青空の下でテントを張り、色鮮やかな野菜や果物を詰めた木箱をズラリと並べる。ブースにふらりと立ち寄る消費者と軽く会話をしながら、丹念に育ててきた農産物を販売する。「マルシェ」と聞くと、そんな光景をイメージするかもしれません。
フランス語で「市場」を意味するマルシェでは、少なければ20店舗前後、多ければ100店舗ほどのブースが並び、農産物を中心に加工品やハンドメイド雑貨などが販売されます。開催場所は商業施設の広場や公園、神社や駅の地下スペースなどです。
ここでは「興味はあるけど、どうやって参加すればいいのだろう」「費用対効果はあるのだろうか」とマルシェ出店を検討している人に向けて、マルシェ出店に必要な準備、出店のメリット・デメリットを説明します。
目次
マルシェとは
日本では「ファーマーズマーケット」「青空市」「朝市」などとも呼ばれるマルシェ。冒頭でも触れたように、農産物を中心に生産者が直接消費者に商品を販売するイベントを指します。
都市部ではショッピングエリアやビジネスエリアを中心に開催される「都市型マルシェ」がここ数年で人気を集めていますが、地方でも「地域密着型マルシェ」という形でマルシェは盛り上がりを見せています。なかには数千人から一万人ほどの動員数を誇るマルシェもあり、近年では健康や環境に関心を寄せる地域住民からレストランのシェフまでさまざまな人が足を運ぶ場になっているようです。
お住まいの地域でどのようなマルシェが開催されているかは、全国マルシェ・フリーマーケット支援協議会のウェブサイトなどを確認してみましょう。
マルシェ出店のチェックポイント
ここでは出店するマルシェを決める際に確認しておきたいことを見ていきましょう。
出店条件に合うかを確認する
マルシェには出店料を払えば参加できるという印象があるかもしれませんが、出店条件はマルシェによってさまざまです。一度っきりの出店を歓迎するマルシェもあれば、定期的に出店してほしいと考えるマルシェもあります。
前者は必要書類を提出し出店料を支払えば参加できるところが多いようですが、後者だと一度面接をし、審査を経たうえで出店が決まることもあるようです。
そのほかにも「決められた地域在住の出品者優先」「決められた地域の産物のみ可」「化学肥料や農薬をできるだけ使わない農業を目指している生産者」など、出店条件はマルシェごとに異なるので、出店要項などにはしっかりと目を通しておきましょう。
立地条件を確認する
駐車場は借りられるのか。ない場合、出店会場からどれくらいの距離の場所にはあるのか。屋外開催の場合、天候不良だとどうなるのか。このような点は必ず押さえておきたいところです。
大きなマルシェだと無料駐車場が用意されていることもありますが、先着40店舗のみなど、出店者全員分の駐車スペースがないこともあります。車での搬入を考えている場合、近郊の駐車場を利用する可能性も十分ありえるでしょう。その場合、会場に近い駐車場はどこで、一番安い駐車場はどこなのかなどを確認しておくと、コスト節約にもつながるうえ、当日のバタつきを少しだけ軽減できるでしょう。
レンタルのオプションを確認する
マルシェによってはテーブルやパイプ椅子、テント、電源などを貸し出してくれるところもあります。出店を検討しているマルシェのレンタル品のラインアップや費用を確認のうえ、自分で用意したほうがいいのか、借りたほうがいいのかを決めるといいでしょう。
レンタル品については、基本的に出店案内などに記載がありますが、記載のない場合は主催者に問い合わせてみましょう。
いざ出店!マルシェ当日までに準備しておきたいこと
出店したいマルシェが決まったら、当日に向けて段取りを立てていきましょう。ここでは当日までにしておきたい五つのことを紹介します。
イベントに申し込む
まずはマルシェの公式サイトなどから出店の申し込みを完了させましょう。後日、実行委員会から出店料などについての連絡が送られてくるのが一般的な流れのようです。ただし、先述のようにマルシェによっては厳重な審査が行われることもあるので、詳しくは出店を希望するマルシェの公式サイトを確認しましょう。基本的には期日までに出店料を振り込めば、申し込みは完了するようです。
キャッシュレス決済端末を用意しよう
近年のマルシェでは、ワイヤレスかつ小型のモバイル決済端末でキャッシュレス決済を受け付ける出店者が増えています。
▲モバイル決済端末の「Square リーダー」を利用している様子
当日は現金払いを受け付けることもできますが、釣り銭などの用意が必要であり、手間がかかるのはもちろん、盗難のリスクも伴います。現金管理の負担を少しでも減らすうえで用意しておきたいのが、クレジットカードやQRコード、電子マネーでの決済が受け付けられるモバイル決済端末です。最近では現金をあまり持ち歩かないキャッシュレス派層も増えてきているため、キャッシュレス決済に対応しておけばこのような層を取りこぼすこともないでしょう。
モバイル決済端末なら、Wi-Fi、またはLTEや4Gなどのモバイル回線を通じて決済を受け付けられるので、屋内でも屋外でも、ネットワーク環境さえあれば利用することができます。端末代金は数千円からとそこまで高くなく、スマートフォンやタブレットと合わせて利用します。
たとえばSquareなら、クレジットカードやQRコード決済、電子マネーを受け付けられるモバイル決済端末のほかに、ネットショップ作成機能も提供しているので、マルシェでの対面販売はもちろんのこと、オンラインでも自慢の商品を販売できるようになります。今後ネットショップを開設したいと考えている人にはぴったりの決済サービスかもしれません。
