前払費用の仕訳例
前払費用を使う場合の会計処理は原則、次の時点で仕訳が必要です。
・支出日
・決算日
・翌期首日
また、前払費用の会計処理には、様々なパターンがあります。各会計処理を見ていきましょう。
1.前払費用の基本的な会計処理
前払費用の基本的な会計処理には、3つのパターンがあります。同じ具体例を使い、それぞれの仕訳を見ていきます。
例)3月決算法人。1月に1年分の保険料12万円(月1万円)を普通預金から前払いした。当期の費用となるのは、1月分~3月分の3万円、翌期の費用となるのは4月分~12月分の9万円である。
基本的な会計処理1:支出日に全額を前払費用とする会計処理
このパターンでは、支出日に支払額の全額を前払費用に会計処理し、期末日や翌期首日にその会計期間の部分のみ、経費に振り替えします。
・支出日の仕訳
借方 |
貸方 |
前払費用 : 12万円 |
普通預金 : 12万円 |
・決算日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 3万円 |
前払費用 : 3万円 |
・翌期首日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 9万円 |
前払費用 : 9万円 |
支払日の借方勘定科目と、決算日、翌期首日の貸方科目を前払費用で処理することで、前払費用の残高は0円になります。
基本的な会計処理2:支出日に全額を経費科目で処理する会計処理
このパターンでは、支出日に支払額の全額を経費科目で会計処理し、期末日に翌期分を経費から前払費用に振り替えます。また、翌期首日には、その期分を経費に再度、振り替えします。
・支出日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 12万円 |
普通預金 : 12万円 |
・決算日の仕訳
借方 |
貸方 |
前払費用 : 9万円 |
保険料 : 9万円 |
・翌期首日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 9万円 |
前払費用 : 9万円 |
決算日に翌期分の保険料を前払費用に振り替えることで、当期分の保険料3万円のみ当期の経費になります。また翌期首日に振替処理をすることで、前払費用の残高は0円になります。
基本的な会計処理3:支出日に経費科目と前払費用を分けて処理する会計処理
このパターンでは、支出日にあらかじめ当期分を経費科目で、翌期分を前払費用で会計処理します。
・支出日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 3万円 |
普通預金 : 12万円 |
前払費用 : 9万円 |
|
・決算日の仕訳
仕訳なし
・翌期首日の仕訳
借方 |
貸方 |
保険料 : 9万円 |
前払費用 : 9万円 |
支出日にあらかじめ当期分を経費科目で、翌期分を前払費用で会計処理しているため、決算日には、仕訳をする必要がありません。翌期首日に振替処理をすることで、前払費用の残高は0円になります。
上記3つの基本的な会計処理は、どれを選択しても問題ありません。会社に合ったやりやすい方法で、仕訳を行ってください。
ただし、財務成績や経営成績などについて前期比較や三期比較など、複数年度の比較を行う場合に影響が出ないよう、一度選んだ会計処理は特別な事情がない限り、毎期継続するようにしましょう。