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可処分所得とは?手取りとの違いや計算方法、推移状況

公開日:2023/06/27

可処分所得とは、一般的に「手取り収入」と呼ばれているものと同じ意味で、給料などで手にする所得から税金や社会保険料などの必ず納めなくてはならないお金(非消費支出)を差し引いた金額のことをいいます。これと比較して、税金や社会保険料などを差し引く前の所得額は「額面」などと呼ばれています。

可処分所得とは?手取りとの違い

可処分所得とは、「所得のなかで自由に処分が可能なもの」という意味で、給料などで得たお金ののなかから、税金や社会保険料などの必ず納めなくてはならないお金(非消費支出)を差し引いた残額のことを指します。

会社員などが受け取る給与明細をみると「支給合計」「控除合計」「差引支給額」というような項目があります。

「支給合計」は、給与として会社が従業員に支払う基本給や手当などを合計した実収入の額となっており、「額面」などと表現される場合もあります。

「控除合計」は、所得税、住民税といった税金や、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険といった社会保険料など、所得に応じて必ず納めなければならないお金の合計です。

給与天引きの場合、「支給合計」から「控除合計」を差し引いて、「差引支給額」にある金額が従業員に支払われます。この「差引支給額」が可処分所得で、「手取り額」を聞かれた際にはこの数字を答えるのが一般的です。

「支給合計」のなかの「差引支給額」の割合は、年齢や扶養家族の人数、住んでいる自治体などによって多少の差はありますが、75%から85%が目安となります。

可処分所得を理解するうえで、あわせて知っておきたいものに「所得」と「収入」という言葉があります。

「所得」とは、給与などの「収入」から必要経費や控除額を差し引いた金額のことを指します。イメージしやすくするために会社員ではなく、個人事業主を例に挙げます。個人事業で飲食店を経営していて100万円の売上があったとします。他の事業の売上や報酬などを得ていない場合、この100万円が「収入」にあたります。ただし、この売上を得るためには、食材の仕入れや従業員への給与、店舗の賃借料や水道光熱費など、さまざまな必要経費がかかっています。これらの必要経費の合計が仮に70万円あった場合、「所得」はは「収入」から必要経費を差し引いた金額ということなので、売上の100万円から差し引いて残った30万円が「所得」になります。個人事業主の場合、この30万円の「所得」のなかから所得税や住民税、個人事業税、健康保険料、国民年金保険料などを納めなくてはなりません。仮にこれらの税金や保険料の合計が10万円だとすると、差し引いた残りの20万円が「可処分所得」ということになります。

所得=収入-必要経費
可処分所得=所得-(税金+健康保険料、国民年金保険料)

【参照サイト】
可処分所得|用語解説|三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
統計局ホームページ/家計調査 用語の解説

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可処分所得の計算方法、シミュレーション例を紹介

会社員を例にした場合、可処分所得の算出方法は次のような計算式で表せます。

可処分所得=支給合計-(税金+社会保険料)

支給合計から差し引かれるお金は、大きく税金と社会保険料に分けることができます。

税金の部分をさらに細かくみると、所得税と住民税という項目になっています。まず所得税ですが、次の計算式で算出します。

所得税額=課税所得金額×税額-税額控除

ここで必要になる課税所得金額は次の計算式で算出します。

課税所得金額=所得金額-所得控除

所得税の税率と税額控除は課税所得の金額によって7段階で設定されているため、所得税額を算出するには個別の課税所得額に税率を割り当てて計算する必要があります。

一方の住民税ですが、一律5,000円の均等割と課税所得に応じて算出される所得割を合算した金額となります。

住民税=均等割(5,000円)+所得割

ここで必要になる所得割は以下の計算式で導き出します。

所得割=課税所得×10%-税額控除

住民税は標準税率が設けられているため原則として地域による差が出ないようになっていますが、自治体それぞれの裁量によって条例で変更が効くため「地方環境税」等の名目で超過課税が行われている地域も存在します。

続いて社会保険料についてですが、内訳をみると次の5項目となっており、それぞれに異なる税率が設定されています。

健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率(各組合や自治体による)÷2
介護保険料=標準報酬月額×1.64%÷2(40歳以上のみ)
厚生年金保険料=標準報酬月額×18.300%÷2
雇用保険料=給与・賞与総額×5~6(事業内容による)÷1000
労災保険料:全額事業主負担

ここで必要になる標準報酬月額は、従業員が得たひと月分の報酬額を一定の範囲ごとに区分して設定されており、健康保険では50等級、厚生年金保険では32等級に分かれています。自身がどの区分に該当するかは一覧表を参照して確認してください。

【参照サイト】
標準報酬月額・標準賞与額とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

自身の年収から可処分所得の金額を知りたい場合、扶養人数などによって差はありますが、以下の計算式を用いると大まかな目安となる金額が算出できます。

可処分所得=年収×X

Xには年収1,000万円以下の場合は0.7~0.8、年収1,000万円から2,000万円の場合は0.6~0.7、年収2,000万円を超える場合は0.5~0.6を代入します。

