【賢者の声】「見栄でビジネスをするな!」田村麻美税理士に聞く、起業と税金

「賢者の声」はビジネス業界の著名人や、現場第一線で活躍する有識者の方々からの意見を集めた言論媒体です。この投稿では足立区でブロガー税理士として活躍している田村麻美さまに起業や税金についてお話を伺いました。

プロフィール
田村麻美:税理士。1984年生まれ。ブロガー。TRYビジネスソリューションズ代表取締役。税理士法人江波戸会計東京支社長。早稲田大学経営管理研究科(MBA)在学中。

税理士になった理由は、ネガティブ…?

ーどうして税理士に興味を持ったのですか?

実は税理士になったのも、独立したのも全部ネガティブな理由なんです…。自分の意志ではなく、親に資格を取れと言われたからなんです。大学が経済学部だったので、資格を取るなら「公認会計士」か「税理士」と思い、資格の予備校に説明を聞きに行ったら、公認会計士はサークルにも参加ができないくらい勉強が大変そうだったので、一科目ずつ受験することができる税理士にしたんです…(笑)。

卒業後は、税理士事務所に勤めていたんですけど、勤務することに息苦しさを感じちゃって。組織に属せない人間だったんです。でも、税理士の資格を維持するには勤務するか、開業するかしかないので、開業を選びました。最初はもちろんお客様は1人もいなくって、アルバイトもしましたよ。女性だからなのかはわかりませんが、下に見られて怒鳴られたことも多々あります…。

でも、お客様を開拓していくのは面白かったです。お客さんの会社が成長するのと同時に、私自身も経営者として成長していくのを感じます。

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税理士選びは恋愛と同じ

ークライアント開拓で工夫したことはありますか?

SEO対策はすっごい考えました!「区の名前+税理士」でひと通り検索しました。足立区は税理士も高齢化が進んでるので、ここなら差別化できると思いました。割とホームページを作ってすぐに、「足立区・税理士」で検索順位が上の方になりましたよ。

ー他に差別化になっているところはありますか?

どの税理士に依頼してもほぼ同じような成果物ができる中で、どう選んでもらえるのかは考えますね。

税理士っていう資格はあくまでも入り口で、実はビジネスコンサルタントのような仕事もしてます。経理担当者がいないスタートアップのお客様も多いので、最初は外部の経理担当者くらいに思っていただいて、そこからその会社のCFOのような存在になれるのを目指してます。お客様の売り上げが上がれば私の報酬も上げていいただける可能性が高まるので、毎日どう売り上げを上げるのかを考えてますよ!(ニヤリ)

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ー具体的にクライアントとはどんなコミュニケーションをしてますか?

今はオンラインでミーティングもできますけど、私はできる限り会うようにしてます。あと、飲みに行く時間も大事!お客様の顔色を見たいんですよね。ちょっとした会話の中からいろんな情報がポロポロ出てくるんです。起業したばかりだと、どの情報を事前に税理士に言っといた方がいいか分からないから、雑談でもいいから、何かする時は教えてほしいんです!

あとは、会社だけを見てもダメだと思ってます。経営者も人間なので、病気になることもあるし、ご家族に影響する可能性があります。経営者とそのご家族、従業員が全員トータルで幸せになることを考えないと、最適な解決法は分からないですね。

ー税理士の乗り換えってできます…?

できますよ。税理士選びは恋愛と一緒です。相思相愛にならないと。相性を測るためにも、ブログで私の人となり、考え方など色々書いています。これを読んだ上で選んでもらえればと。

起業で成功する秘訣は、謙虚さ!?

ー税理士としてさまざまな経営者を見てきた中で、開業が上手くいく人の秘訣って何だと思いますか?

