APY(年間利回り)とは?APYを利用して会社の資産を増やす方法

順調に利益を上げ資金が増えるのは喜ばしい一方、積み上がった内部留保をどう活用するかは悩みの種にもなり得ます。余剰資金が気になりはじめたら、今後の経営の活力となるように、効果的な資産運用を行って資本力を上げておきたいところです。この資産運用でポイントになるのが利回りです。とくに、年単位で運用収益率を算出するAPY(年間利回り)は、効果的な資産の運用方法を検討する際に重要な指標となります。

本記事では、APYの概要について、金利や利回りの基本、複利の効果などの概説とともに、APYとよく似た概念であるAPR(年間収益率)との相違点や変換方法、APYやAPRが効果的に活用できる場面を紹介します。あわせて、法人が資産運用を行うにあたってのメリットや気をつけたいポイントについても解説します。

目次


APY(年間利回り)とは?APRとの違い

APYとAPRはどちらも暗号資産の取引など投資の中でよく用いられる用語ですが、一般的な資産運用にとっても重要な指標です。APYとAPRの違いは、数値の算出にあたって「複利」の影響をふまえているか否かです。APY、APRの特徴をみていきましょう。

APYは複利を考慮して計算された年間利回り

APY(Annual Percentage Yield)は「年間利回り」や「年収率」と呼ばれ、複利での運用を考慮して年換算で収益率を計算したものを指します。利息を元本に追加しながら運用したときに、1年後に受け取る利息や配当がどのくらいになるのかを算出し、元本に対する利益を年間の収益率として割り出したものです。単位は%で表します。

複利運用では、利息が元本へ組み込まれ、次の利息は前回の利息も含めた金額に対して計上されるため、受け取る利息は期間が長くなるほど増えていきます。

【APY運用例】
元本:100万円、利率:10%(複利)の場合

  • 1年目…110万円(100万円×10% + 100万円)
  • 2年目…121万円(110万円×10% + 110万円)
  • 3年目…133万1,000円(121万円×10% + 121万円)

APRは複利を含まない状態での年間利回り

APR(Annual Percentage Rate)は、「年換算利回り」と呼ばれるもので、複利効果を考慮せずに年間収益率を算出します。利息を元本に含めない単利は、常に元本に対してのみ計上するため、元本を増やさない限り、各年で受け取る利息は同じになります。単純な年利のため、日割りの利息計算も簡単です。

【APR運用例】

  • 元本:100万円、利率:10%(単利)の場合
  • 1年目…110万円(100万円×10% + 100万円)
  • 2年目…120万円(100万円×10% + 110万円)
  • 3年目…130万円(100万円×10% + 120万円)

APYとAPRの違いとは

APYとAPRは、いずれも年間収益率を算出する指標であり、同じ「%」の単位で表示されるため単純に比べがちですが、APYは複利の効果を考慮し、APRは複利を考慮しない点が異なり、そのままでは比較できません。複利運用は利息が計上される頻度が高いと元本に組み込まれる回数も多くなり、年を追うごとに収益に開きがでてきます。

とくに、利息や配当が1日単位など短期間の場合、複利運用で頻繁に利息が組み込まれていくAPYは単利のAPRとくらべて収益率が大きくなる傾向にあります。

APYのみが表示された商品とAPRのみが表示された商品を比較する場合は、APYあるいはAPRのいずれかに統一させる換算が必要です。

金利と利回りを理解する

APYもAPRも利息を年換算にする指標です。ここからは、投資や資産運用の中でよく用いられる「金利」や「利回り」についてみていきましょう。類似の用語である「利子」と「利息」も整理していきます。

金利(利子、利息)とは

金利は、元本に対する割合を指し、率(%)で表します。これに対し、利子・利息は、金額を示す用語で、通貨の単位(円など)で表します。

利子と利息は、ほぼ同じ意味合いで、お金を預けたときに受け取る(あるいは、借りたときに支払う)対価を指します。この利息や利子を計算するためのレートが金利です。一般的に年率(%)で示されます。たとえば、元本100万円を金利1%で預けていた場合、1年間で受け取れる利息は1万円です。

