マーケティングに携わっている人なら、「AISAS」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
今回はAISASを含めて、消費者が商品やサービスを認知してから購買に至るまでのプロセスのモデルについて紹介していきます。
消費者行動を表すAISAS
AISAS(アイサス)は消費者が商品を認知してから購買に至るまでの行動モデルを、英語表記した際の頭文字をとったマーケティング用語のひとつです。大手広告代理店の株式会社電通が提唱したものです。
5つの頭文字はそれぞれ、
・A:Attention(認知・注意)
・I:Interest(興味)
・S:Search(検索)
・A:Action(購買)
・S:Share(情報共有)
を表しています。
現代の消費者は、商品やサービスをインターネットやソーシャルメディア、店頭などでまず認知します。これが「A:Attention」の段階です。
認知した商品に興味・関心を持つのが「I:Interest」です。その後、興味を持った商品に関して口コミサイトやブログ、さらにはソーシャルメディアなど、インターネット上で情報を収集をするのが「S:Search」。
インターネット上で得た情報をもとにした購買行動が「A:Action」です。購入後、たとえば服であれば着た画像を、食べ物であれば食べた感想などをTwitterやFacebook、Instagramなどに投稿したり、口コミサイトに書き込んだりすることで友人や知人、さらには見ず知らずの他人と共有することを「S:Share」といいます。
このようにインターネットを活用し、情報収集から購買、さらには共有までを行うプロセスを示している点がAISASの特徴です。
多くの人がインターネットを利用している現代において、AISASは消費者の行動を理解する際に活用できる考え方といえるでしょう。
AIDMAとは
「AISAS」と似たような言葉で「AIDMA(アイドマ)」というマーケティング用語があります。このAIDMAもAISAS同様、消費者の購買行動モデルを英単語で表した際の頭文字をとったものです。5つの頭文字は以下のようになっています。
・ A:Attention(認知・注意)
・I:Interest(興味)
・ D:Desire(欲求)
・ M:Memory(記憶)
・ A:Action(行動)
AとIに関しては、先ほどのAISASと同じで、商品やサービスを認知し、興味・関心を示す段階を意味します。AISASだとその次は、インターネットでの情報収集となりますが、AIDMAは興味・関心を持った商品を欲しいと考える欲求の段階になります。その後、欲しいと思った商品のことを記憶し、実際に購買行動を起こします。以上が、AIDMAが示す消費者の購買プロセスです。
AISASとAIDMAを比べたときに違いとして挙げられるのが、購買行動にインターネットが関わっているかどうかという点です。
AIDMAが提唱され始めた1920年代は、インターネットやソーシャルメディアといったものは生活の中には存在していませんでした。そのため、消費者は興味・関心を持った商品を詳しく調べることができず、欲しいと思った商品のことを記憶して、そのまま購買行動につなげていくと考えられていました。
インターネットでさまざまなことができる現代においては、マーケティング戦略を考える際にAIDMAを用いるだけでは十分とはいえません。
そこで、新たなプロセスとして用いられるのがAISASです。AISASでは、AIDMAの時代にはなかったSearch(検索)やShare(情報共有)という新たなプロセスを加えることで、現代に合った消費行動モデルになっています。
現代のマーケティング戦略の立案においては、インターネットを含めた購買行動モデルであるAISASの視点が欠かせないといえるでしょう。
AISASだけが全てではない
現代のマーケティング戦略には欠かせないAISASですが、全ての消費行動がAISASに集約されるわけではありません。
たとえば、コンビニエンスストアに行ってパンやおにぎり、弁当などを購入するときにわざわざインターネットで評判を調べてから購入する人は多くはないでしょう。また、おにぎりを買ったことをInstagramやTwitterに投稿する人は少ないのではないでしょうか。
コンビニエンスストアの場合、店内を見て回って商品を認知(Attention)し、「美味しそう」「食べたい」と興味(Interest)を持った商品を欲しい(Desire)と考え、覚えておき(Memory)、最終的に購入(Action)するという、AIDMAのプロセスの方が適していると考えられます。
これらのことからもわかるように、コンビニエンスストアのマーケティング戦略を考えようとしたとき、必ずしもAISASだけで消費者の行動をカバーできるわけではありません。これは他の業種などでも当てはまります。
経営者としては、消費者の購買行動が多様化しているという点を理解し、AIDMAやAISASをはじめとする購買行動モデルを上手に活用していくことが求められます。
他にもある消費者の行動を示す言葉
最後に、AISAS・AIDMA以外にも提唱されている言葉として「SIPS(シップス)」を紹介します。
これは、
・ S:Sympathize(共感)
・ I:Identify(確認)
・ P:Participate(参加)
・ S:Share & Spread(共有・拡散)
から構成される、2011年に提唱されたソーシャルメディアを利用する消費者層の消費行動モデルです。
AISASやAIDMAにおいては商品や情報に触れて認知することが行動のスタートでした。しかし、たくさんの情報が溢れている現代においては、ただ情報に触れ、認知するだけでは購買へとつなげるのが難しくなっています。
SIPSにおける購買に向けた行動は、ソーシャルメディア上で友人や有名人が投稿している情報に触れ、それを認知し、さらに共感すること、がスタートとされています。情報に触れ、「いいな」と思うことが次のステップにつながるのです。
消費者の共感は、すぐに購買につながるわけではありません。共感した商品やサービスが自分の求めているものなのか、さまざまな情報を調べて確認を行います。確認を経て、自分に合っていると判断すると実際の購買(参加)へと移行していきます。
なお、SIPSにおける参加とは実際の購買行動も含んでいますが、FacebookやTwitter、Instagramの「いいね」を押すといった行動も直接の購買ではないものの、参加のひとつとされています。
消費活動に購買や「いいね」というかたちで参加した人はその後、自分が得た情報や経験をソーシャルメディア上で共有しようとします。共有された情報は、別の人を通してさらに共有されていき、少しずつ情報が拡散され、また新たな共感を生み出していきます。この共有と拡散を行うのは商品を展開している企業ではなく、消費者自身であるという点がSIPSの大きな特徴であり、AISASやAIDMAには見られない点です。
SIPSは、AISASともAIDMAとも違った視点から見た消費行動モデルです。
自社のビジネスに合った方法を活用しながら、マーケティング戦略を練ってみてはいかがでしょうか。
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執筆は2018年3月27日時点の情報を参照しています。
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