野心も必要だとは思いますが、まずは「謙虚さ」かなと思います。最初から六本木に事務所を構えようとしちゃダメ!飲食店とか業種的に立地が大切なビジネスは別にして、立地が関係ない事業モデルなら自宅で始めるとか固定費はなるべく抑えたほうがいいです。売り上げを立てる見込みがないなら、人を雇わずにまずは1人で始めましょう。法人設立時に自分の報酬を高く設定しすぎて、後で苦しい思いをする社長もいます。「見栄でビジネスはするな」と伝えたいですね。

最初から物件を借りようとする人には色々耳が痛いこともいいます。「最初から固定費があるのはしんどくないですか?」「勤めてるときは会社の看板があったけど、独立したらその看板はなくなりますよ」「昔の人脈があるっていうけど、本当にその人は仕事を発注してくれるんですか?」とか。

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ー開業時の初期費用についてはどんなアドバイスをしてますか?

なるべく自己資金でスタートするように勧めてます。今、創業融資が流行っていますが、借り入れは結局借金ですからね。借入ができるときに借りて、返済していくといった実績をつくるという考えもありますが、そもそも本当に借りる必要があるのか、よく考えていただいております。返せる見込みのないものは借りない。たとえば、飲食店の設備資金のように借りないと事業をはじめられないものならいいとは思いますが、ランニングコストは最低でも3ヶ月分は貯めてから始めるようにとアドバイスしています。

法人を設立したら、数年後の納税も意識する

ー他にも開業時に意識して欲しいことはありますか?

会社員をしていた方が開業するとき、みなさんよく「税金が高い」っていいます。会社員だと毎月給与から天引きされるので、納税しているという意識が低いんですよね。いざ、自分で一括して納税するとなると途端に高いと感じてしまう方が多い。

消費税については特に意識をしてほしいです。資本金や売上、給与の要件次第で、原則として、初年度、二年目、三年目のいずれかから、消費税の納税が始まります。いつから消費税の納付が始まるか、また、有利となる制度の選択は可能かどうか等々意識をすることが大切です。消費税は納税が始まると国に納めなきゃいけないのに一旦手元に預かるものとなるので、意識が疎かになると感じる負担感も大きく、経営自体に影響を与えることも大いに考えられます。

ー節税のアドバイスを求められることも多いのではないですか。

そうですね。よく、節税すれば会社にお金が残ると勘違いされている方がいます。本当に必要なものを買うならいいのですが、節税は結局お金が出ていく行為です。

では、会社のお金を増やすにはどうしたらいいか。

会社員が税金を天引きされた給与からしか貯金ができないことを考えれば、会社も納税をした後に残ったお金を貯めていくしかない。
納税できていないということは、ほぼ赤字の可能性が高い。つまり、お金がない状態なわけです。

純粋にお金を増やしていきたいのであれば、利益をだして税金を納付していかなければならないのです。節税についてはたくさんノウハウが出回っています。しかし、ほとんどの節税方法がお金の支出を伴うということを忘れないで。と思っています。

起業家は今後増える…?

ー副業解禁は起業家を増やすと思いますか?

起業にチャレンジして、失敗したらまた以前のように会社に勤める、日本はまだまだそんな風土じゃないように感じます。その点、会社員しながら副業にチャレンジして、上手く行ったら独立するというのはリスクを軽減できるベストな方法だと思います。

ー起業をサポートするITツールは起業に役立っていると思いますか?

カード決済の導入が楽になったのは感じています。手数料が気になって導入したくない人もいらっしゃいますが、やっぱり消費者の需要はあると思います。実際、カード決済の入れたことが集客になったというお客さんもいますよ。

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ー今後の田村さんの仕事はどう変化すると思いますか?

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クラウドの会計ソフトもありますが、やはり、導入時、そして最終チェックは「まだ」人の確認が必要かと思います。ただ、今後文系の資格取得者の仕事はどんどん減っていくだろうなあと思うので、税金を軸にしたサービスだけでなく、自分の価値をお客様に認めてもらえるようにしていきたいですね。数字を読む力を使って、お客さんの会社の成長を助ける立場になっていきたいです。

起業する人にもアドバイスしていますが、取引先はひとつに頼りすぎず、いくつか分けるべきです。その点で、私も税理士以外の道を探っていますよ。