成果の出るマーケティングを目指す上で、ウィンザー効果はベーシックながら汎用性の高い心理効果です。日常の中で無意識に使っていることもあるウィンザー効果を、ビジネスに導入するためには、マーケティング手法における「第三者」の定義を明確にする必要があります。ウィンザー効果の実践方法と、活用する際に知っておきたい注意点について解説します。
日常からビジネスにまで使えるウィンザー効果
ウィンザー効果とは、ビジネスのみならず日常の人間関係においても使える心理効果として知られています。ウィンザー効果の正確な意味は、その由来を知ることで理解できます。
アメリカの女性作家アーリーン・ロマノネスによる1990年の自伝的スパイ・ノンフィクション「伯爵夫人はスパイ」という作品の中で、登場人物のウィンザー伯爵夫人がいった「第三者の褒め言葉は、いつも一番効果的」という台詞がウィンザー効果の由来になっています。第三者の褒め言葉とは、たとえば「Aさんがあなたのことを良い人だといっていた」「この商品はBさんがおすすめしていた」というものです。このように、第三者の評価が与える影響のことを、伯爵夫人の名をとってウィンザー効果と呼びます。
書店に平積みされた新刊書籍を思い浮かべてみると、ウィンザー効果のイメージがさらに掴みやすくなるでしょう。本の帯には「C氏が大絶賛」といったコメントが記載され、手書きのポップには読者アンケートから得られた感想などが書かれていることがあります。これらは著者や発行者でも、書店を訪れたお客様本人でもない第三者の意見として、書籍の面白さや読み応えを裏付けるために用意された素材です。それを見たお客様は「たくさんの人(第三者)が推薦するなら良い作品なのだろう」と、作品に対してポジティブな想像を膨らませ、興味を持てば購入します。
ウィンザー効果は、第三者の良い評価を上手な見せ方でお客様に提示することで、マーケティングに寄与します。その背景には、主観的な意見より客観的な意見を信用するという人間の傾向があります。飲食店の口コミサイトのような第三者の評価をマーケティングに活用することで、広告やソーシャルメディアを使った自社発信の情報とは異なる客観的な情報を提供し、信頼を増すことになるというわけです。
ウィンザー効果のメリット・デメリット
第三者の評価によるウィンザー効果を商品やサービスのマーケティングに生かすと、具体的に以下のようなメリットがあると考えられます。
・商品やサービスの人気を示すことができる
・商品やサービスの使用感、効能などを幅広く表現できる
・お客様は他のユーザーによる客観的な情報を得ることができる
・販売側はお客様の購買意欲を刺激することで、収益向上の可能性をアップできる
このようにウィンザー効果は売り手と買い手にさまざまなメリットがあり、結果として双方に良い結果をもたらすポテンシャルを秘めています。販売側が公正かつ役立つ情報を提供していることをお客様が知れば、商品や店への印象もアップし、今後のさらなる口コミの生成にもつながるため、適正な方法でウィンザー効果を狙う必要があるでしょう。
一方、ウィンザー効果のデメリットとしては、悪い評価も同様に客観的な評価として信用されやすいことが挙げられます。悪い評価の広がりを防ぐためには、商品やサービスを日々改善し、進化させる姿勢をお客様にきちんと示していくことが重要になります。
ウィンザー効果を狙うマーケティングの実践方法
ウィンザー効果をマーケティングに活用する場合、まずは以下のような手法で「第三者の評価」を集めます。
・商品やショップのレビュー
・アンケートへの回答
・お客様の声(対面、手紙など)
こうして集まった第三者の評価のうち、特に良い意見を選別します。良い意見とは、ターゲットとなるお客様が商品やサービスを選ぶ際の参考になる意見と考えるといいでしょう。商品の特徴がよくわかる、使用シーンが想像しやすい、使用者の人物像が浮かぶ、というのは参考になる条件に当てはまります。
選別した良い意見は、店頭のポップや、オンラインサイト上の商品ページなどに代表的な意見として引用し、お客様の目に止まりやすくします。どんなに良い意見であっても、読みやすいデザインや効果的な内容であることも重要です。
ウィンザー効果のビジネス活用の注意点
ウィンザー効果を実際にビジネスに取り入れる際、効果的なマーケティングの実践のためには「第三者の評価」について以下の3点への注意が必要です。
1, 利害関係があってはいけない
たとえば、初めて利用するオンラインショップに「購入者の85%が『また同店を利用したい』といっています」という記載がある場合、それを読んだ人は「多くの人が評価している店ということは、きっとサービスが良いのだろう」と想像します。さらに、利用者からのコメントなどもあれば、信頼感はますます高まります。
しかし、肯定的なコメントをした85%の人がショップ経営者の知人や給与の発生しているスタッフであったとすると、話は全く違ってきます。これはいわゆる「やらせ」という行為に相当し、経営側と利害関係がある人物による意見は信用に値しないと評価されるため、マーケティングにとって有効ではないどころか逆効果です。利害関係のある人からの、手放しで全肯定し褒めちぎるようなレビューも、お客様から信ぴょう性にかけると判断される可能性があります。
ウィンザー効果をマーケティングに意図的に取り入れる際は、評価する第三者と利害関係がないことがお客様にわかるようにする必要があります。たとえばレビューを表示する際にハンドルネームや年代を併記する、お客様のコメントを編集せずそのままの文体で載せるなどすると、ランダムに抽出された第三者の意見であることが伝わります。そうすることでお客様は安心して評価を信用し、商品に魅力を感じることができるのです。
2, ターゲットのペルソナに近い方がいい
評価をする第三者の属性が、商品の購入ターゲットであるお客様のペルソナに近ければ近いほど、ウィンザー効果は真価を発揮しやすくなります。たとえば30代から40代の働く女性をメインターゲットにした高級石鹸の場合、商品を評価している第三者が10代の女性であるより、30代から40代の働く女性であった方が、読む人は評価に説得力を感じやすくなります。同時に、評価をしているのが10代であることがわかると、それを見たターゲットは「若い人向けの商品」という印象を抱いてしまい、自分に合わない商品として購買意欲の対象から外してしまいます。
ウィンザー効果を狙う際は、「自分に合う商品」だということが的確に伝わる第三者の評価を引用する必要があります。
3, 感想や意見に具体性がある
上記の1と2の条件を満たす第三者からの評価のうち、以下の三つの例を比較してみましょう。
A:すごく良かったです。
B:値段に見合うと思います。
C:敏感肌の私でも肌トラブルなしで汚れがしっかり落ち、しかも洗った後もしっとりしていて、使い始めて1週間ですが良さを実感しています。
三つを読み比べると、Aの抽象的な意見やBの客観性に欠けるコメントよりも、具体的かつ客観的に書かれたCの方が役立つ意見という印象になります。
第三者からの評価には、読んでみて納得がいく、性能や効能がわかる、費用対効果がわかるという要素が重要です。そのためには、実際に使ってからの評価であること、使ったシチュエーションが明らかであること、使用感がわかりやすいこと、という条件が揃っていると、ウィンザー効果を狙うマーケティングのための素材として十分です。
一言で表すなら、ターゲットにとって「購入後のイメージがわきやすいレビュー」であるかを意識すると良いでしょう。長すぎたり短すぎたりするレビューも、読み手にネガティブな印象を与えることがあります。
ウィンザー効果は身近なものだからこそ、店舗やオフィスなど、どのような業種・業態でもマーケティングに活用できます。自分自身がお客様の立場で第三者の評価を見るときをイメージしながら、ビジネスに導入してみましょう。
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執筆は2019年4月23日時点の情報を参照しています。
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