▶この記事では、電子マネーに対応するメリットや、端末を導入するうえでの注意点を説明します。
お客さま満足度の向上や、売り上げの拡大を目指して、現金決済に加え、クレジットカードや電子マネーなど多様な決済手段を提供したいと考えているビジネスオーナーも少なくないでしょう。
一方で、決済手段が増えれば増えるほど、管理の手間や教育コストがかかることを心配して、特に電子マネーにも対応するかには悩むという人もいるかもしれません。
この記事では、電子マネーについて、どのような決済の仕組みなのかから始め、導入のメリット、電子マネーの種類、導入する上での注意点、導入費用や導入方法について説明します。電子マネーの導入が自店舗に適切かどうかを見極めるためにも、電子マネーの概要を把握しておきましょう。
目次
- 電子マネー決済の仕組み
- 電子マネーを導入するメリット
- 電子マネーの種類
- 電子マネーを導入する上での注意点
- 電子マネー決済の導入費用
- 電子マネーの導入方法
- 店舗にまだキャッシュレス決済端末を導入していない場合の導入方法
電子マネー決済の仕組み
電子マネー決済は、現金の代わりに電子データを処理して決済する方法です。ユーザーは、専用のカードやスマートフォンのアプリを使って商品やサービスの代金を決済します。
電子マネーの支払い方法には、事前に現金などをチャージする「プリペイド型」、クレジットカードと紐づけて後日利用額が引き落とされる「ポストペイ型」、利用額が即時に引き落とされる「デビット型」の3種類があります。国内で広く利用されているJR東日本の交通系電子マネー「Suica」をイメージするとわかりやすいかもしれません。ユーザーは、Suicaのカードに現金をチャージすることもできれば、モバイルSuicaと呼ばれるアプリとクレジットカードを連携させてオートチャージを利用することもできます。
店舗でユーザーが電子マネー決済を利用する際には、設置された端末に、電子マネーカードやスマートフォンをかざします。端末からは支払いデータが電子マネーの管理システムへ送信され、店舗は決済が行われたことを確認します。決済代行会社などが決済データを処理し、通常、決められた入金サイクルで決済額が銀行口座に入金されます。入金にあたっては、所定の手数料が差し引かれることがあります。
電子マネーを導入するメリット
1. 売り上げが拡大する
商品をレジまで持ってきたものの、現金しか使えないと知り、購入を諦めてしまったお客さまを見たことはありませんか。このような場合、機会損失につながるのはもちろんのこと、「電子マネーに対応していれば、交通系ICカードで買えていたのに」などとお客さまがお店に対してマイナスなイメージを抱きかねません。 逆をいえば「電子マネーが使えるなら買おう」と購入に踏み切るきっかけにもなるかもしれません。
実際にJCBが行った調査1によると、電子マネーを含むキャッシュレス決済ができない場合、消費者の2人に1人(53.5%)が「次回以降の来店意欲が下がる」と回答しています。このように電子マネーへの対応は、見込み客を逃さないための対策にもなり得るでしょう。
キャッシュレス決済の決済金額は年々増えており、経済産業省の2023年のキャッシュレス決済比率に関する調査2によると、2010年には40兆円弱だったところが2023年には120兆円を上回るまで上昇しており、近年国内でも一つの決済手段として浸透していることが伺えます。電子マネーでの決済金額は毎年堅調に推移していて、2023年には6.4兆円の決済が行われました。
2. 会計時間を短縮できる
ビジネスオーナーにとってもお客さまにとってもうれしいのは、会計時間の短縮です。
JCBが行った調査3によると、現金にかかる会計時間は平均で28秒。QRコードであれば平均17秒と少し縮まり、サインレスのクレジットカード決済であれば平均たったの12秒まで短縮。一方で電子マネー(QUICPay)であれば、会計時間は平均で8秒まで短縮されると発表されています。ビザ・ワールドワイドが全国の18歳から60歳の男女850人を対象に2017年に実施した調査4では、会計時に他人や周囲に対してストレスを感じる場面でトップを占めたのは69.9%の「レジに長蛇の列ができているとき」でした。
たとえ長蛇の列ではないにしても、会計時に待ち時間が発生することで少なからずお客さまにストレスを感じさせてしまうかもしれません。最悪の場合、購入を諦めてしまうことも考えられます。このような事態を防ぐためにも、会計時間を短縮するうえで電子マネーへの対応を検討してみてはいかがでしょうか。
3. 会計ミスや、現金管理にかかる負担が削減できる
店舗での現金の管理が無意識のうちにストレスの原因になっていませんか。
たとえば売り上げにも影響を与えてしまうのは、現金を取り扱うことから生まれる会計のミス。レジ締め時に計算が合わないことを度々経験してきたビジネスオーナーも多いのではないでしょうか。また、現金を店舗で保管し銀行に持ち運ぶとなると盗難のリスクを伴うでしょう。
キャッシュレスの決済手段を増やすことで現金のやりとりが減り、結果として会計ミスが減ることが期待できます。そのうえ、銀行に持ち運ぶ額や店舗で保管する額は多ければ多いほど精神的負担も大きくなるでしょう。キャッシュレスの決済手段を増やすことで、毎日の決済を現金から少しずつキャッシュレスに移行するのも一つの手です。
4. 新規顧客の獲得につながる
手持ちの現金では足りないけれど、電子マネーで決済できるのなら商品やサービスを試してみたいという人もいるかもしれません。電子マネーを導入していれば、このような将来のお客さまに商品やサービスを試してもらうことが可能になり、新規顧客開拓のチャンスが広がります。スマートフォンの普及により、スマートフォンを利用した電子マネー決済も広まりつつあり、技術に敏感な新しい層のお客さまを新規顧客にできるかもしれません。
また、ポイント還元や特典を提供している電子マネーサービスも多くあり、よりおトクに買い物をしたいと考えるお客さまは電子マネーでの決済を好むこともあります。電子マネー決済に対応しておくことで、このようなお客さまを新規顧客として取り込める可能性も出てきます。
5. 顧客満足度の向上が期待できる
支払いが迅速でスムーズに行えるため、レジでの待ち時間が短縮され、忙しいお客さまはもちろん、時間がある人にとって大きな利便性となります。現金を持って買い物に行くストレスがないことも顧客満足度の向上につながります。
また、電子マネーを利用して、ポイント還元や特典が受けられるのであれば、特によりおトクに買い物をしたいお客さまの満足度が向上することでしょう。
電子マネーの種類
キャッシュレス決済が普及する中で、さまざまな種類の電子マネーが登場し、利用されています。これらの電子マネーは、それぞれ異なる特徴があり、ターゲットとするお客さまを想定して導入を検討する必要があります。ここでは、電子マネーの種類を説明します。
交通系電子マネー
主に公共交通機関での利用を目的とした電子マネーで、バスや電車の運賃支払いに使えます。コンビニや自動販売機などでも利用可能で、利用したことのある人も多いのではないでしょうか。具体例としては、JR東日本のSuicaや、関東圏の私鉄やバスのPASMO、JR東海のTOICA、JR西日本のICOCAなどがあります。
流通系電子マネー
流通事業者が提供する電子マネーで、主に特定のチェーン店やショッピングセンター、提携店で利用できます。利用に応じてポイントが貯まるなどの特典があることも。具体例としては、イオンが提供するWAONや、セブン&アイ・ホールディングスが提供するnanacoなどがあります。
クレジットカード系電子マネー
クレジットカード会社が提供する電子マネーで、クレジットカードやデビットカードなどと連携して利用します。具体例としては、JCBが提供するQUICPayなどがあります。
QRコード系電子マネー
店舗側がQRコードを提示し、お客さまがそれをスキャンして支払いを行うタイプの決済方法です。お客さまが自分のスマートフォンにインストールしたアプリでQRコードを提示し、店舗側がそれを読み取る場合もあります。具体例としては、PayPayやLINE Pay、楽天ペイ、WeChat Payなどがあります。この決済方法は、QRコード決済またはコード決済としても知られており、電子マネーとは区別されることもあります。
