【商いのコト】善いことと売れるものの「両立」とは—暮らしと旅に寄り添うブランド「SALASUSU」

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 56
SALASUSU横山優里さん

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SALASUSU(サラスースー)は、暮らしと旅に寄り添う、カンボジア発のライフスタイルブランド。トートやサコッシュといったバッグ、ストールやハンカチーフといったファッション雑貨を製造・販売する「ものづくり」と、カンボジアに持つ工房で働く女性たちが生きる力を養うライフスキルトレーニングを提供する「ひとづくり」に取り組む。

2016年3月にカンボジアで工房を開設して以来、「販売・購入」の関係性を超えて、「もの」と「つくり手」と「使い手」のつながりが良心的に続くことを大切にしている。エシカルやサステイナブルがキーワードのジャンルに位置して、目下、社会的意義と営業的利益を保つことに力を注いでいるNPO法人だ。

そのSALASUSUにまつわる、社会的意義、営業的利益、意義と利益を保つ悲喜交々をブランドマネージャー横山さんに尋ねていく。

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(写真提供:SALASUSU)

「つくり手」と「使い手」に新しい関係を築く

SALASUSUは、カンボジア語の「学校(SALA)」と「がんばって(SUSU)」を組み合わせて命名した。ものづくりを通してがんばることを身につける学校のような場所として、カンボジアに工房を設けている。以前は違う名前だったが、2018年3月にブランド名を変更した。

「エシカルやサステイナブルと呼ばれるものがたくさんある中で、お客様がSALASUSUの商品を買う特別な理由は見当たりませんでした。つまり、もっとブランドを立たせないと続けていくことが厳しい。それは、つくり手と使い手をつなぐ仕組みを充実させたかったことや、事業計画通りに売れ行きが伸びていなかったことが少なからず影響しています」

これまでカンボジアの工房は、各種団体や個人の訪問を累計12,000名ほど受け入れてきた。その訪問者数には、修学旅行や校外学習の学生のように、使い手とはまた異なる人たちが含まれている。ブランドリニューアルにあたり、ひとづくりとものづくりのリニューアルを行なうなか、使い手の訪問機会を増やす仕組みを整えた。

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(写真提供:SALASUSU)

上記の画像は、SALASUSUのプロダクトに付属するタグだ。一品ずつ、製造ラインが進むたび、裁断や縫製、検品を担当するカンボジアの女性たちが自分の名前をタグに押印する。商品に同封されている、シェムリアップから工房までのチケットを使って、実際に女性たちと会える仕組みを用意した。

「私たちの強みって、カンボジアに工房を持ち、そこで65名の女性たちが働いていることに尽きると感じたんです。工房を訪問した人たちは、ポジティブな言葉をたくさん寄せてくれます。来るまでに抱いていた、途上国・ものづくり・貧困に対する重いイメージが、働く女性たちと顔を合わせることで払拭されるんですね。

働く女性たちには、彼女たちが身を置く環境下で生活を築いていこうとするエネルギーがあります。そのエネルギーにハッと気づいてもらえるみたいなんです。働く女性たちにとっても、つくった商品を持ってきてくれる人と会う時間は、感激の瞬間です。その感情が、ものづくりの喜びや自分の仕事が誰かのハッピーを生んでいることに気づく機会を生んでいます」

使い手に新たな購買体験をもたらし、つくり手に働く喜びを伝えるために、売れ行きとシビアに向き合っていく。それはSALASUSUが果たす社会的意義と密接に関係している。

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▲チケットの隣にあるのは、工房を訪問する過程をイメージで伝えるブランドブック。

女性たちが課題解決力を備えていく「ひとづくり」

カンボジアの工房では、最貧困家庭で育った女性を採用している。理由は、カンボジアの文化や経済状況に由来する。カンボジアの貧しい家庭には、家計を支えるために若くして働く女性が少なくない。男性優位な社会で、女性が意見することも難しい。都心部にホテルやレストランが開き、雇用は増えてきた。賃金を基準に勤務先を選んでいく。

SALASUSUに勤めていた、ある女性も別の工場に入社した。彼女は母の他界後、病を患う父に代わって家計を支えてきた。そんな彼女に給与が4倍になる勤務地が見つかったことを、SALASUSUのスタッフは大いに喜んで送り出す。その4日後、彼女は工場を退職してしまった。

「理由を尋ねたら、住まいが見つからなかったからだと言うんです。ショックじゃないですか。なぜ、もう少しがんばれなかったのか。もったいない。働く人たちと良好な関係を築けなかったと漏らす彼女を見て、そこに課題があると感じました。

それは、彼女だけの問題ではありません。私たち自身も、周りのサポートやがんばりがあるから、今この瞬間を生きていける。だから、自己責任という一言で片付けてしまわないで、どうしたらカンボジアの貧困家庭で育った女性がそれぞれの置かれた環境でがんばっていけるようになるのか、改めて、考え直しました」

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結果、SALASUSUが取り組んできた、「ものづくり+ライフスキルトレーニング」による生きる力の養成を改定。新しいトレーニングとして、6種類60項目に及ぶアクティブラーニングのカリキュラムを整えた。「問題解決」「自己管理」「基礎リテラシー」「自信」「職業倫理」「対人関係」という6種類は、カンボジアや工房の状況に応じて今後も変えていく。

例1:対人関係における「ビンゴゲーム」のカリキュラム
ビンゴカードの9つのマスには、「親切」「いつもがんばっている人」など、性格や行動を表すキーワードが書かれている。そこに、工房で働く仲間の名前を記入する。「ビンゴ!」がそろったら、全員の前に歩み出て、そろったマス目に書いた名前を読み上げる。

「マス目を埋める過程で、自分がされて嬉しかったことを思い返し、読み上げられた仲間は相手に喜ばれていることに気づくだけではなくて、二人以外の女性たちも誰かの魅力を知ったり、何が人を喜ばせるのか覚えたりする、偶発的な学びがたくさん生まれていくんですよ」

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▲アクティブラーニングのワンシーン(写真提供:SALASUSU)

例2:自己管理における「アンガーマネジメント」のカリキュラム
劇を利用したアクティブラーニング。人を怒らせるシチュエーションを演じて、怒りを感じた瞬間に、7秒間じっと我慢する。その後、なぜ怒りを感じてしまったのか感情をよく観察する。7秒間というのは、怒りが静まるのに必要な時間だとされている。

「カンボジアの社会にはまだまだ理不尽さが残っています。父や夫に強いられてしまいそうになった時、その関係性を超えて自分の気持ちをどう伝えたらいいのか。すぐにできるようにはなりませんけど、恐る恐る勇気を持って伝えていく力をつけてほしいんです。とても人気があって、みんな楽しそうに演じています」

このようなカリキュラムに、毎日1時間を当てている。

「地道に続けています。たぶん、企業の新人教育と似たような内容です。日本の協力会社に研修メソッドを教えてもらい、それをカンボジアの工房に合わせてチューニングしています。ちゃんと工房で起こっていることと照らし合わせて、これならうちで伝えられるという内容に落とし込み、身につけやすくした内容をカンボジアの女性同士で学び合っています」

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▲真ん中にいる白いシャツを着た女性がソチェットさん(写真提供:SALASUSU)

工房には、カンボジア人のトレーナーが常駐している。ソチェットさんという、その女性トレーナーは、働く女性たちと向き合い続けていける理由を「愛があるから」だと言った。

「本当に、すごいですよね。私たちの希望は、このカンボジア人トレーナーたちが育ってきていることなんです。そして、働く女性たちには、自分らしく生きていく力を身につけていってもらいたい。環境に合わせて、ソリューションを自分で考えて、行動して、解決していけるように」

4日間で退職した女性は、その後、SALASUSUの工房に戻ってきた。「ものづくり+トレーニング」を重ねる日々をまた過ごしている。

「最近になって、彼女は夢を見つけたって言うんです。それは、この経験を通して、ライフスキルトレーニングの大切さを身にしみて感じたことがきっかけでした。彼女は今、そんなライフスキルを伝えていくトレーナーになろうと、トレーナーを養成するカリキュラムに取り組んでいます」

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SALASUSUで働くカンボジアの女性たちは、2年間、「ものづくり+トレーニング」を続けたら、卒業することになっている。そのため、着実にライフスキルを身につけていけているかどうか、評価を計測する仕組みも整えている。

例:年2回のエバリュエーション
エバリュエーションとは、小学校の「あゆみ」と似た通信簿のような評価表。働く女性たちの行動変容を促すために、5項目に分けて点数を付ける。合わせて、何がどう変わったのか言葉を添えて伝えている。

「私たちは、『愛ある職場』と呼んで、安心・安全を感じられる環境で、彼女たちにフィードバックすることを大切にしています。入りたての子たちは、みんな1点か2点しか取れません。それが半年後に15点まで上がると、顔つきも変わります。

もちろん、途中で辞めたいと言う子もいるんです。それは、結婚だったり、父親にもっと給与のもらえる場所へ移るように言われたりした結果です。ですが、その度にカンボジア人のカウンセリング担当者が彼女たちに寄り添って、『本当はどうしたい?』と気持ちを尋ねるようにもしています」

働く女性たちの機微を見落とさないように、観察することは何よりも重要だ。現地のカンボジア人トレーナーは、時間を設けて、工房で働く女性たちの様子を共有し合う、ディスカッションを繰り返している。

こうした「ひとづくり」を、SALASUSUは営業的利益と向き合いながら続けている。

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見せたい形と買いたい欲に橋をかける「ものづくり」

SALASUSUの工房は、ひとづくりだけでなく、ものづくりもカンボジアの女性が中軸を担う。工房のリーダーは、2008年の工房開設から勤務するソファーンさんだ。生産管理のリーダーを務めるブッティさんと、二人三脚でSALASUSUのものづくりを支えている。

「ソファーンは、うちで唯一、パターンを起こせる女性です。SALASUSUは彼女なしに語れません。工房を建てる際、縫製技術を持つ人材として、村中から情報をもらって勤めてもらえるように口説きました。

経営メンバーのひとりでもある、NGO出身のブッティは生産管理をマネジメントしつつ、日本とカンボジアのミーティングの翻訳も担当して、ソファーンに商品デザインを伝えてくれる仕事もしています」

一方、日本側の責任者は、デザイナーの菅原裕恵さん。青年海外協力隊としてバヌアツ共和国で働いたのちに合流した。ブランドをリニューアルした後のプロダクトデザインを一手に引き受けている。

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▲写真右に菅原さん(写真提供:SALASUSU)

「カンボジアのような途上国でのデザインには、とても泥臭い仕事があります。デザインを描くだけでなく、どこから素材を調達してくるのか、どういうルートで素材を運んでくるのか、それらを含めてデザインしていきたい人は希少なんです。その上で、彼女はSALASUSUの美学を崩さずにデザインし続けてくれています。

忘れもしません。2017年の11月11日に、暮らしと旅に寄り添うことをテーマに掲げるこのブランドの商品ラインを、シンプルでクリーンなプロダクトとして際立たせることに決めました。そして、翌年2月22日に開催する、ファッションの展示会に向けて、記憶が飛ぶくらいにがんばって、リニューアルを進めたんです。

一番の悲劇は、素材が到着しなかったこと。菅原があらゆる伝手をたどってようやく見つけた素材を、オーダー通りに染め上げてもらったところまではよかったんですが、運輸中に包みの取り違いが起こってしまい、バングラデシュに着いてしまいました。そういうエラーは、日常的なことです。

展示会の直前に間に合った商品サンプルも、しわがあったり縫いが甘かったり。仕様と違う部分をちゃんと伝えて、もう1度、つくり直してもらうことも菅原が行ないました」

菅原さんは、テレビ通話越しに商品を指し示し、1点、1点、数センチ単位の仕様との差異を伝えて、補正してもらうように促している。

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(写真提供:SALASUSU)

「働く女性たちは、技術を身につけながらものづくりにたずさわっている分、新商品を製造する際に、最初は安定しないことがよくあります。ちょっとずつ数を重ねれば、クオリティは高まってくるので、期間がタイトな場合だけ負荷が少し重たくなるんですよ」

こうして完成した新しい商品のラインアップを、使い手に購入してもらうことにも力を注いでいる。

「それは、フェアトレードと聞くだけでは、購入に至らないと思うからです。私自身、そういったストーリーを聞くだけで買い物をすることはありませんし。買い物って、本人が楽しめるかどうかじゃないですか。

『ほしい!』と思うかどうかって最初の3秒でどう感じるかにかかっていると思っていて、その土俵に乗って、初めて売上がついていくんだと思います。だから、リニューアルした今も、商品に100%満足するようなことはしません。もっと良い素材を調達したいし、もっと良いものづくりをしていきたい」

SALASUSUが社会的意義と営業的利益の両立を図る努力は、ここに感じ取れる。

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(写真提供:SALASUSU)

「日本でよく売れているプロダクトに似せてつくってもなぁ……。SALASUSUという世界観の中で菅原はつくりたい形を商品に落とし込むことに力を注いでくれています。一方で、売れ行きをよくするためにマーチャンダイジングを気にしていく必要性は感じていて、これが今の課題です。デザインだけでなく、価格帯にも言えますよね。

安くて可愛い雑貨は溢れているけれど、安くつくれてしまうものを広げすぎちゃうと、薄利に苦しむ結果を生みます。であるなら、ちゃんとしたものをそれなりの値段で売って、SALASUSUの活動自体もサステイナブルな状態を目指したい。今後は、カラーバリエーションを増やしていくような、手に取ってもらうためのPDCAを早く回していきたいです」

SALASUSUでは、「3秒、3分、それ以降」を意識して接客をする。最初の3秒で見た目の可愛さを伝える、次の3分で商品としての品質や機能性を訴求する。そして、さらに伝えていきたい大切なストーリーがある。SALASUSUのひとづくりにまつわる、カンボジアの女性たちのストーリーだ。そのため、どのようにストーリーを伝えるのかという接客にも繊細な意識を持っている。

「ストーリーは、伝えない場合もあります。伝えるとしても、購入時の本当に最後です。買ってくださったお客様には、まず、『お時間ありますか?』と一声かけます。そして、商品を広げて、名前スタンプを見せるんです。そこで、つくり手のエピソードをほんの少しだけお伝えするようにしています。

もしも、お時間に余裕のあるお客様だったら、その後タブレット端末を取り出します。それには、働く女性の写真を保存してあって、お客様と一緒に眺めるんですよ。商品に同封しているチケットを手に取って、『ぜひ会いにきてくださいね』と伝えることまでできたら、いつもの買い物とは異なる特別な体験を提供できるんじゃないかなと思って」

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値札には、「この商品を購入いただくと、カンボジア女性の1日のトレーニング費用を賄えます」というような情報を記載している。この日数は、商品の価格によって異なるものの、情報の記載自体はお客様に口伝えしていない。それは、買い物の楽しさを考えて、控えるようにした心遣いだ。

また、ポップアップショップを出店する際は、つくり手と使い手をつなぐ仕組みも披露できるように心がけている。渋谷ヒカリエでポップアップショップを開いたときは、instagramと連動した企画を用意したが、そこでも押し出しすぎないことは意識していた。

「働く女性たちと、お客様の距離をなるべく近くするために、どんな仕掛けを用意すればおもしろいか。それは、ポップアップを出すたびにトライしている工夫ですが、だとしても、ストーリーを伝える際のチューニングは心がけています。やっぱり、前に出しすぎてしまうのも、重いだろうと思うんです」

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あくまでも、つくり手と使い手の距離を気持ちよく縮めることを目指している。「3秒」「3分」を経た、「それ以降」に期待して。

「工房を訪問してくださった方々と、一緒にSNSで発信していけるような関係になることができたら、何か、楽しいことができる気がしています。ゆくゆくは、そうした取り組みを展開していきたいです。

とはいえ、現実的な目標は日本でのビジネスを安定させること。一定の売上を保たないと、トライを重ねていくこともできません。私たちだけでいろいろな取り組みをしていくことにも限界はあるので、いろんな人たちと協力していくこともできたらいいな」

2018年10月15日には、東京都千代田区東神田のホステル「KIKKA」に常設店をオープンした。KIKKAは、サステイナブルをテーマに、宿泊や飲食を提供している。今後は、SALASUSUのイベントをKIKKAで開催することも計画している。

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SALASUSU(KIKKA常設店)
東京千代田区東神田1-3-3 1F(KIKKAロビー内)
営業時間: 7時30分~23時
電話番号: 03-5823-4939

文:新井作文店
写真:袴田和彦

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