定款の作成をもっと簡単に!「電子定款」の作り方とは

会社を設立するうえで、会社名・ビジネスプランの決定、資本金集めなどの準備に合わせて、次は会社の規則をまとめた「定款」の作成、そして発行手続きは欠かせないものです。従来は紙での提出でしたが、2007年以降、パソコン上での「電子定款」の利用も可能となりました。

電子定款の大きなメリットとして、4万円の印紙代が発生しない点が挙げられますが、作成方法によっては費用や負担が発生するものです。今回は無駄なコストや労力を割かないためにも、電子定款の作り方を三つ紹介します。

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紙で作成する定款との違いとは?

会社の憲法とも呼ばれる定款は、会社設立の段階で決定した事業内容や本社の所在地、資本金などを記す書類です。

2007年に電子公証が可能となるまでは定款を紙で作成し、事前申請を行なうにも受け取るにも直接公証役場に持ち込む必要がありました。さらに事前申請で修正点を指摘された場合は修正した定款を再度持ち込むなど、度々公証役場に足を運ぶケースも稀ではありませんでした。

ところが2007年に電子公証が認可されてからは事前認証から認証の申請作業までが電子的に行なえるようになり、公証役場に度々通うことなく、定款の申請までが完了できるようになりました。

ただし、作成方法によっては認証を得た電子定款を公証役場まで受け取りに行く必要があると留意しておきましょう。「会社の立ち上げに精一杯で、公証役場に行く時間が割けない」などの場合は代行に受け取りを頼む、または、一定の要件を満たしていれば2019年3月29日からは公証役場に行かずともテレビ電話で認証が得られるようになりました。この二点は後ほど詳しく説明します。

設立費用を4万円節約するには?定款を発行するうえでかかる費用

修正をする度に公証役場に出向く必要がなくなる点に加えて、「電子定款は、紙での作成のように印紙代がかからない」と耳にしたことがあるかもしれません。印紙税法上、電子データは課税対象となる文書に該当しないため、電子定款であれば印紙税の4万円がかかりません。

紙と電子での定款の発行費用は、以下の表で比較してみましょう。

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自分で作成する vs. クラウド会計ソフトを利用する vs. 代行会社に依頼する

電子定款であれば、紙と比べて発行費用の合計額を4万円ほど節約できることがわかりました。しかし、発行の手続きにかかる全体の費用には、公証人手数料の5万円があることを留意しましょう。それぞれ利便性や費用が少しずつ異なるので、自社に適切な作成方法を選びましょう。

まずは、電子定款を自分で作成し、受け取るまでの流れを説明します。

1, Microsoft Wordなどで定款を作成する
▶︎詳しい作成方法はこちらでも紹介しているので、ご確認ください。申請をしてしまうと修正が加えられないので、PDF化してしまう前に公証役場にメールまたはファックスし、修正点がないかなどの「事前確認」を行いましょう。

2, 作成した定款をPDF化する
▶︎Adobe Acrobat Reader DC(無料)をはじめとするPDF作成ツールをダウンロードしましょう。なかには無料のPDF作成ツールもありますが、Adobe Acrobat Reader DCのように「電子署名」ができるものが必要です。

ダウンロードしたPDF作成ツールで定款をPDF化し、ICカードリーダライタにマイナンバーカード(※)をセットして、発起人の電子署名をします。
※マイナンバーカードを保有していても、電子証明書が発行されているとは限りません。住民票のある役所でマイナンバーカードへの電子証明書の記録を依頼しましょう。紙の通知カードをお持ちの場合は、ICカードのマイナンバーカードを交付するまで一カ月ほどかかるので、できるだけ早く申請をしましょう。

参考:公的個人認証サービスによる電子証明書(総務省)

3, 電子定款の認証手続きに進む
▶︎申請用総合ソフトとPDF署名プラグイン、そして電子証明書を利用するためのソフトをダウンロードします。申請書にも電子署名が必要となるので、ICカードリーダライタとマイナンバーカードを用意しましょう。

申請用総合ソフトを利用し、PDF化した電子定款を送信します。また、2018年以降、株式会社、一般社団法人、一般財団法人の場合、発起人が実質的支配者となるべき者の申告書を記入し提出することが義務づけられているので、合わせて送信しましょう。