電子マネーを導入する上での注意点
お客さま満足度が向上し、新規顧客の開拓につながる可能性もあるなど、メリットの多い電子マネーですが、導入にあたっては注意も必要です。ここでは電子マネーを導入するうえでの注意点を説明します。
1. 電子マネーの取り扱いが不向きなビジネスもある
たとえば、コース料理を提供するレストランや旅館など、一人あたりの客単価が高額になる傾向にあるビジネスを想定してみましょう。このようなビジネスでも電子マネーの導入を検討するべきでしょうか。
総務省統計局が2022年に実施した家計消費状況調査5を見ると、2人以上の世帯の鉄道とバス以外での電子マネーの利用金額は月平均24,668円でした。一方で、JCBが2022年に行ったクレジットカードに関する調査6によると、世帯あたりの月平均クレジットカード利用額は7.3万円です。少額の買い物に電子マネーが好まれる傾向がこれらの結果から読み取れます。そのため、支払額が1万円を超えるような商品・サービスを提供するビジネスの場合、導入効果はあまり期待できないかもしれません。
一方で、一杯400円のコーヒーが最も売れ行きのいいコーヒー専門店や、300円ほどのパンを一人当たり平均三つほど販売するパン屋さんなど、一度の支払額が高額になりにくいビジネスであれば、電子マネーを希望するお客さまを見込めるかもしれません。さらに店舗が駅の近くに位置するのであればなお、交通系電子マネーの導入を検討したいところです。
電子マネーに対応するためには端末費用、決済手数料、またサービスによっては月額利用料金も発生するので、自身のビジネスにとって適切であるかを見極めてから導入を決めましょう。
2 導入コストや決済手数料がかかる
さまざまなキャッシュレス決済に対応できるマルチ決済端末を導入するにしても、今あるクレジットカード決済端末の利用を継続し、電子マネーのみに対応する端末を導入するにしても、避けて通れないのが導入コストや決済手数料です。
決済手数料に加えて月額利用料金や振込手数料もかかるサービスもあれば、月額利用料も振込手数料も無料のサービスもあるので、予算を考慮したうえで適切なサービスを取り入れましょう。
電子マネー決済の導入費用
初期費用・端末購入費用
電子マネー決済を導入する際には、初期費用や端末購入費用などの導入コストが発生します。ウェブサイトに費用が明示されているサービスもあれば、問い合わせが必要なサービスもあります。また、時期によっては初期費用や端末購入費用が割引または無料になるキャンペーンを実施しているサービスもあり、こうしたキャンペーンをうまく利用することで費用を抑えられます。
複数のサービスを見比べ、それぞれの導入コストを比較してみるとよいでしょう。
月額利用料金
電子マネー決済の中には、月額利用料金が発生するものもあります。月額利用料金は、電子マネーを利用するお客さまの数に関係なく、毎月支払うことになる固定費です。月額利用料が経営の負担にならないかどうか、十分に検討することが大切です。
決済手数料
電子マネー決済では取引ごとに、決済手数料が発生します。決済手数料は、取引金額に対して一定の割合で課されるのが一般的です。決済手数料はサービスによって異なり、3%から4%が相場といわれています。たとえば、決済手数料が3%の場合、1,000円の商品の代金をお客さまが電子マネーで支払うと、30円の手数料が発生します。
売り上げが多くなるほど、決済手数料がかさむため、決済手数料率はサービスを検討するにあたって重要な要素です。
電子マネー決済の導入方法
1. 電子マネーのみに対応した端末を追加する
たとえば、すでにクレジットカード用の決済端末を持っている場合、今ある決済端末を継続利用し、電子マネー用にもう1台決済端末を追加するのも一つの手でしょう。
クレジットカード決済をすでに受け付けているのなら、電子マネー用決済端末の操作もそこまで負担にはならないかもしれません。ただし、この場合、決済端末の台数が増え、レジ周りの整理がしにくくなったり、場合によってはそれぞれ個別に月額利用料金が発生したりという難点があります。
2. あらゆるキャッシュレス決済に対応するマルチ決済端末に切り替える
