【商いのコト】日本にまだない中国料理を伝えたいー味坊グループ(後編)

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 41
味坊グループ 梁宝璋さん

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美味しい料理は、万国共通。中国東北地方の料理を通じて、お客様に笑顔で過ごす時間を提供している“味坊グループ”のオーナー・梁宝璋(りょうほうしょう)さんには、編集者・小林淳一(こばやしじゅんいち)さんという相棒がいる。

梁さんと小林さんはお互いに、食にまつわる子どもの頃の記憶でつながっている。ふたりは何を目標にして、中国料理店を開いているのだろう。そして、日本に馴染みが薄い東北料理を広めていくために、どんな工夫をしているのか。

前編はこちら

日本に伝わっていない中国料理を広めたい

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梁さんの母は残留孤児だった。1995年、32歳になった梁さんは中国の東北地方から家族と日本に引っ越してくる。慣れない土地で、生活のために、さまざまな仕事をした。製パン、清掃、建設など。2年過ぎた頃、家族を養うために、中国人がはじめやすい事業として飲食店の開業を決めた。

足立区で開業した当時、麻婆豆腐や酢豚の出前を中心に生計を立てた。事業は軌道に乗る一方、中国と日本それぞれの中国料理に差異を感じていく。たとえば、紹興酒。東北地方では調理に使用するお酒だが、日本では飲料用で好まれている。あるいは、化学調味料。中国では母の取ったスープの味わいに慣れ親しんできたが、日本人の舌には化学調味料が合うと周囲から教えられた。

同じ中国料理でも国によって差異が生まれることに戸惑う一方、次第に梁さんは、「母がつくってくれた東北料理を伝えたい」想いに駆られていく。そして、千代田区神田に移り、「味坊」を開業した。

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梁さん「東京駅に近い神田だったから、中国に仕事で行っているお客さんが多くて。出張の前後によく来店してくれて、『本場の味が食べられる』と、みんな喜んでね。口コミで来店数が増えていったんですね」

「味坊」の評判を聞きつけ、小林さんは取材に訪れた。その取材で、自然発酵した白菜の漬物・酸菜(さんつぁい)と豚の三枚肉を合わせて炒め煮したスープ料理を口にしたとき、小林さんの脳裏に幼少期の記憶が蘇った。

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小林さん「『懐かしいなぁ。この味、知ってるなぁ』って感じたんですね。よくよく思い出して見たら、母がずっとつくってくれていた料理と同じだったんです」

なぜなら、小林さんの祖父母は、戦前に中国の満州国で働いた商売人だった。満州は、ロシアの極東と中国の東北部にまたがる。祖母に教わった母の料理は、梁さんが子どもの頃に食べていた東北料理と同じ味わいだった。

小林さん「はじめて『味坊』に行ったとき、『なぜ知らない料理がこんなにいっぱいあったんだろう?』って、ノックアウトされました。編集者として、これほど美味しい料理が紹介されていないことに、『日本のみなさんにも食べてもらいたい』って気持ちが湧いてきて。それで、梁さんに『一緒にお店をやりたいです』って申し出たんです」

梁さん「やっぱり、こういうお店をやったのは正しかったなって思ってね。麻婆豆腐やエビチリは美味しいんだけどね。中国料理はそれだけではないんでね。地方によって違う食材を使ったり、味付けも違ったりね。小林さんと出会って、中国の料理をいろいろ紹介したいって、気持ちが強くなったんですね」

東北料理と日本を結ぶ意外な飲み物

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梁さんと小林さんの役割分担は明確だ。梁さんはメニューや内装、人事労務などの経営面を担い、小林さんが企画やブランドの維持、そして対外的なコミュニケーションを受け持つ。梁さんのやりたくないことは決してしない。小林さんは編集者のように、裏方として働いている。

小林さん「編集者っていうのは、そこにある現象をどううまく伝えるかっていう仕事。だから、『これを伝えたい』っていう現象探しは、すごくやらなきゃいけない。日本にはまだ伝わっていない中国の食文化を見つけたら、それをどうやって伝えるか考えます」

梁さんと小林さんは、今も中国を訪れ、日本でまだ知られていない料理を探し続けている。

梁さん「『老酒舗』のような昔のお店はすごく印象に残っていてね。でも、今ではそのような店がとても少なくなった。だから、できるだけそれを伝えていくようにしたいんですね」

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お客様にとっては、慣れ親しんだ料理を出す店のほうが安心で、敷居が低くなる。そういう意味で、日本人の舌に馴染みが薄い東北料理の新鮮な味を伝えていくのは難かしそうだ。実は、そんなハードルを越える役割を、あるお酒が担っている。それは、中国料理店では珍しい、ナチュラル・ワイン。

小林さん 「ワインって、入口を広げてくれるいいアイテムです。中国の東北料理が好きな人って、あまり見かけないじゃないですか。でもワイン好きな人なら多いですし、『行ってみようかな』って思ってくれると思うんです」

「味坊」の常連にワイン卸業をするお客様がいた縁で、ナチュラル・ワインを取り扱うようになった。飲んでみると、東北料理でよく使われる扱われる羊肉にもぴったりだった。

梁さん「美味しいものは、美味しい。ワインと私の故郷の料理を合わせると、本当に美味しかった。私もワインが好きになりました」

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故郷の味を忘れず、日本で東北料理を振る舞うのが梁さんらしさなら、中国料理にワインを合わせるという斬新な一面を持つのも梁さんらしさだ。どちらも、「まだ日本に知られていない中国料理を伝えたい」という目標でつながっている。

2018年6月には、5店舗目のオープンを予定している。“味坊グループ”を通じて、日本にまた新しい中国料理が伝わってくることをドキドキ・ワクワクできる日々が続いていく。

前編はこちら

味坊
東京都千代田区鍛冶町2-11-20
Tel : 03-5296-3386

味坊鉄鍋荘
東京都台東区上野1-21-9
Tel : 03-5826-4945

羊香味坊
東京都台東区上野3-12-6
Tel : 03-6803-0168

老酒舗
東京都台東区上野5-10-12
Tel : 03-6284-2694

文:新井作文店
写真:袴田和彦


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