4, 公証役場で受け取る
▶︎申請用総合ソフト上で、申請した電子定款の処理状況が「到達・受付待ち」になったタイミングで公証役場に受け取りに行きましょう。早いと、一、二分ほどで処理状況が変わることもあるようです。なかには電子定款を受け付けていない公証役場もあるので、アクセスしやすい公証役場を探す際には合わせて確認しておきましょう。

また、公証役場に向かう際は用意するものが数点あります。二度手間にならないよう、持ち物を確認したうえ万全な状態で向かいましょう。持ち物はこちらをご参照ください。

▶︎▶︎▶︎想定されるコスト:54,000円から61,000円ほど
・ICカードリーダライタ(2,000円から6,000円程度)
・USBメモリ(500円から3,000円程度)
・印鑑登録証明書発行費用(200円から400円)
・発行費用(一通で51,020円)

2019年3月29日以降は、テレビ電話での認証も可能に

テレビ電話での認証制度を利用すると、申請用総合ソフトを通して申請を行なう代わりにテレビ電話で認証を得ることができます。つまり公証役場まで足を運ばなくても電子定款の受け取りが可能です。一連の作業を自宅で行なえるため利便性は高いものの、テレビ電話で認証を得る場合には、申請用総合ソフトでの認証と同様に、電子認証がされた電子定款のPDFを提出しなければいけません。そのため、ICカードリーダライタやPDF作成ツールは変わらず用意したうえで準備を進めましょう。

テレビ電話での認証制度の詳しい情報はこちらからご確認ください。

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公証役場での受け取りを担う場合も。代行会社に依頼する

「開業間際で時間が取れない」「自分で作成するのは不安」などの場合は代行会社に依頼してしまうのも一つの手です。

通常代行会社は、必要項目をメールなどでヒアリングしたうえで定款を作成し、「事前認証」も発起人に代わって行ないます。印鑑証明書は提出物に含まれるため変わらず取得が必要ですが、申請から受け取りまでを代行してくれ、認証された電子定款を郵送で届けてくれるので、自分で作成するのと比べて、ずいぶんと負担が減るでしょう。通常、「電子定款の作成のみ」と「電子定款作成から受け取りまで代行」と大きく二つのプランから選べるようなので、予算と相談しつつ最善策を決めましょう。

▶︎▶︎▶︎想定されるコスト:57,000円から85,000円ほど
・代行会社への支払額
(作成のみの依頼:5,000円から10,000円ほど。代行で公証役場まで出向いてもらう場合:15,000円から30,000円ほど)
・USBメモリ(500円から3,000円程度)
・印鑑証明書発行費用(200円から400円)
・発行費用(一通で51,020円)

このように代行会社は「コストを割いてでも手間を省きたい」という要望に応えてくれる、心強い選択肢でしょう。

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クラウド会計ソフトでの作成も

最近ではfreeeをはじめとするクラウド会計ソフトでも簡単に電子定款が作成できます。希望をすれば全てを担ってくれる代行会社に比べると自ら行わなければいけない作業も出てきますが、細かな手間が省けるので作業時間の短縮が期待できるでしょう。メリットとしては以下が挙げられます。

(1)定款のテンプレートを探す必要がない
▶︎手順に従って必要項目を入力するだけなので、数分で定款が作成できます。
(2)受け取る公証役場を別で探す必要がない
▶︎たとえばfreeeの場合、受け取りを希望する公証役場を表示してくれるので、わざわざ検索エンジンから電子定款を扱う公証役場を探す必要もありません。
(3)認証作業を代行してもらえる
▶︎申請用総合ソフトなどをダウンロードする必要はありません。必要事項を入力し作成をしてしまえば、あとは公証役場に受け取りに行くだけです。

ただし事前申請は代行しない場合が多いようなので、修正点がないかのチェックなどは自ら行なう必要があるかもしれません。

▶︎▶︎▶︎想定されるコスト:57,000円ほど
・定款作成費用(5,000円ほど)
・USBメモリ(500円から3,000円ほど)
・印鑑証明書発行費用(200円から400円)
・発行費用(一通で51,020円)

このように、電子定款は作成方法によってかかる費用や負担がそれぞれ異なります。利便性重視なのか、コストをできるだけ節約したいのか。自社の優先事項を考慮したうえで自社に適した方法を選択しましょう。

執筆は2019年9月19日時点の情報を参照しています。
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