みなし残業のメリットとは?事業主が気をつけるべきポイント

経営者にとって、雇用する従業員の給与形態を考えることは重要な仕事です。どのような形を取るかによって、求人情報への反応も変わりますし、既存の従業員の働き方への意識や、人件費にも関わってきます。

今回は「みなし残業制(固定残業制)」の制度の導入について紹介します。労使双方にメリットがあるものの、使い方によっては法に触れてしまうリスクもはらんでいるので、導入には注意が必要です。

みなし残業の仕組みとは?

みなし残業とは、簡単にいうと、「月々の給料の中に、一定の固定残業代手当を含む賃金体系」のことを指します。

毎月30時間分のみなし残業代込みの月給を支払っている場合を例に考えてみましょう。この場合、その月の残業が30時間までなら残業代が支払われているものとして扱われます。みなし残業代は、まったく残業がない月であっても支払われます。

みなし残業代の支払い方法には、基本給の中に含めて支払う方法と、「業務手当」「時間外手当」などの項目で別手当として支給する方法があります。どちらを選んでも問題ありませんが、違法にならないためには必ずおさえておくべき点があり、詳しくは後述します。

雇用側からみたみなし残業のメリットとデメリット

経営者の目線から考えたとき、みなし残業を取り入れることにはどのようなメリット・デメリットがあるのかについて考えてみます。

メリット:人件費の見通しが安定する
経営者にとって、人件費は大きなコストです。みなし残業代を取り入れることで、月ごとの人件費の変動が起こりにくくなり、人件費の見通しが立てやすくなります。

メリット:業務効率が上がる
残業の有無に関わらずみなし残業代が支払われるということは、定時で帰宅できるよう業務を進めれば従業員にとってお得ということです。月25時間分の固定残業代なら、25時間残業しても5時間の残業でももらえる額は同じです。

長時間労働がもったいないので、少しでも早く仕事を終わらせようという姿勢になり、結果として業務効率の向上も期待できます。

デメリット:強制労働と誤解される
みなし残業として規定されている時間はすべて残業しなければいけいない制度と誤解され、従業員の不満が募る可能性があります。仕事が終わっていれば定時ですぐに帰れること、残業時間が少なくても規定の残業代が支払われることを説明する必要があります。

デメリット:人件費が高くなる
まったく残業が発生しなくても、一定の固定残業代の支払いが発生するので、みなし残業を取り入れない場合よりも人件費が高くなる可能性があります。

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従業員側からみたみなし残業のメリットとデメリット

従業員にとってのメリット・デメリットも考えてみます。もし、従業員から「みなし残業にすることで、自分たちにはどのようなメリットが有るのか?」と質問を受けたら、納得できるように回答するのも経営者の役割です。従業員側の視点からの考え方も理解しておきましょう。

メリット:生活費を安定して計算できる
残業代が一定なので、毎月もらえる給料に大きな変動がありません。会社の業績や繁忙期は予測が簡単にできるわけではないので、急なトラブルや情勢の変化により時間外労働が急減することもあります。このとき、固定残業代制度であれば「残業が少ないから生活費が不安」という心配をする必要がありません。生活費の見通しが立てやすくなります。

メリット:残業が少なければお得
毎月固定の残業代が給与に含まれており、それは実際に残業してもしなくても支払われるものです。効率よく業務をこなすことができれば、残業をしなくてもその分の固定残業代を受け取ることができます。

デメリット:仕事が早く終わっても帰りにくい
同僚や上司が定時後も残って仕事をしている場合、「自分もみなし残業代をもらっているから」と帰りにくい気持ちになるかもしれません。また、経営者や上司がみなし残業について正しい知識を持っていなければ、想定されている残業時間分を働くよう強要される可能性もあります。

経営者側としては、従業員がこういったデメリットを感じないように、正しい考え方を職場に浸透させる努力が必要です。

違法にならないためにチェックすべきポイント

みなし残業代制度を取り入れること自体は、労働基準法に従って適切に運用すれば問題ありません。ただ、「固定残業代を支払っているから、何時間でも残業させ放題」として長時間労働を強いるブラック企業もあり、問題視されていました。

固定残業代制度を導入していた会社で、労働者が会社に対して残業代を請求した裁判の判決では、固定残業代制度が有効(適法)と認められるための条件が示されました。それが、「残業代を明確に判別できること」「時間を超過した場合は、差額を支払うこと」です。この判例を受けて2017年に厚生労働省が通達を出し、みなし残業代の運用には注意が必要であるということが経営者に広く周知されるようになりました。

参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。(厚生労働省)

みなし残業代制を違法にならずに運用するためのポイントをまとめました。

(1) 残業代を明確に判別できること
固定残業代が「有効な残業代である」と認められるためには、どこまでが基本給で、どこからが残業代かが明確に判別できなければいけません。何時間分の残業代が見込まれているのかがわからなければ、適切な賃金の支払いがされているかわからないからです。従業員の立場からしても、不信感を募らせる要因になります。

また、固定残業代を時給に換算した結果、最低賃金を下回ることがないようにチェックしてください。問題がなければ、固定残業代の時間や金額を、通常の賃金とは区別して記載します。労働契約書や給与明細など、従業員に分かる形で明記してください。

明示方法の例は、次のとおりです。
・賃金月額25万円(10時間分のみなし残業代、2万円分を含む)
・基本給23万円 + 業務手当2万円(10時間分のみなし残業代)

必ず、時間と金額が判別できるか確認しましょう。「月給30万円(みなし残業代20時間分含む)」のように、具体的な金額がいくらなのか不明な提示では不足しています。

(2) 時間を超過した場合は、差額を支払うこと
固定残業代に含まれる残業時間を超えて残業した場合は、その分の残業代を支払います。30時間分の固定残業代の支払いを受けている従業員が40時間残業した月には、想定残業時間を超えた10時間分について、超過の残業代を支払います。

正しく残業代を支払うためにも、勤務時間管理を適切に行う体制を構築しましょう。

(3) 求職者や従業員に明示すること
個別の雇用契約書や就業規則において、固定残業代制度の内容を明示しましょう。新たに固定残業代制度を導入するにあたって、就業規則を変更する場合には、従業員の同意を得るようにしましょう。さらに、これから採用予定の人についても周知するようにしてください。条件が正しく伝わっていれば、労使間の賃金トラブルを防ぐことができます。

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みなし残業代制度を理解して適切な運用を

みなし残業代制度は、適切に運用すれば従業員にも会社側にもメリットのある制度です。ただ、間違った理解のまま不適当な運用をしてしまうと、有効な残業代と認められずに、多額の未払い残業代請求を受けるリスクがあります。

導入の際には、「残業代を明確に判別できること」「時間を超過した場合は、差額を支払うこと」などのポイントをおさえて制度を設計してください。


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執筆は2020年2月27日時点の情報を参照しています。
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