【商いのコト】日本の難民のイメージを変える ― 難民起業サポートファンド

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 32
公益社団法人難民起業サポートファンド 吉山昌さん

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公益社団法人難民起業サポートファンドの代表理事を務める吉山昌さん。

起業による難民の経済的自立をサポートするために、マイクロファイナンス機関として事業資金の融資や経営へのアドバイスなどを行っている。

前編では、吉山さんが難民起業サポートファンドを設立するに至った経緯を紹介した。後編では、難民起業サポートファンドでの活動や現在の課題、そしてこの活動に対する思いを伺った。

前編はこちら

“どれだけ本気で事業をしたいのか”が重要

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難民起業サポートファンドは、起業を志す難民や難民申請者(いずれも就労資格を持っている人)に対して、マイクロファイナンス機関として事業資金の融資や経営のアドバイスなどを行う。運営体制は、吉山さんとパートタイムスタッフ、そして学生インターンという構成だ。

難民支援協会や知人からの紹介などにより連絡があった難民とは、まず会って話をする。そこで“どれだけ本気で事業に取り組むのか”を見ているのだと、吉山さんは語る。

「初めてお話する段階では、“どうやってビジネスとして成り立たせるのか”というアイデアまで持っていない方も多くいます。私たちはそのあたりをアドバイスさせていただきながら、どれだけ事業として可能性があるのかとともに、どれだけ事業に本気なのか、ということを見ています。本気で取り組んでいる方には、できる限りお手伝いをさせていただきたいと考えています。」

事業に本気で取り組む意思があると事務局が判断すると、有識者で構成された審査委員会にあげて融資の審査を行う。1回の審査で融資が決まることはほぼなく、何度もやりとりをして事業の方向性や数字を見直した後、最終的に融資の可否が判断されるのだそうだ。

これまでに融資を行った回数は8回。融資を受けた難民の方は、レストランや中古車貿易、さらにはアプリの開発などの領域で起業している。難民起業サポートファンドは、これから起業をしようとしている人だけでなく、既に自分でビジネスをしている人に対しても、サポートの門戸を開いている。

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「既に動いている事業についても結構手伝えることがあります。レストランであればメニューや価格などの提案もできますし、プロボノとして手伝ってくれる税理士と一緒に経理のアドバイスをすることもあるんです。」

資金面の援助だけでなく、事業を成功させるためにあらゆるサポートの仕方を模索している。仕事をしていて嬉しい瞬間は、やはり融資の後に事業がうまくいっていることだと吉山さんは語る。

「私たちがしている融資は限度額が100万円なので、そこまで大きな手助けにはならないのですが、“融資してくれて助かった”という一言をもらえるのはやはり嬉しいです。正直、“面倒くさい手続きなんてしないで早く融資してよ!”と思われているかもしれませんが(笑)。難民の方が自身のやりたいことを実現されていたり、生活を安定させている姿を見ると、やっていて良かったなと思いますね。」

私たちが生きる社会に、難民も生きている

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難民起業サポートファンドの活動の中で、より多くの難民起業家をサポートするために現在見えている課題が2つあるという。1つは、支援の領域を広げることだ。

「事業内容によっては、こちらにノウハウがないため、事業成功の可能性やお手伝いの仕方が見えにくいものもあるんです。そこの領域を広げていけたらいいですね。あとは、融資以外の支援メニューを作っていくこと。事業に必要な物資を提供することも必要なことなので、新たな選択肢を作っていけたらいいなと思います。きちんと彼らのやりたいことに応えられる組織を作っていきたいです。」

もう1つは、資金調達の方法だ。

「現在、うちの団体の活動はすべて寄付で成り立っています。まずは、より多くの寄付での支援をいただけるよう、広報体制の構築を考えています。また、より幅広い方々から支えていただくためには、公益社団法人ということで制約もあるのですが、その中で借り入れや出資など、さまざまな資金調達の方法を模索していきたいです。」

“難民が起業によって経済的自立を果たす”社会を実現させるためには、組織規模の拡大やサポート領域の拡張など、課題が多くあるのが現状。設立から6年余り経った現在でも、“活動が軌道に乗った”という感覚は持てていないと吉山さんは語る。しかし、困難な境遇に置かれていても、吉山さんはこの仕事を辞めたいと思ったことは一度もないのだという。

「適切な言い方かは分からないのですが、厳しい状況の中で挑戦している難民の後押しができるのは楽しいんです。起業に成功する難民が増えることで、日本の中での“難民のイメージ”を変えていくと私は思っています。もちろん、住む場所がないとか、十分な医療を受けられないとか、そういう状況がある以上、基本的な生活面の支援にも力を入れなければなりません。しかし同時に、難民起業サポートファンドのような違ったサポートもしながら、難民の様々なステージに応えることが大切だと思っています。」

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冒頭でも触れたように、日本国内における難民問題の認知度は低い。長年難民問題の現場に携わってきた吉山さんに、読者に対してメッセージをいただいた。

「皆さんに知っていただきたいことは2つですね。1つは、日本に難民がいて、社会で活躍している人がいるということです。皆さんが通ったことのあるエスニック料理店は、もしかすると難民の方がやっているお店かもしれない。そのくらい難民は実は身近で、私たちの社会の中にいるんです。あとは、日本にある難民支援の団体は、多くの方の支援で成り立っていることを伝えたいです。寄付をはじめ、いろいろな支援の方法がありますので、皆さんのお力を貸していただけますと嬉しいです。」

難民問題は一見すると自分とは関わりの薄いテーマだ。しかし、私たちが生きる社会に、彼らもまた生きていることを吉山さんは教えてくれた。吉山さんの活動に触れた私たちは、自分の身近な人に、このことを伝えていくことが大切だ。そうした積み重ねが、難民問題への意識を変える一歩なのだから。

前編はこちら

公益社団法人難民起業サポートファンド
160-0004
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(つなぐ編集部)
写真:小沼祐介


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