利回りの計算方法

利回りは、元本に対する収益の割合を指します。投資の場面でよく使われ、金利と同様に年率(%)での表示が一般的です。

収益には利息のほか、商品の売却益も含みます。また、収益から売買手数料や保管にかかる費用を差し引いた実質上の利益で算出した収益率をみる場合もあります。収益のみで算出する利回りを「表面利回り」、費用も計上して算出する利回りを「実質利回り」と呼びます。

表面利回り(%)=(収益 ÷ 投資元本)÷ 運用年数×100
実質利回り(%)={(収益-費用)÷ 投資元本}÷ 運用年数×100

【株式を売買した場合の利回りの算出例】

  • 購入金額:100万円
  • 配当金:5,000円
  • 売却金額:110万円(売却益:10万円)
  • 収益:5,000円 + 10万円=10万5,000円
  • 売買の手数料:4,000円
  • 運用年数:2年

上記の条件の場合、利回りは以下のように算出されます。

表面利回り:(10万5,000円 ÷ 100万円)÷ 2×100=5.25%
実質利回り:{(10万5,000円-4,000円)÷ 100万円}÷ 2×100=5.05%

複利の効果とメリット

ここからは、複利だとどのくらいの効果があるのかをみていきましょう。複利で資産運用していくと、単利での運用にくらべて資産が早く増えます。また、運用期間が長くなるほど利息が組み込まれる回数が増え、複利の場合の効果が大きくなります。

単利に比べて資産が早く増える

複利とは、運用で得た収益を元本に組み入れて投資していく運用方法です。いわゆる、利息が利息を生む「雪だるま式」の運用で、2年目から利息に違いが出始めます。

【複利と単利の比較例】
100万円を年率5%の単利と複利で運用した場合

期間 単利 複利
1年 105万円 105万円
2年 110万円 110万2,500円
3年 115万円 115万7,625円
4年 120万円 121万5,506円
5年 125万円 127万6,282円
6年 130万円 134万0,096円
7年 135万円 140万7,100円

運用期間が長くなるほど効果が出る

複利の場合、年を追うごとに単利との利息の開きが大きくなります。上記の例でみると、単利と複利の金額差は、2年目で2,500円、5年目で2万6,282円、7年目で5万7,100円と、徐々に差が大きくなっています。

単利では、元本に対する年利で計算された利息が毎年足し合わされるため、直線的に増加します。一方複利は、前回の利息が元本に組み込まれ、その合計に対して年利が掛け合わされます。このため、運用期間が長くなればなるほど年利が掛け合わせる対象は大きくなり、率の数値は同じでも利息の差が開いてくるのです。

APYの計算方法

ここからは、具体的なAPYの計算方法をみていきましょう。あわせて、単利のAPRから複利のAPYへ換算する方法も解説します。比較検討の際に参考にしてください。

APYの計算式

APYは下記の計算式で求められます。

APY=(1 + 金利 ÷ 年複利回数)^年複利回数-1

具体的な運用例でみていきましょう。

【APY算出例】
金利:5%、利息の支払い:1カ月ごと(年12回)の場合
APY=(1 + 0.05 / 12)^12-1
APY=0.0512

上記の数値をパーセント表示にすると、APYは5.12%となり、複利の効果によって金利の5%よりも高くなっていることがわかります。複利は利息の支払回数が多いほど掛け算される変数が大きくなるため、利息を受け取る頻度が高いほどAPYは大きくなります。

APRからAPYへ変換するには

APRをAPYに換算する場合、こちらのウェブサイトを利用すると便利です。必要な数字を入力すると自動で計算してくれます。英語のサイトですが複雑なフォームではないため、操作は難しくありません。

【APRからAPYを求める例】

  1. APR 30%、複利で毎週運用するものとしてAPYを算出する場合
  2. APR欄:30を入力する
  3. Compounding欄:weeklyを選択する
  4. 「CALCULATE」を押す
  5. Annual Percentage Yield:34.8696%と表示される(これがAPY)

