最近、「NFC」搭載のスマートフォンが増えています。非接触通信のテクノロジーであるNFCは、データのやり取りや端末認証など、さまざまな使い方ができることが特徴です。国際的な統一規格であり、海外でも広く普及しています。
今回は、NFCの用途や、従来の非接触通信との違い、NFC技術の将来性などを解説します。
NFCは国際統一規格
NFCは「Near Field Communication」の略称で、近距離無線通信規格のことです。10センチ程度の狭いエリア内で、機器間でデータ通信をするのに使われている通信技術です。スマートフォンなどに搭載され、非接触通信に利用されています。
非接触通信は、端末(機器)同士が触れなくても「かざす」ことで通信ができるテクノロジーを指します。たとえば、おサイフケータイや交通系ICカードなどに使われているFeliCaという通信技術も、非接触通信のひとつとしてよく知られています。
FeliCaを使った電子決済サービスは日本では利用者も多いですが、海外では香港など一部の国を除き、あまり導入されていません。世界の電子決済サービスで主に使われているのが、ISO/IEC 14443の「Type A」と「Type B」と呼ばれるNFCの規格です。
いずれも非常に小さなチップであるため、スマートフォンなどの携帯電話端末のほか、ICカードなどにも搭載が可能です。日本では「Type A」はtaspo(たばこ自販機用の成人識別カード)、「Type B」は住民基本台帳カードやIC自動車運転免許証などで活用されています。
なお、最近は日本でもFeliCaとNFCの両方を搭載したスマートフォン端末などが販売されています。
NFCとFeliCaの関係
近年、近距離無線通信はType AやType B、FeliCaなど、複数の規格が世界中にある状態が続いていました。ポータブルのスピーカーなどでおなじみのBluetoothの技術も、広義では近距離無線通信のひとつです。
このような中、今後のマーケットの拡大やアプリケーションの開発促進のため、統一規格の必要性が生じてきました。そこで別個の規格を推進していたソニーとフィリップスによって共同開発され、2003年に登場したのがNFCです。NFCは既存の非接触通信技術との間に互換性を持っており、NFC搭載のスマートフォンは今後、海外利用の利便性向上も期待されます。
NFCの活用例と特有の使用法
NFCは、既存の通信規格と互換性があるというだけでなく、以下の3つのモードがあります。
・カードエミュレーションモード…従来の非接触ICカードと同様の機能
・リーダー/ライターモード…NFC用のICチップなどの情報を読み取る
・P2Pモード…NFCデバイス同士でメッセージやデータを直接交換する
カードエミュレーションモードについては従来の交通系ICカードやおサイフケータイと同じ機能ですが、リーダー/ライターモードとP2PモードはNFC搭載デバイスに特有の機能です。
リーダー/ライター機能
これは、NFC用のICチップなどにNFC搭載デバイス(スマートフォン)などをかざしたときに、ICチップに入っている情報の読み取りを可能にする機能です。これまで、外部データの読み取りといえばQRコードなどの方法が一般的でしたが、NFCはセキュリティ面でも安心して利用できることが特徴です。
NFCは電子マネーの決済などに利用可能なセキュリティの高い技術であるため、今後、金融機関や行政機関との情報のやりとりなども含め、さらに広範囲な利用が考えられます。
また、NFC用のICチップをシールにしたものも商品化されており、専用アプリを通してシールに書き込んだものを、NFC搭載スマートフォンなどで読み取ることができます。そのシールを店頭や販促ポスターなどに貼れば、簡単に自社サイトの商品購入ページや割引情報ページなどにお客様を誘導することも可能です。
P2P機能
これは、従来の赤外線通信のように、NFCデバイス間でデータのやりとりができる機能です。たとえば、写真データを送りたいとき、従来はスマートフォンのカメラで撮影した写真を目の前にいる人に送るために、メールアドレスやソーシャルメディアアカウントなどを教えてもらい、専用アプリを開いた上でメールアドレスなどを入力し、その画面上で写真を送る、という複数のステップが必要でした。
NFCデバイス同士なら、自分のスマートフォンを相手のスマートフォンにかざすだけで画像やメッセージなどを素早く送ることが可能です。赤外線よりも簡単で、やりとりできるデータの種類も多いことから、スマートフォンの複雑な操作が苦手な人にも使いやすい機能といえます。
この機能を利用して、小規模店舗などでも店頭でクーポンを画像データで渡すといったことが実現可能です。紙のクーポン券のような印刷コストがかからず、紛失の心配もありません。
周辺機器のデータ管理、認証にも
さらに、NFCの利用例として、温度や湿度、紫外線量といった外的環境の計測機器(温度計など)のログデータを、スマートフォンなどのNFC搭載デバイスにタッチするだけで送り、管理するというものもあります。計測と記録がほぼ同時にできるため、仕事を効率化することができます。
体温や脈拍といった身体データを測定する医療・健康分野でのNFC導入も始まっており、個人が毎日自宅で測定や記録を行うシーンでも、ミスなく短時間で正確なデータを残すことが可能です。
また、スマートフォンと周辺機器を無線でつなぐ際の認証にも、既に一部の機器でNFCが導入されています。
たとえば、スマートフォンに入っている音楽データを携帯用スピーカーやワイヤレスヘッドフォンで再生したい場合、最近ではケーブル接続でなくBluetoothでの無線接続が可能なスピーカーやヘッドフォンが便利です。しかし接続と音楽再生の前に、この2つの機器の間で「ペアリング」と呼ばれる認証作業が発生し、スピーカーがうまくスマートフォンを認識しないことがあったり、認証作業に若干の時間がかかったりするなどしていました。
ここにNFCを導入することで、スピーカーやヘッドフォンにスマートフォンをかざすだけで認証と接続を同時に行うタイプの商品が既に登場しています。
目や指先など身体が不自由な人にも使いやすいことから、デバイスに対するユーザー間の利便性の格差の解消にもNFCが役立つと考えられます。
このように、身近な日々の生活の中でのNFCは、普及しつつあります。NFCのテクノロジーを利用することで、従来の手間や作業ステップを簡略化し、より効率的に、ストレスなく日常の動作を行うことを可能にします。
執筆は2018年7月4日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。 Photography provided by, Unsplash