売上総利益

売上総利益は、商品の販売やサービスの提供といった本業により得た収入(売上高)から、商品の仕入れや材料費などの原価を差し引いたもので、計算が単純なことから本業の稼ぎがうまくプラスを向いているか、日々の利益の把握に適しています。

売上総利益=売上高-売上原価

営業利益

営業利益は、売上総利益から販管費を差し引いたものです。商品の販売に必要な販売費や、従業員の給料や地代家賃などサービスの提供に必要な一般管理費を取り除いた利益で、本業での稼ぎが企業の経営としてどの程度プラスになっているかを把握することができます。

営業利益=売上総利益-販管費

税引前当期純利益

税引前当期純利益は、経常利益に通常の企業活動では発生しない一時的な収入(特別利益)と支出(特別損失)を算入したものです。特別利益には土地や有価証券の売却益など、特別損失には災害による損害などがあります。税金を除くすべての収支を反映させたもので、その期間における税金控除前の企業としての最終的な利益を把握することができます。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

税引後当期純利益

税引後当期純利益は、税引前当期純利益から課税される税金(法人税、住民税、事業税)を差し引いたもので、企業の手元に残る最終的な利益を指します。その期間の企業活動について、全体として利益がどの程度あったのかがわかります。

税引後当期純利益=税引前当期純利益-税

事業利益

事業利益は、経常利益に営業外の支出分を足し戻して算出する利益です。企業の通常活動について、本業に加えて金融収益などの本業以外の収益がどの程度あったのかを明らかにします。営業利益に営業外の収益を足して求めることもできます。

事業利益=経常利益+営業外費用(または、営業利益+営業外収益)

【参照サイト】
中小企業庁 中小企業の会計31問31答 Q5「損益計算書」って、なんですか?
事業利益の計算式・業種別の目安をわかりやすく解説|ザイマニ

経常利益率とは?

経常利益率とは、売上高や自社の資本などに対する経常利益がどの程度あるのかを比率で把握するものです。

企業の業績は、経常利益高という総額の形で量的に把握をすることも重要ですが、通常の企業活動でどの程度の利益が出ているのかを割合でみておくと、規模の異なる同業他社との比較がしやすくなります。

また、自社内での経常利益の経年の変化も、割合でチェックする方がより正確に把握できます。経常利益率での業績評価に慣れておくことが望まれます。

経常利益率の計算方法

経常利益率は、算出するために当てはめる対象により、売上高経常利益率、自己資本経常利益率、総資本経常利益率と種類があり、収益性の尺度が異なります。それぞれどのように計算するのかをみていきましょう。

売上高経常利益率

売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を表したもので、通常の企業活動として行っている事業の収益性を把握する尺度です。売上高経常利益率が高いと、本来業務での収益性が高いといえます。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100

自己資本経常利益率

自己資本経常利益率は、純資産に対する経常利益の割合を示したもので、企業の自己資本(純資産)を運用することでどの程度経常利益を上げているのかを把握する尺度です。自己資本経常利益率が高いほど、純資産が有効に活用されているといえ、低い場合は投下資本に対し十分な利益を確保できていない運用状況だといえます。

自己資本経常利益率=経常利益÷純資産×100

なお、自己資本利益率(ROE)は純資産に対する当期純利益で、経常利益の割合ではありません。

総資本経常利益率

総資本経常利益率は、総資本に対する経常利益の割合で、一般的にROAと呼ばれているものです。通常の経営において、総資本の運用でどの程度の経常利益を上げているかが分かります。総資本経常利益率が高いほど、小さな資本で大きな利益が確保できているといえ、低い場合は投下した資本に対し十分な利益を確保できていない状態だといえます。

総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100

【参照サイト】厚生労働省 経営指標の読み方

経常利益率の目安

経常利益率は、業種によって業績が異なるため、適切な利益率も違ってきます。中小企業庁が毎年中小企業の財務情報や経営情報を把握するために実施している統計調査の「中小企業実態基本調査」では、中小企業を産業中分類別、従業員規模別に、雇用状況や財務状況、設備投資などを調査しています。

同調査には、中小企業(法人企業)の経営状況を把握するものとして次の6指標が挙げられており、その中で売上高利益率は、企業経営の収益性の指標として用いられています。

  • 総合力:自己資本当期純利益率(ROE):当期純利益÷純資産×100(%)
  • 収益性:売上高経常利益率:経常利益÷売上高×100(%)
  • 効率性:総資本回転率:売上高÷総資本(総資産)(回)
  • 安全性:自己資本比率:純資産÷総資本(総資産)×100(%)
  • 健全性:財務レバレッジ:総資本(純資産)÷純資産(倍)
  • 生産性:付加価値比率:付加価値額÷売上高×100(%)

例えば、「令和4年中小企業実態基本調査速報(令和3年度決算実績)」では、中小企業(法人企業)全体での売上高経常利益率は4.26%で、経年で比較すると令和元年度・令和2年度より割合が高くなっています。

産業大分類別での売上高経常利益率をみると、前年の確報(令和3年調査の概況(令和2年度決算実績)、法人企業全体では3.25%)では、不動産業や技術サービス、情報通信業などは5~8%ほどと高めで、製造業、建設業などは3~4%あたり、卸売・小売業などは1~2%と低めになっています。

同調査は毎年中小企業庁の統計データとして発表されます。自社の経営の収益性を図る目安として活用しましょう。

【参照サイト】
中小企業庁 中小企業実態基本調査
中小企業庁 令和4年中小企業実態基本調査速報(要旨)(令和3年度決算実績)
中小企業庁 令和3年調査の概況(令和2年度決算実績)

経常利益を分析する上で押さえるべきポイント

経常利益は、自社の経営状態を収益性で把握するための重要な指標です。数値を正しく読み解いて企業戦略へ効果的に活かせるよう、経常利益を何と比較しておけばよいか、チェックポイントを整理しておきましょう。

自社の過去の経常利益との比較

一般的に企業の業績は、年度単位で決算という形をとって明らかになります。しかし、経営の中には単数の年度だけでは判断しきれない状況もありえます。例えば、将来性を見込んで立ち上げた新規事業に取り組んでいる場合などは、事業が軌道に乗るまでは収益性の評価が低くなってしまうでしょう。初期投資が大きい場合もその年度だけでは利益の判断ができません。

複数年で経常利益の数値を比較し、増加の傾向を示すのかそうでないのかを確認することにより、今後の投資をどこに向けていけばよいのかの経営戦略を詳細に検討することができるのです。

自社の営業利益との比較

経常利益は、本業の商品販売やサービス提供で得た営業利益だけでなく、資産運用など財務活動で得た営業外利益も含みます。このため、全体としての企業の経営上の体力を測る指標としては有効といえるでしょう。

一方で、債務の返済が多く残っている場合など、営業外損益が大きく営業利益を削ってしまうと、本業で利益が出ているにもかかわらず経常利益が下がることになります。ボーナスの金額に反映されるなど財務状況をよく知らない従業員への影響があると、現場のモチベーションが下がるおそれもあるでしょう。

本業の営業利益の推移と経営全体の経常利益の推移を比較することにより、自社の経営が健全に行えているかを把握し、軌道修正していくとよいでしょう。

同業他社との比較

資本主義社会では、市場で生き残るための競争は不可欠です。自社で算出した経常利益は、同業他社の経常利益と比較することにより、優位性や改善点などを分析できます。事業規模が異なる場合は経常利益率で比較するとよいでしょう。

競合する企業が明確なときは、上場企業の場合はWebサイトからIR資料(有価証券報告書・決算説明会資料など)を取り寄せることができます。非上場企業の場合は企業リサーチのサービス(帝国データバンク・東京商工リサーチなど)を利用できます。

業界の中で自社がどのあたりの位置にいるか、およその状況を知りたい程度であれば、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」が便利です。産業別に毎年の調査結果が公表されており、自社の経常利益の総額や経常利益率が業界内でどのあたりに位置しているかの概況を把握することができるでしょう。

【参照サイト】
中小企業庁:中小企業実態基本調査

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経常利益に関するよくある質問

本記事のまとめとして、経常利益でよく聞かれる質問を整理しておきましょう。

経常利益とは何ですか?

経常利益とは、本業となる商品の販売やサービスの提供で得る営業利益と、資産運用などの財務活動で得る営業外利益を総合したもので、企業全体の収益力を表す指標です。
経常利益は、繰り返し続けて行う(経常的な)企業活動の利益であり、一時的な臨時収入や臨時支出は除きます。

通常の企業活動を、本業以外の利益も入れて測る経常利益を活用することにより、企業としての収益力を総合的に把握できます。

経常利益と純利益の違いは何ですか?

経常利益は、通常繰り返し行っている経常的な企業活動による利益を算出します。これに対して純利益は、臨時収入や臨時支出など、一時的な収益または損失も算入します。つまり、純利益は企業としての収入・支出をすべて合わせた最終的な利益といえます。

純利益には、法人税などを差し引く前の税引前当期純利益と、税を差し引いた後の税引き後当期純利益があります。

経常利益はどのように計算しますか?

経常利益は、以下の式で求めることができます。

経常利益-営業利益+営業外収益-営業外費用

各用語の概説

  • 営業利益:売上高-売上原価-販管費で求める
  • 売上高:企業の本来事業(本業の商品の販売やサービスの提供)による収入
  • 売上原価:本業の売上にかかる支出(商品の仕入れや材料など)
  • 販管費:販売費及び一般管理費(人件費や光熱費、減価償却費、家賃、租税公課など)
  • 営業外収益:本業以外の活動による収入(受取利息、受取配当金、雑収入など)
  • 営業外費用:本業以外の活動に要した支出(支払利息、雑支出など)

本ページは情報提供を目的としており、掲載している情報は記事更新時点のものです。法律、雇用、税務、その他経営に関する最新情報に関しましては専門家にご相談ください。

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