たとえば年収600万円としてシミュレーションした場合は、

年収600万円×0.7~0.8=可処分所得420~480万円

年収1,200万円でシミュレーションした場合は、

年収1,200万円×0.6~0.7=可処分所得720~840万円

となります。

収めるべき税金の額を減らすことで可処分所得は増やすことが可能です。おもな対応策として、生命保険料や個人年金、住宅ローンなどの控除を適用するほか、確定拠出年金やふるさと納税などを活用するといった方法が挙げられます。

【参照サイト】
年収1000万円と年収500万円の会社員。可処分所得の差はどれくらい? | ファイナンシャルフィールド

【年収別】可処分所得の一覧表

年収ごとに可処分所得(手取り)を概算で算出した一覧表です。モデルは扶養家族のない40歳未満の会社員(単位は万円)を想定しています。

年収 年手取り 月手取り 所得税 住民税 社会保険料
200 163 14 3 6 29
210 170 14 3 7 30
220 178 15 3 7 32
230 186 15 4 8 33
240 193 16 4 8 35
250 201 17 4 9 36
260 209 17 4 9 37
270 217 18 5 10 39
280 224 19 5 11 42
290 232 19 5 11 42
300 240 20 6 12 43
310 248 21 6 12 45
320 255 21 6 13 46
330 263 22 6 13 47
340 271 23 7 14 49
350 279 23 7 14 50
360 286 24 7 15 52
370 294 25 8 16 53
380 301 25 8 16 55
390 309 26 8 17 56
400 317 26 9 18 57
410 325 27 8 18 59
420 332 28 9 19 60
430 340 28 9 20 62
440 347 29 10 20 63
450 354 30 11 21 65
460 361 30 11 22 66
470 368 31 12 22 68
480 376 31 13 23 69
490 383 32 13 24 70
500 390 33 14 24 72
510 398 33 15 25 73
520 405 34 15 25 75
530 412 34 16 26 76
540 419 35 17 27 78
550 426 36 17 27 79
560 434 36 18 28 80
570 441 37 19 29 82
580 452 38 15 29 83
590 459 38 16 30 85
600 466 39 18 31 86
610 472 39 19 31 88
620 479 40 20 32 89
630 485 40 22 33 90
640 492 41 23 33 92
650 499 42 24 34 93
660 505 42 26 35 95
670 511 43 27 35 96
680 518 43 29 36 98
690 524 44 30 37 99
700 530 44 32 38 101
710 537 45 33 38 102
720 543 45 35 39 103
730 549 46 36 40 105
740 556 46 38 41 106
750 562 47 39 41 108
760 568 47 41 42 109
770 574 48 42 43 111
780 581 48 44 44 112
790 588 49 45 45 113
800 595 50 47 45 113
810 602 50 49 46 114
820 608 51 50 47 114
830 615 51 52 48 115
840 622 52 54 49 115
850 629 52 56 50 116
860 636 53 57 51 116
870 643 54 59 52 117
880 649 54 61 53 117
890 656 55 63 53 118
900 662 55 65 54 118
910 669 56 67 55 119
920 676 56 69 56 119
930 682 57 71 57 120
940 689 57 73 58 120
950 696 58 75 59 121
960 702 59 76 60 121
970 709 59 78 61 122
980 718 60 78 62 122
990 724 60 80 63 123
1000 731 61 82 64 123
1050 762 64 93 69 126
1100 794 66 104 73 129
1150 826 69 115 78 131
1200 865 72 118 83 134
1250 892 74 134 88 136
1300 919 77 149 92 139
1350 946 79 165 97 142
1400 973 81 181 102 144
1450 1000 83 196 107 147
1500 1027 86 212 111 149
1550 1055 88 228 116 152
1600 1081 90 243 121 155
1650 1108 92 259 125 158
1700 1136 95 275 130 158
1750 1165 97 291 135 158
1800 1193 99 308 140 159
1850 1222 102 324 145 159
1900 1250 104 341 150 159
1950 1279 107 357 155 159
2000 1307 109 374 160 159
2100 1371 114 399 170 160
2200 1421 118 439 180 160
2300 1471 123 479 190 160
2400 1520 127 519 200 160
2500 1570 131 559 210 161
2600 1612 134 605 222 161
2700 1646 137 658 234 161
2800 1696 141 698 244 162
2900 1746 146 738 254 162
3000 1796 150 778 264 162

【参照サイト】
年収別 手取り金額 一覧 | 酒居会計事務所

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日本における可処分所得の平均推移状況

厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」によると、第二次大戦後から増加傾向にあった月収(一人あたりの現金給与総額)は1997年をピークに減少傾向を示すようになり、2009年からは多少の増減はみられるもののほぼ横ばいを続けています。

