観光庁の発表によると、2017年の訪日外国人旅行消費額は4兆4,162億円と、昨年よりも17.8%増加していることがわかりました。このうち、買物代が37.1%と最も多く、宿泊料金(28.2%)、飲食費(20.2%)と続きます。政府は、2020年には訪日外国人旅行消費額を8兆円にし、地方における消費税免税店数については2万店の設置を目指すと発表しています。食品や飲料といった消耗品も免税対象品であるため、小売店にとっては外国人旅行者に特産のお菓子や地酒を販売するチャンスです。
参考:
訪日外国人の消費動向 平成29年年次報告書(観光庁)
観光立国推進基本計画(観光庁)
今回は、小売店の経営者向けに免税とは何か、免税対応に便利なサービスについて解説します。
免税とは
「免税」とは、商品にかかっている税金を免除することです。「免税店」は、「非居住者」(外国人旅行者など)に対して、特定の物品を一定の方法で販売する場合に、税金を免除して販売できる店舗のことです。
免除される税金は?
日本の税金は、課税対象によって分類すると、所得税など個人や会社の利益を対象に課税する所得課税、相続税など土地や建物といった資産を対象に課税する資産課税等、消費税など物品の消費やサービスの提供などを対象に課税する消費課税の3種類に分けられます。外国人旅行者が免税を受けられる主な税は、消費課税のうちの消費税、酒税、入湯税、関税の四つです。
タックスフリーとデューティーフリーの違い
免税には、タックスフリー(Tax Free)とデューティーフリー(Duty Free)の2種類があります。タックスフリーで免除されるのは消費税のみで、デューティーフリーで免除されるのは消費税、酒税、入湯税、関税です。
タックスフリーの店舗には、ドラッグストアやディスカウントストア、百貨店などが該当します。税務署に申請し許可を得た、消費税の免税手続きができる免税店のことです。免税対象となるものは「輸出する、通常生活の用に供される物品(一般物品、消耗品)の消費」のみです。海外で使うことが前提の、一般消費者として購入した「物品」でなければなりません。そのため、化粧品をはじめとした消耗品は、国内で使えないよう専用の袋に入れるといった対応がなされます。
デューティーフリーの店舗には、出国手続き後の国際空港内出発エリアにある空港型免税店と、その派生型の空港型市中免税店といった保税免税店が該当します。空港型市中免税店で購入した商品は、出発当日に出発する空港で受け取ることになります。
消費税免税店になるには
前述のタックスフリーに該当する消費税免税店になるには、税務署への申請が必要です。申請にあたっては、国税の滞納がないこと、お客様となる「非居住者」が利用する、またはその見込みがある場所に店舗が所在することなどの条件を満たしていなければなりません。詳細は、国税庁のウェブサイトをご確認ください。
参考:
【手続名】一般型輸出物品販売場許可申請手続(国税庁)
免税店になるには(観光庁)
免税対象品目
免税対象品目は食品類、飲料類、薬品類、化粧品類などの「消耗品」と家電、洋服、宝石類などの「一般物品」に分けられ、それぞれ免税要件が異なります。免税要件は以下のように定められています。
消耗品
・1人の非居住者に対して同じ店舗における1日の販売合計額が5,000円以上、50万円までの範囲内であること。
・非居住者は、消耗品を購入した日から30日以内に輸出する旨を誓約すること。
・消費されないように指定された方法による包装がされていること。
一般物品
・1人の非居住者に対して同じ店舗における1日の販売合計額が5,000円以上。
・販売合計額が100万円を超える場合には、旅券等の写しを経営する事業者の納税地又は販売場の所在地に保存すること。
参考:免税店とは(観光庁)
免税手続き
免税販売では、パスポートなどの旅券から氏名・国籍・在留資格・上陸年月日・パスポート番号などを確認後、購入記録票を作成・出力し、パスポートなどへ貼付しなければなりません。
免税販売の流れは以下の通りです。
1, お客様のパスポートなどから非居住者であることを確認する
2, 購入記録票を作成する
3, お客様に購入者誓約書へサインしてもらう
4, 購入記録票をパスポートなどに貼り付けて割印する
5, 消耗品であれば指定された方法で包装し、お客様に渡す
便利なサービス
免税店の審査条件に「免税販売手続に必要な人員を配置し、かつ、免税販売手続を行うための設備を有する販売場であること」が含まれているように、免税店では非居住者であることの確認や購入記録表の作成・出力などの業務を行う人員や設備を用意する必要があります。
そこで検討したいのが、免税対応POSレジと多言語通訳サービスの導入です。
免税対応POSレジを導入する
免税対応POSレジとは、免税対象商品かどうかの確認、カテゴリー別の金額計算、パスポートなどの読み込み、購入記録表の作成などができるPOSレジのことです。免税販売時における大幅な時間短縮、作業の効率化などが望めます。
多言語通訳サービスを導入する(多言語コールセンター)
免税店では、「免税販売手続に必要な人員の配置」が求められています。これには、免税販売の際に必要な手続きをお客様に説明できる人員を配置することが含まれます。パンフレットなどを使って説明ができれば差し支えありませんが、小売店であれば、商品の購入を検討している外国人のお客様から質問を受けるような場面も考えられます。食べ物や飲み物、また地域の民芸品などであればなおのこと、お客様は、きちんと説明を受けてから購入したいと考えるでしょう。
そこで取り入れたいのが、自治体などが運営する多言語コールセンターです。外国人旅行者がコミュニケーション面での不安を感じることなく観光できるようサポートすることを目的とした、主に免税店や観光施設を対象とした電話通訳サービスです。コールセンターのオペレーターが接客時に通訳を行ったり、免税などに関する説明をしたりします。利用可能時間や対応言語、利用料金は提供自治体などによって異なりますが、365日無休で、英語・中国語・韓国語の少なくとも3カ国語には対応しており、かつ無料とする場合がほとんどです。
参考:
免税店向け多言語コールセンター(東京都産業労働局)
多言語コールセンターの実態調査実態調査について(平成30年3月 観光庁)
2020年の五輪開催に向けて予想される外国人旅行者数の増加。ビジネスチャンスを逃さないためにも、免税対応を検討してみてはいかがでしょうか。また、免税処理にまつわる作業時間を短縮し、お客様とのコミュニケーションを円滑にする便利なサービスを導入してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2019年2月8日時点の情報を参照しています。
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