このサイトでは、APYからAPRを求める変換も可能です。

APY、APRが使われるシーン

APYやAPRは、短い期間の運用ほど特徴が際立ってくるため、最近では暗号資産関連の取引においてよく使用される用語です。代表的な運用方法を見ていきましょう。

イールドファーミング

イールドファーミングとは、暗号資産をDEXと呼ばれる分散型取引所に預け入れ、流動性を提供する代わりにて報酬を得る運用方法です。

分散型取引所には中央の管理者がいません。そのため取引に必要な通貨(暗号資産)をユーザー同士で持ち寄る必要があります。自分が持っている通貨を取引所に預けてほかのユーザーが取引できるようにする代わりに、対価として報酬を受け取る仕組みです。

報酬は、ユーザーが取引を行った際に生じる手数料の一部が割り当てられます。APRは数十%や100%以上となるケースもみられます。ただし通貨レートは常に変動しており、預ける通貨のレートによっては受け取れる利息よりも大きな損失を被るおそれもあります。

レンディング(貸仮想通貨)

レンディングは、暗号資産(仮想通貨)を貸し出すことで利息を受ける運用方法です。専用のプラットフォームがあり、持っている暗号資産を借りたい人または取引場に貸して利息を受け取ります。貸出期間が1年に満たない短期のものもあり、利息も1時間ごとに支払われるなど短期運用のものも多くあります。

イールドファーミングは暗号資産を取引所に預ける形で流動性を提供することによって報酬を得る取引ですが、レンディングは、プラットフォーム上で暗号資産を「借りたい人に貸す」システムです。自分で暗号資産の売買を行うことなく、1%~5%程度と銀行よりも高い金利で運用できますが、通貨を貸し付けているあいだに価格が下落するリスクや、借り手がいないために貸したいタイミングで通貨を貸せない場合があることには注意が必要です。

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ステーキング

ステーキングは、暗号資産を保有してブロックチェーンに参加することで報酬を得る運用方法です。一般的に暗号資産は売買で取引を行いますが、ステーキングは対象となる暗号資産を保有するだけで継続して報酬を得られる点が特徴となっています。この報酬がAPYやAPRで表示されます。

ただし、暗号資産であればどの通貨でも良いわけではなく、ステーキングの対象となる暗号資産を口座で保有する必要があります。また、暗号資産を売買できない一定の期間が定められ、売りたいときに売れない可能性がある点や、条件を満たさなければ報酬を得られない可能性がある点にも注意が必要です。

法人の資産運用について

APY、APRを中心に、複利や金利、利回りなどについて整理してきましたが、ここからは法人の資産運用にあたり、検討の際にとくに押さえておきたいポイントをみていきましょう。

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法人の資産運用の必要性

経営基盤を強化した上で、なお余剰資金が残る場合、そのまま眠らせておいても資産効率は上がらず、また、いつ社会情勢が変化し業績不振に陥るかわかりないため、積極的に資産運用を検討し、体力強化に臨みたいところです。

一方で、個人と法人では、税務上・手続き上で条件などが異なる場合があり、どちらで資産運用を行う方がよいのかは、投資の規模や期間などを踏まえて慎重に検討する必要があります。

法人の資産運用の手段

法人の資産運用にあたり、リスクとリターンのバランスはとくに慎重に考えておきたい要素です。法人であれば個人での運用よりも大きな金額を投資に使えるケースが多いため、ローリスク・ローリターンの商品でもじゅうぶんな投資成果を上げられる可能性があります。具体的には、国・地方自治体や企業が発行する債券や投資信託などが、リスクの許容度に合わせた運用を行える現実的な選択肢となるでしょう。

法人の資産運用のメリット

なぜ法人が資産運用を行うほうがよいのかを整理しておくと、具体的に検討する際のポイントも見えやすくなります。大きく三つの可能性を挙げておきましょう。

第一のポイントは、事業としての内部留保の有効活用が視覚的にわかりやすくなることです。事業で得た余剰資金を経営者が個人的に資産運用すると、会計上の区別が難しくなるおそれがあります。法人による資産運用であれば、事業に再投資した後に余った資金を、事業のためにさらなる有効活用を行おうとしている姿勢が明確になるでしょう。利息や配当金を積み上げておけば、業績不調時への備えにもなります。

第二のポイントは、損益通算ができることです。法人の場合、他の法人所得と損益通算を行うことができます。損益通算とは、1年間に得た利益と損失を相殺することを指します。個人投資家は所得区分が分かれているため、定められた所得しか損益通算ができません。一方、法人の場合、投資で出た損益を他の法人所得と損益通算でき、税負担の軽減につながります。

第三のポイントは、欠損金の繰越控除です。損益通算をしても相殺しきれなかった損失については、翌年以後、最長10年間にわたって税務申告で損失を繰り越せます。個人の場合は3年間なので、単年で大きな損失を出してしまった際に税負担をより長く抑えられる点はメリットともいえるでしょう。

法人の資産運用のリスクと注意点

法人における資産運用を検討する際には、内部留保の規模と短期・中期・長期で事業へ還元する資産規模のバランスや、元本割れなど資金の損失リスクと利回りのバランスを考慮することが重要です。さらに、個人で運用する場合と比べ、税務や手続きの面で違いがあります。法人として資産運用する際にどのような点に留意すべきか、リスクと注意点を押さえておき、着実な運用を目指しましょう。

元本割れのリスクがある

個人で投資する場合にもリスクとなりますが、株式や債券、不動産などの価値が市場環境の変化により減少することがあり、元本を下回る可能性があります。

元本保証と元本確保の違いについて理解しておきましょう。元本保証は、元本が必ず保証される商品で、預貯金が該当します。預貯金は預金補償制度で守られているため、銀行が破綻するような状態になっても、一つの金融機関につき元本1,000万円までとその利息が保証されます。

一方、元本確保は、投資した商品を満期で受け取ったときに元本が確保される仕組みで、満期になる前に途中解約した場合や、運用先が破綻した場合などは元本割れを起こす場合があります。とくに、市場が不安定な時期やハイリスク・ハイリターンの商品はこのリスクが顕著になります。

事業のための貴重な法人の資産を運用するにあたっては、個人よりもリスクに対して慎重に動く必要があるでしょう。

税制上の優遇措置は適用外

法人が資産運用を行う場合、個人投資家が享受できる税制上の優遇措置は適用されません。たとえば、個人向けに提供されているNISA(少額投資家向けの非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、法人では利用できません。

また、法人の場合、配当や譲渡益が売り上げと同様に扱われ、通常の法人税率で税金が課されることになり、税負担が大きくなる可能性があります。利益を得る目的で法人が商品をもっていると、売買せずに持っている商品の含み損益も計上することになり、資金獲得のタイミングと納税のタイミングがずれて資金がないのに納税しなければならないおそれもあります。

利用できるのは一般口座のみ

金融機関で投資の取引を行う場合、個人であれば特定口座の開設が認められています。特定口座だと、金融機関が確定申告に必要な年間取引報告書を作成してくれ、源泉徴収ありの口座を選択した場合は確定申告そのものも不要になります。法人の場合は特定口座の開設はできないため、これらの優遇はありません。

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ここまで、APYの概要を整理するとともに、APRとの違いや、金利と利回り、複利の効果を整理しつつ、法人が資産運用を行う必要性や手段、メリットと注意点をみてきました。APYやAPRはおもに暗号資産取引の場面で使われる指標ですが、法人の資産運用については、あくまで安定性を重視し、リスクを抑えて資産を形成していくことが第一です。

本記事で解説したAPY・APRまた金利・利回りといった用語を適切に理解し、余剰資産を有効活用する方法として資産運用を積極的に検討して、経営基盤のさらなる強化を図っていきましょう。


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執筆は2024年1月11日時点の情報を参照しています。2024年3月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash