Tokyo Top Chef | 鮨 将司

成功のレシピは、自分を信じること

自分の店を持ち、オーナーシェフになる。それはこれまで積み重ねてきた努力の結晶であり、新たな門出でもある。「Tokyo Top Chef〜成功のレシピ〜」は、ミシュランの星を獲得しているレストランや、それぞれの分野で圧倒的な知名度を誇る飲食店のオーナーシェフを取り上げ、独立に至るまでどう道を切り拓いてきたかに迫るシリーズだ。

第1弾では、「鮨 将司」の店主、山口将司(やまぐち・まさし)さんに話を聞く。鮨 将司は2020年に北青山で開業、「ミシュランガイド東京」の2022年版、2023年版、2024年版で一つ星を獲得しているすし店だ。20年近くにわたる波乱万丈なキャリアをここでは一挙に辿る。

山口将司(やまぐち・まさし)
1981年8月24日生まれ、東京都出身。
地元のすし店で修業した後、渡米。帰国後は「ザ・リッツ・カールトン東京」などで経験を積む。2016年には「フォーシーズンズホテル京都」内の「鮨 和魂(わこん)」の料理長に就任、ミシュラン一つ星獲得を導く。ザ・ペニンシュラ東京でも同店の料理長を担ったのち、2020年6月に「鮨 将司」を開業。
ミシュランガイド2022年版で初の一つ星を獲得。その後、2023年版、2024年版と連続してミシュラン一つ星を獲得している。
業種 すし店
業態 飲食店
利用しているサービス Square リーダーSquare ターミナル

世界で活躍するために選んだ「すし」

飲食の世界で独立していた祖父の背を見ながら育ち、幼いころから料理の世界を身近に感じていた山口さん。自然と自分も料理の道を志すようになり、高校卒業後は専門学校に入り、イタリアンシェフを目指した。ところが世界で活躍したいという思いから、就労ビザが取得しやすい料理のジャンルを周りに尋ねてみると、返ってくる返事はイタリアンではなく、すしだった。すしはそれまで考えたこともなく、ビザのことを知りつつもどうにかうまいことイタリアンをやれないかと考えを巡らせていたが、徐々にすしの可能性を意識するようになった。

「専門学校でおすしの世界に進んでいる人が少なかったんです。おすしの需要はあるけど、板前さんの数が少ないことに気づいて、てっぺんを目指していけるんじゃないかと思いはじめました」

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どん底まで突き落とされた23歳

山口さんはマインドを「すし」にきれいさっぱりと切り替え、卒業後は地元のすし居酒屋で3年間修業し、海外で働く夢を叶えるべくロサンゼルスに向かった。当時まだ23歳だった。壊れかけの競技用自転車で街中を巡り、「Sushi」と書かれたお店に片っ端から「働かせてもらえませんか」とお願いをした。しかしすんなりとは決まらず、迎え入れてくれたのはたった1軒、「ウラサワ」だった。当時じわじわと人気を集めていた高級日本料理店だ。

やっとのこと雇ってもらえたのはよかったものの、観光ビザが切れる間際になっても就労ビザは申請してもらえなかった。そうして山口さんはわずか3カ月で日本に戻ることになった。

海外で働く夢を叶えるべく選んだ、すし。第一歩を踏み出したと思いきや海外への道はあまりにもあっけなく閉ざされ、目指していたものががらがらと崩れ落ちた。

「料理を続ける意味はあるのか」「すしで生きていく意味はあるのか」とそこからしばらくは生きる意味すら見いだせない日々が続いたものの、「独立するためにはまだ経験できてないことがある」「一度目標を持ったからには諦めずにやり抜こう」と自分に言い聞かせながら、なんとか諦めることなく心を入れ替えたという。

彩り豊かな経験を積んだ、独立までの道のり

山口さんのキャリアは、ここからどんどん豊かになっていく。帰国後には、海外からも著名人が多く訪れることで有名な和食レストランに数年勤めた。そこでの経験をもとにフリーでケータリングをはじめ、波に乗るように自分の店を持つことになった。「鮨 将司」の誕生よりも10年ほど前、27歳のころだった。いまよりも手頃な価格帯ですしを提供していたが、2年ほどで経営がうまくいかなくなり、事業を譲渡した。これもある意味では挫折といえるかもしれないが、23歳に経験した挫折とは異なる心持ちだった。

「絶対また自分の店を持とうと思いました」

1日500円の生活から高級ホテルのすし店へ

独立した際の借金もあり、事業譲渡から半年ほどは毎日500円という切り詰めた生活を続けた。昼は法律事務所の事務、夜は高級クラブのボーイ、週末はケータリングと休む間もなく働き、無事返済が終わると、ひとめ見て惹かれた、当時では珍しいモダンな趣の板前すし店に就職した。