一方、給与などから差し引かれる額に影響する社会保険料率についてですが、内閣府の「税制調査会_社会保険料率(従業員負担分)の推移」をみると、昭和59年(1984年)の8.27%からグラフは右肩上りに推移し、平成26年(2014年)には14.92%を示しています。

さらに税金について、総務省統計局による「家計調査」の公開値から個人所得課税が含まれる直接税の負担をみると、バブル崩壊後の1993年からはほぼ横ばいとなっており、税金と社会保険料を合わせた負担は高まっていることがみてとれます。

変わらない「支給合計」と増加傾向にある「控除合計」、両者を重ね合わせると、その「差引支給額」となる可処分所得は1996年以降ゆるやかな減少傾向をみせるようになっていました。しかし、2019年の数字では可処分所得は前年に比べて増加。変化を示しましたが、その後コロナ禍に見舞われ、これを受けて特別定額給付金など特別な施策が行われたこともあり、現在は平時との単純な比較は難しい状況となっています。

【参照サイト】
社会保険料率(従業員負担分)の推移 | 内閣府
可処分所得~驚くほど減少した可処分所得、裕福だった30年前~ – 組織・人事コンサルティングの株式会社トランストラクチャ

都道府県別の可処分所得ランキング

時代の流れを反映するような変化を示す可処分所得ですが、その金額は地域によってもある程度違いがみられます。

2021年の総務省統計局による「家計調査」の公開値をみてみると、最上位の東京都が598,305円、最下位の長崎県が404,767円と、実に19万円以上の開きがあります。この数字は平均値であることや居住地の生活様式に影響される部分があることも加味しなくてはなりませんが、おおむね上位にランキングされる都道府県では生活費や被覆費、娯楽費など、自由に使えるお金の額が多く、暮らし向きが豊かであるととらえることができます。

以下に、総務省統計局「家計調査」(2021年)による、二人以上の勤労世帯の場合のランキングを紹介します。

都道府県別 可処分所得ランキング

第1位 東京都 598,305円
第2位 埼玉県 592,862円
第3位 富山県 571,911円
第4位 石川県 559,487円
第5位 岐阜県 549,728円
第6位 千葉県 541,295円
第7位 島根県 529,120円
第8位 滋賀県 528,681円
第9位 茨城県 527,380円
第10位 福井県 521,799円
第11位 高知県 516,750円
第12位 奈良県 515,366円
第13位 福岡県 514,698円
第14位 群馬県 507,882円
第15位 栃木県 507,214円
第16位 静岡県 502,843円
第17位 徳島県 501,685円
第18位 三重県 501,105円
第19位 福島県 498,738円
第20位 広島県 498,005円
第21位 新潟県 497,827円
第22位 山形県 496,392円
第23位 神奈川県 495,918円
第24位 長野県 494,392円
第25位 香川県 489,922円
第26位 山口県 489,393円
第27位 鳥取県 486,663円
第28位 大分県 485,135円
第29位 岩手県 481,168円
第30位 大阪府 480,264円
第31位 京都府 479,285円
第32位 兵庫県 476,122円
第33位 青森県 472,053円
第34位 熊本県 470,011円
第35位 北海道 466,254円
第36位 岡山県 464,506円
第37位 宮崎県 463,626円
第38位 佐賀県 462,725円
第39位 愛知県 458,669円
第40位 山梨県 455,494円
第41位 秋田県 446,150円
第42位 愛媛県 441,615円
第43位 鹿児島県 440,941円
第44位 和歌山県 435,761円
第45位 宮城県 433,631円
第46位 沖縄県 411,589円
第47位 長崎県 404,767円
全国平均 492,681円

また、上記とは異なる集計方法で経済的豊かさを評価した国土交通省発表の「『企業等の東京一極集中に関する懇談会』のとりまとめ」というものも閲覧可能です。調査の趣旨はやや異なりますが、比べるとより踏み込んだ分析ができます。

【参照サイト】
【画像】都道府県「可処分所得(手取り収入)」ランキング【2022年】|資産形成ゴールドオンライン

可処分所得とは何ですか?

可処分所得とは、いわゆる「手取り収入」のことで、給料などから得た所得から税金や社会保険料などの必ず納めなくてはならないお金(非消費支出)を差し引いた残りの金額のことをいいます。これと比較して、税金や社会保険料などを差し引く前の所得額は「額面」などと呼ばれます。

可処分所得と所得の違いは何ですか?

可処分所得とは、所得から税金や社会保険料などを差し引いて残った金額のことを指し、所得とは、収入から必要経費を差し引いて残った金額のことを指します。

所得=収入-必要経費
可処分所得=所得-(税金+社会保険料)

年収500万円の可処分所得はいくらですか?

住所や年齢、扶養人数などによって多少の差はありますが、年収1,000万円以下の場合は年収額の70%~80%が目安となるので、年収500万円の場合は350万円~400万円が可処分所得になると考えてよいでしょう。


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