「日本のウォール街」とも呼ばれてきた日本橋兜町の景色が、近年変わりはじめている。長いこと東京証券取引所に代表されてきたこの金融街に、個性ある飲食店が2020年以降ぽつぽつとオープンし出し、つい通いたくなる街に生まれ変わりつつあるのだ。
Squareでは「あきない兜町」と称して、変わりゆく兜町で商売をするSquare 加盟店を3店舗紹介する。兜町で商いをすることについて、そしてSquareの使い心地について、「SRコーヒー(エスアール・コーヒー)」の加藤渉(かとう・わたる)さんにお話いただいた。
▲店主の加藤渉さん
業種 | 飲食業 |
業態 | カフェ |
利用しているSquareのサービス | Square レジスター、Square ターミナル、Square POSレジ、Square データ |
通りすがりの人に挨拶するコーヒー店
SRコーヒーは、もともとコーヒーを愛してやまない2人がスウェーデンで2011年にはじめたマイクロロースターだ。国内最大級のコーヒーフェスティバル「TOKYO COFFEE FESTIVAL」に2016年に出店したことをきっかけに、東京に店舗をかまえたいという話が立ち上がった。バリスタ経験を持つ加藤さんがその話を引き受け、表参道のコミュニティー型商業空間「コミューン(COMMUNE)」でポップアップという形ではじまったのが2017年のこと。早くもそれから7年が経つ。
兜町には表参道から移転という形で、2020年8月にやってきた。以来、神保町と平河町にも路面店をオープン。そのほかにも、オフィスビル内でカフェスペースを3箇所運営している。一つひとつはこぢんまりとしているが、計6店舗の運営と、蓋を開けてみると大忙しの事業だ。
どこにお店を開こうと守り抜きたいのは、「コーヒー+αの存在であること」だという。
「おいしいコーヒーを出すのは当たり前として、コミュニケーションを大事にしています。ここに移転してきたときも、お店の前を通る人にめちゃめちゃ挨拶していました。最初の1、2カ月は無視されることもありました(笑)。
たとえコーヒーを買われなくても、会話をしちゃうんです。そうすると少しずつ距離が縮まって、会社の事情まで話してくれる関係になったりもします。そこから『買ってみようかな』と言ってくれたり、『お菓子もあるんだね』なんて会話が生まれたりすることもありました」
カフェである前に、人々が生活の一部にしたくなる「場」を作ること。こうしたマインドからSRコーヒーの独特の居心地のよさが生まれているようにも感じる。
兜町で経験した、いちから街をつくるということ
過去には青山、蔵前と人が集まる街で働いてきた加藤さん。どちらもすでにある程度成熟していて、周りと協力しあわなくてもやっていけるほど集客ができている街だった。
兜町には魅力的な店が集まっているものの、認知度はほかの街と比べるとまだまだ低い。SRコーヒーが移転したばかりのころは、コロナ禍の真っ最中だった。「相当大変でしたね」と加藤さんは打ち明ける。感染症の影響で街が静まり返っていた時期は同じ兜町で商いをする仲間の店を訪れ、情報交換をしたり、一緒にイベントの企画を練ったりと、力を貸し借りしながらみんなでいちから街をつくっていく気持ちを覚えたという。
SRコーヒーに関していうと、日々の努力の積み重ねのおかげで、平日は兜町で働く人たちの憩いの場となり、週末はSNSの力で人気になったチーズケーキを目掛け、列ができるほどファンがつくようになった。
成長はたしかに見られるものの、「いまでも僕たちのことなんて知らないよねって思ってます」と加藤さんは謙虚だ。まだまだ出し切れていない自分たちの魅力をもっともっと引っ張り出して、街の魅力に貢献していきたいという。
Squareのおかげで、決済時間が最大45秒短縮
加藤さんは雰囲気こそやわらかいが、運営のことになるとシビアだ。特にコーヒーの提供時間について「たとえば僕がラテを出すとしたら、注文をいただいてから1分30秒で出したいです」と秒数まで具体的に挙げる。
「ここ(兜町の店舗)だとみなさん客席で待ってるわけじゃなくて、(レジで)目の前で待ってるわけじゃないですか。しかも後ろに何人か並んでいるかもしれない。早く買いたいと思っていると思います。次の用事だってありますよね。だからこそできるだけスピーディーに動きたいんです」