たまたま食事をしにきた「ザ・リッツ・カールトン東京」の幹部にスカウトされたのは、そこだったという。

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迷いながらも思い切って飛び込んだザ・リッツ・カールトン東京のすし店に5年ほど勤務し、そろそろ独立しようかと考えはじめていたタイミングで、またしても転機が訪れた。10年以上ミシュラン三つ星を獲得し続けてきた銀座の名店「すきやばし次郎」で研鑽を積み、その後はじめた自身のお店でミシュラン2つ星を獲得した「鮨ます田」の大将、増田励(ますだ・れい)さんが山口さんのおすしを食べに来たのだ。

新店舗の料理長に抜擢

増田さんは当時、自身がプロデュースする「フォーシーズンズホテル京都」にある「鮨 和魂(わこん)」のオープンを控えており、ちょうど料理長を探していた。そんなタイミングで、山口さんはサービスと料理の質を認められ、「鮨 和魂」の立ち上げを担う料理長に抜擢されたのだ。

どんな心持ちで挑まれたのだろうか。

「そのころにはすし居酒屋にリッツカールトンといろんなお店での経験がありました。それに加えて20代には数字のこともかなり独学で勉強していたので、『絶対に成功する』『絶対にできる』と自分のなかでは思っていましたね。 今までの経験を全力でぶつけたら、きっと『鮨 和魂』でミシュランの星がとれるだろう、会社としても利益が出せるだろう、そういった自信はありました」

山口さんはその後、「鮨 和魂」の料理長として、2016年のオープンから1年でミシュラン一つ星獲得を導いた。その後京都に続いて、「ザ・ペニンシュラホテル東京」にある「鮨 和魂」の料理長も務めることとなり、この二つの体験こそが、結果として、独立を一層後押しすることとなった。

開業から1年でミシュランの星を獲得

次のステップを考えたときに、「自分のお店をはじめるしかなかった」と山口さんは振り返る。そうして2020年6月に誕生したのが、「鮨 将司」だ。

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メニューは、コース一つのみ。お昼は1部、夜は2部制で営業している。江戸前ずしをルーツとし、起承転結を大切にしながらコースの構成を練るという。ひと皿ひと皿の順番を工夫しながら温度、食感、脂のあり・なしで強弱をつけ、つまみでは変化球を入れるといった形だ。コース内容はその時々で変わるそうだが、なかでもお客さまに人気のメニューは、鮪のすき焼である。

コースのみのすし店と聞くと気軽に行きにくいと感じる人もいるかもしれないが、鮨 将司では、はじめて来店する方でも肩肘張らずに楽しめる雰囲気作りをスタッフ全員で心がけているという。

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オープンからミシュラン一つ星を獲得するのにかかったのは、たったの1年。 そもそも星は目指していたのだろうか。

「やはり雇われている身としてではなく、オーナーシェフとして星を取りたいと思っていました。星を取ることで、いらっしゃっていたお客さまにも違う形で恩返しになると思っていましたね」

実際に獲得したときは、身の引き締まる思いだったという。「今までは勉強する側だったのが、飲食店としてお手本になる職人、そしてお店にならなければいけないなと感じました。当然、今もまだ勉強中ですが、見られる側に変わったというところが大きかったと思います」

仕入れはその場で現金払い

「鮨 将司」の経営面についても聞いてみた。

1日の平均客数は30人ほどで、平均の客単価は4万円、全体の9割はキャッシュレスで支払うという。価格帯を考慮すると、キャッシュレス決済端末を導入しないという選択肢はあまりなかった。

選んだのは、Squareの決済端末だ。

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キャッシュレス決済が大半を占めるとなると、売り上げは立っているのに手元に資金がないということがどうしても起こってしまう。そこで決め手となったのが、Squareの最短翌営業日の入金サイクルだ。

すし店のなかには毎日市場に行き、そのたびに現金で仕入額を払う人もいるという。鮨 将司も最初のうちは月に何度か市場に足を運び、その場で支払っていたそうだ。

たとえば月末締め、翌月末支払いだとまるまる2カ月キャッシュが入ってこないことになりますよね。俗にいう黒字倒産みたいなことが起きないようにしないと、と思っていたので、すぐにキャッシュが入ってくるのはありがたかったです