近年では決済手段が多様化していることもあり、一つの端末で主要の決済手段を幅広くカバーできる「マルチ決済端末」が登場しています。
「クレジットカード決済端末はあるけれど、電子マネーには対応していない」という場合は、マルチ決済端末への乗り換えもおすすめの方法です。
今まで使い慣れていたクレジットカード決済端末から乗り換えなければいけない分、最初のうちはトレーニングに時間がかかったり、操作方法に戸惑ったりする点が懸念されますが、長期的に考えて以下が実現できるのは利点でしょう。
・決済端末を複数台持たなくて済む
・月額利用料金を二重で支払う必要がない
また、一つの端末にすべてのキャッシュレス決済を集約できるため、POSレジとの連携も円滑になるでしょう。
店舗にまだキャッシュレス決済端末を導入していない場合の導入方法
今は現金しか扱っていないものの、客単価アップや会計時間の短縮などキャッシュレスのメリットを考慮して、「ゆくゆくは電子マネーやクレジットカード決済を受け付けたい」と考えるビジネスオーナーもいることでしょう。
前述のように、近年ではクレジットカードと電子マネーを含む幅広い決済方法に対応するマルチ決済端末が登場しています。
たとえばクレジットカード、QRコード、電子マネーに対応しているSquareであれば、初期費用・月額利用料金・振込手数料はかかりません。決済端末は4種類あり、一番リーズナブルなSquare リーダーなら1台たった4,980円(税込)で手に入ります。導入コスト5,000円以下でキャッシュレス決済を始められるのは、費用負担が気になるビジネスオーナーにとっては嬉しいところでしょう。対面でのキャッシュレス決済の場合、どの決済方法でも決済手数料は3.25%です。決済手数料について詳しくはこちらをご覧ください。
本記事では、電子マネーとは何かから始め、具体的な導入方法までを説明しました。電子マネーの導入はビジネスに多くのメリットをもたらします。一方で、導入にあたっては初期費用や月額利用料金、決済手数料などのコストをしっかりと把握し、ビジネスに最適なサービスを選択する必要があります。本記事を参考に、ぜひ電子マネー導入を検討してみてください。
続けて読もう!電子マネー決済を導入する方法
電子マネー決済についてもっと知りたい方は
(1)電子マネーの種類と国内での利用状況を知ろう!
(2)電子マネーを導入するメリットや注意点とは?
(3)電子マネー決済を導入する方法
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執筆は2019年9月13日時点の情報を参照しています。2024年6月19日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
1: キャッシュレス決済に関する調査(2019年7月18日、株式会社ジェーシービー)
2: 2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました (2024年3月29日、経済産業省)
3: <決済速度に関する実証実験結果>レジでの会計時、キャッシュレス決済(※1)は現金より16秒速いことが判明 非接触型(※2)は現金より20秒速く、約1/3の時間で支払いが可能(2019年8月28日、株式会社ジェーシービー)
4: 全国18-60歳男女850名に聞いた「支払いスピードとストレス」に関する実態調査77%が買い物などでの会計時にストレスを感じた経験があると回答 ブランドデビットカード利用者は、ストレスを感じた経験が最も少ないことが明らかに(2018年2月28日、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社)
5: 家計消費状況調査年報(令和4年)結果の概況(総務省統計局)
6: JCB、2022年度版クレジットカードに関する調査結果を発表(2023年3月15日、株式会社ジェーシービー)
【どんな業種でも使える】Square POSレジの使い方
SquareのPOSレジでは冒頭で紹介した基本機能にあわせて、以下のような使い方ができます。これらはSquare リテールPOSレジ、Square レストランPOSレジでも行えます。