ネットショップと対面での売上状況は一つのアカウントから確認できるため、複数のサービスを行き来する必要がなく、管理もしやすいです。
タッチ決済(※)だけの受け付けで十分という場合は、スマートフォンひとつでタッチ決済が受け付けられる「Tap to Pay on Android」または「iPhoneのタッチ決済」の機能を活用することもできます。
※ここでいうタッチ決済は、タッチ決済対応マークがあるクレジットカードまたはモバイルウォレットに登録されたクレジットカードのみとなります。電子マネー決済には対応していません。
Squareなら最短即日から導入できますが、サービスによっては1カ月ほどかかることもあるので早めに申し込んでおきましょう。
必要な備品を用意する
商品のほかにも出店にはさまざまなものが必要になります。以下は一例です。
- 値札
- 什器
- ショップカード
- 商品POP
- 商品を入れる袋
- ゴミ袋
- 栄養を補給できる食べ物や飲み物
- スマートフォン用のモバイルバッテリー
当日出会ったお客様にリピーターになってもらううえで特に大切なのはショップカードでしょう。InstagramをはじめとするSNSのアカウントにアクセスできるQRコードを印刷しておくなど、マルシェに訪れたお客様が会場を離れた後も店舗の最新情報をキャッチできるような導線を引いておきましょう。
ショップカードは、商品を購入してくれたお客様に渡すのはもちろん、商品をチラッと見ていった通りすがりのお客様にも取りやすいような位置に配置しておくといいでしょう。
商品POPを作成する
商品の見た目だけでは、特徴や魅力などが伝わらないこともあるでしょう。口頭で伝えたくても一度に複数人のお客様がブースを訪れてしまえば、直接会話ができないお客様も出てきます。そこで出店者に代わって商品のストーリーを伝えてくれるのが商品POPです。
名刺サイズ、あるいはハガキサイズの用紙を用意し、産地はどこで、誰が育てた野菜なのかなどの生産背景を読みやすい字で短くまとめておくと、お客様に商品の特徴をアピールすることができます。説明内容に惹かれて購入に進むお客様もいるでしょう。個性を出せる商品POPの作成は力の入れどころです。
SNSやブログなどで告知をする
すでにファンがついているブログやInstagramアカウントなどを運営しているのであれば、申込完了後など、できるだけ早い段階で出店情報を伝えましょう。
当日販売する商品についても軽く紹介しておくとフォロワーは興味を持ち、イベントに足を運べるようスケジュールを調整してくれるかもしれません。だいたいの価格帯なども記しておくと親切でしょう。
Instagramに写真を投稿する際には、マルシェの名前をハッシュタグで投稿文に忍ばせておくと、非フォロワーにも投稿を見てもらえるかもしれません。
マルシェに出店するメリット・注意点
自慢の商品を直接お客様に知ってもらい、販売できるのはマルシェの醍醐味でしょう。ここでは具体的なマルシェ出店のメリットと、注意点を紹介します。
マルシェに出店するメリット
たくさんのお客様に商品を知ってもらえることは大きなメリットといえるでしょう。
マルシェを訪れるお客様の中には特定の出店者を目指して来る人もいますが、新たな発見を求めて訪れる人も少なくありません。このようなお客様に立ち寄ってもらえれば、新たなファンを獲得する機会にも恵まれます。
お客様から直接意見をもらえるのもうれしい点です。フランクな会話を通して消費者がどのようなことに関心を持ち、何を軸に商品選びをしているのかなどを知ることができれば、商品開発のヒントにもなります。
実店舗があれば、消費者とは毎日のように顔を合わせて会話を重ねることができますが、実店舗を開業するには700万円から1,000万円近くの資金が必要になります。マルシェであれば出店料は安くて1,500円ほど、高くても2万円以内におさまることがほとんどです。そのほかにもテントや机のレンタルなど、当日必要なものにはある程度のコストがかかりますが、実店舗とは比べようがないくらいコストを低く抑えることができます。実店舗の開業・運営ほどの資金を集めることなく対面販売ができ、新規顧客を集められるのもマルシェのメリットでしょう。
実店舗をすでに運営している場合でも、マルシェへの出店は店舗の認知度拡大に効果的だといえます。
マルシェに出店する際の注意点
マルシェの発祥地でもあるフランスでは農産物や加工品に限らず、ハンドメイド雑貨や絵画も一定数売られているそうですが、日本のマルシェでは農産物・加工品が大きな割合を占めているようです。
ハンドメイド雑貨など、食品以外の商品の出品を考えている場合、食品ほどの需要はない可能性があると留意しておくといいかもしれません。
さらにマルシェごとに動員数が異なるので、どのマルシェに出店するかによって売り上げには差が出てくるかもしれません。
「もっとたくさんの人に私たちの取り組みを知ってもらいたい」。心を込めて丁寧に農作物などを育てている生産者であれば、誰もがそう思うかもしれません。ここでは農産物などをさまざまな消費者に直接販売できるマルシェ出店における基本知識や、出店するメリット・注意点などを見てきました。店舗の有無問わず、一人でも多くの人に自身の商品を届けたいと考える生産者は、一度出店してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2021年12月5日時点の情報を参照しています。2024年5月16日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash