事業承継の現状と、スムーズな事業継承に必要なこと

Square (スクエア), ブログ編集者

永続的な企業経営を考えると、どこかで事業承継を行う必要性が生じます。経営者の高齢化が進む現在、中小企業を中心に後継者の不在によって事業承継が進められないケースが多く発生しており、なかにはやむなく廃業するケースもあるなど、全国的にも大きな問題となっています。

今回は事業承継について、意識しておくべき点や実際に携わる際のポイントなどを紹介します。

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事業承継が問題視される背景

経営者の高齢化と承継者の不在

2016年に中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン」によると、経営者年齢のボリュームゾーンが1995年には47歳であったのに対し、2015年には66歳となっており、経営者の高齢化が進んでいる実態が紹介されています。

参考:事業承継ガイドライン(中小企業庁)

また同資料によると、経営者の平均引退年齢が中規模企業では67.7歳、小規模事業者では70.5歳とあります。

加えて経営者交代率が長期にわたって下落傾向にあることも紹介されており、事業承継は喫緊の課題であることがうかがえます。

技術やノウハウの喪失

前述のガイドラインで紹介されている「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月、日本政策金融公庫総合研究所)によると、60歳以上の経営者のうち、半数以上が廃業を予定していると答えており、そのうちの28.6%が後継者難を理由に挙げています。

また、廃業予定企業のなかでも3割弱が同業他社と比べて業績は良いと答えており、約4割が今後10年間現状維持は可能との回答を出しています。

このような背景から、事業の継続が可能でありながらも事業承継がうまくゆかずに廃業する企業が出ていることが見込まれ、経済発展を支えてきた中小企業の技術やノウハウが少なからず喪失されることが懸念されます。

事業承継を成功させる方法

承継の3要素

では、事業承継をスムーズに進めていくためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

まず、事業承継とは具体的に何を承継していくものなのかを確認しましょう。中小企業庁による「経営者のための事業承継マニュアル」や「事業承継ガイドライン」では、事業承継の構成要素を「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つに大きく分けています。

人(経営)
後継者を選定、育成し、経営権を引き継ぐ

資産
自社株式や設備、不動産などの事業用資産、債権や債務などを承継するとともに、経営者の個人資産について会社との関係を整理する

「知的資産」
経営理念や信用関係、人脈や顧客情報、技術、許認可などを承継する

参考:経営者のための事業承継マニュアル(中小企業庁)

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潤滑に進める5つのステップ

また前述のマニュアルでは、円滑な事業承継を実現するために以下の5つのステップを経ることが重要だとしています。

事業承継に向けた準備の必要性の認識
「事業承継診断」や支援機関への相談を通して、準備の必要性を認識する

経営状況・経営課題等の把握(見える化)
「中小会計要領」や「ローカルベンチマーク」、「知的資産経営報告書」などの経営状況を把握するためのツールを活用しながら経営の見える化を行う

事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
事業承継のタイミングを見据えながら、自社の企業価値を高め、後継者にとって魅力的な状態に引き上げる

事業承継計画策定(親族内・従業員承継の場合)、またはマッチング実施(社外への引継ぎの場合)
親族や従業員に承継する場合には、後継者とともに株式や事業用資産、代表権の承継時期などを記した事業承継計画を策定する。社外への引き継ぎの場合には、仲介者やアドバイザーの協力を得ながら譲渡先のマッチングを実施する

事業承継の実行(親族内・従業員承継の場合)、またはM&Aなどの実行(社外への引継ぎの場合)
株式や事業用資産、経営権の承継を行う

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着手のタイミングは早めに

事業承継を行う際の中心的な課題として後継者の選択と育成が挙げられます。「事業継承ガイドライン」によると、約3割の企業が後継者の育成にが5年から10年は必要だと見込んでいます。

参考:事業承継ガイドライン(中小企業庁)

経営者の平均引退年齢である70歳前後を考えると、遅くとも60歳ころには10年先を見据えて事業承継の取り組みに着手するのが理想的です。

また、事業承継の準備を早い段階で整えておくことができれば、市場の動向などを踏まえて最適なタイミングで実行に移せるという利点も望めます。可能な限り早めに着手するよう心がけましょう。

事業承継におけるメリット・デメリット

事業承継の方法には「親族内承継」「従業員等への承継」「M&A」の大きく三つがありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。「事業承継ガイドライン」では、それぞれ次のように紹介されています。

親族内承継

メリット
・一般的に、内外の関係者から心情的に受け入れられやすい
・後継者を早期に決定し、後継者教育等のための長期の準備期間を確保することも可能
・相続などにより財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い

デメリット
・親族内に、経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限らない
・相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が難しい(後継者以外の相続人への配慮が必要)

従業員等への承継

メリット
・親族内だけでなく、会社の内外から広く候補者を求めることができる
・特に社内で長期間勤務している従業員に承継する場合は、経営の一体性を保ちやすい

デメリット
・親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い意志を有していることが重要となるが、適任者がいないおそれがある
・後継者候補に株式取得などの資金力がない場合が多い
・債務や個人保証の引き継ぎなどに課題が多い

M&A

メリット
・身近に後継者に適任な者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる
・現経営者が会社売却の利益を獲得できる

デメリット
・希望の条件(従業員の雇用、価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難である
・経営の一体性を保つのが困難である

支援機関や専門家の活用

中小企業が事業承継を行う場合には、専門的なアドバイスやサポートを行ってくれる機関や団体がさまざまあるほか、税理士や弁護士などの専門家も頼りになります。相談内容に応じて選んで活用し、スムーズに事業承継を進めましょう。

事業引き継ぎ支援センター

後継者不在の中小企業や個人事業の事業引継ぎを支援するために設置された事業引継ぎ専門の支援機関です。全国各地に存在し、事業承継に関する相談やM&Aのマッチング支援を行っています。

よろず支援拠点

多様な分野に精通した専門家が在籍し、中小企業や小規模事業者の経営に関する相談に対して専門的な見地からアドバイスを行う「ワンストップ相談窓口」として、各都道府県に設置されている支援機関です。

商工会議所・商工会

普段事業を進めていくうえでさまざまなサポートを提供してくれる商工会議所や商工会は、気軽に事業承継の相談ができる身近な存在として利用されています。

金融機関

日常的に経営状況を把握している金融機関も、きめ細やかな支援を提供しており、M&Aのマッチングや資金需要への対応などを行っています。

税理士

相続税に関する助言など、事業承継に関係する幅広いサポートが受けられます。事業承継に特化した事務所もあります。

弁護士

法律のスペシャリストとして、経営者の代わりに金融機関や従業員などの利害関係者への交渉や説明を行うとともに、M&Aの際には、法律面のチェックや契約書の作成などを行います。

中小企業診断士

経営診断を行い、事業承継計画の策定支援や後継者教育支援、磨き上げ支援などのサポートを提供するほか、事業承継後の支援も行います。

執筆は2019年7月25日時点の情報を参照しています。
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