経営者が押さえておきたい、改正消費者契約法

「消費者契約法という名称だけは聞いたことがあるが内容がよくわからない」「最近改正されたと聞いたがどのような内容か知りたい」という経営者もいるかもしれません。今回は、消費者契約法の概略と、2016年に改正された点について説明します。

消費者契約法とは

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消費者契約法は、消費者と事業者との間の契約に適用されます。消費者が事業者と契約を交わす際、情報量や交渉力で格差があることから、消費者の利益を保護するために2000年に制定された法律です。

問題となる行為

事業者から不当な勧誘を受けたり、消費者が不利になるような契約条項を押しつけられた場合、消費者は、主に、不当な勧誘に基づく契約についてはこれを取り消し、不当な契約条項についてはその条項の無効を主張することができます。それぞれ、具体的に説明します。

不当な勧誘

・不実告知(一部改正)
消費者が契約を結ぶかどうかを判断するにあたり、重要事項について事業者が事実と異なることを告げる行為です。

たとえば、事業者から、特殊な機能がある機械といわれて買ったのに、実際にはそのような機能がなかった場合がこれに当たります。改正後の内容については、後ほど説明します。

・断定的判断の提供
将来の不確実な事項について、確実であると告げる行為です。たとえば、将来値上がりすることが確実ではない金融商品について、確実に値上がりする、といった説明をして販売することが挙げられます。

・不利益事実の不告知
契約にあたり、事業者が消費者の利益になる事実を告げながら、不利益になる事実を故意に告げない行為です。

たとえば、マンションを販売する際に、眺望が良いというセールスポイントだけを告げ、実際には隣に高層ビルの建設計画があることは告げないことがこれに当たります。

・不退去
消費者が事業者に対し、退去してほしいという意思を示したにもかかわらず、事業者が退去しない行為です。

自宅に訪問販売の事業者が来て、消費者が何度も帰ってほしいと伝えても事業者が帰らずに、販売しようとすることがこれに当たります。

・退去妨害
消費者が事業者に対し、退去したいという意思を示したにもかかわらず、事業者が退去させないようにする行為です。

消費者が事業者の店舗を訪問した際、消費者が何度帰りたいと伝えても、事業者が引き留め、販売することなどです。

・過量契約(改正)
改正で新たに設けられた規定で、後ほど説明します。

不当な契約条項

・事業者の損害賠償責任を免除する条項
事業者は損害賠償責任を一切負わず免責されるという条項や、事業者に故意・重過失がある場合に、損害賠償責任の一部を免除するといった条項は無効と主張することができます。

たとえば、スポーツジムや水泳教室などで、事故や物品の盗難等により利用者に損害が生じても、運営側は一切責任を負わないという定めがこれに当たります。

・消費者の解除権を放棄させる条項(改正)
事業者が契約上の義務を果たさない場合や、不良品を販売したような場合でも、消費者が契約を解除できないといった条項については無効と主張することができます。改正で新たに盛り込まれた条項であるため、後ほど説明します。

・消費者が支払う損害賠償額を予定する条項
消費者に対し、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える損害賠償の義務を課す条項や、遅延損害金について年利14.6パーセントを超える額を支払う義務を課す条項については、無効と主張することができます。

高すぎるキャンセル料を設定することなどがこれに当たります。

・消費者の利益を一方的に害する条項(一部改正)
消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項については、無効と主張することができます。改正内容は後ほど説明します。

改正のポイント

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2016年に行われた改正の概要についてご説明します。改正の理由としては、インターネットの普及、高齢化社会が一層進む中で、高齢者を中心により一層消費者の利益を保護することなどがあります。

不実告知の重要事項の範囲を拡大

これまで、重要事項の範囲に含まれていたのは、契約の対象となるもの(目的物)自体について、事実と異なることを告げる場合でした。

改正によって、重要事項の範囲が、目的物だけでなく、生命・身体・財産その他の重要な利益の損害または危険を回避するのに必要な事項、にまで広がりました。

たとえば、事業者に「数年後には乾燥で顔のシワが増える」といわれ、消費者が化粧品を購入した場合、肌の健康状態は身体の利益の損害または危険に当たります。この損害または危険を回避するために化粧品を買ったと判断できるため、取り消しが認められると考えられます。

過量契約の規定の新設

事業者がそうと知りながら、消費者にとって通常の分量を著しく超えた分量の契約を結ぶよう勧誘し、販売する行為です。

たとえば、一人暮らしの高齢者に対して、賞味期限が半年しかない健康食品を3年分販売することなどです。

新たに、消費者の解除権を放棄させる条項も無効に

たとえば、販売した商品についてはどのような理由があっても、契約後のキャンセルや返品は受け付けないといった条項が挙げられます。

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消費者の利益を一方的に害する条項の例示を追加

不当な契約条項の中の、消費者の解除権を放棄させる条項の改定です。

今回の改正で、消費者が特段何もしないことを、新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示があったとみなす条項も、消費者の利益を害するとして追加されました。

本来契約を結んでいる商品と別の商品が届いた場合、消費者の側で拒否する意思を示さない限り、承諾したとみなすことがこれに当たります。

取消権の短期の行使期間を伸ばす

取消権の行使には、短期と長期の期間制限があります。契約を結んだときから5年間、もしくは追認できるときから6ヶ月とされていましたが、改正により追認できるときから1年間に延びました。なお、短期の期間制限の始点は、勘違いに気づいたときや困惑した状態を抜け出したときからです。

法律をきちんと理解して、健全な事業運営を行いましょう。

参考:消費者契約法(消費者庁)

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執筆は2018年5月29日時点の情報を参照しています。
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