インバウンド需要に応えるためにも食習慣の違いを理解しよう

日本に訪れた外国人観光客にとって欠かせない食事。レストランでの食事だけでなく、移動の車中でのお弁当や、旅館での夕食や朝食、コンビニで買うおやつや飲み物も含め、一日に何度も食べ物を口にする機会があります。

食習慣は当然国や民族、宗教によって異なります。食べ物の好き嫌いとは異なり、食習慣は生活に根付いたものであり、相互によく理解しておかないと不快な思いをしてしまうこともあります。外国人のお客様を迎える上では、飲食店以外でも海外の食習慣について理解する機会を持つことをおすすめします。

今回は比較的間違うことが多い、食事に纏わる知識についてご紹介します。

ベジタリアンは野菜だけを食べる人!?

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ベジタリアンは健康上や宗教上の理由で魚や肉を食さず、主に野菜や豆類を中心に食べる人のことを指します。最近では環境への配慮からベジタリアンになる人もいます。ヒンドゥー教徒や台湾にはベジタリアンの人が多いと言われていますが、特定の宗教や国籍の人が必ずベジタリアンということはありません。また、乳製品を一切口にしない人、魚なら大丈夫だという人など、ベジタリアンの中にも様々なタイプの人がいます。

ただベジタリアンが食事をする場所が少ないというのはインバウンドが盛り上がる前から言われていたことです。近年、海外から来る留学生や研究者に配慮して学食でベジタリアンメニューを用意する大学もあります。

可能ならばベジタリアン向けのメニューを準備しておきましょう。もしくは、事前に連絡があればベジタリアンメニューを作れることをソーシャルメディアで宣伝してみてもいいかもしれません。ベジタリアンにも色々なタイプがあるので、事前にどんなタイプのベジタリアンかを聞いておくとさらに満足できるサービスを提供できます。

中華系のお客様は大食漢!?

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中国や香港、台湾等、中華圏ではみんなで食事をする時にはテーブルいっぱいに食事をオーダーして、少し余らせるくらいを好むという話を聞いたことありませんか。これは当たっている点と、当たっていない点があります。

そもそもたくさんオーダーするのは食事をおごってくれる人の面子を保つためです。割り勘の習慣があまりなかった時代では、友人や知人同士での食事は誰かがおごるものでした。おごる側、おごられる側、両者が気持ちよく食事をするための習慣として多めにオーダーをしていました。しかし、最近では食事を余らせることに疑問を感じたり、割り勘の文化が浸透したりすることで、このような習慣が必ずしもすべての食事のシーンに当てはまらなくなりました。

もちろん中にはせっかく日本に来たのだからいろんなものを食べたいとして、多く注文するお客様もいらっしゃいます。ただ、中国や台湾から来た全てのお客様がボリュームの多い食事を好むわけではないようです。

欧米のお客様はお箸が使えない!?

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日本では食事に欠かせないお箸。海外のお客様、特にお箸を使う習慣がない欧米からのお客様は使えないのでは、と思っていませんか。今では欧米の大都市に行けば、寿司店やラーメン店が当たり前のようにあります。テイクアウトで日本風の弁当や焼きそばを売るお店もあります。

日本の食文化は考えているよりも海外で浸透しており、お箸を上手く使う人も増えています。もちろん、上手く使えなさそうだと思ったら、スプーンやフォークを差し出すのも親切なサービスですが、見た目だけでお箸を使えるかどうか判断しないほうが良さそうです。

同じアジアの国でも韓国では食事時にはお箸と一緒に柄の長いスプーンが出てきます。お箸はおかずを食べる時に、スプーンはご飯や汁物を掬う時に、と使い分けています。タイではスプーンとフォークを使うなど、国ごとに食器の使い方も異なることを理解して、お客様から「スプーンください」と言われた時は戸惑わずに差し出しましょう。

カレーはインドの食べ物!?

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カレーはインドの食べ物と思っていませんか。もちろん間違いではありませんが、カレーが食生活として浸透している国は他にもあります。その一つが英国です。インドやその周辺国からの移民が多く住む英国では都市部を中心にインド料理店が多数あり、インドカレーがおふくろの味だと言う英国人もいるくらいです。

また、タイやマレーシア、ベトナムなどアジアの国にもそれぞれの食文化に根ざしたカレーがありますし、アフリカやカリブ海にもインドの影響を受けて独自に発展したカレーがあるようです。日本のカレーもインドから英国、英国から日本へ伝わり、独自のカタチになったものです。

スパイスの効いたカレーをイメージして注文するお客様には、日本のカレーの特徴を先に伝えておくと、食べた時にびっくりせずに済むかもしれません。

辛いものを食べるのはアジアだけ!?

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辛い食べ物といえば韓国や東南アジアの料理をイメージするかもしれません。世界的に唐辛子の消費量が多いのは東欧のハンガリーやボスニア・ヘルツェゴビナのようです。これらの国で主に消費されているのは辛味の少ないパプリカです。

パプリカの原産地はハンガリーで、今でも一大産地であり、ハンガリー料理には欠かせない食材です。ただ、ハンガリーで食されているパプリカは辛味があまりないものなので、もしハンガリーから来たお客様が一味唐辛子をたくさんうどんにかけようとしていたら、「辛いですよ」と一言声をかけてあげましょう。

声をかけてみることは大切

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ここまで海外の食習慣の一例を紹介してきましたが、国や地域、宗教などによって異なる習慣をすべてを覚えることは出来ませんし、すべてに対応した食べ物を用意するのも現実的ではありません。

大切なのは相手との違いを知ろうとする気遣いではないでしょうか。宿泊施設なら予約を受け付ける時にメールや電話で、食事に関して配慮すべき点はないかどうか聞くようにしたり、なるべくお客様に合わせて食事を用意することをウェブサイトに掲載すると、安心して予約ができるかもしれません。

また、飲食店なら席に案内するときや、メニューを手渡すときに、「どちらからお越しですか」や「何か苦手な食べ物はありますか」と聞いてみると相手にとっては親切です。食べるのに苦戦していたら、食べ方を教えてあげるなど積極的に相手とコミュニケーションを取ることでお互いの理解を深めてみてはいかがでしょうか。

観光庁では多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアルを提供しています。「国別・宗教別・嗜好別に見た外国人客の食文化・食習慣」や「外国語表現の文例集」もありますので、一度見を通してみるのはいかがでしょうか。

執筆は2017年7月5日時点の情報を参照しています。
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