産業廃棄物処理に関するマニフェスト制度を理解しよう

産業廃棄物の処理に関する決まりを定めたものがマニフェスト制度です。経営者として、適正に廃棄物の処理を行う上で、把握しておきたい制度です。

今回は、マニフェスト制度の押さえておくべきポイントについて、分かりやすく解説します。

目次



マニフェスト制度とは何か

alt text

正式には「産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度」といい、当初は一部の産業廃棄物だけに適用されていましたが、現在はすべての産業廃棄物が対象となっています。

事業者は、産業廃棄物を責任持って処理することが「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第3条」において定められています。廃棄物処理を委託契約で行う場合、マニフェスト制度で定められたルールを守る必要があります。

他者に委託する場合、どうしても目が届きにくくなるため、適正に廃棄物処理を行なっているのかどうかがわかりづらくなります。そこで、委託契約どおりに対応が行われているかどうか、マニフェストを用いて、処分が終わるまでの過程を確認します。処理の流れを確認することによって、産業廃棄物の不法投棄や不適正な保管の未然防止につなげます。

なお、マニフェスト(manifest)には、もともと英語で「〜を明らかにする」「積荷目録」などの意味があります。同音のカタカナ語で、宣言書や選挙公約を意味するマニフェスト(manifesto)がありますが、意味が異なりますので、混同しないように気をつけましょう。

制度の仕組みや流れ

alt text

具体的にマニフェスト制度の仕組みや流れについて解説します。

産業廃棄物処理に関わる事業者には、

  • 産業廃棄物を処理したい排出事業者
  • 廃棄物を収集し、処理場まで運ぶ運搬業者
  • 中間処理を行う処理業者
  • 最終処分を行う処理業者

が含まれます。

廃棄物を処分したい事業者は、委託する処理業者に対してマニフェストの交付を行います。途中で中間処理が入る場合は、最終処分が適正に行われたかどうかを、マニフェストの交付後180日以内にチェックしなければなりません。

なお、中間処理については、交付してから90日以内(廃棄物の種類によっては、60日以内)に終了したかどうかを確認する必要があります。

万一、期限内に収集運搬業者や処分業者から報告がなかった場合、排出事業者は委託先の状況をチェックした上で、適正な措置を講じなくてはなりません。また、排出事業者は都道府県知事や政令都市長に対して報告する必要があります。

2種類の形式(紙と電子)

マニフェストには「紙マニフェスト」と「電子マニフェスト」の2種類があり、どちらかを使用して処理の状況を把握します。

紙版は、7枚つづりの複写式伝票(A・B1・B2・C1・C2・D・E)です。処分の流れに合わせて、それぞれの紙が各事業者の手に渡っていきます。また、排出事業者は処理工程が進むごとに伝票の写しを回収します。排出事業者は、手元の伝票や各事業者から送付されてきた写しの内容を確認し、適正に処理が行われたのかどうかをチェックする必要があります。

基本的に伝票は5年間保存する義務があります。収集運搬業者に限っては伝票の保存は義務付けられてはいませんが、手元に残しておくほうが望ましいとされています。なお、紙マニフェストは管理の手間や紛失のリスクがあるため、取り扱いには十分気をつける必要があります。

電子版は、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが運営する「情報処理センター」経由で情報をやりとりします。各工程において作業を終えた後、3日以内にシステムに必要情報を登録する必要があります。電子マニフェストはデータ入力がスムーズにできるほか、チェックが簡単、内容偽造の防止につながるなどのメリットがあります。そのため、多くの都道府県で電子マニフェストの使用が推進されています。

参考:マニフェスト制度(公共財団法人 日本産業廃棄物処理復興センター)

いずれの種類のマニフェストでも、省令で定められている必要事項を記入します。

項目例としては、

  • 委託者の名前や住所
  • 産業廃棄物の種類
  • 産業廃棄物の数量
  • 収集運搬業者や処分業者の名前
  • 最終処分場の所在地

などがあります。

マニフェスト制度の義務と例外

前述のとおり、排出事業者は委託業者にマニフェストを渡すほか、状況確認や伝票の保管を行う必要があります。また、廃棄物を運搬する業者や中間処理を行う業者なども、定められた期限までに、正しい情報を排出事業者に報告したり、伝票を一定期間保存したりしなければなりません。

制度の例外として、排出事業者が自分ですべての処理を行う場合が挙げられます。委託業者を使わないときは、マニフェストは必要ありません。この他にも、交付をしなくてよいケースが11パターンあります。詳しくは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の19」を確認してみてください。

参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の19(e-Gov)

制度における罰則規定

alt text

マニフェスト制度において定められた義務に違反した場合は、罰則が適用されます。内容を正しく把握して、ルール違反とならないように注意しましょう。

義務違反
制度に規定された内容に反することを行なった排出事業者および処理業者は、違反の内容によっては刑事罰を受ける可能性があります。

具体的には、

  • マニフェストの交付をしなかった
  • 制度に規定された内容を記載しなかった
  • 虚偽の内容を記載した
  • 報告義務を怠った
  • マニフェストや写しの保存をしなかった

などが挙げられます。

産業廃棄物の適正処分は、環境保全に大切なのはもちろんのこと、事業者の信用問題にも関わります。制度について把握し、適切な対応を行いましょう。

関連記事

正しく理解して労使関係を守りましょう、最低賃金制度とは
地理的表示保護制度(GI制度)とは

執筆は2019年1月29日時点の情報を参照しています。
当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash

経営に役立つヒントをご紹介

Squareのメールでは、新型コロナウイルス関連の支援金最新情報やビジネスでさらに売上を伸ばすコツ、経営がさらに楽になる便利なツールの情報、Squareの導入事例などをご紹介いたします。