研修のコストを削減できるeラーニング導入のポイントとは?

従業員への研修は必要とわかっていつつも、対面での研修では手間や費用がかかります。研修の手間と費用を削減するためにeラーニングの導入を検討している事業主を対象に、eラーニングについて、メリットとデメリット、導入に成功するためのポイントを説明します。

eラーニングとは?

「eラーニング」の「e」は「electronic」の略で、電子・情報技術を使った学習を表します。eラーニングが注目されるようになって20年近くがたとうとする中、コンピューターやタブレット端末を使って、eラーニングの講座を受講したことがあるという人もいるのではないでしょうか。

eラーニングは、コンピューターが普及する中、コンピューターを利用する新しい形の教育として注目を集め、インターネットの普及に合わせて、学校教育や企業研修で導入が進んでいきました。その後、通信速度が上がり、多くの人がコンピューターだけでなくスマートフォンやタブレットデバイスといった端末を使うようになり、eラーニングはいつでもどこでも学べる学習方法となりました。

eラーニングは学校教育や個人の自習、大企業の研修で導入が進み、近年では中小企業や個人事業主が大規模なシステムを導入することなく従業員の研修に利用できるクラウド型のeラーニングサービスも提供されるようになりました。ITをはじめ専門技術に関するもののほか、ビジネスマナーなどを学べる講座もあります。また、事業に特化したマニュアルを動画にし、テストと合わせて教材を作り、自社独自のeラーニングを可能にするサービスもあります。

続いてeラーニングのメリットとデメリットを見てみましょう。

eラーニングのメリットとデメリット

eラーニングには二つの大きなメリットがあります。学習者はいつでもどこでも納得がいくまで学べ、事業者は研修にかかるコストを抑えられます。講師を迎えて対面式で実施する研修では、講師と受講者が同じ時間、同じ場所に集まる必要があります。すべての従業員が一度に研修に参加できない場合、複数回研修を実施することになり、研修費用がかさみます。対面式で行う必要のない研修であれば、eラーニングで各自が指定された期限までにそれぞれのペースで学習を進められます。事業者側では研修の時間や場所を調整する必要がなく、講師を招いての研修よりも費用を削減できるでしょう。また、同じコンテンツを使って研修を行うことで、研修内容を一定に保てるのもeラーニングのメリットといえます。

一方、eラーニングにはデメリットもあります。教室に集まってほかの学習者と一緒に研修を受けるわけではないので、従業員によっては、学習のモチベーションを失ってしまうかもしれません。いつでもどこでも学習を勧められるのはeラーニングのメリットでもあり、デメリットでもあります。一人で学習しているのではないという雰囲気を作り、従業員同士で研修について話し合う機会を設けるといった工夫が必要です。これは相互学習という点でも重要です。eラーニングで疑問を持っても、リアルタイムで回答を得にくく、モチベーションの低下や、研修からの脱落につながりかねません。従業員同士で研修について話し合う機会と合わせて、メールやチャットできめ細かくフォローアップできるeラーニングサービスを選びましょう。

そのほか、eラーニングのデメリットを補うには、学習の進捗をチェックし、学習期限を設けるとよいでしょう。また、必要に応じて研修を受けるインセンティブを設定するのも有効といえそうです。

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eラーニング導入成功のポイント

eラーニングを導入するにあたって、まず重要なのが、従業員に何を学んでほしいのか明らかにすることです。eラーニングの講座は無数にあり、あれもこれもと選び出すときりがありません。基本的なビジネスマナーは重要ですが、あまりにも漠然とした内容だと、従業員がすぐに生かせるスキルを身につけるのは難しいかもしれません。また、独自の教材を作る場合でも、何を学習してもらいたいのか曖昧なままでは、学習に効果的な教材を作れません。

まずは、日々事業を営む中で、従業員に足りないスキル、成長に向けて学習してほしいスキルを見つけ出し、リストアップしていってください。すでに研修がある場合は、eラーニングに置き換えられる内容を探してみましょう。たとえば、飲食店の場合、新しい調理スタッフが加わると調理方法の指導をします。対面で伝える方がより詳細に調理方法を伝えられますが、対面での指導と合わせて、いつでも確認できる動画があると従業員も安心です。指導者も指導する回数を減らせます。eラーニングにしたい内容をリストアップしたら、どのような職種、職位の人が学習する内容なのか、業務と両立できる分量なのかといった観点から検討し、学習内容に優先順位をつけてください。

学習内容のリストができたら、他社が提供する教材を利用するのか、それとも独自の教材を用意するのか検討します。ビジネスマナーや会計など、多くの企業に共通する業務については既存の教材を利用するとよいでしょう。さまざまな教材がインターネット上で提供されているので検索してみてください。

一方、自社特有の技術を教えたいこともあります。飲食店であれば接客や調理、理容・美容サロンであればトリートメントの方法、学習塾であれば指導方法などは、独自の教材を作る必要があります。より細かく技術を伝えるために動画で教材を作りたいという人も少なくないでしょう。これまで動画の制作には少なくない費用がかかりましたが、今では動画制作のプロでなくても身近な機器でプロ顔負けの動画を撮影できるようになってきました。eラーニングサービスの中には動画の編集サービスを提供するものもあります。テストを作り、学習成果をはかれるものもあります。eラーニングサービスを利用する場合は、飲食業など業界に特化したサービスもあるので、必要に応じて検討してみるとよいでしょう。

eラーニングの内容や、どのように教材をそろえるかが決まったら、eラーニングの教材を用意します。くれぐれもいきなり教材を用意し始めないように気をつけましょう。全体像を把握してからでないと、必要な教材がもれなくそろう前に予算オーバーといった事態に陥りかねません。eラーニングの導入が終わったあとも、従業員が学習内容を業務に生かせているか、改善できる点はあるか定期的にチェックすることを忘れないでください。

最後にもう一点。eラーニングを導入すると、少なくない費用がかかることを心配する事業者もいることでしょう。eラーニングの内容にもよりますが、厚生労働省はeラーニングを含む職業訓練を受講させる事業主に対する助成しています。また、東京都のようにeラーニングを助成する自治体もあります。eラーニングの導入と合わせて該当する助成制度があるか調べてみるとよいでしょう。

参考:
人材開発支援助成金(厚生労働省)
中小企業人材オンラインスキルアップ支援(第237報)(東京都)

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執筆は2020年5月12日時点の情報を参照しています。
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