近年、話題に上がることが多い「ブラック企業」。労働の環境や条件が良くない企業の代名詞として使われることが多いようです。ブラック企業として一度世間に認識されてしまうと、人材が集まらなくなるだけでなく、社会的な信用も失いお客様が離れていくなど、事業の死活問題にも関わってきます。
今回はブラック企業にならないための対策や注意点を紹介します。
ブラック企業とは
ブラック企業についての明確な定義はありませんが、厚生労働省はブラック企業の一般的な特徴として以下の3点を挙げています。
1, 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
2, 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
3, このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
ブラック企業にならないためには意識すべき点が数多くあります。上記の特徴として挙がっている項目ごとに、ポイントをチェックしていきましょう。
従業員に対し極端な長時間労働やノルマを課していませんか?
労働基準法では勤務時間の上限について、原則で1週間で40時間、1日8時間と定めています。ただし一定の条件を満たした場合には、1ヶ月単位の変形労働制や1年単位の変形労働制も認めています。これらを超える労働が法定時間外労働(残業)です。
参考:労働基準法に関するQ&A 勤務時間の上限は法律で決まっていますか。(厚生労働省)
また、休憩や休日についても規定があります。1日の労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を少なくとも与える必要があります。そして、毎週少なくとも1回(もしくは4週間に4回)の休日を与えなければいけません。
従業員に対して法定時間外労働や休日労働を求める場合には、労使間において、法定時間外労働や休日労働は最小限にとどめられることを意識した上で割増賃金の支払いなどについて取り決めた「時間外労働・休日労働に関する協定書」(一般的にいう「36協定」)を締結し、「時間外・休日労働に関する協定届」(一般的にいう「36協定届」)を労働基準監督署に届け出る必要があります。
この「36協定届」を届け出ないまま従業員に時間外労働や休日労働をさせた場合は、労働基準法違反になってしまいます。
最近では比較的低コストで導入できる勤怠管理システムが増えているので、勤怠管理の徹底のために導入してみてはいかがでしょうか。たとえば、Squareのアカウントを既にお持ちの場合、スタッフ管理機能を利用できます。この機能にはタイムカード機能も備わっているので従業員の出退勤を記録できます。また、管理者はスマートフォンやタブレット端末を使って、外出先などどこからでもデータの確認が可能です。ぜひ導入を検討してみてください。
コンプライアンスの意識が低くなっていませんか?
まず雇用契約について、民法では両者が合意した時点で口頭だけでも契約は成立し、特に書面を取り交わすことは要件になっていません。しかし、労働基準法では契約内容をできる限り書面によって確認することが求められているので、契約時には雇用契約書を作成し、双方で保管しておくことが望ましいといえます。
また、労働者を採用する際には、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示することが労働基準法で定められています。その際、都道府県ごとに定められた最低賃金を下回らないよう必ずチェックをしましょう。
参考:
労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)(厚生労働省)
コンプライアンスに関連して、言葉は知っていても内容まで正しく把握していないことが多いのが、産休(産前休業、産後休業)や育休(育児休業)についてです。特に育休については、要件を満たしていれば男女関係なく取得することができるほか、平成29年からは妊娠・出産、育児休業、介護休業などを理由としたハラスメント行為を防止するための取り組みが義務付けられているので注意が必要です。
従業員に対し過度な選別をしていませんか?
過度な長時間労働やハラスメント行為自体、避けなければならない問題ですが、心身ともに疲弊した従業員を退職に追いこむケースもあります。
また、特定の従業員を辞めさせようと過剰なノルマを課したり、反対に全く仕事を与えなかったりして自己都合退職を勧めるというケースが報道されることもあります。
逆に、従業員が辞めたがっているのに辞めさせないようにすることも、当然ブラック企業とみなされてしまう行為です。従業員の心身の健康状態に気を配り、誰もが気持ちよく働ける労働環境を提供するのが、ブラック企業にならないための経営者の心がけのひとつだといえます。
そのほかの対策やヒント
厚生労働省では労働の安全衛生に対して積極的に取り組んでいる企業を認定する、「安全衛生優良企業公表制度」を運営しています。過重労働防止やメンタルヘルス対策などのカテゴリー別に評価項目が設定されており、認定されると優良マークを利用できるほか、厚生労働省のホームページ上でも企業名が公表されるなどのメリットがあります。
勘違いや知識不足によって、自社がブラック企業と判断されるような行為をしていたり、違反行為をしていたりすることもあります。どこか従業員の雰囲気がおかしいと感じたり、外部からよくない評判が聞こえてきたりなど、不安があれば社会保険労務士や弁護士などの専門家にすぐ相談するのもひとつの手段です。
ブラック企業にならないような土壌を作るためには、まず従業員とのコミュニケーションをきちんと取ることが重要です。従業員と顔を合わせたらひとこと声を掛けるなど、普段の接し方を意識することに加えて、従業員と面談の機会を定期的に作るのもひとつの方策になります。
さらに、特定の部署や従業員に業務の負荷が偏っていないかを把握し、社内で共有するために、どこでどのような仕事が行われているかを見える仕組みを作ったり、「ノー残業デー」を設けたりするのも効果を期待できるでしょう。
また、社内ばかりに目を向けることなく、外部にも目を向けることも必要です。ブラック企業にならないために他の企業はどう取り組んでいるか、どのようなことに気を付けているかなど、常に情報を収集し、効果があると思えるものは自社のスタイルに合わせて積極的に取り入れていきましょう。
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執筆は2018年4月18日時点の情報を参照しています。
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