会社全体の生産性を下げる!?生活残業とは

生活残業という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。従業員が生活費を充足させるために意図的に残業を行って残業代を稼ぐ行為のことを指し、労使双方に悪影響をもたらすものとして近年問題となっています。今回はこの生活残業について、経営者として知っておきたい基礎知識や対応する際のポイントなどを紹介します。

生活残業とは

生活残業とは、意図的に残業を行なって残業代を稼ぐ行為のことを指します。一日の勤務時間内で完遂できる仕事量でありながら、既定の勤務時間内にわざと仕事の効率を下げ、残業手当が出る時間帯まで仕事を持ち越すようにするスタイルがよく見られるようです。

生活残業の背景

生活残業が行われる背景には、主に賃金の少なさや昇給率の低さがあるようです。

もともと賃金が低く設定されていて、そのままでは満足に生活が送れないケースや、ある年齢に達した時点で基本給が頭打ちになり、従来の生活が維持できなくなるケース、所帯を持って家族が増え、必要な生活費は増えているのに、それに応じた収入が得られてないケースなどが主なもので、これらの不足する部分を残業代で補おうというのが理由です。

生活残業による従業員ひとりあたりの残業代は小規模であっても、組織全体としてまとめてみるとある程度のコストになってしまいます。まだ社内に生活残業が発生していない企業であっても、予防のために経営者としては何らかの対策をとっておくようにしておきたいものです。

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生活残業がビジネスに与える影響

生活残業は経営者側だけでなく、従業員側にも望ましくない影響を与えてしまいます。それぞれどのような影響が生じるでしょうか。立場ごとにみていきます。

経営者側への影響

生活残業による経営者側への望ましくない影響としては、次のようなものが挙げられます。

・人件費をメインとした不要なコストの増加
本来であれば支払う必要のない残業代がかさむことによって、人件費が増加してしまいます。併せて、残業時間に使用した分の水道光熱費なども発生することとなり、不要なコストが生じる要因になります。

・社内モチベーションの低下
特に同じ部署で働く従業員が「自分は正当な理由があって残業をしているのに、あの人はわざと手を抜いて残業代を稼いでいる」など、生活残業をしている同僚の姿をみてしまっては、まじめに働いている従業員の意欲も失われます。モチベーションを低下させる社内環境が退職の理由になることもあるので、生活残業は優秀な人材を損失するきっかけになりかねないものだといえます。

・全体の生産性の低下
生活残業をしている従業員の姿をみて、真似をする人も出てくるでしょう。残業代を稼ぐために意図的に仕事のペースを落とす風潮が蔓延すれば、社内全体の生産性低下につながってしまいます。

従業員側への影響

生活残業による従業員側への望ましくない影響としては、次のようなものが挙げられます。

・ワークライフバランスの悪化
残業によって勤務時間が増えれば、その分個人の生活に充てる時間が減ります。本来はやりたくない残業を生活費のために仕方なく行っているのであれば、仕事と生活の両立が難しくなり、健康面や精神面にも悪影響をもたらすでしょう。

・仕事のスキルが向上しない
決められた時間内に自身の持つ能力を十分に発揮し、意欲的に仕事を進めていくのではなく、意図的に効率を下げるスタイルが身に付いてしまうとスキル向上がなかなか望めなくなります。スキルが高まらない状態では賃金面の向上も望めないため、さらに生活残業を継続してしまうという悪循環を生み出しかねません。

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生活残業の解決策や予防策

では、生活残業を解決、予防する方法としてはどのようなものがあるでしょうか。いくつか主だったものを挙げていきます。

従業員一人ひとりの労働実態の把握

従業員一人ひとりに適正なボリュームの仕事が割り振られ、スケジュールの管理が徹底していれば、残業が発生することは理論的にありませんが、完璧に行うのは実際困難でしょう。

しかし、できる限り精度を高める努力をすることが生活残業を含む残業問題全般への根幹的な対策となります。

管理職は従業員一人ひとりとのコミュニケーションを密にし、働いている実態を把握することで、仕事への負担が大きすぎないか、または小さすぎないか、常に目を配るように心がけましょう。そうすることにより、従業員にとっては、いつも見られているという緊張感が生まれ、わざと仕事を遅らせて残業の時間帯へ持ち込むことが心理的にしづらくなります。

部下への指導は管理職の役割の一つですが、「パワーハラスメントに当たらないか」という不安などから、部下へ注意を促すことにためらいを感じている人もいるでしょう。場合によっては、コンプライアンスに基づいた正しい指導方法を身に着けるための管理職講習なども検討しなくてはなりません。

職場の雰囲気の改善

職場によっては、残業を行うことが仕事への熱心さと受け取られる風潮によって、必要のない残業が日常的に行われているケースがみられます。「残業をして当然」という雰囲気のなかでは、正当な残業で残っている従業員と生活残業で残っている従業員の見極めも難しいうえに、生活残業をしている従業員の姿を見て模倣するものが出てきてしまうという悪循環を生む土壌を醸成します。そのためにも、残業はイレギュラーなものとする職場環境にしていくことが重要です。

残業を許可制にする

残業をイレギュラーなものにする手段としてまず挙げられるのが、残業の許可制です。

その仕事が残業してまで行うべき内容かどうか、その残業に要する時間に過不足はないかなどを事前に上司がチェックし、許可を得たものだけが残業できる体制を作るもので、現実的に取り組みやすい方策だといえます。

評価の見直し

職場にいる時間による評価ではなく、仕事のプロセスや成果を重視した評価に切り替えることで従業員の意識を変えることも、生活残業をなくす方策の一つです。

賃金や手当の見直し

生活残業を行う根本的な理由の一つは、生活実態と賃金の見合わなさにあります。家族が増えたり、業務負担が増えたりしても、報酬がその水準に満たないためにやむをえず生活残業をしてしまう状況を招いているようであれば、賃金や手当の額、基準を見直してみることも必要です。

経営者の知らないうちに生活残業は社内に芽吹いているかもしれません。今回の記事をきっかけに、生活残業をなくすだけでなく残業そのものに対して、いま一度チェックを行ってみてはいかがでしょうか。

執筆は2019年10月23日時点の情報を参照しています。
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