【商いのコト】特集:地域活性のロールモデル「西粟倉村」を訪ねるーーソメヤスズキ

成功も失敗も、すべては学びにつながる。
ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 27

ソメヤスズキ

鈴木菜々子さん

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岡山県西粟倉村。
兵庫県と鳥取県に隣接する人口約1,500人の小さな村は、森林に囲まれた上質な田舎を目指す「百年の森林構想」を掲げ、森林事業で村の自立化を図ろうとしている。

今回の特集では、そんな西粟倉村に移住し商いをしている方々を紹介する。初回はオーガニックコットンやエシカルヘンプ生地に草木染めをした布製品の製作・販売を手がける、ソメヤスズキの鈴木菜々子さん。天然染料によって生まれる優しい色合いは、使う人の暮らしに寄り添うように時間とともに風合いを変化させていく。

東京から西粟倉村に移住した鈴木さんは、どのような想いで商いを始め、今に至るのだろうか。

廃校になった校舎の一角に、工房を構える

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ソメヤスズキは、廃校の一室に工房を構える。影石小学校の校舎だった建物は、現在では村内の企業や事業者のシェアオフィスとして利用されている。

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工房で実際に草木染めの工程を見せていただいた。今回染めに使用したのは、「矢車附子(やしゃぶし)」と呼ばれる落葉樹の実。草木を煮て出た染液に金属イオンを反応させることで、色が生地に定着する。同じ草木でも、反応させる金属イオンによって違った色合いになるのだそう。

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矢車附子を十分に煮たら、濾して染液だけを抽出する。

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白い布に浸すと、鮮やかに染色された様子が分かるだろう。色合いはそのときの条件によって変化するため、全く同じ色になることはない。そうした微妙な色合いの違いも、草木染めが持つ味わい深さだ。草木染めと出会い、商いをするに至った経緯を鈴木さんに伺った。

自然にあるものだけで色が染まるって、なんかいい

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鈴木さんが草木染めと最初に出会ったのは大学時代。テキスタイルを専攻していた鈴木さんは、草木で色を染められることを知り、自身の製作に活かすようになった。

「初めて草木染めの存在を知ったとき、自然のものだけで色が染まるってなんかいいなと思ったんです。また、在学中に子どもを産んだことで、食や暮らしに対する捉え方が変わり、自然や環境について考えるようになっていたので、その影響も大きかったと思います。」

大学卒業後は子育ての傍ら、時間を見つけて草木染めの作品を作っていた。当時は趣味として草木染めを楽しんでいた鈴木さんが商いをするようになったのは、西粟倉村に移住してからのことである。

「自分の作品を売ってみたい」という軽い気持ちから

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▲草木染めに使う染料。左からインド茜・マリーゴールド・矢車附子

転機を迎えたのは2011年。
東日本大震災が起きたことを受け、東京から西日本への移住を考えていたときに、偶然見つけたのが西粟倉村にある空き家だった。もちろんその時は、西粟倉村という名前すら聞いたことがない状態。次男が産まれて、暮らし方を変えたいと思っていた鈴木さんは、同年8月末に西粟倉村への移住を決意した。

西粟倉村に移り住んだ鈴木さんは、自然の豊かさにまず驚いたと当時を振り返る。

「『草木染め図鑑』という染料の図鑑があるんですけど、そこに載っている植物がたくさん自生しているんです。自分が採った植物で染め物ができるというのは、やっぱり感動しましたね。趣味で『誰か一緒に草木染めをやりませんか?』とワークショップを開くと、意外にも人が集まってくれたので、楽しみながら染め物をやっていました。」

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▲子ども服ブランドYAROCCOのボタンシャツ

西粟倉村に移住してから1年ばかり経ってからのこと。隣町、美作市の旧街道に残る築100年の古民家をリノベーションして「難波邸」という複合施設を作ろうという話が、鈴木さんに持ちかけられた。

「相談してくださったのは、今『旧影石小学校』でフレル食堂をやっているご夫婦です。物件をシェアして、ご夫婦が食堂と自身の木工製品を含めたセレクトショップを運営し、私が草木染めの工房を作る、という話になりました。自分の作品を売ることができたら嬉しいな、という軽い気持ちで始めたのがソメヤスズキだったんです。」

草木染めを”仕事”にするのは難しい

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▲一枚布で作られた吾妻袋のSサイズ。お弁当の包みや小物を入れてバッグインバッグとして使うのに適している。

草木染めは自然とは切り離せないものであるため、森林に囲まれた西粟倉村は染めの場としては適している。しかし、人口が少なく集客が難しいため、催事やイベントに合わせて都市部に足を運ぶことも多いのだそう。現在、商いを始めてから4年半ほど経過した。これまでの活動を振り返り、鈴木さんはこう語る。

「正直、草木染めを仕事にするのは難しいなと、やっていて思います。手間をかければかけた分だけ価格は上がるし、オーガニックコットンを使うと普通の生地より2〜3倍高い値段になりますから。量販店などで安く服が手に入る時代に、誰がこんなものを買うのだろうって、ふと思うときがあるんです。草木染めをどうやったら普通の生活に取り入れてもらえるか、試行錯誤の日々が続いています。」

大量生産と流通の発達によって低価格で多種多様な商品が買えるようになった現代において、1つ1つ手作業で作られた製品は価格面では勝負できない。そのため、他の要素で消費者の心を掴まなければならないが、価格以外で価値を認めてもらうのは容易ではないのだ。

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ソメヤスズキの商品を見て足を止めるのは、「誰が作ったんだろう」「どのように作られたんだろう」と、商品の裏側にあるストーリーに興味を持つ人が多いという。しかし、草木染めを趣味ではなく仕事にするためには、こうした背景に全く関心がない人にも興味を持ってもらうことが必要だと、鈴木さんは語る。

「渋谷で開催されたイベントで販売していると、流行りのファッションに身を包んだ若い女の子が、吾妻袋を見て『かわいい!』と言って立ち止まってくれることがあるんです。そんなときに、『きた!』と思うんですよね(笑)。草木染めはどうしても『ナチュラル系』『和風』みたいなイメージが先行して、なかなか一般の人に手に取ってもらえない。私はその常識を覆し、多くの人の生活の中に草木染めを浸透させたいんです。」

草木染めを一般の生活シーンに普及させるために、鈴木さんはライフスタイルに合ったデザイン性の高い洋服や生活製品を提供するよう工夫しているという。ソメヤスズキの商品をきっかけに「草木で色が染まる」ことを伝え、自然の色を身近な存在として感じてくれる人を増やすことが目標だ。

自分のため、そして次の世代のためにこれからも色を染め続けたい

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商いをする中で大変なことは何かと聞くと、鈴木さんはこう答えた。

「いっぱいありすぎて絞れません(笑)。辛いことだらけだし、この先やっていけるのか不安しかないです。会社に勤めた方がよかったんじゃないかって思うことだってあります。私は”西粟倉村の活性化”にそこまで興味があるわけでもないですし……。でもなぜかやめずに続けているんですよね……。」

もともとは趣味だった草木染めで商いを始めた鈴木さん。「自分が作ったものを売ってみたい」という当時の軽い気持ちだけならば、とっくにやめているいるはず。鈴木さんの心中にどのような変化があったのだろうか。

「実は私もずっと疑問に思っていたんです。何でこんなに辛いのに続けているんだろうって。でも考えてみたら、純粋に草木染めの色がどんどん好きになっているのかな。染まっていく様子も好きだし、褪色していくのも好き。どんなに毎日が辛くても、あの色を見ていたら、辛さを忘れてしまうんです。もし草木染めを仕事にできなかったら、他の仕事で生計を立てなきゃいけなくなって、色を染めることは続けられなくなってしまう。私はただ、色を染め続けたいんだと思います。」

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▲同じ染料を使っても、上の2つのように色合いが微妙に異なる。この違いを楽しめるのも、草木染めの良さだ。

「あとは、子どもの影響も大きいかも。子どもができてからは、次の世代に何を残せるかということをしきりに考えて生きるようになったんです。もし草木染めを仕事にすることができたら、社会がちょっとだけ良くなると思うんですよね。大量生産が当たり前の時代に、こんな風に1つ1つの工程を丁寧に手作業でやる作り方があったっていいじゃないって。」

最後に、西粟倉村についての想いも語ってくれた。

「先程、西粟倉村の活性には興味がないと言いましたが、私をはじめとして、そこに住む一人ひとりが生き生きと働くことによって、結果として西粟倉村が活性化していくものだと思います。私が目指していることはすごく難しいことですが、子どもや次の世代にとって少しでも明るい未来であってほしいから、もう少し頑張ってみようと思います。」

自分のため、そして次の世代のために、草木染めを続ける道を選んだ鈴木さん。次は、西粟倉村にあるスギ・ヒノキの樹皮を使って色を染めることを計画中なのだそう。自分が納得して進むと決めた未来を実現すべく、鈴木さんの挑戦は続く。

ソメヤスズキ
Atelier
707-0503
岡山県英田郡西粟倉村影石895
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(つなぐ編集部)

写真:高山謙吾

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