オフィスの移転や拡充に活用できる地方拠点強化税制とは

地方で雇用者数を増やしたときに税額控除が受けられる雇用促進税制が2018年3月31日で終了しました。その代わり、2018年度の税制改正により地方での雇用者数の増加に対する優遇税制は地方拠点強化税制に一本化される予定です。

今回は、地方拠点強化税制について紹介します。

地方拠点強化税制の概要

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本社機能を地方(対象地域)に移転または拡充した場合の優遇税制であり、主に「オフィス減税」と「雇用促進税制」があります。

本社機能とは

本社機能(特定業務施設)とは複数の事業所に関わる業務または全社にまたがる業務を行うことを指します。主に以下の部門を担う事務所または社内で重要な役割を担う研究所や研修所が対象に挙げられます。
・調査や企画部門
・情報処理部門
・研究開発部門
・国際事業部門
・その他管理業務部門(総務、経理、人事などの管理業務を行っている部門)

店舗や工場は対象にはなりません。

参考:地方拠点強化税制のご案内(内閣府 経済産業省 厚生労働省)

優遇税制は移転型と拡充型に区分される

優遇措置を受けられる事業は、「移転型」と「拡充型」の2つに分けられます。まずは、自社がどちらに当てはまるのかを確認しましょう。

移転型
本社機能が東京23区にある会社に限定されます。具体的には、認定地域再生計画に記載されている地方活力向上地域に本社機能を移転させることと、東京23区にある本社の従業員のうち過半数を転勤させる(新規採用者も一部含む)の両方の実施が求められます。

拡充型
本社機能の一部を地方活力向上地域に移転したり、もともと立地されている場所を拡充したりすることによる優遇税制です。具体例は次の通りです。

・地方活力向上地域に本社を置く会社が施設を増築する
・東京23区以外の地方都市に本社を置く会社が地方活力向上地域に移転する
など

優遇措置の対象となる地方活力向上地域については、各都道府県にお問合せください。

参考:相談窓口一覧(内閣官房内閣広報室)

優遇税制の内容

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優遇税制は移転型と拡充型によって異なります。

移転型

オフィス減税
特別償却と特別控除(税額控除)のいずれかで優遇税制を受けることができます。
・特別償却:特定施設(本社機能を持つ建物、建物付属設備、構築物)の取得価額 × 25%
・特別控除:特定施設の取得価額 × 7%

雇用促進税制
移転型の場合、基本部分と上乗せ部分が存在します。
・基本部分
会社全体の雇用増加割合に応じて、一人当たり最大で60万円が税額控除されます。

・上乗せ部分
基本部分に加え、東京23区からの転勤者を含む本社機能の雇⽤者が増加した場合、1⼈当たり30万円が税額控除されます(最⼤3年間)。 法⼈全体または本社機能の雇⽤者数が減少した年以降は不適⽤になります。

拡充型

オフィス減税

特別償却と特別控除のいずれかで優遇税制を受けることができます。
・特別償却:建物・建物付属設備・構築物の取得価額 × 15%
・特別控除:建物・建物付属設備・構築物の取得価額 × 4%

雇用促進税制

拡充型の場合、基本部分のみ存在し、上乗せ措置はありません。

・基本部分
無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者:
1人当たり60万円(法人全体の雇用者増加率が10%未満の場合:30万円)

他の事業所からの転勤者もしくは新規雇用者数の4割に達するまでの非正規(無期雇用およびフルタイムでない者)の新規雇用者:
1人当たり50万円(法人全体の雇用者増加率が10%未満の場合:20万円)

新規雇用者数の4割を超える部分の非正規の新規雇用者:
1人当たり40万円(法人全体の雇用者増加率が10%未満の場合:10万円)

詳しくは、内閣府の情報をご確認ください。

参考:地方拠点強化税制(内閣府府地⽅創⽣推進事務局)

優遇税制の基本的なルール

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基本的にオフィス減税と雇用促進税制は併用できず、いずれかを選択する必要があります。ただし、移転型の上乗せ措置のみがオフィス減税との併用が認められています。

税額控除の限度額

オフィス減税と雇用促進税制を合わせて、当期法人税額の30%が税額控除の限度額です。

参考:地方拠点強化税制のご案内(内閣府 経済産業省 厚生労働省)

オフィス減税を受ける条件

次の全ての条件を満たす必要があります。
・青色申告書を提出する会社であること
・地方拠点強化税制の施行日から2018年3月31日までに移転、拡充先の都道府県知事に「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」を申請し、認定を受けること
・中小企業者は1,000万円以上、そのほかの会社は2,000万円以上の建物などを取得すること

参考:地方拠点強化税制のご案内(内閣府 経済産業省 厚生労働省)

雇用促進税制を受ける条件

移転型と拡充型に共通する基本部分、移転型のみに関係する上乗せ措置、手続方法に分けて雇用促進税制の条件を説明します。

基本部分
・青色申告書の提出

・税額控除を受ける年度とその前年度に会社都合の離職者がいないこと

・次のいずれかを満たすこと
1, 特定業務施設における雇用者増加数(有期雇用またはパートタイムの新規雇用者を除く)が2人以上であること
2, 税額控除を受ける年度の「前年度以前のいずれかの年度に1を満たし」かつ「その前年度以前の全ての年度において、会社全体と特定業務施設の雇用者増加数が0人以上」であること
※ 法人全体の雇用者増加数が0人以下の場合、控除額は0円です。そのため、税額控除を受けるためには、法人全体の雇用者増加数が1人以上であることが必要です。

・税額控除を受ける年度における法人全体の雇用者(※2)に対する給与等支給額(※3)≧前年度の給与等支給額×(1+雇用者数増加割合×20%)
※2 雇用者とは、雇用保険の一般被保険者であり、役員やその親族などの特殊関係者を除きます。
※3 給与等支給額とは、給料、賃金、賞与などの給与のうち、経費に計上した金額のことを指します。

・業種が風俗営業などではないこと

・オフィス減税を受けていないこと

移転型の上乗せ措置
基本部分の条件に加えて、次のいずれかの条件を満たす必要があります。

・雇用促進税制の基本部分の税額控除を受けていること
・オフィス減税を選択する場合、雇用促進税制の基本部分が受けられる条件であること

前述の通り、上乗せ措置の雇用促進税制とオフィス減税は併用できます。

参考:雇用促進計画の提出手続き(厚生労働省)

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手続方法

地方拠点強化税制の施行日から2020年3月31日までに次の手順で手続きを行います。

1, 年度の開始日から2ヶ月以内にハローワークへ「雇用促進計画」を提出します。
2, 年度の終了日後2ヶ月以内にハローワークに「雇用促進計画」の達成状況の確認を求めます。
3, ハローワークから確認結果が届きます。
4, 上記3の写しを確定申告書に添付します。

参考:地方拠点強化税制のご案内(内閣府 経済産業省 厚生労働省)

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執筆は2018年5月31日時点の情報を参照しています。
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