以前まで利用していた決済端末は、タブレットとの接続に20秒ほど時間がかかっていた。
「その20秒の積み重ねで、列の1番後ろで並んでいる5人目のお客さまへの提供時間が3分ぐらい遅くなってしまっていた。 これってコーヒー屋として致命的だなと」
特に兜町の店舗ではワンオペレーションの日も多いため、コーヒーを淹れるのを誰かに任せることができない。一方で、決済がちゃんと完了するまでは、お客さまの前を離れることもできない。
「うまく反応してくれないときはクレジットカード決済と押してから40秒くらい待って、決済をしてもらうのに5秒ぐらい待って。この時間、もったいなくない?って思ってました」
必要以上にお客さまを待たせてしまうのはよくないと考え、決済サービスの乗り換えを検討しはじめた。決めたのが、Squareの決済端末だ。
まずは神保町と平河町の店舗にSquare ターミナルを導入すると、会計にまつわるストレスがきれいさっぱり消えたそうだ。
「(キャッシュレス決済を受け付ける)速さがめちゃめちゃ気持ちいいです。僕らも安心してクレジットカード決済を受け付けられるようになりました」
「その20秒の積み重ねで、列の1番後ろで並んでいる5人目のお客さまへの提供時間が3分ぐらい遅くなってしまっていた。 これってコーヒー屋として致命的だなと」
Square レジスターの導入で、コーヒーの提供がよりスムーズに
兜町の店舗には、Square レジスターを導入した。Square ターミナルよりも画面が大きく、スタッフ用の画面とお客さま用の画面とで分かれているのが特徴的な端末だ。
「これぐらい大きい画面だと見やすいですし、メニューも選びやすくて、速いです」と会計のスピードがさらに早まる印象を受けたよう。
画面がスタッフ用とお客さま用に分かれているところも、時間短縮につながっているポイントだ。
「Square ターミナルだと(金額が表示された)画面をお客さまのほうにくるっと向けて見せる、というひと手間があるじゃないですか。それをする必要がなくなりました。慣れてきたお客さまには『カードですか?』と聞かなくても、画面を見て支払ってくれるところがめちゃくちゃいいなって思います」
お客さま用画面にはクレジットカードや交通系ICなどの支払方法が表示されるため、お客さま自身で希望する決済方法をタップして、選択することもできる。お客さまによっては決済を委ねられ、レジに終始張り付いている必要がなくなる。そのあいだにサッとコーヒーづくりに移れる。そうするとコーヒーを提供するまでの時間がさらに短縮されるそうだ。
スムーズに会計が進んでいくあいだに、端末自体が会話のネタにもなるそうだ。
「『こんな端末見たことない』なんていわれたりします。素敵ですね、かっこいいですね、みたいなね。デザインがかっこいいと、僕も自慢できます」
「(キャッシュレス決済を受け付ける)速さがめちゃめちゃ気持ちいいです。僕らも安心してクレジットカード決済を受け付けられるようになりました」
各店舗の課題をスマホから発見、翌日から改善
Square ターミナルとSquare レジスターにはPOSレジが搭載されており、商品登録はもちろん、売上分析もできる。
商品登録をしなくても決済は受け付けられるが、商品登録をしておくと商品別売上まで見られるようになるため、より細かく店舗の売上状況を把握できるようになる。
SRコーヒーでは、テイクアウトとイートインでカテゴリー分けをし、そのなかにフードとドリンクの商品を登録していくのがいま最もしっくりきているそうで、全店舗この形に登録しなおしたそうだ。
そうすることで、テイクアウトの売り上げとイートインの売り上げを分けて見られるようになった。
売上データはスマートフォン上にダウンロードできるSquareのPOSレジアプリから確認できるため、1日に6回ほどは確認している。特に複数店舗運営していることもあり、イベント先など遠隔から全店舗のリアルタイムの売れ行きを確認できるのはとても助かっているという。
「たとえば18時までの営業なのに15時でこの売り上げで止まっちゃってる、ということがあったりします。そういうときはなんで出ていないのかを、現場と確認します」
過去には十分な数のスイーツを解凍していなかったことが理由で、フードの売り上げが鈍っていたことが発覚した。飲食の売り上げは天気などにも左右されやすいが、現場の取り組みから改善できることもある。すぐに原因が解明できたことで、日持ちするものは多めに解凍し、売り逃しを防ぐという対策を翌日から打てた。
「売り上げが落ちる時期に余らせてもしょうがないですし、売れる時期に売り逃してもしょうがない。売れ時とそうでない時の感覚をみんなでつかんでいくことが大切だと思っています」
忙しい日を効率よく乗り越えるためにしてきたこと
SRコーヒーでは平日と土日で客層ががらりと変わる。平日は近辺の会社に務める人が圧倒数を占めているが、週末になるとSRコーヒーの大きな特徴でもあるスイーツを目掛けて若い女性たちが足を運び、列を作る。
客層が一変することもあり、週末にはソフトドリンクがコーヒーの売り上げを上回る。割合でいうと、6対4くらいだそうだ。売れ行きがいいとついメニューを豊富にしたくなるが、それよりも加藤さんが重視しているのは、回転率だという。特にSRコーヒーでは、茶筌で点てた抹茶から抹茶ラテをつくるため、こういった類のメニューがいくつもあると提供までにどうしても手間と時間がかかってしまう。
Squareの売上データを見てみると、売れ行きのいいドリンクは3種類ほどに特定できた。自家製レモネード、抹茶ラテとチャイラテだ。どれも特徴の異なるドリンクで、全体的に見たときに手間が少ないことから、メニューをその3種類に絞ることにした。
「そのほうが使う道具も、洗いものも減るのでスタッフの負担も減ります。お客さんにとっても、そこまで選択肢が多くないほうが選びやすいと思うんです」
最初は1人ではじめたお店だった。それがいまや25人体制になり、2024年には新たに3店舗もオープンする予定だ。新店舗を含めると、全部で9店舗になる。「求められると、やっちゃうタイプなんです」と加藤さんは小さな笑みを浮かべる。スタッフの数もそれに伴い、倍増する予定だ。だからこそスタッフの負担をできるところから減らして、働きやすい環境を整えたいという。「『チームをみんな食わせなきゃ!』それが今の僕のモチベーションです」
「(Square レジスターについて)慣れてきたお客さまには「カードですか?」と聞かなくても、画面を見て支払ってくれるところがめちゃくちゃいいなって思います」ーSRコーヒー 店主 加藤渉さま
カフェでSquareが実現したこと
決済スピードが最大で45秒も短縮
SRコーヒーは以前まで、決済端末を理由にお客さまを待たしてしまうという悩みを抱えていました。当時使用していた決済端末はタブレットとの接続に時間がかかり、キャッシュレス決済を受けつけるまでに20秒から45秒ほどかかっていたそうです。Square ターミナルとSquare レジスターは、会計金額さえ打ち込めばすぐに決済できる状態になるため、決済にかかる時間を最大45秒ほど短縮することができました。
会計をしているうちにコーヒーを作りはじめられる
兜町の店舗で導入しているSquare レジスターは、スタッフ用画面とお客さま専用画面の両方を備えた決済端末です。お客さま専用画面には決済方法が表示されるため、画面に従い、お客さまが自身で決済を済ませることもあります。こういったときはお客さまが決済をしているあいだにコーヒーを作りはじめることができ、コーヒーを提供するまでの時間がさらに短縮できるそうです。
スマートフォンからリアルタイムで課題を発見、すぐに改善につなげられる
加藤さんはSquareのPOSレジに商品登録をすることで、全店舗の商品別売上を細かく見ることができています。売上データはスマートフォンからいつでもリアルタイムで確認できるので、どこにいても各店舗の売上状況の確認が可能です。日々の売り上げの推移を見ることで店舗の課題が見えてくるため、気になったことがあれば現場とすぐに連携し、改善に向けた対策を打っています。結果として、スタッフの負担軽減や、注文数の増加につなげることができています。