今では取引先に月1回、まとめて支払っているそうだが、そのようにできるまでは手元資金に頼る場面も多かった。

そのうえ、軌道に乗るまではお金のやりくりに苦労することも少なくない。それでも仕入先に支払いをしなければ、お店は回せない。山口さんはSquareの入金スピードが速いことを知り、開業時に用意しておく運転資金を2、3カ月分におさえる決断が下せたという。

「すぐに売り上げが入金されれば、家賃と仕入れの分は賄えるだろうと思っていました」

最後の瞬間まで、円滑なサービスを届けたい

求めていたのは、入金のスピードだけではない。決済のスピードも重要視している部分だ。マネージャーの十二村智之(じゅうにむら・ともゆき)さんはその理由をこう話す。

夜の部で2回転するときはみなさん一斉にお会計されて、一斉に帰られるんです。その際には、会計のスピードが10秒ほどでとても速いので、すごくありがたいです。

私たちにとってもいいですが、何よりもお客さまにとっていいと思うんです。お寿司はテンポがいいので、1時間半くらいで食べてパッと帰るみたいなイメージをお客さまはもともと持たれていると思います。なので、お会計のところでお待たせしちゃうと、最後の印象が悪くなってしまうと思っていました。お食事からお見送りまでがワンセットなので、お会計がスムーズなのはうれしいところです」

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「お会計のところでお待たせしちゃうと、最後の印象が悪くなってしまうと思っていました。お食事からお見送りまでがワンセットなので、お会計がスムーズなのはうれしいところです」

成功のレシピは、自分を信じること

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独立して3年が経った今、人生のどん底だったと振り返る23歳の自分にアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけるだろう。

山口さんは「自分を信じることじゃないですかね」とはにかんだ表情を見せる。

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山口さんは続ける。「自分自身を信じられるのは、自分しかいないんですよ。逆を言うと、自分の可能性を狭めちゃうのも自分なんです。やっぱり自分はここまでしかできないとかね。それはあくまで自分が勝手に思ってるだけで。成長するときって絶対辛いんです。それでも自分を信じてどんどんトライしていくことが、自分の成長につながると思っています」

自分を信じて突き進む推進力と持ち合わせておきたいのは、やりたいことを具現化する力だ。

「(最初に独立をしたとき)なんで失敗しちゃったかなって、すごく思ったりもしたんです。

あのときは、お店を開けるのがゴールになっていました。本来はそこがスタート地点なんです。事業計画書の数字を形にするのが重要で、どんなお店にしたくて、お昼と夜は何回転で、単価はいくらで、そういった具体性が大事なんです。ただその数字は、情熱がないと具現化できないと思います。

『おいしいと思っていただきたいな』『このお店、よかったなと思ってもらいたいな』『そのためにはどういう風にしたらいいかな』そういったことを考えて、情熱を持って経験を積んでいくことがめちゃくちゃ重要です。

詰まるところ、今ここで何ができるかって、自分がやってきた経験でしかなくて、それ以上もそれ以下もないんです

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2度目の独立を果たし、ミシュランの一つ星を3年連続で獲得した「鮨 将司」。これからも、また新たなチャレンジに立ち向かっていくことになるだろう。最後に、生き残り続けるお店であるために、大切にしていることを聞いてみた。

「自制することは絶対に大事だと思っています。ある程度大きなお金を使えるようになると生活をアップグレードしはじめることもあると思うんです。それはそれで大事ですけど、やっぱりまずはスタッフやお客さまにとって何がいいかを考えること。食材もそうですし、器もそうです。テーブルだって、使っていけば古くなるので変えないといけません。僕はどちらかというと、そういったことに優先的にお金を割いていくことが大事だと思っています」

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「たとえば月末締め、翌月末支払いだとまるまる2カ月キャッシュが入ってこないことになりますよね。俗にいう黒字倒産みたいなことが起きないようにしないと、と思っていたので、すぐにキャッシュが入ってくるのはありがたかったです」 ー鮨 将司 店主 山口将司さま

高級すし店で役に立ったSquareの特徴

決済スピードが優れた顧客体験に貢献

鮨 将司ではお食事中だけでなく、お会計やお見送りなどお客さまがお店を去る最後の瞬間まで滞りのないサービスの提供を心掛けています。決済スピードが速いSquare ターミナルは、スムーズな顧客体験の提供に貢献しています。

入金スピードが円滑なキャッシュフローに寄与

山口さんがSquareに決めた大きな理由は、売り上げが最短翌営業日に振り込まれる入金サイクルでした。すぐに売り上げが手元に入るおかげで、開業時に用意する運転資金を必要最低限に抑えることができました。


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執筆は2024年2月22日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash