成功も失敗も、すべては学びにつながる。
ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。今回から4回にわたり、家族でペンションを経営されている方々をご紹介します。親から子へと受け継がれていくバトン。地域やお客様、家族に対する思いや彼らの生き方は、きっと私達にもヒントを与えてくれるはずです。
つなぐ加盟店 vol. 37 ウィークエンドシャッフル 古屋哲平さん
家族と共に地元でペンションを経営している方々を紹介する特集。今回は、河口湖にあるペンション『ウィークエンドシャッフル』のオーナー・古屋哲平さんにお話を伺った。
父がはじめたペンションを継いだ古屋さんは、もともとペンション経営には興味がなかったという。前編では、そんな古屋さんがペンションを継ぐことになった経緯を紹介する。
後編はこちら
高校卒業後、カナダで過ごした6年間
“海外生活経験を生かした柔軟なホスピタリティで、英語対応も可能です。”
ウィークエンドシャッフルのホームページには、このような記述がある。富士山や河口湖周辺を観光で訪れる外国人にとって、英語でコミュニケーションが取れる宿泊施設があるのはとてもありがたいことだろう。古屋さんが留学したのは高校卒業後。日本の大学に進学するイメージが持てなかったという。
「特に深い考えがあったわけではありませんが、このまま日本の大学に入学しても僕は絶対に勉強しないだろうなという確信はありました(笑)。当時英語に興味があったので、カナダ留学は僕にとって自然な選択だったんです。」
はじめの3年間は語学学校で英語を、続いて2年間観光学を学び、最後の1年間はホテル勤務を経験。濃密な留学生活だった。
「僕が住んでいた地域にはあたたかく接してくれる人がたくさんいました。たとえば、近所のレストランに行くと、おばちゃんがフランクに迎えてくれるんですよね。適度なフレンドリーさが僕は好きでした。」
カナダから帰国した古屋さんは、世界各地にホテルやリゾート施設を展開する企業に就職した。
「人と対面で接する仕事が向いている」
日本に戻って就職した古屋さんが担当したのは、カスタマーサービス。お客様からのさまざまな要望を聞き入れ、更なるサービス向上を目指す仕事だ。古屋さんは仕事に充実感を覚えながらも、次のキャリアを考えていた。
「いずれは地元の山梨に帰りたいという思いがありました。不動産に関わる仕事をしようと考えていたタイミングで、父から『ペンションを継がないか?』と声をかけられたんです。言われるまで考えてもみなかった道でした(笑)。」
古屋さんの父がはじめたペンションを継がないかというオファー。古屋さんははじめ乗り気ではなかったが、父の一言をきっかけに決意したという。
「『人と対面で接する仕事がお前には向いている。不動産はいつでもできるんだから、まずはペンションのオーナーをやってみないか』と父から言われて、そうかもしれないなと思ったんですよね。カスタマーサービスの仕事は電話でのコミュニケーションがメインだったので、対面の仕事に憧れもありました。余談ですが、父は僕とは違って人見知りで、気さくにコミュニケーションをとるようなタイプではありません(笑)。」
ウィークエンドシャッフルを継ぐことを決意した古屋さんは、山梨に戻る前に湘南にある海の家で2ヶ月ほど働いた。そこでの経験が、現在ペンションのオーナーを務める古屋さんに大きな影響を与えたのだという。
「ペンションを継ぐことは決まっていたので、『楽しそうだし、何か今後に生かせるものが一つでも得られればいいな』という軽い気持ちで海の家で働くことにしました。でも、いざ働いてみてびっくり。短時間で最大限にお客様に楽しんでもらうために、みんな真剣だったんですよね。特に、僕より若い店長からはとても刺激を受けました。今振り返ると、『お客様と接することはどういうことか』を教えてくれた原点は、この海の家だったなと思うんです。」
接した期間は短いながらも、海の家の店長についてまるで人生の師であるかのように語る姿が印象的だった。海の家で2ヶ月間働いた古屋さんは、地元山梨に帰郷。2009年にウィークエンドシャッフルのオーナーになった。
後編では、お客様を呼び込むためにしている工夫、商いの苦労や楽しさ、そして古屋さんの商いに対する思いを紹介する。
後編はこちら
ウィークエンドシャッフル
401-0304
山梨県南都留郡富士河口湖町河口2958
TEL:0555-76-6664
FAX:0555-76-6627
(つなぐ編集部)
写真:植村豪人