パワハラ防止法成立!職場でパワハラを防ぐには?

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

パワーハラスメント(パワハラ)は、深刻な社会問題になっています。政府もこの問題を重要視しており、2019年5月には、パワハラ対策に関する法律が成立し、一般的には「パワハラ防止法」と呼ばれています。

法律において事業者によるパワハラ対策が義務づけられたため、ビジネスオーナーであるならば、内容をしっかり理解しておく必要があります。パワハラの基本的な定義を紹介するとともに、パワハラ防止法の内容や、対策方法について解説します。

パワハラの定義

「パワーハラスメント(パワハラ)」という言葉の定義を、ここで押さえておきましょう。厚生労働省では職場におけるパワーハラスメントとは、以下の三つの要素をすべて満たす行為だと定義しています。

・優越的な関係を背景とした言動である
・業務上必要かつ相当な範囲を超えている
・身体や精神肉痛を与える、または労働者の就業環境が害される

参考:パワーハラスメントの定義について(厚生労働省)

優越的な関係を背景とした言動である

「優越的な関係」のわかりやすい例では、「上司と部下」「先輩と後輩」が挙げられます。しかし、優越的な関係とは、必ずしも役職や在籍年数に基づくわけではありません。たとえば「同僚間」や「部下から上司」という関係もありえます。

つまり、優越的な関係は地位だけではなく、知識や経験の多さ、性格など、さまざまな要素から成り立ちます。「部下が上司にパワハラをするなんてありえない」といった先入観を持たないことが大切です。

業務上必要かつ相当な範囲を超えている

上司や先輩には、部下を教育したり指導したりする役目があります。部下からすれば、せっかく作成した資料を修正するよう指示されたり、お客様への対応を注意されたりすることで、不快な気分になることもあるかもしれません。しかし、それだけで即パワハラになるわけではありません。

指導が明らかに度を超している場合、ハラスメントになりえます。「業務上必要かつ相当な範囲」という基準には、明確な数量や正解があるわけではないため、ケースごとに判断する必要があります。

労働者の就業環境が害される

従業員の働く環境がパワハラによって悪化すれば、業務が滞るだけでなく、心身に不調をきたす恐れがあります。また、ハラスメントを受けている人だけでなく、その様子を見ている周囲の人々への悪影響も懸念されます。

参考:パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)(厚生労働省)

職場でのパワハラのこれまでの実態

2016年に厚生労働省が実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」によれば、パワハラ対策を行う企業の数は増加しています。

予防・解決のための取り組みを実施したり、取り組みを検討している企業の比率は全体の7割を超えており、企業としてパワハラに関心を持っていることがうかがえます。また、従業員数が多い大企業ほど、パワハラ対策を進めている比率が高い傾向にあります。

規模の小さな企業では、人材や資金面で対策が難しい、というところもあるかもしれません。しかし、調査報告書によれば、「パワーハラスメントの予防・解決に取り組んでいる企業で働く従業員は、取り組んでいない企業に比べて、パワーハラスメントを受けたと感じる比率が低い」という結果が出ています。また、「休職者・離職者の減少」や「メンタルヘルス不調者の減少」といった効果も見られるようです。従業員たちが働きやすい環境づくりのためには、パワハラ防止対策は有効といえるでしょう。

jp-blog-powerharassment01

パワハラの種類

パワーハラスメントは、その内容によって以下の六種類に分類されます。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

参考:パワーハラスメントの定義について(厚生労働省)

身体的な攻撃
相手を殴ったり蹴ったりするなど、身体を傷つける行為をすることです。資料で叩く、物を投げつけるといった行為も考えられます。

精神的な攻撃
悪口や嫌味を言ったり、大声で過剰な叱責を繰り返したりなど、相手の精神を傷つける言動をすることです。

人間関係からの切り離し
気に入らない人間をチームから外したり、デスクを移動させたり、正当な理由なく別室や自宅で待機するよう命じたりする行為です。

過大な要求
適正な量を超えた業務を行わせることです。本来の業務に直接関係ない作業をやらせたり、一人で行うには多すぎる業務を命じたりする行為が挙げられます。

過小な要求
過大な要求とは逆に、誰でもできるような程度の低い業務をわざと行わせる、仕事をさせないなどの行為です。

個の侵害
個人のプライバシーを侵すことです。予定をしつこく尋ねたり、スマートフォンや机の中身を覗き見たりするなどの行為が挙げられます。

パワハラ防止法とは

2019年5月29日、パワーハラスメントの防止について盛り込んだ法律(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正されました。「パワハラ防止法」と呼ばれることもあります。ビジネスオーナーとして注目すべきポイントは、第三十条の二で「事業主が、パワハラ防止対策を行うことが法律で定められた」という点です。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

参考:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案新旧対照条文(厚生労働省)

つまり、事業主は従業員からのパワハラの相談を受けられるようにし、問題が発生したら解決に向けて対応できる体制を整えなければならないということです。大企業には2020年4月から、中小企業は2022年4月からの適用が予定されています。

しかし、準備は直前になっていきなりできる、というものではありません。パワハラ防止への取り組み方法は、厚生労働省がマニュアルなどで紹介しているため、今からでも職場のパワハラ対策を始められます。

具体的な取り組み方法については、次項で解説します。

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

カード決済、タッチ決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます

パワハラ防止に取り組む方法

パワハラを防ぐ基本的な取り組みとして厚生労働省が推奨している方法は、以下の七つです。

・トップがメッセージを出す
・ルールを決める
・実態を把握する
・教育する
・周知する
・相談や解決の場を設置する
・再発防止のための取組

トップがメッセージを出す
ビジネスオーナーが直々にパワハラを許さない姿勢を示すことです。従業員の前で話したり、文章でメッセージを配布したりするといった方法があります。

ルールを決める
パワハラに関するルール作りも取り組みの一つです。就業規則にパワハラに関する規定を盛り込んだり、ガイドラインを作成したりすることなどが挙げられます。明文化したルールは、「業務上必要かつ相当な範囲」を判断するのにも有効です。

実態を把握する
実際にパワハラで悩んでいる従業員はいないか、ビジネスオーナーとして実態を知ることも大切です。アンケートを取ったり面談を行ったりして、従業員に意識を向けましょう。

教育する
研修や勉強会を行うことで、従業員がパワハラに関する理解や関心を深める効果が期待できます。外部講師を招く、講演会に参加する、厚生労働省の資料を配布するといった方法があります。

周知する
啓発ポスターの掲示やパンフレットの配布なども、パワハラへの意識を高める効果が期待できます。厚生労働省がポスターのデータを配布しているので、利用するのも手です。

参考:ハラスメント関係資料ダウンロード(厚生労働省)

相談や解決の場を設置する
実はパワハラに悩んでいるかもしれない従業員のために、相談窓口を設けるなど、問題改善につながる手段を用意します。

再発防止のための取組
同じことが繰り返されないよう、パワハラをした人を指導したり、職場全体で研修を実施したりして、再発防止につなげましょう。

パワハラ問題が深刻化する中、国もパワハラに関する法律を定めるなど、社会の関心は高まっています。パワハラは人の心身に大きな悪影響を及ぼし、企業の信用をも左右する問題です。ビジネスオーナーとしてパワハラに関心を持ち、予防・解決に努めましょう。

執筆は2019年10月24日時点の情報を参照しています。
当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash