【賢者の声】飲食店にとってクレジットカード決済を導入するメリット

「賢者の声」はビジネス業界の著名人や、現場第一線で活躍する有識者の方々からの意見を集めた言論媒体です。この投稿では飲食業界に精通する東龍さまに寄稿を頂きました。

著者プロフィール
1976年台湾生まれ、後に日本国籍。高校3年時から食べ歩きを始める。ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツをこよなく愛する。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。Yahoo!ニュース 個人 オーサー、All Aboutガイド、全日本司厨士協会「東京CHEFS」アドバイザー。テレビや雑誌で活躍し、料理コンクール審査員、講演、プロデュースも多数。 2017年8月「一般社団法人 日本ブッフェ協会」設立、代表理事就任。

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飲食店はクレジットカードに加盟した方がよいのでしょうか。

クレジットカードは、利用者が商品やサービスを購入した後に支払いを行う仕組みです。クレジットカード加盟店は、クレジットカード会社に加盟店手数料を支払う代わりに、クレジットカード会社が利用者から代金を回収し、クレジットカード加盟店に定期的に入金します。業種や各店舗によりますが、飲食店の場合には加盟店手数料は5%前後(*1)であることが一般的です。

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世界で初めてとなるクレジットカード会社ダイナースクラブ(Diners Club)は、1950年に誕生しました。これ以降、ビザ(Visa)、マスターカード(Mastercard)、アメリカン・エキスプレス(American Express)、ジェーシービー(JCB)など、様々なクレジットカード会社が設立され、多くのクレジットカードが発行されています。

ダイナースクラブが誕生してから既に70年近くも経過していますが、クレジットカードが利用されているには理由があります。

利用者にとっては常に現金を持ち歩く必要がなく、非常に便利だからです。しかし、利用者にとってだけではなく、飲食店にとっても大きなメリットがあるので、全世界の飲食店がクレジットカードに加盟しているのです。

ここでは、改めて飲食店がクレジットカードに加盟するメリットを紹介しましょう。

飲食店がクレジットカードに加盟するメリットは大きく分けると、集客拡大・売上増加・リスク回避となります。

集客拡大

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まず、集客拡大できることが大きなメリットです。

クレジットカードに加盟していることによって、クレジットカード会社による審査をクリアした飲食店というステータスを得られます。クレジットカード加盟店であることを示すクレジットカードのロゴがたくさん表示されていれば、利用者はきっと多くの審査をクリアした飲食店であると感じて安心するでしょう。

クレジットカードがあれば現金が少なくても食事ができるので、ウォークイン客が利用しやすくなります。前もって飲食店を予約していれば、現金を用意してくるでしょう。しかし、ふと食事を取りたいと思った時に、よさそうな飲食店があったとしても、手持ちの現金が少なければ、クレジットカードに対応していない飲食店には入店できません。

海外では日本よりもクレジットカードを日常的に利用しています。加えて、こまめに両替して常に十分な日本円を持ち合わせている訪日外国人も多くはないでしょう。従って、訪日外国人に訪れてもらいやすくするためには、クレジットカードに対応していなければならないのです。

クレジットカードに対応していることで、デートで訪れる客も増えます。男女のペアが訪れる場合には、男性が支払うことが多いですが、クレジットカードであればスマートに振る舞うことができるからです。食事後、女性客が化粧室で身支度を整えている間、現金をじゃらじゃらと出し入れすることなく、クレジットカードを差し出すだけなので、短時間で簡潔に支払いを終えることができます。

また、クレジットカード会社では加盟店向けに、有料でDM(ダイレクトメール)をクレジットカード会員に送付してくれるサービスも行っているので、うまく利用すれば、新しい客の開拓にもつながるでしょう。

売上増加

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クレジットカードに加盟する次のメリットとしては、売上増加が挙げられます。

ウォークインのところでも述べましたが、利用者は現金をいくら持ち合わせているかを気にしなくてよいので、細かい値段は気にせず、好きなものを注文できます。クレジットカードの支払い方法は、一括払いだけではなく、ボーナス払いやリボ払いもあるので、少し背伸びして、高級食材を使った料理を堪能したり、ビンテージのワインを嗜んだりすることもできるでしょう。

ある調査によると、1万円を超えると、クレジットカードを利用する客がぐんと増えるという結果もありますが、利用者の立場になって考えてみると納得できます。クレジットカードに対応していれば、気持ちも楽になって、現金で支払うよりも客単価が増して売上が伸びるのです。

クレジットカードに対応することで、「食べログ」「Retty」などのグルメメディアや「トレタ(Toreta)」「テーブルチェック(TableCheck)」などの予約台帳とも相乗効果を発揮します。今の時代、インターネットで飲食店の情報を取得したり、飲食店の予約を行ったりすることが多くなっているのは周知の事実でしょう。

利用者がインターネットで予約する際にクレジットカード情報を入力すれば、飲食店で食事をして帰る際に精算しなくてもよいシステムもあり、利用者にとっても飲食店にとっても非常に利便性が高いです。こういったシームレスな体験の中で、席だけの予約ではなく、コースの予約が増えたり、普段よりもグレードアップしたコースを選んだり、お祝いのオプションを付与したりと、お金を使いやすくなります。

リスク回避

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最後に、クレジットカードに加盟するメリットとして、リスク回避を挙げましょう。

クレジットカードでは利用者が現金を使わないので、飲食店も現金を管理しなくてもよくなります。お釣りを用意しておき、計算してお金を受け渡す手間がなくなるのは、細かいオペレーションの多い飲食店では非常に助かることでしょう。お釣りを渡すことがなくなるので、計算ミスや渡し間違いによる損害もなくなります。加えて、従業員による窃盗や外部からの盗難もなくなるので、とても安全性が高いのです。

銀行口座の預金が少なく、利用者からお金が引き落とせなかったとしても、クレジットカード会社から確実に入金されるのは心強いでしょう。だいたい月に2回入金される(*2)ので、現金が不足することもありません。

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さきほども、クレジットカードはインターネットのグルメメディアや予約台帳と相性がよいと述べましたが、リスク回避にも寄与します。クレジットカードに加盟さえしていれば、予約台帳で事前決済を行ったり、利用者がノーショー(無断キャンセル)やドタキャンをしたとしても、キャンセルポリシーに従って代金を回収したりすることができるのです。

これまで紹介してきたように、飲食店はクレジットカードに加盟することによって、集客拡大・売上増加・リスク回避を行うことができます。加盟店手数料を支払う必要はありますが、結果的に大きなメリットを得られるので、視野を広げなければなりません。これからの時代には、インターネットはますます発展し、現金の扱いも少なくなっていくだけに、クレジットカードの重要性が高まっていくことは確実です。

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