大企業病はその名称から大企業の中だけに起こる問題と捉えられがちですが、実際は中小企業や個人事業など全てのビジネスにおいて生産性の低下やイノベーションの妨げにつながる危険因子です。大企業病の症状やその弊害を知り、防止に向け何をすべきか考えましょう。
既に大企業病が発生している場合の見分け方や、回復の手立ても解説します。
そもそも大企業病とは?
主に大規模な企業に蔓延する大企業病とは、組織そのもの、あるいは組織に属する従業員に起こりうるネガティブな意識や業務態度のことを指します。心身の疾患の名称ではありませんが、病のように組織や従業員の成長やモチベーション向上にマイナスの作用を及ぼすため、「大企業病」と呼ばれています。
大企業の特徴としてよく挙げられる、全体主義や数多くのルール、安定志向の社風、社内における出世競争の激しさ、派閥争い、スピーディーさに欠ける意思決定など、大企業病の背景にある事情は、中小企業やベンチャー企業でも珍しいことではありません。そのためスモールビジネスのオーナーであっても大企業病に目を光らせておく必要があります。
大企業病はどんな弊害をもたらすか
組織や従業員に大企業病が起きていることで、ビジネスにとってさまざまな弊害が発生します。時にその弊害は、企業の存続を危うくするものでもあります。
- 生産性が低下する
- 現実を冷静に判断できなくなる
- 新市場の開拓や新商品の開発に目が向かない
- イノベーションが起きにくい・妨げられる
- 時代に取り残される
- 優秀な人材が離れていってしまう
大企業病がもたらすこうした弊害は、ビジネスの風通しを悪くするだけでなく大企業病にかかっていない従業員や取引先にもマイナスな印象を残し、それゆえに組織の評判を下げることにもつながりかねません。大企業病を放置することで、優秀な人材の離職や協働関係にあるステークホルダーとの関係の悪化を招くことになれば、ビジネスの閉塞感はますます強まります。
そうなる前に大企業病を防止すべく、まずはその症状を知り、自己診断に役立てましょう。
大企業病の特徴的な症状
大企業病にはいくつかの特徴的な症状があります。全てではなくても該当する症状があれば大企業病の可能性を疑いましょう。
1. ルールに縛られすぎている
重要でない社内ルールが多すぎるというのは、大企業病に陥っている組織の特徴の一つです。本来、社内のルールは業務を円滑に進めるために存在するものですが、ルールを優先するあまり例外を認めなかったり、従業員やクライアントの人間性をないがしろにしていたりするとしたら、大企業病のせいでビジネスの本質が見えなくなっている可能性があります。
2. マニュアルに固執する
マニュアルで決められた通りの対応に固執し、クライアントや社会のために何が正しいかという判断を怠ることも、大企業病の表れです。たとえば新人が入社したとき、教える側がマニュアルに固執して「マニュアルにないことはやってはいけない」と強く指示しすぎることは、教えられる側のやる気や熱意をなくすことにもつながります。
組織の拡大に伴って、仕事の基本や共通認識を伝えるための手引きが必要になりますが、マニュアルにこだわることには大企業病の危険が伴います。
3. 自分で判断できない
縦割り組織などに存在する複雑な意思決定の仕組みや、多数の稟議書は、ビジネスのスピード感を奪っています。それだけでなく、働く人々が自分で考え判断する習慣がなくなり、自分の思考を仕事に生かしたい人にとっては働きにくい職場になってしまいます。
また、新商品の開発などのフェーズでも、意思決定の遅れのせいでトレンドに乗り遅れたり、開発が終わって販売を本格化することにはトレンドが落ち着いてしまっていたりと、大企業病はビジネス攻勢にマイナスの影響を与えます。
4. チャレンジ精神が育たない
誰かが新しい提案をした際に、強く否定・反対される、社内から協力を得られないといった状況がある場合も、深刻な状況です。チャレンジより安定や現状維持を望む社内の風潮は黄色信号ととらえましょう。
特に、会社が新しいチャレンジをするせいで自分の業務が増える、既存業務の価値が下がる、といった恐れをあらわにする人がいるなら、従業員の中に大企業病が密かに広がっている可能性があります。
5. 社内での協力に否定的
営利組織である企業は本来、掲げた目標や経営理念の実現のために全員で事業を推し進め、社会に影響を与えて利益を生み出していくものですが、部署や業務が細分化された大企業では全員が共通認識を持つことを徹底できていないことがあります。会社としての目標や理念を理解していない人がいると感じたなら、大企業病の可能性を考えましょう。
6. クライアントや社会課題に目が向いていない
社内で派閥争いがある、または出世をめぐる社内政治が常態化していることも大企業病の症状です。出世や昇給、自己評価の向上といった個人の目的のためにビジネスを利用されている状態、と換言することもできます。
ビジネスの本体の目的であるクライアントの満足度向上や社会課題解決といった会社の外にある目標に従業員の目が向かず、社内ばかりを見ているようであれば、大企業病と判断して対処が必要です。
7. 現状認識なしに理想論ばかりを振りかざす
現場の状況を冷静に判断できず、理想論ばかりを振りかざす人も大企業病の症状が出ています。たとえそれが正論であっても、現状と乖離した理論はビジネスの世界では机上の空論に過ぎず、利益の拡大ができないばかりか人も付いていきません。
視野が狭まり、現実的で有効な問題解決の端緒を見つけようとする意志の欠如は大企業病の悪しきポイントです。
8. 能力不足・不適当な人が出世している
能力に見合わない出世をしている人がいる一方で、結果を出している人が評価されていない場合、組織の大企業病の末期症状といえます。年齢や勤続年数など形式的な評価に基づく半ば自動的な昇進や昇給は、他の人の不満を高めモチベーションを著しく低下させます。正当な評価を求める優秀な人材は離れて大企業病のない会社へ移り、後に残されるのは会社の保守的な評価体系に合わせて現状維持で挑戦を好まない人ばかりということになりかねません。
もし以上の大企業病の症状に当てはまる場合は、原因を探り、対策を講じる必要があります。
大企業病から脱却する方法
大企業病が発生する背景として、企業組織の構造そのものに問題があるケースが多数あります。組織を維持するために冒険や挑戦ができないといった恐れ、ルールが多く自由の少ない組織構造の中での仕事への意欲やクリエイティビティーの喪失など、大企業病を引き起こす原因を作らず以下のように社内体制を整えることで大企業病は防止できます。
- 現場に決定権・裁量権を持たせる
- 好奇心を育てるコミュニケーションの活性化
- ルールは最低限に
- 新しい挑戦への奨励を制度化
- 採用・評価基準の明確化・透明化
既に大企業病に症状が出ている場合は、教育的指導も求められます。1人の大企業病が組織全体に広まる前に対処することは組織の健全性を守ります。
組織全体が大企業病のムードに苛まれているなら、経営陣による抜本的な改革により評価構造の変更やオープンな組織づくりを進める必要があります。中からのテコ入れが難しい場合は、外部の経営や人事のコンサルタントを招くなどして客観的な意見やメソッドを取り入れることも考えてみましょう。
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執筆は2020年1月30日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash
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